第2054話 【ダンジョンシステムオペレーター】の力確認
第2054話 【ダンジョンシステムオペレーター】の力確認
無事50層の守護型ボスも楽々突破。
ちょ~と前半〈エデン〉のメンバーがやりすぎてしまった感じもしたが、後半はほぼタンクのテルニアとアタッカーのグラジオラだけで撃破したのできっとセーフだろう(?)。
ラナも素晴らしい指揮で1年生たちを支えてくれて、とても素晴らしいボス戦だった!
「どうでしたかシエラ先輩!」
「ええ。私と違って自在盾なんて使えないのに、よく『完全魅了盾』を当てたわね。すり抜けざまに当てるあの技術はとても良かったわ」
「ありがとうございます!」
「このグラジオラ、ただいま戻りましたぞ!」
「お帰りグラジオラ、とても気持ちのいい勝利だったな!」
「我もだいぶ怒りをコントロール出来てきたように思いますぞ! 怒ってはいても怒りに飲まれず! 常に引くことも考えながら強力な攻撃を叩き込むことが【憤怒】の使い方と見つけたり!」
「その調子なら何も言うことはなさそうだな!」
戻ってきたテルニアをシエラが、グラジオラを俺が迎えて感想を言い合う。
シエラから見てもテルニアの盾捌きはかなりのもののようで、盾による攻撃を当てなくてはいけない場面でも安心して任せられると言う。
グラジオラは怒りモードでも攻撃一辺倒にならず、立ち回りがしっかりできていたな。チャンスにしっかり攻撃を叩き込めれば、それは立派なアタッカーだ。
〈六ツリ〉で3回目の変身ができるようになったら見られるグラジオラ完全体が超楽しみである。
ドロップしたのは〈金箱〉が2箱。
非常に素晴らしい。
とはいえ 上級中位 ( ジョーチュー ) 級なので俺たちが騒ぐほどのことではない。ないのだ!
冷静にテルニアとグラジオラに譲ってこの場を突破する。
それからも〈エースシャングリラ〉の実力を見ながら順調に階層を更新していった。
「無事70層にとうちゃ~く!」
「もう最奥に着いちゃった!?」
ラナが耳に心地いい「とうちゃ~く」を言えば、こちらも耳に気持ちいいテルニアのツッコミが響く。俺、幸せ。
30人に効率よく攻略者の証を取らせるため、サポート2人を入れた10パーティを編成して順番に挑んでいったんだ。超順調。
「なんだか最奥ボスで順番待ちするのって久しぶりね! 逆に新鮮だわ!」
「その気持ちよくわかります。ラナ様、最奥ボスは私と共に組んで挑みましょう」
「いいわね! 〈スターライト〉でぼこぼこよ!」
「それならキャロルに入ってもらいましょう」
順番待ちしながらボス戦のパーティを組んでいく。
ラナとエステルが組んで〈スターライト〉を使うとなったら、もう他は非戦闘メンバーで良いくらいなのでキャロルが指名されていたな。
「わ、私ですか~!?」
「良かったねキャロル。ラナ殿下とエステルさんが一緒なら万が一と言うこともないよ!」
「恐れ多いですよ~」
「よし、その緊張を解きほぐそう! 69層で訓練しながら順番が来るのを待とうね! 大丈夫! 訓練してたら忘れちゃってるよ!」
「それただの後回しです~!」
カイリがキャロルの先生役。
なにせ、〈エースシャングリラ〉の攻略をサポートするのは、キャロルだからな。
キャロルもあまり攻撃力は無いのでボス戦はキャリーしてもらう形なのだ。
また、最上級ダンジョンではみんなでレイドボスに挑むために、順番待ちなんて滅多にしなくなった〈エデン〉メンバーたちが暇を持て余して69層で狩りをし始めていたな。俺も行こうっと。
「そう言えばキャロルのスキル回しってしっかり見たことなかったな。俺も見学いいか?」
「あ、はい~。もちろん構いません~。本当なら、最奥まで到着しておいて見たことが無いなんて無いはずなんですが~」
「まあ、そこは〈エデン〉だもん」
「そうですか~」
キャロルのところにお邪魔すると、なんだか困ったような、困惑を隠せない感じのつぶやきが漏れているキャロル。カイリのバッサリとした理由がすべてを物語っているな。キャロルがなにかを諦めていたんだ。
それはともかく、キャロルの 職業 ( ジョブ ) は【観測者】の上級職、高の下【ダンジョンシステムオペレーター】だ。
専用装備〈オペレーターのキー〉がないと就くことができない調査系の特化型 職業 ( ジョブ ) だな。
カイリの探索特化とはまた違うサポート力を誇る。
「ではいきますね。〈竜の箱庭〉――オン。〈オペレーターのキー〉起動!」
取り出したる〈竜の箱庭〉はすでに4個目。これはキャロル専用の〈竜の箱庭〉だ。
さらに鍵型の〈オペレーターのキー〉を使用すると、キャロルの前にパソコンのようなホログラムが浮き上がる。〈オペレーターのキー〉の〈キー〉は鍵の意味もあるが、〈キーボード〉のキーでもあるのだ。
それを打ち込むと、〈竜の箱庭〉に映るフィールドが、次々に丸裸になっていく。
「『フルマッピング』です~! これがあると本当に楽ですよ~」
「今までは仲間が踏破しないとマッピングされなかったもんね~。分かるよ~」
キャロルはリーナとは違い、〈五ツリ〉の時に『フルマッピング』が開放されている。これは 職業 ( ジョブ ) の格による違いだな。〈上級姫職〉は強いのだ。
だが、『フルマッピング』の使いやすさは知っての通り。
キャロルは映った〈竜の箱庭〉のフィールド全体像に、キーボードを操作しながらさまざまなものを付け加えていく。
「えっと、中央にあるのが採取ポイントと伐採ポイント、こっちが発掘ポイント、え? この部屋に釣りポイントがあるんです~。すごい宮殿です~!?」
「「おお~」」
キャロルの調査力は半端ではない。
モンスターだけではなく、その採集系ポイントまで発見できるのだ。
罠だけでも助かるのに、果ては隠し部屋まで見つけてしまうのだからすさまじい。
とはいえ、さすがにそれは条件があり、仲間が踏破した周囲のみになるけどな。
隠し部屋はそう簡単に発見されないのだ!
「では、オペレートしていきますね。『矢印配置・投影』!」
これが【ダンジョンシステムオペレーター】の基本スキルだ。
道案内のスキルである。
「地図に矢印を書き込んでいきますね~」
そう、【ダンジョンシステムオペレーター】の真骨頂は、ダンジョンに書き込みができること。
リーナも『投影コネクト』と『ギルドチェーンブックマーク』でダンジョンに書き込みができるが、それと同じ。いや、もっと細かいことが可能だ。
リーナは目的地などに目印を置くくらいしかできなかったが、【ダンジョンシステムオペレーター】は違う。
文字通りダンジョンのシステムをいじくってオペレートするのである。
〈竜の箱庭〉の入口門から出口階層門へのルートに矢印が書かれると、俺たちも目視でフィールドに書かれた矢印が見えるようになった。
「宝箱のマークも入れちゃいま~す――『宝箱マーク・投影』!」
これもすごい。道中の行き止まりの宝箱も分かる上に、そこにマークと案内までつけられちゃうのだ。
「罠にもマーク、階層門にもマーク、エリアボスにもマークっと~。あ、ここに 救済場所 ( セーフティエリア ) もありますね。これもマ~クです~」
もうとんでもないことが分かるだろう。
これが調査課の力だ。
カイリみたいに探索特化で、環境系にも強かったり、階層門を無視して次の階層に飛んだりはできないが、ダンジョンを丸裸という意味では確実にカイリたちよりも特化型と言える。加えてそこに案内マークが付けられる、それが【ダンジョンシステムオペレーター】なのだ。
まあ、優秀な地図系のアイテムなどが必要ではあるけどな。
あと、リーナのように声を届けることはできないみたいで、あくまで矢印などのマークと文章などで案内する形だ。そのためのキーボードである。
「69層は、こんなところでしょうか~? 最後に『マーク・保存』!」
手を止めたキャロルが最後に使ったのが保存スキル。これで階層を移動しても一度書いた矢印は地図から消えない。非常に便利なスキルだ。
「十分だな。後は環境対策系さえアイテムで代用できれば、キャロルは間違いなく次代の〈エデン〉を引っ張っていけるサポーターになれるだろう」
「うん! 私も保障するよ! キャロルの調査能力は私とリーナさん以上だもん!」
「ありがとうございます~。ゼフィルスさんとカイリさんのお墨付きをもらったら、とても自信につながりますよ~」
「そいつは良かった――お?」
「キャロルー! 次は私たちの番よー!」
おっと、どうやらそろそろ順番のようだ。わざわざラナが言いに来てくれたのだ。
それを見て、笑顔で固まるキャロル。
「……でも恐れ多いという気持ちは解けません~」