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第2064話 〈メディカル・アンビュランス1号〉通ります!

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第2064話 〈メディカル・アンビュランス1号〉通ります!

ノーアもやってきて、この〈メディカル・アンビュランス1号〉に目を輝かせる。

「これがユルシィさんの〈乗り物〉、完成していたんですわね!」

「おう! こいつはタネテちゃんに優先的に作ってもらったんだ!」

以前〈万界ダン〉の50層、カメの背中に乗って最奥を目指すバトルタワー型ダンジョンの守護型ボス、〈ダダル〉の最終進化系からドロップしたレシピから作られたのが、この〈メディカル・アンビュランス1号〉だ。

ロゼッタの〈スプールルート〉完成後、タネテちゃんにちょくちょく素材を持ち込んでたら作ってもらえた装備で、全長10メートル級。〈戦艦・スターライト〉や〈スプールルート〉よりだいぶ小さいが、なんと60人を収容できる。

〈装備強化玉〉で強化しているので乗車人数も増えている形だな。もちろん〈からくり馬車〉と同じ『空間拡張』付きの〈乗り物〉だ。

「おお! すっげぇ!」

「ユルシィさんが手厚い看護をしてくださるというのは本当ですか!?」

「俺の心の中の邪竜もおとなしくなりそうだぜ……!」

「お、俺たちの〈イブキ〉よりも断然性能いいんだけど!?」

見ろ、みんな集まってきた。騎士男子たちなんか感動に震えているな。いや、1名マショウが愕然としているが。

「さあ乗り込め! 今日の予定は終了! これで一気に5階層へ向かう!」

「5階層へですか!?」

「実は〈救護委員会〉がそこに居るらしくてな。今からこれであいさつに行こうと思う! ついでに〈メディカル・アンビュランス1号〉の紹介もしたいしな!」

「〈エデン〉の挨拶の規模は桁が違うんだけど!?」

ミツルとテルニアのツッコミに内心でいいねを送る。

「さあ乗り込め! もう1層は卒業だ!」

「私が一番乗りですわー!」

「それじゃあ私が二番です~」

「いえお嬢様、せめてユルシィさんを最初に乗せてあげましょう!?」

「私は何度か練習で乗ったので構わないですよ~」

「ユルシィさん……! その優しさと純真さが1割でもお嬢様にあれば……」

「クラリス、ばっちり聞こえてますわ!」

「聞こえるように言いましたから」

ノーアとユルシィとクラリスは仲良し。

ユルシィは元々ノーアの紹介だったしな。

このなんでも受け止めてくれそうな柔らかい性格が、ノーアと大変マッチするのか、相性がいいらしい。世の中って不思議!

「入ってくださいなみなさん! 中はとっても広いですわ!」

「それもユルシィさんのセリフですよお嬢様!」

「ふふ、良いですよ~。みなさんどうぞ入ってください~」

そうノーアとユルシィに促され、トラックの荷台部分に入ってみると、中は広々とした医療スペースが広がっていた。ベッドもあるし、マッサージ椅子っぽいのもある。

さすが、ダンジョン内の〈救難報告〉へ駆けつけることを目的に作られた装備だ。

実はゲーム〈ダン活〉では、〈救難報告〉を上げるとこの〈メディカル・アンビュランス〉が駆けつけてくれて地上まで連れて行ってくれる仕様だった。

そうゲームでは〈救護委員会〉の標準装備だったんだよこれ。

まあ、リアルだと〈万界ダン〉にたどり着いてもいないので誰も使っていなかったが……。

これが完成したときはちょっと感動したぜ。

ゲームの再現! この装備は絶対に欲しかった!

当然〈メディカル・アンビュランス〉は【メディカルキャラバン】の専用装備。

全員乗り込んだところで出発だ。

「それでは、発進しますね~」

「あのユルシィさんが、こんな大きな〈乗り物〉を操縦するなんて、真横で見てもなんだか信じがたい光景ですわ!」

運転席には当然のようにユルシィセット、助手席にはなぜか俺ではなくノーアがセットだ。

「いやノーアよ。道案内は俺の役目だからチェンジで!」

「あ~、ゼフィルス様そんなご無体ですわ~」

「はーっははー! 良いではないかー!」

「ふえ~。あのノーアちゃんをここまでノせられるなんて~、ゼフィルス様すごいです~」

席を交代してようやく発車だ。

「それじゃあ出発です~」

ユルシィが動かすと同時に上の方でピーポーピーポーとサイレンが鳴る。

【メディカルキャラバン】のユニークスキルはパッシブ。動き始めると自動でサイレンが鳴ってモンスターを遠ざけるのだ。

「これが、ユルシィさんのユニークスキル。とても快適ですわ!」

「モンスターがどんどん避けていきますね~」

荷台にいつの間にかキャロルの〈竜の箱庭〉が置かれ、みんなでモンスターの挙動を観察している様子。それによれば、近づくだけで寄ってきていた〈ウルフ〉たちが、どんどん俺たちから遠ざかっているとのこと。

さすがは【メディカルキャラバン】のユニークスキル『緊急車両が通ります』だ。効果は抜群だな。

ウルフたちが俺の顔を見て「やっべ!?」と逃げたような気がしたのは俺の勘違いなのだ。

こうして俺たちはあっという間に5層までたどり着き、ターゲットを発見する。

◇

「ん?」

「どうしたラムダ?」

一方こちらは〈救護委員会〉。

最上級ダンジョン5層の守護型ボスを倒すために、その前で一旦休憩を取っているところ、ラムダが後方に何かを感じて振り向いた。

それに反応し、ラムダの父であり大隊長でもあるシグマも同じくラムダの視線の先を見る。

「何か聞こえる?」

「ああ。――探知班、どうなっている!」

「――敵性、ありません!! それどころか、え? 敵性反応が遠ざかっていく!?」

「なんだかよくわからないが――来るぞ!」

「なんだありゃ!?」

突如真っ直ぐに、結構な速度でやってきたそれに、ラムダたちは驚いた。

ここは〈樹界ダン〉。主なモンスターは〈 樹 ( キ ) 〉系か〈ウルフ〉系だ。

なのにやってきたのは、〈乗り物〉ぽい人工物。しかもサイレンを鳴らしランプを遺憾なくクルクル回して自ら光っている。明らかにモンスターを呼び寄せるための何かだ。そう思うも、探知班の話ではモンスターがどんどん離れていっているらしい。

マジで何事!? それがラムダたちの心境だった。

「ラムダたち発ーーっ見!!」

「ってゼフィルス!?」

そしてラムダは見た。車体の窓から身を乗り出し手を振る存在、あれは間違いない。去年まで一緒のクラスメイトだったゼフィルスだ!

「中止! 中止! 全員端に寄れー!」

「ピーポーピーポー!」

「あの奇抜さは間違いない。ありゃ〈エデン〉だ!」

―――おおおおおお!?

正体見たり、ありゃ〈エデン〉。

それを自覚した瞬間みんな一気にフィールドの壁側に寄り、道を開ける。

ええ!? 学園公式ギルドが道を開ける!?

だって〈エデン〉だもん。あんなわけのわからないものの前になんか居られるか!

きっとまた学園長が噂の蘇生茶に頼るようなものを開発したに違いない!

ラムダも含め、〈救護委員会〉一同の心境はこんな感じだった。

そして、サイレンがゆっくり収まっていき、同時に何かよくわからない物体も止まる。そしてドアが開けば、ゼフィルスが下りてきた。

「ようラムダ! なんだか久しぶりだな!」

そのいつもと変わらない様子のゼフィルスにラムダもようやく息を吐く。

「ゼフィルス。驚かさないでくれ。 報告書 ( 攻略本 ) にも書かれていない新種のモンスターかと思って、身構えてしまったじゃないか」

「そいつは悪かった! 是非ラムダたちにはこれを見てもらいたくてな、5層に居るって聞いて走ってきたんだよ」

きっと〈エデン〉に俺たちの居場所を教えたのはさっき連絡を取った〈ハンター委員会〉だろう。アーロンはどうやら〈エデン〉のことは話していなかった模様だ。

シグマはちょっと後でアーロンとお話ししようと決める。

いや、さすがのアーロンでも〈メディカル・アンビュランス1号〉で〈エデン〉が爆走してくるとは予想できないだろう。優しくしてあげてほしい。

「これは?」

「〈万界ダン〉でドロップした新しい〈乗り物〉レシピから作ったやつだ。その名も〈メディカル・アンビュランス1号〉!! なんと、【メディカルキャラバン】専用装備だぜ!」

「【メディカルキャラバン】の専用装備!? あのヒーラーのかい!?」

ゼフィルスから早速話を聞いてラムダは改めて目を見開き、再び〈メディカル・アンビュランス1号〉を見る。

ラムダ自身「騎士爵」だ。〈乗り物〉のことについてはかなり精通していると言っていい。

〈乗り物〉でモンスターを物ともせずに爆走できるのは基本「騎士爵」だけだ。

他の 職業 ( ジョブ ) では乗れるけどモンスターに攻撃できない。

唯一モンスターに乗れば攻撃は可能だが、乗車人数は少ないのがモンスター騎乗の特徴だ。

故に、〈乗り物〉に乗って最上級ダンジョンを爆走していたのが「騎士爵」ではなく、さらに言えばヒーラーだったのに、とても驚いたのだ。

見れば運転席に座っている女の子、ユルシィが優し気な笑顔で手を振っている。

待て、おかしい。あんな子〈エデン〉に居たか? まさか新顔?

そうラムダが思った時だった。〈メディカル・アンビュランス1号〉の荷台の扉が開き、知らないメンバーが次々に降りてきたのである。

「紹介するぜラムダ、〈救護委員会〉のみなさん。俺たち〈エデン〉の下部 組織 ( ギルド ) 、〈エースシャングリラ〉のメンバーだ! 今日はこの子たちも紹介しようと思って来たんだよ」

「…………ええ~?」

ラムダから、なんか唖然とした声が出た。