第2065話 最上級ダンジョンで営業。学園長悲鳴をあげる
第2065話 最上級ダンジョンで営業。学園長悲鳴をあげる
「下部…… 組織 ( ギルド ) ??」
「おう!」
「下部 組織 ( ギルド ) が最上級ダンジョンに入ダンしてるだってー!?」
ラムダは俺の想像以上に驚いてくれた。
アーロン先輩のリアクションと同じだ、いいね。
なぜかラムダがしきりにリーナの方に視線を送っているが、アイコンタクトかな?
なんかリーナが無言で頷いてる?
「実はさっき〈ハンター委員会〉にも紹介してきたところでな。ここに〈救護委員会〉も居るって聞いたから、挨拶とこれの売り込みに来たんだよ」
「あ、そうだ。これのことも聞きたいんだけど! いや〈エースシャングリラ〉の方が先か?」
ラムダは混乱しているようだ。
「お労しいですわラムダさん。いきなり特大の情報量が押し寄せて混乱してしまったのでしょう」
「あ、ヘカテリーナ殿。お久しぶりです」
あ、ラムダが現実逃避してリーナの方に行った。
「ラムダよ。お前がそっちに行ってどうする」
「父上!?」
でもシグマ大隊長に連れ戻されてた。
話の途中で逃げようとしたが、逃げられなかった、みたいな顔をしてラムダが俺の前に戻ってくる。
「あ~、こほん。とりあえず、〈エースシャングリラ〉のことはまた今度、心構えができているときに聞くとして、この〈メディカル・アンビュランス〉だったかい? これのことを先に教えてもらいたいんだけど。いいかな?」
「もちろんだ! これがあれば〈救護委員会〉の活動もだいぶやりやすくなるだろうぜ。むしろ必須装備になること間違いなしだと俺は思ってる!」
なにせゲームで〈救護委員会〉の正式装備に採用されていたからな。
ふふふ、リアルでも正式装備にしてやるぜ!
「ユルシィ、〈救護委員会〉を少し乗せても構わないか?」
「もちろんです~。どうぞ見ていってください~。看護が入用でしたら言ってくださいね~」
「あ、いや。それは大丈夫だ。その、お気遣い感謝するよ」
ユルシィの緩い言葉遣いに照れるラムダ。
ラムダは、アイシャとかユルシィみたいな文学系三つ編み女子が好みだと、俺は知っているぞ。
少し打ち解けたようなのでそのまま車内を〈救護委員会〉のメンバーにお披露目する。
「うわ、中はかなり広いんだな!」
「はい~。最大強化までしているので、この見た目で乗車人数は60人まで乗せられるんですよ~。それに看護器具が揃っていて、もし負傷者が居ても安静にして運ぶことができます~。なんならこの場で治療もできちゃいま~す」
「すごいな……! 60人と言えば『ゲスト』込みの最大人数か! 確かにこれなら……いや、これは【メディカルキャラバン】専用装備。俺が装備してもその本領を発揮できない。モンスターを避けながらダンジョンを走るのは難しいか?」
「あ、それは私が六段階目ツリーを開放したときに出たユニークスキル『緊急車両が通ります』で解決しました~。これがあると、モンスターが逃げていくんです」
「なんだって!? そういえばさっき、モンスターが離れていくって探知班が言ってた……!? つまり【メディカルキャラバン】なら問題なくダンジョンも走行できる?」
「はい~。『上級悪路馬車走行』と『上級環境適応〈乗り物〉』を両方持っているので上級ダンジョンや最上級ダンジョンでも〈馬車〉で環境を気にせず走れるんですよ~」
「…………すごいな【メディカルキャラバン】!」
ラムダがユルシィからプレゼンされて目を輝かせていた。
同じ内容を周知すると、〈救護委員会〉の目が色めき立つ。
「ゼフィルスさん! 是非、これを〈救護委員会〉にも作ってもらえないでしょうか?」
早速シグマ大隊長からお話があったよ。そう来なくっちゃな!
「もちろんです! 早速話を詰めましょう!」
「ゼフィルス、そういうことはリーナやセレスタン、サトルやナゴに振っちゃいなさい」
「シエラ!?」
「あなたは今〈エースシャングリラ〉の強化に来ているのでしょ?」
「おっとそうだった。ちょっとテンションが上がりすぎちまったぜ。――ということでシグマ大隊長。帰ったらすぐにでも代理を〈救護委員会〉へ送ります!」
「承知しました。いやぁ、これほど素晴らしい〈乗り物〉は見たことがありません。それに【メディカルキャラバン】もこんなにも優秀な 職業 ( ジョブ ) だったとは……! これならば最上級ダンジョンでも〈救護委員会〉は大いに目的を遂行し、活動ができることでしょう。期待しています」
「もちろんです! これならば最上級ダンジョンだろうと期待に応えられるでしょう!」
あとで聞いた話だが、〈救護委員会〉では現在、新たな〈乗り物〉の採用を検討していたらしい。
最上級ダンジョンのフィールドでも運用できる、小回りの利く最上級〈乗り物〉の検討だ。
そこで〈エデン〉が使っている〈戦艦・スターライト〉が考えられていたらしいが、あれは大きすぎる。
戦艦だもん。ボスを相手にする戦闘用の〈乗り物〉だ。
ということで正式採用は見送っていたらしい。
〈救護委員会〉の目的はあくまで救護。故に、救護に特化した〈乗り物〉を探していたらしい。
〈メディカル・アンビュランス〉は小回りも利く10メートル級。
戦艦では動きづらい〈樹界ダン〉でもスムーズに動ける性能は素晴らしく、積載量も豊富。しかも中で治療を受けられるとあって一瞬で「これだ!」と決まった模様だ。
「これならばヴィアラン会長も納得すること間違いなしですね」
そう、グッと拳を握って打ち震えるシグマ大隊長を見て、これは早々に紹介して大正解だったなと思ったね。
その後ユルシィはシグマ大隊長直々にスカウトを受けていたよ。卒業後〈救護委員会〉に所属しないか? というものだ。
そうだろうそうだろう。これはスカウトせずにはいられまい。もちろん在学中は〈エースシャングリラ〉優先だ。これは譲れない。
ユルシィもノーアの勧めで前向きに、いや、ほとんどOKしたようなものだったな。また1人、就職がほぼ内定した模様だ。
「もう行くのかい?」
「ああ。今は〈エースシャングリラ〉のパワーキャリー中でな。最上級ダンジョンの見学――もとい体験をしてもらっているところなんだ。明日からはクラス対抗戦もあるし、今日を逃すとしばらく〈エデン〉が付き添いできないからな」
「そうか。もう少し話したかったが。いや、なんでもない。――大変だとは思うが頑張ってくれ、〈エースシャングリラ〉の諸君」
「そこは俺にじゃないのかよ!?」
「ゼフィルスにこれ以上エールを送ったらこの子たちが大変だろう?」
「なにおう~?」
「すごいですね〈救護委員会〉のラムダさん。あのゼフィルス先輩とあんな砕けたやり取りを」
「去年までクラスメイトだったって聞いたですよ。仲もすっごく良かったみたいです!」
「仲良しは良いことだよ~。もふ~!」
俺とラムダの気を使わないやり取りにフェンラやクラ、マルティを始め、なんだか〈エースシャングリラ〉のみんなが新鮮なものを見る目で見つめていたんだ。
ちょっと照れるぜ。
「それじゃあな~」
そう言って〈救護委員会〉の面々と別れ、階層門へと向かうと――守護型ボス発見! というか生きてた! てっきり〈救護委員会〉が倒しているとばかり。
よし、倒してしまおう!
その後、ラムダたちがあの守護型ボスを倒すための休憩中だったことを知ったのだが、それはもう倒してしまった後だったんだ。
◇
「学園長。〈救護委員会〉から報告です。どうやら最上級ダンジョンのランク1〈樹界ダン〉の5層で、〈エデン〉と接触したようです(またやべぇ報告書が来ちゃったんだけど!?)」
「な、ぬ?」
ここは学園長室。
ようやく1年生のクラス対抗戦の目途も立ったころ、カイエンからそんな報告が来ちゃったのだ。
まあお互い最上級ダンジョンに潜っているのだ。会うこともあるだろう。
ただの接触だけならば問題ない。そう接触だけならだ。
だが、〈エデン〉はまた〈救護委員会〉の在り方を根本的に変えてしまう 物 ( ぶつ ) を紹介していた。
「そこで〈エデン〉から、営業を受けたようでして。こちらがその報告の資料です(なんで〈エデン〉は最上級ダンジョンで営業なんかしちゃってるのかな!? しかもなんかやべぇもんをさ!)」
「〈メディカル・アンビュランス〉??」
資料を読んで学園長固まる。
そこには、シグマ大隊長が熱く「これはすごいのです! 最上級ダンジョンでも動ける画期的な〈乗り物〉でした!」と語っていて、もう購入しない選択肢はないような感じ。
でもそれはいい。良い装備を購入することでダンジョンで助けを待つ者へ迅速に向かうことができ、さらにその場で治療も可能。素晴らしいことだ。
しかし、それが原因で〈救護委員会〉の体制が大きく変わろうとしていた。
〈メディカル・アンビュランス〉が前提になりそうな体制の報告書まで送られてきたのだからたまらない。
「モンスター避けを発する【メディカルキャラバン】専用〈乗り物〉装備、じゃと??」
「シグマ大隊長からは、すぐに【ナース】や【ドクター】、【メディック】などの人材の確保に協力をお願いしたいと連絡が来ております(ゼフィルスさん落ち着いて! 明日はクラス対抗戦だから! 関係ない仕事増やさないでーーー!)」
「ヴィアランに投げるのじゃ。もう全部許可するとな。また、それは全てはクラス対抗戦が終わってからじゃーーーー!」
「学園長が、燃えている!(これが、あの気絶できない蘇生茶の力!? こっちもやべぇ!?)」
蘇生茶によって一時的に現実逃避(気絶)ができなくなった学園長は、今日もとっても頑張ってます!