第2091話 〈3年1組〉VS〈3年50組〉の総力戦始まるよ!
第2091話 〈3年1組〉VS〈3年50組〉の総力戦始まるよ!
〈3年1組〉は試合開始直後、周囲の召喚盤を集めに来た他のクラスを各個撃破することに動き出した。
「レイドボスの守りが無い状態は非常に無防備! 初動は〈3年1組〉が非常に有利と言っていい! まずは西を除いたすべての方面に部隊を放って他のクラスを各個撃破だ!」
「「「「おおー!」」」」
「ラナ、〈3年2組〉への牽制、頼んだぜ!」
「任せなさい!」
また、同時に〈3年2組〉の拠点に試合開始早々の牽制宝剣をぶっ放す。
〈3年1組〉の拠点から見て、実は東の〈3年2組〉と南の〈3年18組〉の拠点は、射線が通っているのだ。
ならば、試合開始早々ぶっ放さない手はない。
狙いは〈3年2組〉、十中八九防がれるだろうがそれでいい。狙いは〈3年2組〉の陥落ではなく、全クラスへの牽制だ。近ければラナの宝剣が降ってくる。それだけで〈3年1組〉へ仕掛けるのに非常に慎重にならざるを得ない。
実際に試合開始した直後からフィールドの中央に近づくクラスはほとんどいなくなったのだから、どれだけラナの宝剣が警戒されているか分かるだろう。
〈3年1組〉から見て最も警戒すべき西側は〈2年1組〉。
〈エデン〉のメンバーが多く在籍するところだ。各個撃破は難易度が高く、同時にレイドボスの召喚盤を入手されても、コストの関係でそこまで痛手にはならない。
西にメンバーを解き放つのであれば初動でいきなり多くを投入しなければならないため、一旦西側はスルー。
それ以外のクラスたちの各個撃破へと乗り出した。
それは、〈3年2組〉も例外ではない。
「〈3年2組〉発見! キールとナギたちだ!」
ゼフィルスに発見されたのが運の尽き。しかし。
「ま、待ってほしいな! 我々は〈3年2組〉の使者だ!」
「ほう?」
〈2年1組〉と同盟を組むと非常に戦力的にバランスが崩れてしまうのでそっちは断ったが、〈3年2組〉と組むのならば結構バランスがいい。
〈3年2組〉も〈3年1組〉に同盟を求めてくるのか?
そうゼフィルスは思ったが、キールの提案はゼフィルスの予想を遥かに上回った。
「〈3年50組〉の情報を渡したいんだよ。実はそこにはね、あのサターンたちが在籍してるんだ」
「サターンたちだって!? あいつら生きてたのか!?」
ゼフィルス、驚く。
ちょっと前までよく絡んできていたが、3年生になってどこかに消えてしまって、ひょっとしたら〈200組台〉にでも落ちたのか? と思っていたらなんと〈50組〉で勝ち残っているという。この決勝戦に!
まさか、サターンたちが俺たちのために力を付けて戻ってきたのか!?
そう、ゼフィルスが考えてしまっても不思議ではない。
「僕たちはしばらく〈3年1組〉には手を出す気はないからね。そちらも、少し僕たちが力を付けるまで待ってほしいのさ」
「ほう? しばらく、か?」
「うん、しばらく、ね」
「よし分かった! 〈3年2組〉が力を付けるまで手を出さない。代わりに〈3年50組〉との対決にも手を出さないでくれよ?」
「交渉成立だね」
こんな感じで〈3年2組〉とは少しの間、不可侵を結んだ。具体的には――言葉にはしなかったが〈3年50組〉が陥落するくらいまでである。うむ。そういうことだ。
よっぽど宝剣が降ってくる可能性を排除したかったのだろう。〈3年2組〉は真っ先に〈3年1組〉に使者を出してきた。
〈3年50組〉は位置的に〈3年2組〉にとって狩りやすい場所だったが、〈3年1組〉に譲ることでひとまずレイテルが氷の城塞を作るまでの時間稼ぎに成功する。
ちなみに最初の宝剣はトモヨががっつり防いだので拠点にはノーダメージだ。
〈3年1組〉は続いて南側の隣接である〈3年18組〉にも使いを出して〈3年50組〉に手を出さないよう交渉したのだ。
「というわけなんだリーナ。攻め込む準備を進めてくれるか?」
『承知しましたわ! そういうことでしたら、せっかくですからレイドボスが出そろい、機が熟すまで待つというのもありですわね』
「それはいいな!」
こんな感じで狙いを〈3年50組〉に絞りつつ、〈3年1組〉は機が熟すまでちょっとだけ待つことにした。
北側で〈2年5組〉のメンバーを数人と、〈2年10組〉のメンバー数人を各個撃破したところで、動きがあった。
〈3年50組〉がレイドボスを5体召喚したのだ。非常に思い切った戦術である。
だが、これが運命のトリガーになってしまうとは、さすがにサターンたちは誰も予想していなかっただろう。
「機は熟した! 今が 収穫 ( 狩り ) 時だ! 狙いは〈3年50組〉! 他の横やりはほぼ来ないと考えて良い! 今がチャンスだ! いくぞ!」
「「「おおー!」」」
「ラナ、エステルがカギだ! 頼むぜ!」
「私に任せなさい! 最高のタイミングで援護するわ!」
「ラナ様の護衛は私が成し遂げて見せます」
〈3年1組〉、出発。
会場は大きく盛り上がる。しかもその侵攻先が〈3年50組〉だ。
ゼフィルスとサターンの因縁を知る者は少なくない。そういう者たちはまたサターンがカラッと美味しくあげられてしまうのかと期待を寄せる。
それにいち早く気づいたのは、双眼鏡のようなもので〈3年1組〉を見張っていたジーロンだった。
「ふふ!? 緊急事態! 緊急事態! 〈3年1組〉が僕ら〈3年50組〉の拠点にまっすぐ迫ってきています!」
「な、なぁぁにーーーー!?!?!?」
「「「「なんだってーーーー!?」」」」
〈3年50組〉は一瞬でハチの巣を突き刺してしまったような大騒ぎになった。
「来ちゃった!? 〈エデン〉来ちゃったーーー!?」
「まだ全然弱ったように見えねぇ〈エデン〉が来ちゃったぞ!?」
「サターン、どうするんだ!?」
〈3年50組〉の作戦は漁夫の利。
他のクラスと〈3年1組〉が激闘して疲れたところをかっさらう作戦だった。
しかし、どう見てもぴんぴんしている〈3年1組〉が15人掛かりで北側へ回り込むように突っ走ってきている。大変危険!
「うろたえるな!!」
「「「「!!」」」」
ここで一喝。一気に場が静まり、1人の男に注目が集まった。
彼の名は――サターン。
この〈3年50組〉のリーダーをしている男だ。
「〈1組〉が来ている? 結構なことだ! こっちは防衛部隊まで全てを投入できるのに相手は半数だ! レイドボスも連れていない。これは逆にチャンスだぞ!」
サターンの言葉は、すぐにみんなの心に響いた。
「そ、そうだ!」
「こっちにはレイドボスが5体も居るんだ! 全部当てれば勝てる!」
「防衛の方が強いんだ!」
そう、攻め込むより、防衛の方が全戦力を投入できるため強い。
サターンの言葉に、ハチの巣は落ち着きを取り戻し――たかに見えた。しかし。
「ふ、ふふーーーー!? 西側! 宝剣が〈バトルウルフ〉に突き刺さり、大ダメージを受けました!? このままですとやられてしまいますよ!」
「「「「!?」」」」
「バ、バカな! ゼフィルスたちは北側から来ているのに、なぜ西の〈バトルウルフ〉が!? いや――別動隊か!」
レイドボスの一角がもうやられそうになっている報告を受けて、落ち着いている場合じゃないと〈3年50組〉がややパニくりながらも一斉に動き出す。
宝剣はダメだ。マジでダメ。
射線が通ると拠点まで攻撃を受けてしまう上にダメージがとんでもないことになるのだ。そして宝剣の使い手、ラナはなんとゼフィルスたちから外れ、西側に展開して宝剣を放っている。これを連発されれば西側の守りが消えてしまう。
北側からは依然としてゼフィルスたちが回り込もうとしており、宝剣が完全に別動隊の攻撃だった。どっちにも対処しないと拠点が落ちる。
すぐに宝剣を撃ち落とせるレベルの六段階目ツリー開放者を数人派遣しなければならない。
「トマ、ヘルク! 頼むぞ!」
「俺に任せてもらおう!」
「俺様も忘れてもらっては困るぞ!」
西には2人の六段階目ツリー開放者が向かう。
なぜたった2人なのか、それは、そっちが囮だからだ。
「〈1組〉の本命は北側に回り込んできています! 数15!」
「レイドボスをそっちに5体全員集合させるのだ!」
西側はラナと従者の4人のみ、それも距離を取って、〈3年18組〉の拠点周辺にまで食い込んだ位置から宝剣を放ってきていた。
実は少し前に〈3年18組〉が陥落しており、これ幸いにとゼフィルスが作戦に組み込んだのだ。〈3年18組〉の拠点周囲を利用しようと。
まさか陥落したはずの〈3年18組〉から宝剣が飛んでくるとは、〈3年50組〉は全く予想外だった。
その効果は先制攻撃として現れ、〈3年50組〉のプチパニックという形で現れた。
サターンも必死に指揮を取るが、行動が遅れる。
「〈1組〉侵入します!」
「〈ベヒモス〉を退かせるのだ!」
「サターン、〈ヨウネル〉が来たぞ!」
「〈バトルウルフ〉もだ! だが、西の守りをこちらに回してしまってもいいのか!?」
「〈1組〉にはレイドボス5体すべてをぶつけないと勝てんぞ! 西はヘルクたちに任せる! 出し惜しみをするな!」
拠点の周囲は塀のように山が囲っている立地となっている。
そしてその東西南北には進入用の横1マスの通路が用意されていた。
本来であれば、細い道で相手の攻撃を足止めできる素晴らしい立地なのだが、レイドボスを運用するとなると話は変わる。
なにしろ、レイドボスは大きい。それはそれは大きい。横1マスしかないと、レイドボスが5体も展開できないのだ。
故にできれば〈3年1組〉が通路に入ってくる前にレイドボスを展開しておきたかったが、宝剣のせいでパニクって行動が遅れた。間に合わないと悟ったサターンが北の守りである〈ベヒモス〉を退かせ、拠点の隣接にレイドボスを集合させる。
下手をすれば拠点が落とされる可能性の高い、危険な場所だが、背に腹は代えられない。
レイドボスを5体十全に運用するには、もうここしかないとサターンは分かっていた。
そして、攻めてきた相手が北の通路を駆けてきた。
「サターン、来てやったぜ!」
「ゼフィルス! 今日こそ貴様を倒す! 覚悟しろ!」
「ふふ、全レイドボス、ゼフィルスたちを倒すのです!」
「ヴォオオオオオオ!!」
「グマアアアアアア!!」
「おお! 〈ヘカトンケイル〉に〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉もだと!」
「ふはははははは! 今我らには追い風が吹いているのだ! 倒れろゼフィルスーー!」
〈3年50組〉の持ちコストは10300点。
その全てをレイドボスの召喚盤に費やしたサターンたちが召喚しているのは。
コスト1600〈バトルウルフ(最終形態)〉
コスト1850〈太陽猫聖獣・ヨウネル〉
コスト2000〈 巨神猫 ( ゴッドキャット ) ・ブレイブ・ベヒモス〉
コスト2350〈ヘカトンケイル〉
コスト2500〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉
計、10300P也。
そう、なんの偶然かそれとも必然か、与えられたコストを十全に使いレイドボスを召喚することができていたのだ。
確かに追い風が吹いている。
しかし、ただの追い風では暴風の中心であるゼフィルスには届かないのだ。
「狙いは、〈バトルウルフ〉から! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「ウオォーン!?」
「とう! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』! 『ヒーロー・スターレイ』! 『神世界インフィニティ』!」
「任せるがいい! 『天空華息吹・ヴァーテックスエッジ』!」
「ついでに全員喰らえ――『コキュートス・ゼロ・ディザスター』!」
ゼフィルスが〈バトルウルフ〉と〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉をまとめて聖剣でぶった斬り隙を作ると、ルルやレグラムなどの前衛が突っ込み、メルトなどの後衛が〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉をなるべく巻き込む形で〈バトルウルフ〉を総攻撃。
元々ランク1ボスでコストも低かった〈バトルウルフ〉は、ラナの宝剣も喰らっていたこともあり、15人もの総攻撃にさらされて簡単に光にされてしまうのだった。
――まず1体。