第2098話 〈3年2組〉の勇者撃破隊。同級生たちの勇姿!
第2098話 〈3年2組〉の勇者撃破隊。同級生たちの勇姿!
〈3年1組〉の南側で1年生たちが攻め込んでいる頃、ゼフィルスたちは〈2年5組〉とぶつかっていた。
「姉ちゃん! 拠点が狙われてるって! レイドボスを1体犠牲にしても戻った方が!」
「今戻ったら拠点が2方面からの攻撃で落とされちゃう! ここで抑えないと!」
〈2年5組〉拠点からシオンの連絡届く。
――『〈3年1組〉の別動隊が拠点へ侵攻』。
その情報はすぐに〈2年10組〉拠点跡地に進行していたソアたちの部隊に伝えられた。
だが、その時にはすでに〈3年1組〉のゼフィルスたちと交戦に入っていて、とてもじゃないが引き返せなかった。
現在は連れて来た〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が魔法の連射で援護し、コスト1850〈太陽猫聖獣・ヨウネル〉が避けタンクで連携し、攻撃を防いでくれているから何とかなっているだけ。だが、それでもじりじり押されていた。
レイドボス2体を相手に押し込んでいるとかどういうこと!? と思うかもしれないが、その起点となっているのはシエラである。
シエラは〈国守盾姫シリーズ〉に身を包んだ、対レイドボス装備。
しかもこの装備、本物のボス補正を持っているレイドボスの攻撃を1人で何度か受け止められるほどの性能を持っている。
あの複数人で防御しなくちゃいけないレイドボスを相手に、1人でかなりの時間耐えられるような装備なのだ。
そりゃボス補正が無いレイドボスたちの攻撃じゃシエラは突破できないよ。
ミツルとしては今すぐ拠点へ戻って防衛戦をしたかった。拠点が落とされたら負けなので、攻め込まれていると知れば戻りたくなるのが人情というもの。
だが、〈エースシャングリラ〉のギルドマスターであるソアとしてはそれを却下。
今戻れば二方面攻撃を喰らい、拠点が落ちるのは明らか。
それよりも自分たちがここでゼフィルスを抑えることに意義があると判断した。
その判断は最善。
現在〈2年5組〉に攻め込んだ〈3年1組〉部隊を引き下げようと〈2年1組〉と1年生が奮闘中なのだから。
そして、ソアたち自体にも希望はある。それが、
「追いついたよ!」
「追いつかれたか!」
「サチ先輩、エミ先輩、ユウカ先輩!」
そう、〈3年2組〉の挟撃だ。
「これから〈3年2組〉は〈2年5組〉と共闘します!」
「受け入れます!」
サチから大きな声でゼフィルスたちを挟んで反対側にいるソアたちに共闘を持ち掛け、ソアもそれに頷く形で受け入れた。
その瞬間、〈3年1組〉の動きも大きく変わる。
「南へ向かうぞ!」
「 殿 ( しんがり ) は任せて」
ゼフィルスの言葉に〈3年1組〉は南側に回り込む。
現在〈2年5組〉と元〈2年10組〉の中間地点に居て、〈3年2組〉が部隊を率いて後ろから回り込んできたのだ。
今サチが言ったように、2つのクラスは手を組んではいなかったものの、ここで〈3年1組〉を挟撃するのが最善と、部隊を率いて後ろを取ってきたのだ。
後ろを取られたゼフィルスたちはそれを嫌って南へ突き進まんとする。
だが、逃げるなら南だと分かっていたのでそっちにはしっかり伏兵が仕組まれていた。
「ん! ここから先へは行かせない」
「カルアたちか!」
レイドボス〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉を引き連れたカルアの部隊がパッと突然現れて回り込んできたのだ。完全に隠密系の使い手がいる。
こうして〈2年5組〉と〈3年2組〉は、〈3年1組〉の部隊を囲い込むことに成功したのである。
「こりゃ部隊を率いて無傷での突破は難しいか! カルアとレイドボスを迎撃し、道を切り開く! シエラ、〈2年5組〉を頼むぞ!」
「できる限り早くお願いね――『 守陣形 ( しゅじんけい ) 四聖盾 ( しせいたて ) 』!」
ここにきてさすがのゼフィルスも9人全員を無傷で生還させるのは難しいと判断し、覚悟を決めて乱戦に移ることを決めた。
そう、レイドボスという強力なモンスターにあの〈3年1組〉も手を焼き、追い込まれたのだ。
ゼフィルスは素早く誰がどこを担当するかを決めて割り振る。
「エリサは中心地に! セレスタン、ラウ、エフィ、シヅキは後方を! 俺とルルとクイナダで、カルアと〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の術者を倒す!」
「「「「了解!」」」」
「ルル、カルアを頼む!」
「分かったのです!」
「ん、今度は負けない!」
先ほどメルトを倒したカルアだが、その後ルルとバトルしてかなりの痛手を受けていたらしい。カルアもリベンジしたい模様だ。
「グマアアアアアアアアアアア!」
「クイナダ! 俺たちは〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉をスルーしつつ術者を見つけて叩くぞ!」
「でも、術者は誰!?」
術者はおそらくカルアではない。
カルアは単独行動の方が光るからだ。
そう、看破したゼフィルスは共にカルアが連れて来た6人の〈3年2組〉メンバーに注目する。
「久しぶりだな、ゼフィルスよ! 最初から本気で行くぞ! 『フルバースト・アトミックパンチ』!」
「ゼフィルス、覚悟――『ジャスト・クリティカル・スナイプゼロ』!」
「いきなり大技すぎるぞハイウドにミュー! 『ソニックソード』!」
「それを使ってくると思って俺がここにいるんだ――『セッション・ジャッジメント・ロー』!
いきなりの超ご挨拶。
【サイボーグ 完全体 ( パーフェクト ) 】のハイウドが3メートル級の拳を打ち込んできて、【ハンターカウガール】のミューが強力なスナイプでゼフィルスを狙ってきた。それを『ソニックソード』で回避したところに居たのは【カリバーンパラディン】のラムダである。ラムダは昔『ソニックソード』の回避からの攻撃にやられたことがあったために、ゼフィルスの前に先回りしていた。
その剣が光って強烈な光の20メートルの剣を顕現すると、ゼフィルスに叩き落す。
「ラムダ! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
これにはゼフィルスも応戦。
まるで1年生の時にぶつかったユニークスキル同士のぶつかり合いにも似た衝撃と迫力が巻き起こった。
「悪いがここで幕を引いてもらう――『デストライト・スマッシュ』!」
そこに側面から飛び込んできたのは【グランドファイター】のセーダンだ。
ラムダとぶつかり合いでゼフィルスが止まった瞬間、近距離攻撃で叩く。
強烈なパンチが叩き込まれようとして、ゼフィルスが咄嗟に小盾で素受けする。
「うお! みんな俺のこと研究しすぎじゃね!?」
ゼフィルスが少しダメージを受けてズザザザザと地面を滑るように後退しながらみんなに聞こえるように言うと、全員が笑う。
「なに、俺たちも今までの借りを返さなければと思ってね」
「ずっと見てきたんだ。対策くらいするさ」
ラムダとセーダンの言葉がすべてを表していた。
「うん。ゼフィルスは遠距離攻撃、全部避ける」
「故に、近距離専門の我らがお相手いたそう」
ミューはやや不満そうだが、普段あまり笑わないハイウドすらわくわくした表情だった。
そう、ゼフィルスは『直感』と『超反応』に加え、その溢れる〈ダン活〉知識でスキルのほとんどを回避してしまう。特に対人戦でゼフィルスを相手にするのなら、まず遠距離攻撃で仕留めるのは無理だ。
故にここにいるのは、近距離攻撃メイン担当。ミューは援護だ。
みんな、2年もゼフィルスを見てきたのだ。
対策も何も、ゼフィルスとやるときの基本はすでに身に着けてきていた。
ゼフィルスもそれを聞いて思わずニヤける。
「おう! 俺も本気でやらせてもらうぞ! 『テンペストセイバー』!」
「『 大角結界 ( だいかくけっかい ) 』!」
「うおっとー! クエナまでこっち側かよ!?」
「すみませんです。逃げる相手を捕まえるのは、私の得意分野ですから」
5人目は〈秩序風紀委員会〉の総隊長、クエナだ。
【多重展開結界師】にして、動くものを捉えるのをとても得意としている。
ゼフィルスも『テンペストセイバー』で一気に行こうとしたら出だしで止められたレベル。さすがの使い手。さらにそこへ。
「グマアアアアアアアアアアア!!」
「〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉まで来ちゃうとかさ!」
みんなゼフィルスに本気すぎる。結界で止めたゼフィルスに〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の斧が振り下ろされた。
だがすでにゼフィルスはそこにはいない。
なにせ、ハイウド、セーダン、ラムダがすでに囲むようにして接近してきていたからだ。〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の攻撃を避けつつゼフィルスはまずクエナを仕留めないと切り抜けるのは不可能だと断じる。
「クエナが〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の術者、じゃないみたいだな」
「ええ。あちらのアケミさんですよ」
「もうちょこまかとー! というか、なんで当たらないの!」
「きゃー! 誰よ私に術者が似合うって言って押し付けたのは! 私狙われまくってるじゃないのーー!」
そこに居たのは6人目にして最後の1人、魔法職【ハザードテンペスター】にして〈生還のアケミ〉の二つ名を持つ、〈3年2組〉で最も生存率が高いと目されてレイドボスを任された、〈あのアケミ〉である。
なお、現在クイナダにブンブン薙刀を振られているが、後ろに目があるのではというレベルで全部避けながら逃げていた。
おかげで他の全員がゼフィルスに集中できる。
「アケミさん、本当にまずかったら結界で助けますから頑張ってください」
「いや、今の時点ですでにまずいから! ちょっと見てないで結界出してよ! 私じゃ魔法を使う余裕すらないんだけど!? カジマル! ワルド! 助けてーー!」
「それだけ元気があればしばらくは大丈夫そうですね。〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉への指示、途切れてますよ」
「おにー! あくまー! あくまおうーー!」
まさかの人材の活用法にゼフィルスもびっくり。
どうやってあのアケミがクイナダの攻撃をずっとよけ続けられるのか、ゼフィルスでも分からなかった。
「でもアケミさんもいつまでも持たないです。決めますよ――『 全方向激 ( ぜんほうこうげき ) 多重結界防御壁 ( たじゅうけっかいぼうぎょへき ) 』!」
「うお! マジか!」
「今ですアケミさん!」
「〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉、アースクウェイクー!」
それはクエナのユニークスキル。絶対に破られない防御結界を使い、なんとゼフィルスを閉じ込めたのだ。そして、〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉にアースクウェイクを使わせての下からの攻撃を敢行する。逃げ場はない。と思われた、しかし。
「ちょっと甘かったな! 『 英勇転移 ( ブレイブポート ) 』!」
ゼフィルス転移。直後、結界の中にアースクウェイクが炸裂するが、ゼフィルスはもういない。ゼフィルスは、クエナの後ろに居たんだから。
「な!」
「『フィニッシュ・セイバー』!」
「きゃああ!」
「クエナ! 『ハードクリティカルショット』!」
「次はミュー! 『ソニックソード』!」
ゼフィルスの『フィニッシュ・セイバー』は、VITではなくRESを中心に育てていたクエナを一撃で撃破していた。
そこにミューがスナイプしてくるが、ゼフィルスは硬直が解けた瞬間余裕の回避。さらに『ソニックソード』で一気に接近してぶった切る。
「うっ!」
「『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「そ、そんにゃー」
「後衛がもうやられただと!?」
ミューもここで退場。
ゼフィルスが後衛のさらに後ろに転移したためにラムダたちが追いついてこれなかったわずかな間に2人を仕留めてしまったのだ。
さらに『インフィニティ・バニッシュセイバー』は〈六ツリ〉の全体攻撃。
その余波はセーダン、ラムダ、ハイウドにも及んでいて、ラムダのみが防御していたが、他の2人は大ダメージを喰らってダウンしていたのだった。
「『フルライトニング・スプライト』!」
「『ホーリーブロック』!」
ゼフィルスの追撃が放たれる。狙われたのは、ダウンしている2人ではなくラムダ。
これにはラムダも防御で乗り切るが、もうゼフィルスのフィニッシュパターンに入っていた。
「『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「! 『ビショップ』!」
ゼフィルスの〈六ツリ〉魔法に対してラムダが選択したのは下級職【聖騎士】のユニークスキル。
防御系で発動中はノックバック無効、状態異常無効、ダウン無効になるほか、ダメージを90%以上減少し、属性攻撃からのダメージを受けると吸収回復するという強力なユニークスキルだ。
だがこれで防いでも、ゼフィルスの〈六ツリ〉の余波はすさまじく、セーダンとハイウドは余波だけで吹き飛び、最後はクイナダに討ち取られてしまう。
残りはラムダとアケミのみ。ゼフィルスがダッシュでラムダに近づく。その剣にユニークスキルの輝きを載せて。
「最後だラムダ! 『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
「! ああ、最後だ! 『エクスカリバー』!」
ユニークスキル同士の激突。
だが、2年前の相殺と同じ結果にはならなかった。
ぶつかった瞬間、光の奔流が荒れ狂い、それが晴れると――残っていたのは新装備がまぶしいゼフィルスだけだった。