第2100話 〈2年5組〉騎士男子4人名前判明VSエフィ。
第2100話 〈2年5組〉騎士男子4人名前判明VSエフィ。
気が付けば〈3年2組〉の生き残りは、カルアと〈 あ ( 生還 ) のアケミ〉だけになっていた。
サチ、エミ、ユウカがエフィにやられ、ラムダがゼフィルスとのユニークスキル対決に敗北した光景はほぼ同時で、〈2年5組〉をカチンコチンに固まらせるには十分なインパクトを秘めていた。
〈2年5組〉は相変わらずシエラを突破できず、回り込もうとしても盾を操るシエラからガツンと反撃が来る始末。
ぶっちゃけ攻めあぐねていたところに、この結果だ。
一応〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉と〈あのアケミ〉はぴんぴんしているが、〈3年2組〉の大火力がやられたとあって動揺は大きい。
先に我に返ったのはミツルだった。
「どどど、どどどどどどどどどどうしよう姉ちゃん!?」
「あはは、これはヤバいかも」
「ラウとシヅキまで倒されたの? サチたちもやるじゃない」
動揺を隠せないミツルに冷や汗をかくソア、だが、シエラもまた驚いていた。
去年ルルに負けてから鍛え上げ、1対1なら負けなしのラウ。
召喚使いとしてレイドボスすら召喚し、大魔王たちを呼び寄せる高火力アタッカーのシヅキ。
2人がまさかの退場である。これで〈3年1組〉は3人が退場したことになった。
「レイドボスは健在だから頑張れば倒せる気がするんだけど、気がするんだけど……」
〈3年2組〉は〈3年1組〉をこれまで3人も撃破している。
大快挙だ。
〈3年1組〉のここにいるメンバーはあと7人。
レイドボス3体掛かりで挑めばあるいはいけるはずなのだが、なぜかいけないような気がする不思議。ソアの声は次第に下がっていってしまう。
とにかく、包囲していた一角が破られたのは非常にまずかった。
「シエラ、アタッカーは私が受け持つ」
「お願いねエフィ」
サチたちを討ち取ったエフィが 踵 ( 翼 ) を返して向かったのは、シエラの下。
非常にまずい。
「! ジタン、〈ヨウネル〉で防御!」
「〈ヨウネル〉よ、その燃えるふわふさな身体で受け止めるのだ!」
「ニャアアアアアアアオオオオオオオオ!!」
対抗するにはレイドボスしかない。
ソアはすぐにレイドボスの1体、〈ヨウネル〉とそれを操る騎士男子の1人、【ジャッジメントタンクナイツ】のジタンを向かわせた。
【ジャッジメントタンクナイツ】は【聖騎士】の上級職でタンク型。
自己回復も可能な硬いタンクとあってレイドボスの術者に採用されていた形だ。
しかも、〈ヨウネル〉の背後、ふさふさの毛に下半身が埋もれる形で騎乗している。
〈ヨウネル〉のふさふさの毛の中に術者を隠すのは最近ポピュラーになった戦法。それ自体は良かったのだが。
空を飛ぶエフィから見ると、〈ヨウネル〉の背中に上半身を生やしたジタンが非常にまじめな顔で指示を出している様子が見えてしまい――。
「うん、レイドボスを向かわせるのは正解。私も本気で相手できる――『エクストリーム・エルフォ―――ぶふっ!」
吹いた。
あまりのシュールな光景にスキル名がちゃんと言えないミステリー。
スキル発動失敗。まさかの事態だった。
「チャンスだ〈ヨウネル〉! 突っ込めー『ジャッジメント・ハルバード』!」
「ぶふふ!? ま、まず!」
巨大な猫の背中に上半身をにょきっと出した騎士が指示を出す。
その光景にいよいよツボに入ってしまうエフィ。
これが猫と人の大きさがマッチしていたらここまでツボに入らなかっただろう。
だが、目の前に居るのは30メートル級のネコ。その背中も当然大きく、その一部から上半身だけ生えているように見える騎乗騎士。
シュールすぎて、もうダメだった。
「ま、待って」
「ニャオオオオオオオオオオ!!」
〈ヨウネル〉は素早い。そのひっかきと、近づいただけで相手にダメージを与える反撃の炎はエフィが何とか回避しても、掠ってダメージを与えていく。
なんとか落ち着かないとピンチだった。エフィ、まさかの弱点である。
もしかすればゼフィルスのあれが移ったのかも?
「なんだかよくわからないけどチャンスよ! リュウジ! マショウ! タツミネ! ジタンをフォローして! ――みんな、シエラ先輩を抑えるわよ!」
「行くぞ俺の邪竜よ! 今こそ心の邪竜を開放する時だーー!!」
「ナイスです! 魔性 ( ましょう ) すぎるですよ! 大チャンスじゃないですか!」
「伝説だ! 伝説に名を遺す時が来たぞ! 行くぞカイザー!」
「「「「おお!」」」」
このチャンスに素早くソアは行動、シエラをみんなの一斉攻撃で抑え、その間に残りの騎士男子3人、【邪竜騎士】のリュウジ、【完全装甲魔装騎将】のマショウ、【竜騎士】のタツミネをエフィに向け送り込んだのだ。
特にリュウジは〈暗黒竜〉を、タツミネは〈カイザードラゴン〉をテイムしていたのが大きかった。
2体のドラゴンと〈ヨウネル〉が合わさればもう1人くらい行けるかも?
そう、思わせてしまったのだ。
ぶっちゃけ今のエフィを見たら誰だってチャンスだと思う。だが、これは悪手だった。
「あ、笑い引っ込んだ」
そりゃ竜が2体も現れたら笑いも引っ込むだろうさ。
思わず笑って大変だったエフィが正気を取り戻してしまったのだ。
「いけ邪竜よ! 『ダークドラゴン・アルティメットクロー』!」
「いけぇ伝説はすぐそこだカイザー! 『セイントドラゴンカイザークロー』!」
それに気が付かずに突っ込んだリュウジとタツミネ。そして。
「『エル・セイバー』!」
ズドンと一撃。
まず〈暗黒竜〉のかぎづめにエフィの剣が命中し、すさまじい衝撃を生み出して相殺すると、
「『エル・セイバー』!」
「ギャア!?」
ズドンとさらに一撃、〈カイザードラゴン〉のかぎづめとも激突し相殺。
否、相殺というにはエフィはほとんどダメージを負わず、リュウジとタツミネの方がダメージが多く入っていた。
当然だ。エフィは大天使フォーム中。さらにLV100に加えて『エル・セイバー』はスキルLV10なのだ。
むしろここからが本番。
「『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』!」
『エル・セイバー』の連打。
エフィの得意技である。『エル・セイバー』は非常に出だしが早く、終わりも早い、超早斬りのシンプルなスキル。
故に連打すると、わずかな時間で大量の〈 六 ( ・ ) ツリ〉スキルが発動し、打ち込まれてしまうのだ。
「「ギャアアアアアアアアアア!?」」
「俺の心の邪竜!?」
「伝説ー!?」
抵抗する暇も与えず、エフィは一気にぶった切って騎乗中であるリュウジとタツミネのHPをゼロにし、〈敗者のお部屋〉に送ってしまう。さらに。
「な! リュウジ! タツミネ!?」
「 魔性 ( ましょう ) が過ぎるぞ!?」
2人が驚いている間にさらに一手。
「これが大本命――『天使最高位突撃・ウリエル』!」
2回目の変身スキル。
そう、これは【ウリエル】のユニークスキル。
攻撃と突撃に特化した、通称ウリエルモード。
エフィのもう油断はしないという意思の表れだった。
凄まじいパワーアップに加え、翼が4対8枚に変化。さらに攻撃全てに6属性が宿る。さらに特筆すべき点は弱点攻撃。なんと攻撃に全属性が乗り、相手の一番耐性の低い属性ダメージを参照、加えてVITとRES、どちらか低い方で参照するという意味の分からないおまけ付きだ。
つまり、相手がVITが低く雷属性が弱点だった場合、STRと雷属性の攻撃として計算するのだ。『エル』の名の付く全攻撃が対象である。
さらに全属性カットが相手なら無属性攻撃になるアンビリーバボー。
使用可能時間は3分。なお、『大天使フォーム』の時間は上書きされている。
2人の仲間が敗北した事実に及び腰になり変身を許してしまったことは、ジタンとマショウには致命的だった。
「『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』!」
「避けろ〈ヨウネル〉!」
「『パーフェクトシールドガード』!」
エフィの攻撃は〈五ツリ〉の魔法攻撃だった。
杖が2人に向けられてそれぞれに発射されると、ジタンは回避を選択し、マショウは〈六ツリ〉スキルで防御する。
「『ソニックエルソード』!」
「え? 早っ! 魔性 ( ましょう ) !?」
「『フォトン・エルソード』!」
「『カウンター・シールドバスター』!」
「『フォトン・エルソード』!」
「え?」
エフィはソニック系で防御スキル発動中のマショウの側面に回り込むと、斬撃。
かなりのダメージを与え、追撃に〈五ツリ〉を放たんとした。
これに対してマショウが選択したのはカウンタースキル。普通なら褒めてあげたいくらいのタイミングで合わされたカウンターだったが、なんとエフィは、そのカウンターしてきた 反撃 ( 攻撃 ) に『フォトン・エルソード』をぶつけて相殺。
「『フォトン・エルソード』!」
「 魔性 ( ましょう ) すぎ!?」
「マショウ! 大丈夫かー!」
ここに飛び込むのは〈ヨウネル〉を操るジタン。
ピンチのマショウを助けに来たのだ。だが、これは悪手だった。
「下から見れば、大丈夫――『アルティマス・グラディウス』!」
「ニャ!?」
先ほどまで空を飛んでいた時と変わって今は地面すれすれ、上から見たシュールなジタンは目に入ってこない。
エフィのツボは無事だった。よって特大の攻撃を敢行。
これにより、〈ヨウネル〉の攻撃が相殺。止まってしまう。
「『ウリエルラッシュ』! 『ウリエルラッシュ』! 『ウリエルラッシュ』! 『ウリエルラッシュ』!」
「ニャアアアアアア!」
ラッシュ系を使って剣を振り回し、〈ヨウネル〉の素早い猫パンチ連打に対応しつつ、さっきの攻撃でダウン中のマショウにもトドメを刺す。
「マショウ!?」
「隙あり――『エル・セイバー』!」
「〈ヨウネル〉よ、距離を取れ!」
タンク寄りのマショウがたったあれだけの攻撃でやられたことにウリエルモードの強さを激しく実感したジタンは『エル・セイバー』のラッシュが始まった瞬間距離を取った。普段ならば大正解。
「『ジェットバーストフェニックス』!」
だが、エフィには通じない。
『エル・セイバー』のラッシュの兆しこそ潰せたものの、一瞬で飛び込んできたエフィがふわふさな〈ヨウネル〉の横っ腹に激突。
かなりのダメージを稼いで追撃を敢行してきたのだ。
「『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』! 『ウリエルバニッシュ』!」
「避けるのだ〈ヨウネル〉よ! 距離を取り続けろ!」
『ウリエルバニッシュ』は〈四ツリ〉スキル。しかしそのダメージの量はとんでもなく、食らい続ければ10秒も持たないと判断したジタンが距離を稼ぎ、簡単に言えば時間稼ぎに出る。変身の時間経過を狙ったのだ。
「大丈夫、間に合うから――『ウリエルの飛翔』!」
だが、どんなに距離を取っても一瞬で近づくスキルを複数持つエフィにすぐに追いつかれてしまう。
「『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『エル・セイバー』! 『アルティメットノヴァ』! 『ヴァーミリオンプロミネンス』!」
「『ジャッジメント・タンク・ブロック』!」
追いつかれるならばと〈六ツリ〉防御スキルを使ってみたジタンだったが、これも二撃で破壊されて〈ヨウネル〉をガンガン削っていくエフィ。
そしてついに、
「ニャアアアアアア…………」
「ヨ、〈ヨウネル〉~~~!?」
ウリエルモードが終わる直前。
なんとエフィは、レイドボスをたった1人で倒してしまったのだった。
だがその直後。
「あ、ミスった。回復し忘れた」
〈ヨウネル〉の特性は側にいる敵に 継続 ( 反撃 ) ダメージを与えるである。
変身時間との闘いに夢中になるあまりずっと突っ込んできていたエフィは、回復する暇がなく、〈ヨウネル〉を撃破したと同時に自分のHPがゼロになってしまったのだった。
〈ヨウネル〉は光になって消え、エフィは〈敗者のお部屋〉に送られて、ジタンだけがその場に生き残る。
「……あれ?」