第2115話 〈神界ダン〉の正体は――。
第2115話 〈神界ダン〉の正体は――。
「やはり予想通り、このフィールドでは通常モンスターは出ないみたいですわね」
「俺たちはこれよりあの最も怪しい建物に突入する! モナ、もし通常モンスターが現れたら」
「はい! お先に〈転移水晶〉で帰還します!」
「OK。それじゃあ行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
安全確保大事。
俺たちが聖域内の建物に入った瞬間、このフィールドにモンスターが溢れないとも限らないという意見が出たのでモナたち〈採集無双〉に指示を出しておくのは忘れない。
本来ならバトルタワー型ダンジョンって入ったら即戦闘だもんね。
そうなればモナたちにとってここは危険なので〈転移水晶〉で帰還してもらう形。
まあ、フィールドにモンスターが現れないって俺は知っているけどな!
とはいえこの少し変則的なバトルタワー型ダンジョンのことを知っているのは不自然のため、万全を期して挑む。
モナたちに見送られた俺たち50人が建物へ近づき、鳥居を潜ると、正面の神社っぽい建物の扉が開かれる。和風な建物に自動ドア!?
きっと神域に住まう神様はドアを自分で開け閉めしたりしないのだろう。なんか、バッと手をかざしただけでドアを開け閉めとかできそうだしね神様。
「『索敵』! 『エリアボス探知』! 『看破』! 『罠発見』! 『危険感知』! 『上級痕跡発見』! 『モンスターリポップ探知』! ――うーん、どれも反応なし!」
「サンキューカイリ」
「ほらね。カイリ君は十分重要な戦力だよ」
「ありがとねニーコ君!」
「…………罠も無しってつまりこれ、仕掛けもなしに勝手に開いたってこと?」
自動ドアの奥に気配なし。
カイリが調べてくれて問題ないことが分かったのに、なぜかシエラの顔色が悪くなる。
こ、これはポルターガイストじゃなくて 神術 ( しんじゅつ ) 的なあれじゃないかな? 多分。
「大丈夫だシエラ。ここに居るのは神様だぜ多分。幽霊じゃないよ」
「本当に?」
あ! シエラの距離が若干近い!
ここはかっこいいゼフィルスさんを見せる場面か!?
「もう、大丈夫よシエラ! 私を見なさい!」
「はい。ラナ様を見ていると安心できますよ」
「……確かにそうね。ラナ殿下が居れば幽霊が来ても安心ね」
「あれ!?」
俺の役目が速攻でラナに奪われてた。うっそー!?
「ゼフィルスさん、やっぱり周囲に危険はなさそうデース!」
「俺の『直感』にも反応なしだ」
「お、おう。それじゃあ行くか!」
俺がガビーンしている間にも自動ドアや中の一部を調べていたパメラやラウからの報告で安全を確認すると、ようやく建物の中に入る。
今までこれほど入念に安全を確認しながら進んだことが他にあっただろうか?
それほどまでに最大の警戒心で進んで行く。これはあれだな、クラス対抗戦で張られた罠の数々が影響しているのかな? あれ解除したりするのに手間取ったもんなぁ。
だがそんな抵抗や警戒心も、建物に入れば無に帰する。
俺が先頭で扉を潜ると、そこは建物内ではなく、また別の空間につながっていたからだ。
この感覚、すごく覚えがある。
なにせ後ろを見れば、誰も居なかったのだから。
だが瞬間、シエラが何もない空間から飛び出してきた。
「ゼフィルス、大丈夫!?」
「シエラ。安心しろ、ここはボス部屋だ」
「え?」
慌てた様子のシエラが部屋に入ってくる。
向こうから見たら、最初に入った俺の姿が消えたように映ったことだろう。シエラはかなり慌てている様子だった。
実際そうなのだ。ここは、外から覗き見ることができないんだから。
そう、俺たちが潜ったのは、まさに 救済場所 ( セーフティエリア ) とボス部屋の境目、ボス部屋の扉だったのだ。
ここはボス部屋内なのだから 救済場所 ( セーフティエリア ) から見えない。というわけだな。
「『ゼフィルスさん、リーナですわ! ご無事ですか!?』」
「おっと、リーナから通信だ。こっちは無事だ」
さすがはリーナ。俺が消えた瞬間からすぐに『ギルドコネクト』で通信を取ってきたようだ。俺は掻い摘んで状況を説明する。
「その扉はボス部屋の扉だ。中はボス部屋だ」
「『! だから中が見えないと。あ、シエラさんはいらっしゃいますか!? ゼフィルスさんが消えてしまった瞬間、飛び込んでいってしまったのですわ!』」
「おう。シエラもボス部屋に居るぞ」
俺はシエラをチラッと見る。
そうか、俺が消えてしまったというのに、危険を顧みず飛び込んできてくれたのか。
なんだか心がじんわり温かくなった。あ、シエラが顔を赤くしてそっぽ向いた。
「こほん。みんなも入ってきてくれ。ここはおそらくバトルタワーのフィールドだ。早く入ってこないと扉が閉まるぞ!」
「ああー! ゼフィルスとシエラが居たわー!」
「ラナ様、危険かもしれないのですから真っ先に入ってはダメですよ!?」
「大丈夫よ。カルアの『直感』だって問題ないって言ってたじゃない」
お、まだリーナに伝えている最中だったのにラナとエステルが入ってきたぞ。
俺は手を振っておいでする。それから次々とメンバーが入ってきた。
どうやらリーナがみんなに伝えてくれたみたいだな。
「本当に、中はボス部屋だったのか。人類で初めてボス部屋に入った人物は、このような心境だったのかもしれないな」
「たはは~紛らわしいよね。びっくりしたよ~」
「ゼフィルス様! 心配しましたわー!」
「そこまでよノーア! ゼフィルスを抱きしめるなんて私が許さないんだから! むぎゅ!?」
「ラナ様!?」
「お嬢様!? 王女様が危険な位置に収まってしまってますから!?」
「あら?」
どうやらみんなにも心配をかけてしまったみたいだ。
中でもノーアはすごかった。大迫力な大きな抱擁力でもって抱き着こうとしてきたのだ。あのまま抱き着かれていたら、大変幸せなことになっていたに違いない。
だが、寸前までしゃべっていたラナがブロック。その瞬間、ラナが大迫力に埋もれてしまったのだ。とても大変!
まあ、その後すぐにラナは救出され、クラリスが平謝りした程度で済んだんだけどな。ノーアも感極まっただけのようだからすぐに許してもらえていたよ。
なお、ラナが少しの間放心状態っぽかったのは、きっと気のせいだろう。
「ゼフィルスさん! 50人全員、無事ボス部屋の中に入ったのを確認しましたわ!」
「おう! こっちからもボス部屋に一度入ったら出られないのを確認した。まんまボス部屋だな」
最後尾はリーナだった。全員が入ったのを見届けてから扉を潜ってきてくれた模様。
最上級ダンジョンは今までボス部屋の前に数字があったので、次がボスだと分かりやすかったのだが、ここではまるっきりそんな雰囲気じゃなかった上に、扉の奥にも通路が見えていたので外からだとボス部屋だと分からなかったのだ。
さすがは神域の建物。ワープも別空間の作製も自由である。
改めてボス部屋を見渡すが、地面は白。タイルでも雲でも石でもない。ただの白い地面が広がり、壁は無くどこまでも続くような白。上空には白い雲のような天井があり、そこから木漏れ日のようにフィールドと同じ光が上から注いでいる。
それを確認した瞬間、カイリがさっき発動していた『モンスターリポップ探知』に反応あり。
「!! モンスター来るよ!」
このスキル、リポップという名前だが、普通にポップも分かるため非常に便利。
近くに音もなくポップした敵も見逃さない六段階目ツリーだ。
「これって、エリアボスなの?」
「ああ。しかも特殊も特殊。これは――レイドボスだ」
「レイド、ボス?」
「1層からですの!?」
登場したのはたったの1体だった。
しかし、その大きさが問題。なんと30メートル級。
30メートル以上の大きさのボスは――レイドボスだ。
つまり、最大50人で倒さなくちゃいけないボス。それが、なんと1層に出現する。
さらに登場したボスは、俺たちが知っているやつだった。
「ねぇ、ゼフィルス、これって……」
「おう。間違いない。こいつは――〈クマアリクイ〉だ!」
そう、シエラがぽかんとしながら見上げるのはなんと、〈ダン活〉最初のボス、〈クマアリクイ〉の大きいバージョンだったのだ!
「『看破』します! これは〈ゴッド・ファースト・クマアリクイ〉だそうです!」
「本当に〈クマアリクイ〉じゃないの!?」
「グマーーーー!!」
もうお察しが付いていることだろう。
この〈神界ダン〉は、〈万界ダン〉にちょっと近い。
過去に登場したボスが、レイドボス補正を受けて巨大化した姿で襲い来る―――総レイドボスバトルタワーダンジョンなのだ。