第2120話 〈神界ダン〉のレイドボスはあのスキルを使う
第2120話 〈神界ダン〉のレイドボスはあのスキルを使う
「ゴアアアアア!!」
「〈エンペラーゴブリン〉キターーーーー!!」
「第二形態がこれってどういうことかね!」
俺とニーコの目はキラキラした。
その姿は最上級ダンジョンの〈万界ダン〉で見た〈 国落 ( くにおとし ) の 災厄 ( さいやく ) ・ヘルデザート・スペード・エンペラーゴブリン〉よりも装備も筋肉も劣る姿。
懐かしき、 初級中位 ( ショッチュー ) のレアボスで登場した姿をそのまま大きく40メートル級にしただけの形態だった。
だが、良い。これが良い!
この姿こそ本物の〈エンペラーゴブリン〉って感じがするぜ!
ニーコもこの摩訶不思議現象に目を輝かせているんだ。
「ゴアアアアアアア!」
「いきなり行くぜ! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「ちょ、ゼフィルスまた!?」
まず大剣の振り下ろし、これに俺は下段から切り上げるようにして聖剣で迎撃した。
ラナが〈万界ダン〉時代も同じことをしていた俺にまたと言っているが、この初撃の打ち合いは俺と〈エンペラーゴブリン〉の挨拶なのだ。譲ることなんてできないぜ!
「うおおおおおおりゃあああああ!!」
「ゴアアアアアアア!」
ノエルのバフが掛かっていた分が活きたようで、結果は相殺!
バフ掛かってなかったら危なかったぜ!
弾かれた〈エンペラーゴブリン〉がなんとなくニヤりと笑ったように見えた。
続いてジャンプで後方に下がる〈エンペラーゴブリン〉。
その巨体でそんなこともできるのかよ!
「うっわびっくりした!」
「後ろに回り込んでいたのに、いきなり前に出ちゃってるし!」
「攻撃来るよ!」
〈エンペラーゴブリン〉の後ろに回り込んでいたサチ、エミ、ユウカなんか、〈エンペラーゴブリン〉が後ろに飛びのいたものだから、正面に出ちゃってる。しかも攻撃がくるおまけつきだ。後ろに回り込んでいたタンクなんかいないので、サチたちを守ってくれる防御役がいなくてピンチ!
「ゴアアアアアアア!」
「ファイヤーボール!?」
「『必中 受け ( ドロー ) 』でやがります!」
「モニカナイス!」
だが、俺たちにはあらゆる 職業 ( ジョブ ) のメンバーが揃ってる。
モニカが『必中 受け ( ドロー ) 』で自分にファイヤーボールを引き付けてくれたのでセーフ。
いや、あれはもうファイヤーボールじゃないな。なんか7メートルくらいあったし。
「ゴアアアアアアア!」
「乱射!?」
「間に合ったわ――『クイーンオブカバー』!」
追撃のファイヤーボール(?)乱射だったが、ここで前へ走っていたシエラのカバーの有効範囲に入って無事ブロック。
ただのバックステップだけで戦況を大きく変えてしまう〈エンペラーゴブリン〉がマジパナイ。これがレイドボス化だ!
初級時代と同じことをしているのに効果が大きく変わる行動がかなり存在する!
「攻撃開始ですわ! みなさん、後ろに回り込むときはバックステップに注意! タンクも一緒に後ろに回り込ませますわ!」
「ゴアアアアアアア!」
「剣と杖で薙ぎ払ってくるから気を付けてね! 『絶対ガブリエル頑強盾』!」
「あの杖、メイスでもあるんだ!? 『 神峰 ( しんほう ) の宝刀』!」
「そういえばクイナダは純粋な〈エンペラーゴブリン〉とは戦ったことないんだったな! こうやるのさ! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「剣と杖を同時にはじいた!?」
「ゼフィルス先輩戦い慣れすぎですの!?」
つい〈エンペラーゴブリン〉が知っているモーションを取るものだから本気で攻撃を弾き飛ばしてやったらツッコミを貰っちゃった。嬉しい!
もちろんその間に攻撃が蓄積されていく。
〈万界ダン〉の時はあくまで守護型ボスだったので10人しか参加できず、俺がメインで戦うことができたが、こいつはレイド級。50人で戦うことが推奨されるボスだ。1人で戦えないのが、ちょっとだけ寂しかったりする。
さすがに〈万界ダン〉の時よりも手強い。でもみんな知っているので結構圧倒しているな。
だが、本番はむしろここからなんだ。
追い詰められた〈エンペラーゴブリン〉がとあるモーションを取る。
「な!」
「あれは……!」
「赤色のエフェクト、間違いありません! あれはユニークスキルです!」
「え!? レイドボスが、ユニークスキル!?」
そう、杖から手を放し、大剣を両手で握り締めて構えるそのモーションは忘れるはずもない。
レアボス〈エンペラーゴブリン〉のユニークスキル――『ゴブリン流・必殺破砕剣』だ!
今までレイドボスがユニークスキルを使った例はない。
〈樹界ダン〉から始まり、〈鉱ダン〉も〈万界ダン〉だってレイドボスがユニークスキルを使ってくることは無かった。
だが、ここ〈神界ダン〉では、普通に、4層からレイドボスがユニークスキルを撃ってくるのである!
「タンクオール防御発動!」
「『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「ポン! 今こそ現れるは最強無敵の盾狸王――『 幻獣霊最強 ( げんじゅうれいさいきょう ) ・ 狸王様完全盾 ( たぬきおうさまかんぜんたて ) 』!」
「『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「『 神守盾 ( しんしゅたて ) 』!」
「『天域大結界』!」
「『究極嫉妬盾』!」
「『ロード・オブ・オリハルコン』!」
「『シールドオブセット』っす!」
「『主の盾』!」
「『 大強欲吸覇城占盾 ( だいごうよくきゅうはじょうせんたて ) 』!」
ユニークスキルのエフェクトが発生した瞬間にはタンクはもう走り出していた。
それがどんなに信じられなくても、棒立ちしてはいけない。とにかく防ぐのがタンクの役割だからだ。
俺が指示を出した時には、すでに〈エデン〉の受けタンク10人が集まり、全力で防御スキルを繰り出していたよ。さすがだ。
「ゴアアアアアアア!!」
「アタッカー! 行くぞ!」
「「「応!!」」」
〈エデン〉の全受けタンクを集めた防御が負けるはずがない。
故に俺は次の指示も出していた。これだけで通じる阿吽の呼吸が〈エデン〉の強みだ。
そこに剛力の〈エンペラーゴブリン〉のユニークスキルが叩き込まれる。
ズッゴーンっと、まるでミサイルでも着弾したのかという轟音が発生して〈エデン〉の防御をがっつり粉砕。なんと6個もの防御スキルを粉砕したところでようやくその勢いが止まったのだ。
その一撃だけ見れば〈万界ダン〉の最奥ボス〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の第三形態、その必殺技にも勝るとも劣らない。それがたったの4層目の第二形態で出現したことに驚きを感じるメンバーも多かったようだ。この先は、こんな攻撃以上のことをするボスが増えていくのか、と……!
だが、それは後回し。
せっかくユニークスキルを発動してくれたのだ!
ピンチは逆にチャンスである!
「一斉攻撃だ! 『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
「『大聖光の無限宝剣』!」
「『ファウ・ウール・マーゼ・スラスト』!」
「『スターソニック・レインエッジ』!」
「『必殺の太刀・六閃華』!」
「『天変地異・エレメントヘヴン』!」
「とう! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』! 『神世界インフィニティ』なのです!」
アタッカーたちの猛攻! 一斉攻撃が着弾!
最上級ダンジョンに来てユニークスキルを使ってくる相手がおらずに鈍っているかもと思ったが、杞憂だったようだ。
その行動には一点の陰り無し、みんなしっかりついてきてユニークスキルを発動した直後の〈エンペラーゴブリン〉に攻撃を叩き込みまくった。タンクが絶対に防ぐと分かっていないとできないタイミング!
結果、ユニークスキルを発動後の硬直に大ダメージを受けた〈エンペラーゴブリン〉はダウンしてしまう。
「今だーー! 総攻撃ーー!!」
総攻撃チャンス!
〈エンペラーゴブリン〉への対応方法はすでに魂が覚えている。
一斉攻撃が終わったあと、気が付けば〈エンペラーゴブリン〉の二本目のHPバーは無くなっていたんだ。
その瞬間、〈エンペラーゴブリン〉が俺にニヤリと笑った気がしたんだ。
おう! またやろうな! 俺は手を振りながら第三形態に移行する〈エンペラーゴブリン〉を見送った。
第三形態では、なんと 上級中位 ( ジョーチュー ) のランク2、〈守氷ダン〉のレアイベントボス、〈 氷生 ( ひょうしょう ) 大鬼 ( オーガ ) ・グラスグランキ〉に進化した! 元々巨人だったのが20メートルくらい身長が伸びただけだったので、そこまで大きく変わっておらず、戦闘開始。
やり合った瞬間すぐにわかったよ。これ〈エンペラーゴブリン〉とは違う個体じゃないかってな。あの〈エンペラーゴブリン〉特有のらしさが無い。
もしかしたら、進化しているように見えるのは見た目だけで、形態が変わるごとにどこかからかリクルートされているのかもしれない?
これはもしかしたら新たな発見かもしれないぞ! 〈ダン活〉プレイヤーが唱えていた進化説が破られてしまう!? これは後で改めて考察しなければ!
さすがにいきなり 上級中位 ( ジョーチュー ) 級に変化すると 初級中位 ( ショッチュウ ) 級とかなり勝手が違うのが分かる。まず、手数が多い。レーザー撃つし。
しかし、なぜだろう。〈エンペラーゴブリン〉の方がもっとわくわくした気がするんだ!
そんな気分で戦っていたら、いつの間にか〈グラスグランキ〉も撃破していたのだった。
当然〈金箱〉は4個!
〈エンペラーゴブリン〉関連の装備、出ないかな~。