第2122話 デブブ戦!カイリのユニークがシエラにバレた!!
第2122話 デブブ戦!カイリのユニークがシエラにバレた!!
目的だった5層に到着した時、時間はまだ14時にもなっていなかった。
最上級ダンジョンに最初に挑むときは、大体5層で丸1日費やしていたと思えば驚異的な階層更新速度だ。
まあレイドボス周回をしているようなものなので、時間はそれほど掛からないよな。
あまり駆け足でダンジョン攻略をしないと言った手前、6層以降に行くのは後日にしたいところだ。
後半の時間をどう使うか、改めて考えなければならないな。
20分の休憩という名の採集を終えると、再び俺たちも5層のボスへ挑むことにした。
「4層が〈ナイトゴブリン〉に〈エンペラーゴブリン〉だったということは……、ねぇゼフィルス。この先に居るのは……」
「ああ。おそらくシエラが予想している通り、――〈デブブ〉だろうな」
「…………」
〈万界ダン〉では6層だったが、〈神界ダン〉では5層に出現!?
みんなも大好きにして天敵! 我らの〈デブブ〉さんが登場するぞ! わーい!
シエラが静かに目を瞑って精神統一している。
きっとあの立派なお腹とか想像しているに違いない。いや、違うか?
「〈デブブ〉のレイドボスということは連型、大量の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉眷属を召喚するのでしょうね。それこそ〈フェアリークイーン〉のごとく……」
「シエラ大丈夫そう?」
「肩をお貸ししましょうか?」
「ええ、大丈夫よ……」
300体の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉を想像してしまったっぽいシエラが少し顔色を悪くしていた。
ラナとエステルが気にかけている。確かに、300体の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉はヤバいな。しかも進化(?)もするんだ。さすがは5層。ここが1つの区切りだけあってヤバいボスを配置してやがるぜ。
「ふう。帰りましょう」
「全然大丈夫じゃなかった!?」
シエラがボケに走った!
慌てて俺は待ったする。
しかし、ハプニングは続くもので、ここで思わぬ人物が乱入してきたんだ。
「ねぇゼフィルス君! 聞いて! 今気づいたんだけど、なんかユニークスキルの様子がおかしいの! なんか使用不可になってるんだけど!? 階層を飛ばす方のユニークが!」
それは――カイリだったんだ。しかもユニークスキルの不調を訴えている!?
「ん? ちょっと待ってカイリ、もう一回言ってちょうだい?」
「ああっとシエラ! なんでもない。なんでもないんだ。――こほん、えっとだなカイリ。俺も聞いた話なんだが、【ダンジョンインストラクター】のユニークスキルはバトルタワーでは制限が入るらしいんだよ。攻略者の証を持っているバトルタワー型ダンジョンなら問題なく使用できるらしいぜ」
「あ、一回攻略する必要があるってことか。なんだぁ、あせっちゃったよ~。――え? あれ? シエラさん?」
「ねぇカイリ。あなたのユニークスキルの効果って、何だったかしら?」
「あわわ!?」
「えっと、次の階層に 移動 ( スキップ ) するユニークスキル、だよ?」
「…………忘れていたわ。ということは〈万界ダン〉の時は――ゼフィルス?」
「お、俺はちょっとリーナに用があったんだった! これにて!」
「ちょっと待ちなさい。話があるわ」
「はわわ!」
ついにカイリのユニークスキルのことがシエラにバレた!
なんか忘れちゃってるみたいだから言わないでおいたのに! このままだと、俺はシエラと一緒にホラー階層に挑みたかったから内緒にしていたんだって勘違いされて、折檻されてしまう!?(勘違いではありません)
そして俺は、3秒でシエラに捕まってしまったんだ。――しかし。
「もう、そんなに私とホラー階層に挑みたかったの?」
おや? 話の流れが変わった気がする。『直感』さんも「今だ、飛び込め!」って囁いてきた気がするんだ!
「そ、そうなんだ! どうしてもシエラと一緒に体験したくて!」
「…………仕方ないわね、もう」
少し考えるそぶりをしたシエラだったが、一度チラッと5層の〈デブブ〉が待ち受けているだろうボス部屋を見て、俺に振り向いたんだ。
「そこまで言うのなら、ゼフィルスもフォローしてよね?」
「! もちろんだ! 俺に任せておけ! シエラは俺が何があっても守る! 約束するぜ!」
「……約束だからね?」
勝利! 圧倒的勝利!
何が起こったのか俺もよくわからなかったけど、怒られなかった上に5層の〈デブブ〉にもシエラは挑戦する気になってくれたんだよ!
これは勝利に違いないだろう!
さあ行くぞ! このテンションのまま、5層のボスも打ち破るのだ!
「みんな覚悟はいいか!? 相手はおそらく〈デブブ〉! レイドボスの〈デブブ〉だ! 〈フェアリークイーン〉の時のように大量の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉を出してくる可能性もある! 今のうちに覚悟しておくように!」
「きゃーラクリッテちゃん! ひしっ!」
「はわわわ!? えっとよしよし? 大丈夫ですよノエルちゃん」
「みなさん大丈夫ですわ! 属性攻撃を使えば容易く切り伏せられますわ! この私に続くのですわー!」
「お嬢様は先陣を切らないでくださいといつも言っていますでしょう!?」
お? 思ったよりみんなの動揺が少ない。
〈万界ダン〉を経験し、予想していたというのもあるだろう。
だが、尽力者はノエルとノーアだ。
ノエルが敢えて先に面白怖がってラクリッテに抱き着いたり、ノーアが鼓舞したことで、みんなの恐怖心が和らいだのだ。2人ともサンキューな。
「よし、行くぞー!」
「「「「おおー!」」」」
こうして俺たちは5層のボス部屋へと突入した。
「デ~デデ~♪ デ~デデ~♪ デ~デデデデ~♪」
突入した俺たちを待ち構えていたのは、相変わらず楽しそうにその三段のお腹を揺らしながら歌い踊る、全長30メートル級の浮かぶ巨体。〈デブブゴース〉のレイドボスだったのだ。
「『看破』だよ! 予想通り〈ゴッド・フィフス・デブブゴース〉みたい!」
「お、大きくなったわね~」
カイリの『看破』にラナが目を丸くして見上げる。
うむ。縦が30メートル級なら、じゃあ横は?
もうね、それはそれは立派なお腹をしていたんだよ。お腹が本体かもしれない?
「よし、先制行くぞー!」
「〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉なら私に任せなさい! 『レクイエム』!」
「私も歌いますね――『鎮魂歌』!」
「私もやります! ――『天使の鎮魂歌』!」
「デー!?」
〈デブブゴース〉の攻略法は確立されている。
まずは先制攻撃だ。
それまでいい気分で歌って踊ってた〈デブブゴース〉が怒りマークを携えてこっちを向く。
「デーボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!!」
「いっぱい出してきたー!?」
「何体いるんですの!」
「きゃー! ラクリッテちゃん見て! なんかすっごいいっぱい来てるよー!?」
「わ、私がノエルちゃんを守ります!」
「全体攻撃はまだ温存! 範囲攻撃で蹴散らすぞ! 『フルライトニング・スプライト』!」
「承知ですわー! 『アグニ』!!」
「あれ!? お嬢様、いつの間にそっちにいたんですか!? ちょ、お待ちください!」
いつの間にかノーアがお隣に居て一緒に〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉を蹴散らしていく。
最初の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉は80体だ。
初級下位 ( ショッカー ) 時代は8体だったことを思えば10倍に増えているな。
「カウントしたよ、おそらく80体じゃないかな」
「さすがはニーコさんですわ! ということは、初級の時の10倍!? みなさん、今後も10倍の数が来る可能性がありますわ!」
後方から撃ちまくっているリーナの脇でニーコが冷静にカウントしていた模様。
ニーコは〈無属性〉攻撃しか持っていないので〈 幽霊 ( ゴースト ) 特性〉持ちは苦手なのだ。だからこそ、研究職の頭脳を活かしてカウントを実行していたらしい。
いや、こうドンパチハジけて秒単位で数も減っていく〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉をよく数えたな!?
「デーボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!」
「ひゃあ!?」
「ほとんど一面〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉だらけですのー!?」
「デー♪」
ボス戦は進行し、4回目の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉投入時はもう目の前は一面〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉で埋め尽くされていたほどだった。
10倍の法則が合っているのだとすれば、320体いる計算になる。ちなみに正解だ。
なんか〈デブブゴース〉が満足そうに腹を揺らしている。
「全体攻撃解禁だ! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
「アリスが全部倒すのー! 『神の 雷 ( イカヅチ ) 』!」
だが、俺たちに掛かれば全て一掃だ。
〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉は耐久力が低いため〈六ツリ〉で攻撃すれば一撃で光になる。全体攻撃2発も打ち込めば、320体の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉はほとんど光に消えていたんだ。
「デー!?」
これには〈デブブ〉もおったまげたことだろう。
「俺の軍団が一瞬で消えたんだが!?」と顔に書いてある。豊かな表情だ。
眷属が消えたので一斉攻撃チャンス! 一気に本体のHPを削っていく。
「デーボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ!」
「5回目だね。数は――おそらく4回目と同じだ。これが限界数かな?」
「ニーコ情報サンクス!」
ニーコが完全に役目をカウントに切り替えてる!
まあ、自分はアタックに参加してもしなくてもダメージはほとんど変わらないので情報収集に徹するという判断だろう。OKだ。
「今度は私の番ですの! 『全ては凍り付き溶けることは無い、 永久 ( とこしえ ) のニブルヘイム』!」
「回復するね! 『奥義・神使特大回復儀式』!」
さすがに〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉の数が尋常でないのでダメージもかなりのものだ。
1体の強大なレイドボスの攻撃ならタンクが一点集中で防げばいいので割と楽なのだが、こういう自律行動の眷属が大量にばらまかれると被弾が増える。
全体攻撃と同時にカグヤにも全体回復を使ってもらい、一定時間ごとにHPを戻す行動も忘れてはいけない。
「デーボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ」
「8回目……うん? 160体かな? あ、おそらくもう限界なのだろうさ」
「やっとだな!」
見れば〈デブブ〉の1本目のHPバーは残り僅かで、本体は自慢の三段腹がしぼみ、激ヤセしていたんだ。今がチャンス!
「今だ! 叩き込め!」
「『大精霊様、全六霊機降臨』! お願いします大精霊様――『陽光の驚き・エレメントソル』!」
「これでトドメだ! 『コキュートス・ゼロ・ディザスター』!」
「成仏しなさい! 『レクイエム』!」
「デ~…………」
最後はシェリアとメルト、そしてラナが特大の範囲攻撃でズドンすると、ついに1本目のHPバーがゼロになる。
「はぁ」
「まだ気を緩めるのは早いぜシエラ」
「……ええ、分かってるわ」
一先ず安堵のため息をついていたシエラを励まして第二ラウンド。
大丈夫だ、シエラは俺が守っている! 抜けさせはしないさ!
続いてのボスは、〈デブブ〉のレアボス――〈デブブスペシャル〉だ。
「デーデデー!」
「お祭り姿の〈デブブ〉が登場だ!」
みんなも覚えているだろう、あのマッチョな〈デブブスペシャル〉を……!
〈筋肉殺し〉の異名を持つ〈デブブ〉が筋肉着けたらダメでしょ! もう筋肉たちに勝ち目無くなっちゃうよ!
そんなボスだった。
〈デブブゴース〉時代とは打って変わり、自分で殴りつけるレイドボス・大型の〈デブブスペシャル〉はかなりの力の持ち主だ。連型から大型へのクラスチェンジ。
これも〈神界ダン〉の非常に特殊なところである。
「デー!」
「シエラ!」
「! 『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
筋肉をつけているとはいえやっぱり見た目がちょっと〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉なのはダメなのか、シエラの防御がいつもより遅れ気味な気配。
だが、しっかり防御できていたのでセーフだ。
攻撃開始。2本目のHPバーが半分を切ったところで、ついにあれがくる。
〈デブブスペシャル〉が、赤いエフェクトを纏ったのだ!
「ユニークスキル、来ますわ!」
「あのゼフィルスを追い込んだやつね!」
「え!? ゼフィルス様が追い込まれたんですの!? ラナ殿下、その話もうちょっと詳しくお伺いしたいですわ!」
「いいわよ! あとで教えてあげるわ!」
「教えないであげて!?」
違うんだって! あれは味方を守ろうと動いたところを狙われただけなんだ!
油断じゃないぞ!? ぶ、武勇伝の一種だって!
「お嬢様、構えて! 来ますよ!?」
「なにあれ~?」
「鉢巻巻いて、お祭りの上着を着ています!?」
「わっしょいわっしょいってか!?」
「『看破』! 〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉は――はい!? 1280体!?」
「せん!?」
「防御! 『ブレイブシールド・イグニッション』!」
「デー♪」
まるで「 撃てー ( デー ) ♪」と言うようにマッスルなデブブがわっしょいリズムよく太鼓を叩くと、提灯のように吊り下げられた〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉たちから一斉に大きなファイヤーボールが発射された。
その数、1280体の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉から発射される連射だ。大体1体に5発くらい撃つので、6000強の大きなファイヤーボールが飛んでくる。いや、壮観すぎる。
〈デブブスペシャル流・612連バースト〉の10倍連射だ! わっしょい!
1人当たり約120発受けなくてはいけないのでタンクで防御しないと戦闘不能者が続出するな。さすがはユニークスキルだ。
1280発撃つごとに〈デブブスペシャル〉がわっしょいわっしょい盛り上げているところが最高。
太鼓の音が終わった時、そこら中で防御スキルが展開されていた。
俺も、今回は全部防ぎきってやったぜ!
「おりゃあ! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「デー!?」
防御スキルを発動しながら接近していた俺がユニークスキル発動直後の硬直を狙って聖剣でぶった切る! すると、1発で〈デブブスペシャル〉はダウンした。
「おっしゃー! 総攻撃だー!」
「「「おおー!」」」
ここで総攻撃を決めると、〈デブブスペシャル〉も2本目のHPバーをゼロにして、形態変化に移行する。
そうして登場したのは 上級下位 ( ジョーカー ) のランク5、〈夜ダン〉の最奥ボス――〈リッチデブブ〉のレイドボス。
〈ゴッド・フィフス・リッチデブブ〉だったのだが――。
「『アンコール』いくよー! 『リ・エール』!」
「『レクイエム』!」
「『鎮魂歌』!」
「『天使の鎮魂歌』!」
「『リ・エール』♪」
「『レクイエム』! もう1回! 『レクイエム』よ!」
「デー!?」
第三形態が一番強いはずなんだが、〈リッチデブブ〉はもう用なしとばかりに速攻で光にされてしまったんだ。
やっぱり第三形態よりも第二形態の方が警戒度が高くなってるんだぜ。