第2125話 〈神界ダン〉6層ボスは〈バトルウルフ〉だ!
第2125話 〈神界ダン〉6層ボスは〈バトルウルフ〉だ!
「良いわね! 4層も5層も面白かったけど、次の階層も気になっていたのよ!」
「そうですね。ここ5層を周回するのは……色々とハードルが高いですからね」
「周回するのでしたら6層以降というのも分かりますわ。では時間もまだありますし、もう少し進んでみましょう」
俺の提案にラナが勢いよく賛成の声を上げてくれる。
エステルもシエラの方を見ながらこくりと頷き、リーナもやや苦笑しながらも了承してくれた。
これで流れができたようで、他のメンバーも次々に方針転換を受け入れてくれたんだ。
「いざ6層へ!」
「「「おおー!」」」
こうして5層のボス部屋から出て6層へと侵入すると、その空島の様子が一変していたんだ。
「あれ!? ここは、春?」
「桜だらけじゃないの!」
モナが叫ぶとラナも一緒になって感激する。
そう。6層の神域、空島の庭は満開の桜が咲き誇る春の様相になっていたんだ。
「きれいですね」
「ええ。さっきまでの沈んだ気持ちが晴れやかになっていくようだわ」
これにはエステルやシエラも思わずうっとり。
特にシエラなんか〈デブブ〉戦でジト目の圧が上がっていたのが、柔らかくなった気がしたんだ。多分、気のせいではない。目じりが下がってるもん。
でもちょっともったいないと思ってしまったのは秘密なんだ。
「こりゃ、5層ごとに採集できる素材が変わっている可能性があるな!」
「早速採集してきますね!」
「あ、お待ちなさいモナさんたち! まずは安全の確認からですわ!」
おっと俺としたことが、ついモナたちの気を急かせてしまった。まずは安全確認からだったな。
キャロルが居ればここ全体が 救済場所 ( セーフティエリア ) であるとすぐに判明するんだが、若干もどかしい。
とはいえ調査の結果、すぐにこの近辺にはモンスターが居ないことが判明する。
「問題無しですわ!」
「「わー!」」
一気にモナやタイチたちが採集に走ったな。
一応交代で護衛をつけながら、この狭いフィールドを丸裸にすべく採集しまくる。
その間に俺たちは休憩だ。花見だな。
「6層がこんなに気が休まるところだと知っていたら、もっと早く来ればよかったわね」
「桜がきれいですわ~」
「うむ、お茶が美味しいね~」
「リンゴジュースも格別よ!」
花見で一杯。実に良き。
20分ほど休憩していると、〈採集無双〉が採集ポイントの全てを網羅したようで戻ってきた。
「ゼフィルスさん報告です! ここは1層から5層とはまた別の素材がたくさん手に入りましたよ!」
「〈オリハルコン〉も手に入った(ほくほく)」
「このレイドボスから手に入るレシピ、その中間素材になりそうな材木もたくさん手に入ったね」
「あの、池だけ釣れるフィッシュが変わらなかったんだけど?」
そんな感じだ。
全体的に採集できる数は上がった様子で、魚の種類だけ特に変化なしだな。タイチはドンマイだ。
「いいな! あとで持ち帰ってさらに精査しよう! ――〈採集無双〉も戻ったし、ではこれより、ボス戦を行なうぞ!」
「待ってたわ! ここはバルフよね!」
「恐らくな!」
〈ナイトゴブリン〉〈デブブ〉と来たら、次は〈バトルウルフ〉だろう。
これで 初級中位 ( ショッチュー ) ボスが揃い踏みになるからな。
ラナが目を輝かせている。きっとバルフを狩ることを夢想しているに違いない。
俺はふと 初級中位 ( ショッチュー ) 時代に狩られすぎてクゥーンしてしまった〈バトルウルフ〉の顔を思い出した。ふう。
「行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
今から行くからな〈バトルウルフ〉よ!(「ウォン!?」←バルフの声)
気合十分でボス部屋に向かう。
フィールドは春の様相だが、ボス部屋の 社 ( やしろ ) は5層の時と変わらずだ。
見た目も性能も一緒なので、問題なくボス部屋に侵入することに成功する。
するとボス部屋には、尻尾がいきり立った状態のボスと4体のお供が待ち構えていたんだ。
「あ! いたわ! 懐かしい。あの片目の傷、〈バトルウルフ(第一形態)〉よ! 間違いないわ!」
〈バトルウルフ〉に詳しいラナが一発で『看破』無しで見抜いていた。
大当たりである。そこに居たのは全長30メートル級。
この時は体毛がまだ白だった、懐かしき〈バトルウルフ(第一形態)〉だった。
ちなみに名前は〈ゴッド・シックスス・バトルウルフ・ワン〉だ。
「ウォーン!」
「「「「ウォーン!」」」」
「お供が4体! 分断していくぞ! シエラ!」
「任せて――『挑発』! 『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「これだけいるんだからお供は1体ずつ分断するのもいいな! リカ、フィナ、トモヨ、頼めるか?」
「 承 ( たまわ ) った!」
「任せてください教官――『天空飛翔』! 『エルアサルト』!」
「私は一番右の行くね! 『天空飛翔』! あなたに『破滅の予告』だよ!」
「ウォン!?」
機動力のあるタンクが4体それぞれのお供を引き付けると、そのまま距離を取って引き離し分断。この分断が〈バトルウルフ〉の時の攻略法だったな。懐かしいぜ。
「俺たちは〈バトルウルフ〉本体を抑えるぞ! 本格的に戦うのはお供を倒してからだ!」
「「「おおー!」」」
ということでそれぞれに10人ずつメンバーを振り、まずお供4体を各個撃破していく。この4体は全長20メートル級、2分もあればそれぞれ各個撃破はできたので戦力が〈バトルウルフ〉に集中したな。
「みんなナイス! 上手く分断できたな!」
「ふ、誰に言っている」
「これくらいならば容易いぞ。なにせ、何度も何度も倒したボスだからな」
メルトが不敵に笑い、リカも同じくかっこよく笑みをこぼす。
レイドボスを前にして微笑みすら浮かべる俺たちに〈バトルウルフ〉がなんか一歩下がった。いや、きっとビビったせいじゃないはずだ。さっきよりも尻尾が若干下がっている気がしないでもないが、気のせいだろう。
「クゥーン……」
それから3分で第一形態はクゥーンした。
「第二形態ね! あの額のバッテンの傷は、〈バトルウルフ(第二形態)〉ね!」
「あの片目の傷はどこに行ってしまったのでしょうね」
続いて第二形態は、みんなもおなじみのレアボス、〈バトルウルフ(第二形態)〉のレイドボスだ。
エステルの言うように、第一形態にあった片目の傷が消えて、おでこ辺りにバッテンの傷ができている。でも、細かいことにはツッコんではいけないのだ。いいね?
「ユニークスキルがくるわ!」
「リーナ!」
「『本拠地を守りなさい。全員集合ですわ』!」
リーナの集団転移ユニークスキルが発動。
これがマジ強い。
ダンジョンでは階層門の入り口に転移できるスキルだ。ギルドバトルならば本拠地や拠点に転移できるスキルだな。ならばボス部屋でレイド戦中ならば?
スキルLVが10の時、なんと自分の周囲にみんなを転移させて集めることができるのだ。
「タンクオール防御発動!!」
「『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「ポン! 今こそ現れるは最強無敵の盾狸王――『 幻獣霊最強 ( げんじゅうれいさいきょう ) ・ 狸王様完全盾 ( たぬきおうさまかんぜんたて ) 』!」
「『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「『 神守盾 ( しんしゅたて ) 』!」
「『天域大結界』!」
「『究極嫉妬盾』!」
「『ロード・オブ・オリハルコン』!」
「『シールドオブセット』っす!」
「『主の盾』!」
「『 大強欲吸覇城占盾 ( だいごうよくきゅうはじょうせんたて ) 』!」
―――『バトルウルフ流・爆炎尻尾薙ぎ』。
〈バトルウルフ(第二形態)〉のユニークスキルだ。
全方位を爆炎の尻尾で薙ぎ払うため、かなり凶悪な攻撃。
最初に受けた時なんか、あまりの威力に下がったシエラがエステルとぶつかって思わずダウンを取られたほどである。
振り返ってみても、シエラがダウンを取られたのは後にも先にもこのユニークスキルを受けた時だけだと言えばどれほど凶悪なのかが分かるだろう。
俺たちも超本気だ。油断は皆無!
リーナに全員を集めてもらい、タンクオールメンバーで防御スキルを決める。
「ウォォオオオオオオオオオオオン!!」
ズドッカーーンと爆炎と爆風の薙ぎ払いが炸裂。
「狸王様吹っ飛んじゃいましたー!?」
「大丈夫だ。狸王の防御は無駄にしないぜ! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「ウォーン!?」
だが、破壊された防御スキルは4つ。
周囲範囲攻撃の薙ぎ払いでもあるため、〈エンペラーゴブリン〉のような一点集中型よりも威力が拡散したと思われる。
もちろん俺は爆炎が放たれた直後を狙って炎の中に突っ込むと、そのまま『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』で〈バトルウルフ〉をぶった切った。
「ダウンだ! 総攻撃ー!」
「ちょ、かっこいいじゃないの! 『大聖光の無限宝剣』!」
ふはははは!
このタイミングは何度もやり込んだから体に、いや魂に染みついているのだ!
防御して突っ込んでダウンを取る。
凶悪な攻撃の後はチャンス到来だ!
狸王様の敵討ちもかねて(?)盛大に総攻撃を仕掛ける。
「おおっとストップストーップ! みんなタンマだ!」
「ええ!? ちょっとどういうことよゼフィルス! もう少しで倒せるじゃないの!」
だがここで俺のちょっとタンマが攻撃を遮る。
〈バトルウルフ(第二形態)〉のHPを見れば、あとほんの2%くらいだ。
「ここで倒すとほぼスキルがクールタイムに突入した状態で第三形態がくるぞ! ちょっとクールタイムを回復する!」
「そういうことね」
そう、この切り札とも言えるユニークスキルを放ってきたのは、あくまで第二形態なのだ。
超強力な攻撃をされたからやり返し、すべてを撃ち尽くすつもりで撃破したら最後の難関がこんにちは。
盛大にクールタイムへ突入していて、碌な六段階目ツリーが使えないと、ここであっさりやられる展開があるのだ。
〈神界ダン〉ボスの注意点である。
それから2分間耐え、ある程度クールタイムが回復したところで〈バトルウルフ(第二形態)〉にもクゥーンしてもらうと、最後は〈バトルウルフ(第五形態)〉がこんにちわ。首が3つのケルベロス形態である。
「やっぱりいきなり上級バルフなのね!?」
「成敗しましょう」
「「「バウン!?」」」
ちなみにこの形態の名前は〈ゴッド・シックスス・バトルウルフ・ファイブ〉だ。
色々とツッコミたい名前だな。
「「「クゥーン……」」」
そして最終的に、〈ゴッド・シックスス・バトルウルフ・ファイブ〉もクゥーンした。
おかしいな、勇ましかったはずの尻尾が、垂れてしまったぞ?