第2127話 真の最終装備の最後のピースが今揃った。
第2127話 真の最終装備の最後のピースが今揃った。
「マリー先輩! マリー先輩はいるか!」
「わひゃ!? ひゃひ!? ゼ、ゼフィルス様ですか!? い、今ご案内いたしますぅ!?」
〈神界ダン〉の6層で周回を終えたあと〈転移水晶〉で帰還して解散し、俺は即その足で〈トップマリー〉へやってきていた。
いつもなら「マリー先輩はいるか~」って言ったら「いるで~」と返ってくる実家のような安心感のマリー先輩も、さすがは〈トップマリー〉の社長ともなると受付を通しての面会になる模様。
俺の急な来訪にも慌てず(?)、受付嬢さんはしっかりマリー先輩へ通してくれたんだ。うん、大変立派だ。マリー先輩にもあの受付嬢さんのことを評価したことを言っておかないとな。
あのリアクションはありがたい。
「こ、こちらです。――コン、コン、コン、マリー社長、ゼフィルス様がいらっしゃいました!」
「マリー先輩いるかー」
「いるで~。入ってもらい~」
「はい! ゼフィルス様。どうぞお入りくださいまし」
「お邪魔します!」
今この受付嬢さん、ノックと合わせて口でもコンコンコン言わなかった?
さらにポイントを上方修正せねば。マリー先輩さすが、良い人材を雇ってる。
「兄さん久しぶりやな~。その装備、相変わらず似 合 ( お ) うとるやないか」
「ありがとよ! 作業中に時間貰って悪いな! 実は至急マリー先輩の度肝――じゃなくて見せたいものができてきてしまったんだ!」
「待ちや……今なんかおかしな言葉が混ざっとらんかった?」
「気のせいだ!」
「ほんまかな~?」
通されたのはマリー先輩の作業部屋兼工房。
俺たちが最上級ダンジョンで集めて来た生産アイテムが並び、これ以上の設備はないほどの工房になっている、この世界で最高峰の工房である。
マリー先輩は新たな生産品を作製中の様子だが、その手を止めて俺に非常に疑わし気な視線を向けている。いったいなぜ!
「聞いたで、今日〈エデン〉は最上級ダンジョンの最高峰ランク5、〈神界ダン〉に入っていったってなぁ! 多分兄さんが突撃してくるはずやからっちゅうて受付はんに来たら通してええでって言うとって正解やったわ」
「なんだって!」
読まれていただと!? さすがはマリー先輩。マリー先輩と俺の付き合いの長さを感じるぜ。
でも若干警戒されているのはなぜだろうね?
「マリー先輩、お察しの通りだ! 俺たちは今日! 〈神界ダン〉に潜ってきた! そしてとんでもない事実が判明したんだ! それを真っ先にマリー先輩に伝えたいと思ってやってきたんだ!」
「もっと伝えなくちゃいけない人物が他にも居るんとちゃうかな!? その情報、たぶんいろんな人が首を長くして待ってんで!?」
俺がマリー先輩を最優先したことがお気に召さなかった様子。
いったいなぜ!
まあいいのだ。そっちは後でまとめて報告書を渡すからな!
「マリー先輩」
「な、なんや兄さん。その手はなんや!」
「ふっふっふ、実はな〈神界ダン〉は〈万界ダン〉と似通った、追想にも近いコンセプトのダンジョンだったんだ」
俺は軽く説明を入れながらそっと自らの〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) (容量:小)〉に手を伸ばす。見抜かれているっぽいけど多分気のせいだ。
「そして、〈万界ダン〉では 下級職 ( ・・・ ) の専用装備の全集レシピが大量に当たっただろう? 今マリー先輩が作っているそれも含めてだ」
「!! まさか……! 兄さんまさか!」
勘の鋭いマリー先輩は俺の言いたいことをそれだけで察してしまったようだ。
俺はこのタイミングだ、と〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) (容量:小)〉からレジェンド色に光るレシピの束を取り出したんだ。
「そうだ。俺たちが〈神界ダン〉で手に入れてきたのは、なんと上級職の専用装備、その全集レシピだ!! しかも、全てがレジェンド級だったんだー!」
「な、なんやってー!? というかどんだけ採ってきてんねんー!?」
バサッと取り出した10枚以上のレジェンドレシピにマリー先輩の悲鳴が上がる。
まだだ。ここからが本番!
「さあ見よマリー先輩! この上級職の専用装備レシピたちを!」
「ふおおおおおおおお!? なんやこれ!? 何やこの数値!? 下級職の専用装備と大違いやないかーー!!」
「しかもだ。〈神界ダン〉はバトルタワー型ダンジョンでな! 各階層にレイドボスが配置されていたんだ! つまり、毎日のように様々な上級職の専用装備レシピが手に入るってことだ! 全部レジェンド級だぜ!!」
「ひいいい! うちの肝がまた取られてまうー! こんな量をいきなりズドンさせるなんて、兄さん鬼畜やー!」
「まだ俺のプレゼンは終わらないぜマリー先輩! 見てもらった通り! これはおそらく最終装備だ! これ以上の装備は〈神界ダン〉でも手に入るか分からない! つまり、マリー先輩が作るこれらの装備は、実質交換の必要が無い最上の装備になるんだ!」
「くぅ~。燃えてくる言い方やないか!」
「最高峰の生産工房は拵えた! レシピも揃った! LVはカンストした! だが、まだ足りないものがあるだろうマリー先輩!?」
「十分やない!?」
「いいやまだ足りないんだ! 生産職はさらに1つ、自分たちの専用装備を着てこそその能力が万全になると俺は思う!」
「ま、まままま、まさか兄さん!」
よし、場は十分に温まった!
俺は満を持してそのレシピを取り出し、ぺらりと見せる。
「見てくれマリー先輩! これがマリー先輩の 職業 ( ジョブ ) 、【マギクロスアデプト】の専用装備全集レシピだーーーーーーーーー!!」
「うっひゃあああああああああああああ!?!?!?」
ババン!
レシピが俺の手から一瞬で攫われたかと思えば、いつの間にかマリー先輩の手の中にそれはあった。もういつものことなので驚かない。LV100の俺の目をもってしても残像しか見えないけど、驚かない!
レシピを熟読したマリー先輩が目を見開いて錯乱する。
「いったいどういうことなんにゃー! うちの専用装備やって!? うわ、つっよ! なんやこの数値! こんなの着て装備作ったらいったいどんなもんができてしまうんや~!」
今一瞬「にゃー」って聞こえた! しかも、マリー先輩は自分が言ったことに多分気づいていない。ごちそうさまです!
無事マリー先輩の度肝をたっぷりと抜けたようで俺は大満足した。
レシピを見ながらクルクル回り、ときおり「わはははは!」と笑うマリー先輩。ご機嫌で大変良いね!
俺も笑っちゃおうかな。ふはははははは!
「はっ!? 兄さん!? いつのまにそこに居たんや!?」
「さっきからずっとだな。最初から最後までさ!」
「な、なんたることや! うちの敏腕社長のイメージが崩れてまうー!」
「安心してくれマリー先輩。まずマリー先輩に敏腕社長のイメージ自体まだ構築されてなかったからな! 崩れるものなんかないぜ!」
「そういう問題やないんやー!」
うーむ。マリー先輩が相当錯乱しているな。
こんなマリー先輩は珍しいぜ。いや、割と見慣れている気もする。どっちだっけ?
「はぁはぁ、兄さんには毎度驚かされてきたけんど、ここまでやられたんは久しぶりや」
「あ、素材はここに積んでおくからな」
息切れするマリー先輩に容赦なく積む素材の山。あ、マリー先輩の顔が微妙に喜んでる。ふっふっふ、心は正直ものだ。
「真面目な話をしようか兄さん」
「おう。そろそろ話を進めようぜ」
キリッとこちらを向くマリー先輩に俺もキリッと返す。
十分味わって満足したので話を進める。
「俺はマリー先輩にまず、この〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を作製してもらいたいと思っている。最優先だ」
「やっぱりかぁ。そらうちでもそうするわ!」
真の最強にして真の最終装備の作製は、最高の設備、最高のレシピ、最高の人材、そして――最高の装備が揃ってようやく完成する。
最後のピースがこうして揃ったのだ。
他の最終装備を作るならば、まずはマリー先輩が最高の装備を着て作る必要がある。
「まずはマリー先輩が今できる最高の〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を作り上げる。そして、作り上げた〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を装着し、また〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を作ってもらい、また作り上げた装備を装着して〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を作ってもらう。これを繰り返し、装備の限界値まで持っていく」
「わかっとる。最高の装備で作る最高の装備。その最上の装備が完成するまでは自分の装備を何度も作る。【服飾師】の基本や」
今のマリー先輩の設備と装備で作製できる〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉だと、その性能は最強の70%くらいにとどまる。だがその70%の装備を着て同じものを作れば、なんと80%の〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を作製できる。これを繰り返し、100%の性能が発揮できる装備になるまで繰り返し作るのが【服飾師】の生産職なのだ。ちなみに100%を超えることはないので、100%が強化できる上限値である。あと100%を作るには【錬金術師】の作る素材が必要になったりするぞ。
そして、完成した100%の〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉を強化玉と性能限界玉で真の最強装備にしたら、それを装備してようやく他の装備に取り掛かれるのだ。
マリー先輩はその辺しっかり分かっているようで、まずは100%の〈 魔錬服飾王 ( マギクロスアデプト ) シリーズ〉完成に尽力するとのこと。
「兄さん、今ある〈万界ダン〉レシピから作製する装備、全部部下の方に任せちゃってええか?」
「おう。ついでに〈神界ダン〉で手に入れた〈エデン〉が使わないレジェンド装備も作って良いぞ。そしてマリー先輩には〈エデン〉が装備する最終装備の生産に集中してもらいたい!」
「承るで! くぅ~ワクワクしてきたわ!」
マリー先輩と拳をごっつんこ。
完成が実に楽しみだ。ふはははははは!!