第2128話 学園長室は平和。3年生の教室で記念写真!
第2128話 学園長室は平和。3年生の教室で記念写真!
「カイエン君、ゼフィルス君からの連絡はまだかね?」
「はい。まだのようです(今日は、もう来ないんじゃないかな? うん、きっと来ないだろう。帰る準備をしておこう!)」
ここは学園長室。
今朝、とんでもない情報が舞い込んできて学園長はハラハラドキドキしっぱなしだった。
そう、〈エデン〉が学園最後のダンジョン、最上級ダンジョンのランク5、〈 神域 ( しんいき ) の 神界 ( しんかい ) ダンジョン〉に入ダンしていったという情報がケルばあから届いたのだ。
え? 一昨日〈クラス対抗戦・カイエン杯〉が終わったばかりなのに?
本日はクラス対抗戦のためにやって来られたスポンサーの方々や大企業の方々と色々やり取りがあるというのに、そっちの方が気になって仕方がないんじゃが!?
そんな心境の学園長だったが、カイエンに支えられ、時々コレットからお茶を貰って、なんとか本日の業務をやり終えていた。
うむ、やり終えたのだ。あとは帰って寝るだけである。現在の時刻は19時。
良い子は帰る時間だ。
「〈エデン〉はもう帰還しておるのじゃろ?」
「そうですね。ですが報告は明日以降になるのではないでしょうか?(もう帰ろう学園長。学園長は頑張ったよ。そろそろ休んでもいいはずだよ)」
「情報の早い者たちが帰る前に続報を、と首を長くしておるんじゃがの……」
「諦めて帰っていただきましょう。学園でもまだ把握できていないことにすれば問題はありません。〈エデン〉へ突撃しようとする輩についてはすでに〈秩序風紀委員会〉を回しています(あ、そちらの方々も帰っていただいて)」
「さすがはカイエン君じゃ。仕事が早いのう」
「恐縮です」
「うぅむ。なんだか今日は特に〈エデン〉から話を聞かねばならん気がするんじゃが……。ちなみにわしが直接〈エデン〉に聞きに行くというのは?」
「今日の帰宅時間が大幅に遅れ、下手をすれば日付を跨ぐ上に、クラス対抗戦のためにお越しいただいている方々への説明書類などの作成業務が大きく増えますが、よろしいですか?(本当にいいの学園長!? 帰って寝ましょうよ! 来園された方々には帰ってもらいましょう! むしろ〈エデン〉には〈神界ダン〉の報告は待ってもらうよう俺の方から交渉しときますから!)」
「……ふう。帰るかの」
「はい。お疲れさまでした」
ゼフィルスがマリー先輩の度肝を抜いていることに夢中になりすぎていたころ。
こうして学園長室の平和は保たれたのだった。
ちなみに【学園長】の専用装備レシピは〈トップマリー〉の手に渡ったので学園長の下には届かなかった。――レシピは、ね。
◇ ◇ ◇
翌日、今日は月曜日。
学業という日常が再開する日だ!
「おはようみんな! 今日もさわやかですがすがしい朝だな!」
「おはようゼフィルス! なんかツヤツヤしてない!?」
「お、分かるか? 実は昨日は良いことがあってな」
教室に入ると早速ラナが寄ってきた。するとどうだろう、俺の顔がツヤッツヤだと言うじゃないか。心当たりがあるんだぜ。
きっと久しぶりにマリー先輩の度肝を抜けたおかげだろう! ふはははははは!
すぐにチャイムが鳴り、フィリス先生が教室に入ってくると、俺たちの緊張感とわくわく感が増す。
「はーいみなさん、おはようございます。あら、みなさんもう心構えができているようですね。改めて、〈クラス対抗戦・カイエン杯〉の優勝、おめでとうございます! みんな立派でしたよ! 朝のホームルームではまずこの 優勝旗 ( ゆうしょうき ) を教室に飾りますよ~」
「「「「おおー!!」」」」
さすがはフィリス先生!
一発で俺たちの心境を見抜くだけじゃなく、一撃で俺たちが最も喜ぶところを突いてきた!
そう、俺たちは学年対抗戦、改め〈クラス対抗戦・カイエン杯〉で優勝したのだ!
フィリス先生が〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉から預かっていた優勝旗を取り出してくれる。優勝した後、学園長から直接この旗を受け取り、教室に飾ろうぜ、ということになったのだが、月曜日になるまでフィリス先生に預かってもらっていたのだ。
改めて、テンション上がる!
しかも、ただの優勝旗じゃないのだ。
これ、たぶん最上級ダンジョン産の素材が使われてる!
すっごい豪華にして高価な優勝旗だったんだ! すごい、艶がすごいぞこの旗!?
売ればいったいいくらになってしまうのだろうか!?
この世に1つしかない、最上級ダンジョン産の素材を使って生み出された初めての旗だった。ちなみに作製者は、マリー先輩である。
「ゼフィルス君」
「はい!」
そして優勝旗を飾るのはリーダーである俺の役目だ。
前――は黒板があるので教室の後ろに。いつの間にか用意されていて壁に設置されたガラス製のコレクションケースに入れる。額縁みたいなやつな。
これだけでグッと教室内のテンションが上がったような気がしたよ。
「「「「おお~!」」」」
―――パチパチパチパチ!
俺がコレクションケースに嵌め終わると、教室中から大きな歓声と拍手が木霊したんだ!
やっべぇ、これ超気持ちいい! 誰かスクショ撮ってください! よし、後でムカイ先生に頼もう! これは記念写真を撮らなければ!
ちなみに放課後になってムカイ先生に俺のスクショで記念撮影してもらったよ。
もちろんフィリス先生も一緒に写っている。
あ、学園にも寄贈しますねこの写真! いつまでも残しておいてください!
なお、この写真がのちの歴史の教科書の表紙を飾ることになるとは、この時の俺には全く予想できなかったんだぜ。
そんな感じに始まった月曜日もあっという間に放課後だ。
「は~、もう最高だ! あとでみんなにも現像した写真を贈るな!」
「楽しみにしているわね!」
教室でわきゃわきゃしながら優勝旗を眺め、2組からサチたちが呼びに来たところで俺たちもギルドハウスに向かうことにした。
「? そう言えば、なんか3年生の空気が浮ついていないか?」
「今気づいたのゼフィルス? 今朝からずっとよ?」
「優勝旗のことをずっと考えていたせいかもしれないな。だが、そうじゃないよな?」
そう、放課後になって気が付いたんだが、なんだか3年生の校舎の雰囲気が落ち着かない浮ついた空気で満ちていたんだ。
てっきり優勝旗のことかと思ったのだが、どうも違うっぽい。
「3日後に〈転職制度〉があるでしょ?」
「ああ! それか!」
そう、〈転職制度〉が近かったのだ。
シエラのクールな指摘に俺もようやく思い出す。
去年も10月1日は〈転職制度〉があった。そんなわけで今年も10月1日は〈転職制度〉が行なわれると決まったのだ。
その前に行なわれるクラス対抗戦のことで頭がいっぱいで、つい忘却の彼方に彷徨ってしまっていたぜ。でも、無事回収してきたから問題無し。
「3年生は今年が最後のチャンスだもの。それに去年とは違って研究所もだいぶ研究が進み、発現条件がほぼ判明している高位職は32職にもなっているとか」
「低位職の クラス ( 組 ) はこれで消滅するのではないか? とも言われていますね」
「とはいえ、〈転職〉自体を忌避する子はまだほんの少しだけど居るから、どうなるかはわからないけれどね」
なるほど~。シエラとエステルの話に俺は深く頷く。
3年生には低位職のクラスが9クラスもある。〈272組〉から〈280組〉がそうだ。
2年生の時の〈転職制度〉を多くの学生がスルーし、なるべく長く学園に在籍しつつ目的の高位職の発現条件が解明されるまで根気強く待ち続けた猛者たちである。
すべてはこの3年生の〈転職制度〉で目的の高位職を発現し、1年生からやり直すため。
この2年半の在学期間に調べられるだけ調べ、高位職になったらどんな方法で自らを鍛え上げるのが効率が良いのか、その知識を蓄えているのだ。
きっとこの低位職のクラスからも、名だたる人物が生まれることだろう。学園もそれに期待していると見える。
故に、3年生の校舎はかなり浮ついた空気が流れている、ということのようだ。
「ちなみに〈エデン〉〈アークアルカディア〉〈エースシャングリラ〉の〈転職制度〉利用の予定は?」
「今年は無いな! はっきり言おう! 今年はゼロだ!」
そう、無しである。だからこそ、忘却の彼方に漂っていたんだからな。
俺の答えにシエラは頷く。俺も決め顔で頷いた。俺たちのギルドは、すでに完成の域に達している。抜かりはない!(キリッ)
「話は変わるけど、昨日のマリー先輩はどうだったの?」
「聞いてくれるかシエラ! 実は昨日のあの後さぁ!」
だが俺の決め顔は3秒しか持たなかった。シエラがマリー先輩の リアクション ( ・・・・・・ ) を聞いてきたのがいけない! 俺はジト目になるシエラに熱く昨日のマリー先輩のリアクションが如何に素晴らしかったかを語って聞かせたんだ。
「違うわよ。最終装備のことでしょう?」
「あ、そっちか!」
抜かった! リアクションの方じゃなくて、装備の方を聞きたかったらしい。
確かに、マリー先輩の装備が完成しないといろいろ取り掛かれないからな!
「1週間は欲しいって言ってたぞ。ハンナと二人三脚で作る必要があるから時間が掛かるそうだ。だから、俺たちはその間に周回しながら素材を供給しつつ、新たな全集レシピを発見するって流れが良いと思うぜ」
「……分かったわ。それじゃあ、今日からレイドボス周回ね」
「おう! まずはバルフ周回からいくぞー!」