第2133話 ハンナも神のポーションレシピが欲しいってさ
第2133話 ハンナも神のポーションレシピが欲しいってさ
「ゼフィルス君にお願いがあります!」
「お? どうしたんだハンナ? 急に改まって」
マリー先輩がハンナの最終装備を仕上げた翌日の朝。
いつもの通りハンナの朝ごはんを美味しく食べてごちそうさまをしたタイミングで、ハンナがズイっと身を乗り出した。
なんて珍しい光景。
ハンナが俺にお願い事をするなんてこと、なかなか無いからな。
こうして毎朝美味しい朝ごはんをごちそうになっているのだ。できるだけ俺も叶えてあげたい所存!
「もちろん、ハンナのお願いならなんでも聞くぞ?」
「な、なんでも? え、ええっと、その……」
俺の問いと答えに何やら少し顔を赤くしたハンナが指をごにょごにょさせながら少し言いよどむ。
まさか、これは……!?
「えっとね、昨日マリー先輩に最終装備を作ってもらったじゃない?」
「ん? そうだな」
あれ? 風向きが予想と違うぞ? そっちにいくの?
どうやら俺の想像はハズレのようだった。
「それでね、私もすっごいポーション作りたいの! この装備じゃないと作れないような、最終なやつ! だからね、レシピが欲しいんだよ!」
「ハンナが最終ポーションの作製を……!」
「う、うん! 〈神界ダン〉にも、絶対そういうの、あると思うの! でもゼフィルス君、今はニーコちゃんに頼んで装備全集レシピをメインにドロップしてもらっているって言ってたでしょ? だから、良かったらでいいんだけど、ポーションのレシピも狙ってみてくれないかなって」
ハンナの予想は――正しい!!
そう、〈神界ダン〉には最終装備だけじゃない。
その最終装備を身に着けた生産職が作製するような、アイテムの最終レシピもドロップするのだ!!!!
その中には、当然ポーション系だって存在する!!
今までは生産職の真の最強装備を第一に考えて装備全集レシピを狙っていたが、その段階ももう終わりだ。
ならば、次は真の最強装備を着た生産職が必要とする、最っ高のレシピを取って来なければなるまい!
そしてそれは、ハンナのポーションも含まれる!
「任せろハンナ!」
「ゼフィルス君!?」
俺はびしっと親指で自分を指さしながら決めポーズを取ってかっこよく宣言する。
「次はハンナへのポーションやアイテムをメインにしてレシピを探してこよう。ハンナのお願いは俺が叶えてやる!」
「! ありがとうゼフィルス君!」
「おうよ!」
決まりだ。
今週は素材集めと並行してアイテム系のレシピドロップを狙う。
今までは装備に偏らせていたため装備系のレシピばっかりドロップさせていたが、実はちゃんとアイテム系のレシピもドロップする。
まあ、ドロップするのは11層からなんだけどな。
というわけで、〈エデン〉は11層の攻略をスタートすることに決まった。今決めた!
◇
「ではみんな、これから〈エデン〉は11層から先へ進みたいと思う!」
「いいわよー!」
放課後の〈ダンジョン門・最上級伝〉、通称:〈 最上 ( さいじょう ) ダン〉。
〈エデン〉のみんなの前で俺がそう宣言すれば、ラナがテンポよくいいわよコールで応えてくれたことで、みんながその気になったのを感じた。
ラナはいつも俺の欲しい言葉を言ってくれるぜ。
「10層までの素材はもういいの?」
「おう! 大体確保できたからな! 今日はまた10層の素材を集めつつ、11層~15層にチャレンジ! 少しずつダンジョンを攻略していきたいと思う!」
「いいわね」
シエラからも「いいわね」貰いましたー!!
「いいじゃないか! 最近の〈金箱〉ドロップはダブりが増えてきていたからね、そろそろ新しい発見が欲しかったところだよ! さあ勇者君、ぼくたちがまだ見ぬドロップがたくさん待ってるんだ! 早くいくよ!」
「おう! あとニーコは11層から『装備全集ドロップ率アップ』を解除しちゃっていいぞ」
「なぬ? ということは『レシピドロップ率アップ』だけオンにするということかね?」
「おう。ここからは装備だけじゃなくて、アイテムのレシピも狙っていく。俺の『直感』さんが、11層からは装備レシピ以外も狙えと言っている気がするんだ!」
「なんと!」
「…………」
俺の言葉にニーコは「うっひょー!」と喜びながら驚き、シエラは一瞬でジト目を俺に送ってきてくれた。うっひょー! じゃなかった! ありがとうございます!
「確かに3層までは全くレシピが出なかったし、10層までは装備レシピしかドロップしなかった。11層からドロップテーブルが変化することも十分考えられる! 楽しみが増えたね! さあ、早速行こうじゃないか! ――みんなぼくに続きたまえ!」
「何を言うか! ニーコにその役目は取らせんぞ! ――さあみんな! 俺に続けー!」
「はぁ」
結局俺が競り勝って最初に入ダンに成功した。危なかったぜ。
ショートカット転移陣は10層に通じているので、まずは10層に転移。
そのままレイドボス〈パンパカーン〉たちを倒してレンカ先輩の専用装備レシピ、〈 芸術の爆王 ( ダイナミックボマー ) シリーズ〉を一発で当てた時は神が下りて来たかと思ったね。
ありがとうございます〈幸猫様〉!
9層以下はすでに何度も周回していてドロップがそれなりに足りているため、アルルたちの装備素材はおそらく足りると思われる。
まあ、もし足りなければまた取りに行こう。まずは先に進むことを目指さなければ。
11層は 中級下位 ( チュカ ) で言う〈三本の木橋ダンジョン〉の最奥ボス、〈ゲロゲロ海賊〉のレイドボスが登場。あのカエルの海賊だ。カエルは帰れ!
第二形態はレアボスの〈ゲロギン大海賊〉になり、第三形態はなぜか 上級下位 ( ジョーカー ) ランク7の〈氷結の彫刻ダンジョン〉、通称〈氷ダン〉の50層ボス、〈エスケープペンギン大海賊〉のレイドボスに超進化する。
カエルがなんでペンギンになっちゃったのかは分からない……!
エスケープとかついちゃってるし、その関係か? もしくは大海賊つながりかもしれない。
ちょっとギルドメンバーも呆気にとられたものの、1度倒したボスだ。
今回も余裕をもって撃破!
いや、実際は1度しか倒したことがなかったから挙動を忘れているメンバーが多く、割と初挑戦みたいな雰囲気で戦ったぜ。
エスケープしようにも『震えろ・大魔王様からは逃げられない』で逃げ道を封じられたのが余裕の秘訣だったな。
ちなみに名前は〈ゴッド・イレブン・ゲロゲロ海賊〉、〈ゴッド・イレブン・ゲロギン大海賊〉、〈ゴッド・イレブン・ペンギン大海賊〉だった。
10層まではファーストからテンスだったが、11層からは普通にイレブンになる。
ここも変わったポイントだな。きっとこの先名前が長くなりすぎると、開発陣が数字のカウントを短縮したのだろう。
そして、ボスを撃破したらお約束。
「うっひょー! 〈金箱〉を開ける時間だよー!」
「おーいえー!」
俺がさっきした助言で未だにテンションが落ちついていないニーコが〈金箱〉に飛びつくので俺もおーいえーした。
みんなでクジを引いて、いざオープン!
さあ、装備レシピ以外も当たるのか!?
きっとそう盛り上げたテンションが功を奏したのだろう。
ニーコは見事に当たりクジを引き当て、1番にオープンしたのだ。またかよニーコ!? どうなってるんだ!? そして、
「こ、これは……〈エスケープドロリン♪〉のレシピ!? 絶対にボス戦からエスケープできるアイテム!? え、ええ!? ボス部屋からも脱出できる転移系のアイテムだってーーーーーー!?」
「なんだとーーーーーー!?!?!?」
「なんですってー!?」
いきなりニーコがとんでもないアイテムレシピをツモってたんだ!!
4つ目となる転移アイテム。それはなんと――ボス戦脱出用の転移アイテムだった。
今までボス部屋に入ると、出入り口の扉は閉じられ、負けてペッてされるか、勝たなければ外に出られない仕様だった。
それが、なんとボス戦中でも途中退出が可能になるのだ!
それが浸透し、みんなが理解した瞬間、ものすごい大歓声とどよめきがボス部屋を支配したんだ。
「これすごい! ぼくは歴史に残るとんでもないものを当ててしまったようだよ勇者君!」
「ああ! ニーコはとんでもないものを当ててしまったな! クルクルいっとくか!?」
「やめなさい」
「おう!?」
な、なんだって!?
一瞬で隣に立ったシエラに脇腹をえいってされただと!?
俺が反応もできないとは、シエラ、腕を上げたな……。
「これは早速ハンナに作ってもらわないとな! まさか学園長のリアクションが見られる機会がこんなに早く巡ってこようとは……!」
「…………」
「さすがは〈神界ダン〉だね! 今までの常識をコロっと変えてくる。そこに痺れるし憧れるよ!」
ちなみに〈エスケープドロリン♪〉は逃げるだけと思うなかれ。
これ〈神界ダン〉のドロップだぜ?
後日、一度倒したことのあるレイドボスのボス部屋や守護型ボスを スキップ ( ・・・・ ) できることが判明して学園中が大騒ぎになるのは別の話だ。
なお、残り3つの宝箱からはそれぞれ〈王剣〉〈神剣〉〈宝剣〉の現物ドロップがダブってニーコが「またダブりじゃー!?」と悲鳴を上げてたよ。
まあ、そういうこともあるよね。