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第2135話 学園長のひ孫様!?〈エスケープドロリン♪〉交渉

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第2135話 学園長のひ孫様!?〈エスケープドロリン♪〉交渉

「リーナ! 頼みがあるんだ。交渉役を頼みたい!」

「交渉役ですの? あ! もしかして昨日の?」

「おう! ハンナがな、〈エスケープドロリン♪〉を作ってくれたんだ!」

「ということは、学園長と交渉ですのね。承知いたしましたわ」

〈神界ダン〉15層を攻略した次の日の授業の合間、休み時間に俺はリーナに交渉役を頼んでいた。

これが初めてというわけではないためか、リーナはすぐにキュピーンと閃いた様子で頷いてくれたんだ。

「なんだか初めて〈転移水晶〉を学園長の下へ持ち込んだことを思い出しますわね。ちなみに、今回はどのくらい作られたんですの?」

「1300個くらいだな!」

「〈転移水晶〉の時より一桁多いですわ!」

さすがはハンナ。その生産力でリーナを驚かせる。

これぞハンナの実力よ!

なお、300個は〈エデン〉が保管するので持ち込むのは1000個とした。

「さすがはハンナさんですわね……。最上級ダンジョン、それも最後の〈神界ダン〉でドロップしたそれを、次の日には1300個も加工してしまうなんて……」

「ついに完成した新装備を試したくて仕方ないみたいだぞ」

「…………今なんと?」

「うん? あ、そうか。言ってなかったな。実はハンナの装備なんだが、ついに一昨日、最終装備の完成版が出来たんだ!!」

「あれの完成版がいつの間にかできていますの!?」

昨日から11層スタート、でもその理由がハンナがアイテムレシピを求めているためだとは、そういえば言ってなかった気がする。ということで、俺は一度溜めを作り、グッと力を込めて発表してリーナを驚かせたんだ。

驚きのリアクション、大変良き!

「そういうわけでハンナは今、最終装備の力を引き出し自分のものにするために、むしろ〈神界ダン〉アイテムを作りたいとまで言ってきているんだ」

「それが昨日11層以降に進み、装備レシピではなくアイテムレシピを狙い始めた理由ですわね? 学園長がお聞きになられたら頭を抱えてお悩みになられることをそんなさらりと。ああ、学園長。心中をお察しいたしますわ……」

リーナが今はまだ元気な学園長を憂う。

「安心してほしい。〈転移水晶〉の時ほどの衝撃にはならないはずだから」

「いえ、ボスを回避し、ボス部屋から即時帰還できるアイテムですわよ? それだけでどれほどの需要と価値があるか……。しかも素材は〈神界ダン〉産のもの。商品は相当なお値段になりますわね」

「まあ、それも今だけだ」

前も言った通り、〈神界ダン〉の採集ポイントは入ダンと帰還を繰り返すだけで無限に湧く宝石箱。

〈エスケープドロリン♪〉もそのうち価値が暴落して手軽に手を出せるお値段になるはずなんだ。

とはいえ〈神界ダン〉にたどり着く人がいないといけないのだが。

その辺もリーナに相談してみる。

「…………〈神界ダン〉素材の価値が暴落するなんて、あまり考えたくありませんわ」

「だが確実に起こることでもある。今からその対策も念頭に入れて交渉を頼むぜ」

「難しいですが、ゼフィルスさんのためですもの。承知いたしましたわ。価値が高いうちに大量に売ってしまいましょう。まずは素材を貯め込まず、出し渋りもせずに手に入れた端から加工して売りさばくようにしませんと。となると販路の確保が最優先に――」

さすがはリーナ。未来的に価値が暴落する可能性の高い商材の扱いだってお手の物。

貯め込んで価値が暴落するとか目も当てられないからな。手に入れたら即加工して売る。その販路の確保や、価値が高いうちは積極的に採集に手を出すなど、基本的な方針をさらさらとメモしていく姿はとても頼りになる。

そんな感じで放課後、俺はリーナを連れて学園長室に向かったのだった。

◇

途中、〈ダンジョン公爵城〉、通称〈中城〉の中を勝手知ったるで進んでいると、なにやらコレットさんに見送られている最中の女の子と遭遇した。

14歳くらい? 黒髪美少女だ。フェンラたちと出会った頃を思い出すなぁ。

そう思ってたら、その女の子が突如話しかけて来た。

「ごきげんようゼフィルス様、ヘカテリーナ様」

「んん?? ごきげんようマドモアゼル?」

「何言ってますのゼフィルスさん。――こほん、ごきげんよう。あら、あなたは」

「知り合いなのかリーナ?」

ちなみに俺は名前を呼ばれたけれども会ったことは無かったと思う。無かったよね? でも誰かに似ているような?

「ええ。彼女はヴィアラン会長のご息女の――」

「ヴィアラン会長のご息女!?」

ヤバい。びっくりしすぎてリーナの言葉を遮ってしまった。

いやだって、え? え? ヴィアラン会長、こんな大きなお子様居たの!?

え? ヴィアラン会長って学園長の孫でしょ? ということは、この子は学園長のひ孫様!?

「ゼフィルス様、会えて光栄ですわ」

「ありがとう。俺も会えて嬉しいよ。驚きの方が勝ったけど」

「うふふ。面白いお方ですわ」

「お嬢様、そろそろいきますよ」

「えー? もう、コレットは堅いのだから。もうちょっとお話してもいいではありませんの」

「いえ、ゼフィルス様がヘカテリーナ様を連れてやってきた以上、私は早急に学園長室に戻らなければならなくなりましたので」

「??」

そう言って急かすコレットさんに押され、ひ孫様は去っていった。

「あの子、なんのために来られたのでしょう? 学園長に会いに来たのでしょうか?」

「ひ孫に訪問してもらえるとか、学園長は幸せ者だなぁ」

そんな感じで、ちょっと驚きつつも、特に気にすることはなく学園長室に到着する俺たち。

あの子が、まさかあんなことを生むとはこの時の俺は想像もしていなかったんだぜ。

「学園長。今日もお時間をいただき、ありがとうございます!」

「ほっほっほ、構わんよ。ほかならぬゼフィルス君の報告だからのう。しかし、テンションが高くはないかの?」

「はい! 今日もすごいものを持ってきたんですよ~!」

「ほ、ほほほ。そうか、ほほほほほ!」

「ああ学園長、お待たせいたしました。このコレット。今戻りました。お茶の準備はばっちりです。すぐにお入れしますね」

「ほ?」

学園長室で学園長にお礼と挨拶!

ひ孫様を送り届けた様子のコレットさんが即で帰還し、いつものようにとっても美味しいお茶を出してくれたのでいただきます。

学園長、なぜか一口飲んだ時にビクンってしてたけど、何かに耐えながらもう一口飲んでビクンしてたよ。

いつも通りのソファーに座り、対面には学園長、その後ろにはいつものポーズのカイエン先輩が控えており、俺の隣にはリーナが優雅にお茶をいただいていた。

いや待て、カイエン先輩の顔色がいつもより緊張しているように見えるな。気のせいだろうか?

「ふう。落ち着いたのじゃ。え~、それでゼフィルス君。今日は何を持ってきてくれたのかのう?」

「ふっふっふ、驚いてください学園長。実は〈神界ダン〉の11層で、ボス部屋から転移で脱出することができるアイテムを手に入れたんです! これです!」

「ほ?」

「その名も〈エスケープドロリン♪〉です! あとこちらが鑑定書です!」

俺はまず現物を1つ見せ鑑定書を提出。

手に持ちそれを確認する学園長と後ろからのぞき込むカイエン先輩の表情に、一気に驚愕が浮かんだ。

「ボス部屋からの脱出アイテムじゃと!?」

「これは、ずっと求められていた物ではないですか!(な、なんだってーーー!? ちょ、これ、これこれこれ! これ昔っから誰もが欲しいと一度は考えたことのあるアイテムじゃねぇかーーーー!? ボス部屋でもう負けるしかない絶望的な状況で、脱出を叫んだ記憶が呼び覚まされるーーー!!)」

おお! あのカイエン先輩までも叫ぶほどの衝撃!

どうやら思ったよりも需要がありそうな予感だ。

「皆様も覚えがあるかと思いますわ。ボス部屋でもう勝てないと分かった時のあの焦燥感と絶望。それが原因でボスへの挑戦が恐ろしくなり、ボス戦自体ができなくなる方も少なくありません。わたくしもボス部屋から脱出できるアイテムがあればと思ったことはありますわ。そんなアイテムを、わたくしたちはついに見つけたのですわ」

「「おお……!」」

リーナの追撃!

学園長とカイエン先輩が揃って女神とでも会ったかのような、希望と救いに感動した声を震わせていたんだ。

そ、そうか。ゲームではボス戦で負けるというのはただ負けるだけだが、ここはリアル。

勝てない絶望というのはかなりの衝撃を 齎 ( もたら ) し、ボス戦を怖がってしまう学生もいる模様。 初級下位 ( ショッカー ) ではボス部屋から外が見えるからまだマシだが、 初級中位 ( ショッチュー ) になるとボス部屋からは外が見えず外界から隔離されて5人のみだ。

脱出もできないため、ボス部屋に入るのが怖くて先に進めないという人は多いとどこかで聞いたな。

「それにご安心ください。これは転移アイテムという分類ではありますが、実際は転移ではないようで、転移リングを必要としません。そのため初級や中級のダンジョンでも使うことが可能なようなのですわ」

「「おお……!」」

学園長とカイエン先輩にはリーナが女神に見えていることだろう。

俺も女神に見えてきたもん。リーナ、かっこいい!

そう、この〈エスケープドロリン♪〉は上級以上でしか使えないなんて制約は無く、初級や中級でも使用可能なのだ。

「これは、カイエン君」

「はい。これさえあれば学生たちのボス部屋恐怖症を克服できるかもしれません。いえ、ボス部屋恐怖症すら発症しない状況を作れるでしょう(これすげぇ! 学園長、これは買いですよ! 超買いですよ!)」

「うむ。今までボス部屋への挑戦者が少なかったのは、ボス部屋では勝負が決まるまで逃げられないという、苦手意識や恐怖心があったからじゃ。上級まで進んでしまえば慣れてしまうが、いつまでも慣れないものはずっと初級や 中級下位 ( チュカ ) に居残り続けてしまう。だが、ボス部屋に入っても脱出可能となれば」

「はい。今まで燻っていた学生もボス部屋に挑戦できることでしょう。学園長、ご決断を」

「うむ。…………時にゼフィルス君に聞きたいのじゃが、これは現物かの? それともレシピかの?」

来たなそのご質問!

さすがに今までの転移系が全部レシピだったからな。

学園長もレシピ前提で、これは大量生産できるのか? と聞いてきているのだ。

もちろん俺は深く頷き、持ってきた〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉をひっくり返す。

「お察しの通り、これはレシピです! そして、今日は1000個お持ちいたしましたーー!」

「お、おお? おおおお??(な、なにーーー!?!? 1000個持ってきちゃったーーー!?)」

テーブルの上に山になる〈エスケープドロリン♪〉を見てカイエン先輩が徐々に仰け反る。仰け反る衝撃だ。

「やっぱりかのう。ほ、ほほほ」

「さすがは学園長。ちょっと耐えてますわ」

しかしながら学園長は愉快そうに笑うだけだ。ちょっと頬が引きつっているような気がしなくもないが、きっと気のせいだな!

「では学園長。こちらのお値段なのですが」

「う、うむ。これは初級でくすぶっている子にチャンスを与えられる有用なアイテムじゃ。なるべく金額は抑えてくれると嬉しいの……」

「ご安心ください。最初はその希少性から多少お高いですが、〈ハンター委員会〉などが〈神界ダン〉にたどり着くことを条件にしていただけるのでしたら、その後はこのくらいのお値段にさせていただきますわ」

「ぬ、ぬう!? こ、これほど安くなるのか?」

「え?(あの、桁が4桁くらい下がってるんだけど。え? これなら数百ミールで買えるけど、本当にいいの?)」

「構わないですわ。その代わり、学園もどうにかして〈神界ダン〉まで到達するのが条件となります」

「う、む」

さ、さすがだリーナ!

そうか、その手があった!

学園の委員会もそのうち〈神界ダン〉に到着するだろうと思っていたが、しない可能性だってある! 〈万界ダン〉の〈食ダン〉追想などで満足してしまい、〈神界ダン〉まで行く必要が無い。なんて考えることだってあるかもしれない。

そんな可能性をリーナは潰し、〈神界ダン〉まで到達できたらすさまじいメリットがありますよと学園に交渉を仕掛けたんだ!

まさに一石で何鳥も得るような仕掛け。さらに俺の好みや目論見も全部見通してのこの条件! ああ、リーナ優秀! 大変優秀! 素晴らしいぞリーナ!

あとでボーナスを弾まなければ!

「いかがでしょう学園長?」

「もちろん、わしに否は無い」

「これは、〈ハンター委員会〉にもしっかり最上級ダンジョンを攻略していただかなくてはいけませんね(アーロンさん頑張って!)」

こうして交渉は成立した。