第2137話 戦闘職の最終装備第一弾!ルルの最終装備完成
第2137話 戦闘職の最終装備第一弾!ルルの最終装備完成
「ルル」
「にゅ? ゼフィルスお兄様! 何か用なのです?」
「ああ。実はルルに頼みたいことがあってな。この後時間あるか?」
10月10日、土曜日の夕方。
今日は素材集めの周回をメインにしつつ30層まで進んだ帰り道で、俺はルルを誘っていた。
そこにズイっと割り込む影有り。
「お待ちくださいゼフィルス殿。ルルを誘うのでしたらまず私を通してもらいましょう」
もちろんその影はシェリアである。
「んじゃシェリア、ちょっとルルを借りても良いか?」
「ダメです」
どないせいっちゅうねん。
「もうシェリアお姉ちゃん。わがまま言ったらダメなのです! ――ゼフィルスお兄様の御用なら、ルルはいつでも受け入れるのです! お供するのですよ!」
「そんな!」
どうやらシェリアを通す必要は無かったらしい。知ってた。
「まあ、シェリアも気になるなら来るか?」
「いいのですか? いえ、ゼフィルス殿、これからどこへ向かわれるのですか?」
「ああっとそうだった。まだ言ってなかったな。今日行くのは、〈トップマリー〉だ」
今朝あのレシピを任せたばかりなのに、なんかもう完成の知らせが届いたんだよ。
ということで俺たちは3人で〈トップマリー〉へやってきた。
「マリー先輩いるか~」
「いるで~。今朝ぶりやな兄さん!」
「ゼフィルス兄さん、連絡してから早かったなぁ~」
「おう! しっかりルルを連れて来たぜ」
「お邪魔するのです!」
「付き添いですが、私も失礼いたします」
「お、シェリアはんも来たんやね。それならちょうどええな。シェリアはんと話がしたいちゅうメンバーがおるんや。ちょっと話してもろうてもええやろうか?」
「私にですか? 構いませんが」
「ルルなら俺たちに任せておけ。ちょっとコーディネートするだけだから」
「それならゼフィルス殿はこの場に不要ですね。私についてきてください」
「いや居るぞ!? 全然不要じゃないぞ!?」
なにせルルの新装備のお披露目を最初に見るのは俺だと決まっているのだ。
あ、でもシェリアにも見せないとダメか。
マリー先輩にお願いしてそのメンバーの方に来てもらうとしよう。
「はあ、ルルはんはこっちや」
「にゅ? ルルはどこに連れていかれちゃうのです~!?」
「なぁに安心してええで、ちょ~っと体を調べさせてもらうだけやから」
「にゅ!?」
「マリー姉、それは怪しいで。まるでゼフィルス兄さんみたいやん」
「おっと、兄さんの怪しさが移ってしもうたみたいや」
「なぬ!?」
バカな! 俺が怪しいだと?
「やはり、ゼフィルス殿……」
ほら! なんかシェリアまで警戒心出してきちゃってんじゃん! あれ? いつもだっけ?
「にゅ! そんなことは無いのです! ゼフィルスお兄様が言うことは、いつも正しいのです! ルルがここに居られるのも、全部ゼフィルスお兄様のおかげなのです! ルルはゼフィルスお兄様を信じているのです!」
「ル、ルル~~!!」
ルルだけだよ俺の味方は!
俺は心の中で感動の涙を流した。
「まあ、冗談はこんくらいにしてと――実はな、ここに足を運んでもろうた理由なんやけど、ルルはんの新装備ができたからなんや」
「なんとなのです!?」
あ、さっきのは冗談だったみたいだ。
そりゃそうだ。俺が怪しいなんてことは、欠片も無かったな。
ルルは新装備完成の報にとても驚いていた。
「ルルの新装備ですか!」
「あ、ゼフィルス兄さんはシェリアはんのこと抑えといてな」
「あいよ~。――ということでシェリア、この特等席で一番にルルの新装備のお披露目を見ようではないか!」
「どうやら私はゼフィルス殿のことを誤解していたようです」
そうそう。全ては誤解なのだ。俺に怪しさなんてないないない。
シェリアとの和解に成功し、ルルが試着室に消えるのを見送ると、ここでマリー先輩の工房がノックされた。
「お、来たか。入ってええで」
「失礼いたします」
マリー先輩の声に反応し、扉が開くと、中に入ってきたのはエルフの男性だった。
「あなたは……ホーゼルではないですか」
「お久しぶりですシェリア様」
そうしてまずシェリアに一礼。
「あれ? シェリアは知り合いだったのか?」
「はい。どこにいるのかと思っていましたが、まさか〈トップマリー〉に所属しているとは……もしかして、私たち〈エデン〉の杖などを仕上げているのも?」
「はい。僕が担当させていただいております」
そう言ってエルフの男性が一礼する。
そう。このエルフこそ〈エデン〉のもう1人のキーマン。
木工系を司る生産系のトップ、エイホーゼルさんだ。愛称はホーゼル。
〈エデン〉で杖、本、弓の作製を依頼している方でもある。
職業 ( ジョブ ) は【エレメントハイクラフター】だ。
「人種」カテゴリー「エルフ」は、木工系の生産職、高の上の 職業 ( ジョブ ) に就くことができるのだ。「ドワーフ」が鍛冶系なら、「エルフ」は木工系の生産でバランスを取っている感じだな。
「ドワーフ」と比べ作製できる武器種が少ない代わりに、遠距離攻撃で非常に重要な役目を持つ杖、本、弓が作製できるため需要は計り知れない。
そのトップを走っているのが、このホーゼルさんなのだ。
「〈エデン〉の杖、本、弓を作製していたのは、あなたでしたか」
「はい。おかげさまで、ついに僕も先日、LV100に至りました」
「それはおめでとうございます。素晴らしいですね」
「これも〈エデン〉が納品した素材をたくさん譲っていただいたおかげです。今日は改めてそのお礼に、それとシェリア様とゼフィルス様がいらっしゃるとお聞きしましたので」
今まで生産7人衆に一歩劣るくらいのLV差で追いかけていたホーゼルさんだったが、実は先日LV100に届いたのだ!
おお! マリー先輩たち以外の生産職も、順調にLV100が増えてきているぜ!
生産系は真っ先に手を尽くしてきたが、これで安泰かもしれない。ふはははははは!
加えて言うと、マリー先輩の本の最終装備を作ったのも、何を隠そうこのホーゼルさんなのである! 素晴らしい!
なにせ、すでに最終装備姿だからな! レシピも作製も、すでに済んでいるのである! タネテちゃんとハンナの装備と、同時進行だったんよ。
「話に割り込んで悪いが、ホーゼルさんとシェリアは知り合いなのか?」
「はい。ホーゼルはローゼルの兄ですから。仲良くさせてもらっていました」
「え? ホーゼルさんってローゼルの兄なのか!?」
「はい。そういえば、言っていませんでしたね」
ホーゼルさんがシェリアとは知り合いだったらしいことにも驚いたが、ここでもっと驚いたことが判明。なんとホーゼルさんは、あの〈新緑の里〉のギルドマスターにして〈3年3組〉所属の貴重なヒーラー、ローゼルの兄だという。
マジかよ! そういえば名前似てるな! 顔も似ているかもしれない。
何度も顔を合わせたことがあったのに、気が付かなかったぜ……!
「今日はシェリア様への挨拶と、ゼフィルス様に追加の最終装備レシピを授けてはいただけないかと参上した次第です」
「やる気満々だな!」
「はい。実はマリー様やアルル様の装備を見て〈トップマリー〉内が活気立っておりまして、かく言う僕もその波に打ち震えた者です。どうか授けていただければ、最高のものを作るとお約束します」
「へえ。あのホーゼルがこのように人に頼み込むとは意外です。あなたはいつも、一歩後ろに立っていましたから」
「あのような素晴らしいものを見せつけられては、自分の心に正直になるしかありませんでしたので」
どうやらマリー先輩の最終装備は、生産職人たちにも大きな影響力をもたらしているらしいな。非常に良いことだ。
「よかろう! ではホーゼルさんには、〈 重力 ( じゅうりょく ) 賢王 ( けんおう ) シリーズ〉の杖を作ってもらおうか!」
「おお!」
〈デブブ〉からツモった【 賢王 ( メルト ) 】の専用装備、その杖の作製依頼だ!
俺はマリー先輩に言ってレシピを出してもらい、ホーゼルさんに渡す。
ホーゼルさんはそのレシピを宝物のように恭しく受け取ったのだ。
「兄さん、準備はええか?」
「! 来たか!」
たったの二言。だが、それだけで俺にはマリー先輩が何を言いたいのかしっかりと伝わった。ついに着替え終わったのだ!
「さあ刮目するんや! これがうちとアルルの初めての合作! 戦闘職の最終装備や!」
「うちの打った最強の剣と鎧が、世に出る瞬間や!」
そう言ってカーテンが開かれる。すると、
「とう!」
カーテンの向こうから人影が飛び出したのだ。
クルっと縦回転で人影が回ると華麗に着地。
この身のこなし、間違いなくルル!
そのルルがしゃがんだ姿から立ち上がると、装備の全貌が明らかになった。
「これが〈 幼姫英雄 ( プリンセスヒーロー ) シリーズ〉ですか!」
思わずと言った感じに歓喜をにじませた声色で叫ぶのはシェリア。
それもそのはずだ。
その姿はまさに英雄装備というにふさわしい神々しさを放っていた。
白と黄色をベースとした鎧装備。
だが鎧にはとても見えない布なのか金属なのかという〈ダン活〉特有のオリハルコン糸で錬成された体装備だな。服の上に同色のアーマーが一部装着されていて非常にかっこいい。
頭にはティアラにも近いヘルムが着けてあってさすがは【プリンセスヒーロー】の最終装備だと主張しているな。左手にはオリハルコン金属のアームガードをしていて、右手にはアームガード無しのアンバランス。だがそれがいい。
右手に装備されているのは専用のオリハルコン色に輝く聖剣。
〈 幼姫英雄 ( プリンセスヒーロー ) の 神速超聖剣 ( しんそくちょうせいけん ) 〉だな。
なんとルルの身長と同じくらいの大きさの片手剣である。
大剣にしては小さいが、片手剣にしては大きい。そんなうっすら青光りするオリハルコン製の聖剣を振り回すルルを想像すると、もうね、スクショが光る!
「ルル! こっちだ、こっちに目線くれ! ポーズも頼む!」
「ゼフィルス様、言い値で雇いましょう! ルルの勇姿をしっかり収めるのです!」
「あの、シェリア様?」
パシャパシャパシャパシャ!
スクショが止まらないぜ!
「ふふん! 力が漲ってくるのです! 今のルルは、超強いのです! もしかしたらゼフィルスお兄様にも勝ってしまうかもしれないのです!」
「やっべぇ、今戦ったら感動に身動きができずに負けそう……!」
「はい! 存分に負けてくださいゼフィルス様!」
「……シェリア様は、ずいぶんとアクティブになられたようだ」
こうしてマリー先輩の工房は一瞬で撮影会場にチェンジ。
マリー先輩とアルルがドヤ顔で見つめる中、俺たちは超撮影を繰り返しまくったんだ!