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第2139話 30層では最強レイドボス降臨。最後のクマさ!

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第2139話 30層では最強レイドボス降臨。最後のクマさ!

――〈神界ダン〉30層。

そこは他とは少し違う雰囲気を醸し出していた。

「もう秋ね!」

「紅葉が綺麗です」

ラナとエステルが言うように、10層までは桜が舞い、春の様相だった神の庭も、20層に近づくにつれて夏の様相となり、30層に近づくごとに秋の様相となって、今は最も秋らしい風景になっている。

桜だったはずの木々はいつの間にか 錦木 ( にしきぎ ) や 楓 ( かえで ) になっていて真っ赤に染まり、風が吹けば紅葉の吹雪が舞う美しい光景となっていた。

モナたちは風景よりも実利の方が大事みたいで、到着と同時に駆け足で採集に出かけていったよ。

実は昨日はこの30層に到着した時点で〈転移水晶〉を使って帰還したため、採集もボス戦もショートカット転移陣の起動もしていなかったりする。

ここに到着した時間が少し遅かったのだ。

故に今日の朝一番で30層ボスに挑戦しようと解散したわけだな。

「30層、これまでの最上級ダンジョンではレイドボスが待ち受けていた階層ね」

「ああ。だからこそ、昨日は何が起こるか分からないからと言って解散したんだよな」

そう、30層は一種の壁。

最上級ダンジョンでは30層毎にレイドボスが登場したため、みんなしっかり気を引き締め、気を張っている。これも挑戦を今朝に回した理由だな。

しっかり体力も含めて全快にしてから挑戦しようという話になったんだ。

〈神界ダン〉の階層で言えば、1層から9層までが初級。10層から19層までが 中級下位 ( チュカ ) 、20層から29層までが 中級中位 ( チュウチュウ ) で登場したボスがレイドボス化して登場した。

その流れからすると30層では 中級上位 ( チュウジョウ ) のランク1に登場したボスがレイドボス化して登場するはず。

だが、本当にそうか?

なにせ、30層である。

ここだけ他では見られなかったオリジナルギミックが登場してもおかしくはない。

そう、みんな心のどこかで思っていたのだ。

さすがはここまで未踏破の地の最前線を突き進んできたメンバーたち。

ここには何かがあると感じているようだった。そしてそれは、間違いではない。

「ん、社が大きい」

「うむ。29層以前よりもはるかに巨大な造りになっているな」

ボス部屋の前まで来るとそれが分かる。

これまでの社とは明らかに規模が違い、大きいのだ。

カルアは口を可愛くポカンと開けたまま見上げ、圧倒されているな。

リカはそんなカルアをチラチラ見ながらも警戒を怠ってはいない。……はずだ、多分。

「みんなも察しているかもしれないが、敢えて言おう。ここのボスは、おそらく過去最強のモンスターが控えている可能性が高い」

振り返り、そう言えば、さらにみんなの表情も引き締まる。リカもしっかり前を向いたな。俺はグッと拳を握り締めながらいったん溜めて、鼓舞する。

「だが、俺たちなら勝てる! 絶対だ! さあ行くぞ! 俺に続けーー!!」

「「「「おおー!」」」」

こうして俺たちは30層のボス部屋の中に入ったのだった。

そこはこれまでに見ない異様な部屋だった。

「な、なにここー!」

「あ、あい! 愛! 愛が、愛がいっぱいなのです!」

「ルル先輩!? ちょ、落ち着いてください! ――アリスも止めて!」

「す、すごーーーい!!」

「あ!? こっちも大変です!?」

誰かが叫んだのを筆頭に、まずはルルの愛が爆発。

フラフラ進みそうになったのをキキョウが捕まえるが、アリスもフラフラ進みそうになっていて大変。なお、そっちはゼルレカが捕まえたのでセーフ。

なぜルルたちがこんなになってしまったのか?

理由はすでに察しているかもしれないが敢えて言おう。ぬいぐるみだ。

このボス部屋はなんと、可愛らしいクマのぬいぐるみがそこら中に飾られているファンシーを超えたクマフィールドだったのだ!

右を見ても左を見てもクマのぬいぐるみ。

上を見てもブランコに乗っているクマのぬいぐるみや糸に吊るされたクマのぬいぐるみなどが見られ、非っ常に見ごたえのあるファンシーインテリアの超巨大部屋。

何かのイベントと見間違えてしまうほどである。

ルルが一瞬で張り詰めた気を放り投げて身を投じようとしてしまうのも分かる光景だった。

「持って帰りましょう」

「シエラ!?」

「……いえ、なんでもないわ」

いや、ルルだけじゃなかった。

まずいぞ、〈エデン〉には可愛いもの好きが多いのだ。

こんな見たこともないファンシー部屋に女子の多くが一瞬で気を持っていかれていた。

だが、ここでついに親玉が登場する。

「グマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「きゃ!」

「あそこよ!」

大きな大きな部屋。その奥にあったのは、クマの巨大な玉座。

巨大すぎて一瞬クマと分からなかったほどの大きな玉座に腰かけるのは1体のクマボス。

「一瞬〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉かと思ったけど、違うわ。別のクマのレイドボス?」

「『看破』します! あれはレイドボス・大型〈 神熊 ( カミクマ ) 〉と出ました!」

「ゴッドなんちゃらじゃないの!?」

「 中級上位 ( チュウジョウ ) のランク1ボスとも違うわ!」

玉座に座っていたクマが四脚歩行になり起き上がる。

俺たちはこれまで幾度もクマボスを撃破してきた。もちろんニセグマボスもだ。

だが、このクマには出会ったことが無い。

悠々と一歩ずつ近づいてくる様子はまさに王。いや神だっけ?

四脚歩行で威厳ある巨大な体。45メートル級。

頭には7本の角を生やし威厳のありそうな顔をしている、今までに見ないクマらしいクマだった。

「あ、あんまり怖くないね?」

「うん。なんだろう? クマのぬいぐるみ好きだからかな?」

「もしかして、歓迎してくれてる?」

余裕あるゆっくりとした動きでこちらに近づいてくる動作はあまり怖くない。

クマのぬいぐるみをこんなに飾る主人だもん。もしかしたら、お客さんを歓迎してくれるのかも。

サチたちがそう思ってしまうのも無理もないのかもしれない。しかし。

俺たちを見下ろしたクマさんは、拳を振り上げた。怒りの顔となって。

「グマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「やっぱり怒ってるーーーー!?」

「シエラ!」

「! 『アブソープション・ワン・フォートレス』!」

ガキーンと大きな衝撃。

間一髪……!

これがこの〈神熊〉の恐ろしいところだ。

最初は歓迎でもしてくれているのかな? とでもいう感じの表情でゆっくりと、こちらを怖がらせないほどの速度でやってくるくせに、間合いに入った瞬間「なに我の聖地に入り込んでんだクマーーーーーーーー!!」と言わんばかりに剛腕を振るってくるのである。

これにやられたプレイヤーは数知れず。

クマのぬいぐるみに気を 絆 ( ほだ ) されて油断してしまい、まさかの歓迎? と思ってしまうプレイヤーの多いことよ。

だが残念ながらそんなことはない。

この〈神熊〉は自分の領域、もとい、自分のお気に入りのお部屋に入り込んだ不届きものを、決して許さない。

「グママママママママーーーーーー!」

「ラクリッテ、フィナ、トモヨ!」

「ポン! 今こそ現れるは最強無敵の盾狸王――『 幻獣霊最強 ( げんじゅうれいさいきょう ) ・ 狸王様完全盾 ( たぬきおうさまかんぜんたて ) 』!」

「『天域大結界』です!」

「『主の盾』!」

ラッシュ!

後ろ足で半分立ち上がったような姿の〈神熊〉が容赦のないクマ爪ラッシュを敢行する。その表情は今も怒りに染まっているようだ。まるで「よくも我の楽しみ空間を見てくれたな!? 万死に値するクマ!」とでも言いそうな怒りである。

「なんかすっごく怒ってるんだけど! 誰か何かした!? 『ダークハイヒール』!」

「何もしていないです! というか、強い!」

スバーンという音と共にフィナの結界が切り裂かれ、狸王様の首がまた吹っ飛んだ。

「狸王様ーーーー!?」

「次! シャロン! ヴァン!」

「『ゴッドオリハルコンランパート』!」

「『オリハルコン城』!」

〈六ツリ〉の防御スキルでもそんなに持たないほどの圧倒的火力。

たったの数秒で、6人のタンクで防御することになるほどの攻撃を繰り出してきた。

破壊されたのは2人分。シエラの防壁はよく耐えたよ。

「グマ? グマン!」

「あれ? 怒りが収まってる?」

攻撃が治まると、あれだけ怒りマークを出していた〈神熊〉がなんと落ち着いた。

よし、攻撃チャンス!

「反撃開始! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」

「とう! クマさん、お命とクマのぬいぐるみをください! 『フォースバーストブレイカー』!」

いや、ルルの要望は難しいと思うぞ!?

スザザザザンと反撃にいくつもの攻撃が刺さると〈神熊〉にまた怒りマークが宿る。

「! 防御! リカ、ロゼッタ、キキョウ、ナキキ!」

「これは……怒りモードを、操っているの?」

4人に防御スキルを展開してもらうがいきなり2人分の防御スキルが吹っ飛び追加に2名防御スキルを展開してもらって防ぎきる。

あまりに強力すぎる攻撃。

だが、シエラはこのからくりに気が付いたようだ。

さすがにクマであろうと、必殺技を使っているわけでもないのにこの火力はおかしい。これまでのレイドボスとは明らかに火力が違うのだ。

そう、原因は怒りモード。

基本はHPバーが15%以下にならないと本格的に発動しないボスの最後の大暴れで、約2分間、ヘイトを無視して大暴れする。しかも怒りモードの間は攻撃力、防御力、素早さが1.5倍になっているというとんでもないモードなのだ。

故に本気の怒りモードは終盤の限定的なモーションのはずだったが、この〈神熊〉は違う。明らかにHPがそこまで減っていないのに怒りモードを繰り出していたのだ。

なにがクマをそこまで怒らせたのか?

まあ、うん。誰しも入られたくない秘密空間ってあるよね。

「グママママママママーーーーーーーー!!!!」

「ちょー!? このクマ強いんだけど! というか、攻撃中もなかなかダメージが入らないよ!?」

「魔法は結構入ります!」

「魔法主体で攻撃するぞ! あれは怒りモードだ! 防御力が上がってるのはそのせいだ!」

「怒りモードを連発してくるってこと!?」

「ヘイト無視ですの!?」

そう、怒りモードで怖いのはヘイト無視。

怒りに我を忘れてヘイトを無視し、大暴れする。故にヒーラーや後衛のところにも飛び込んでしまうことが多くあるのだ。

だが、大丈夫。

「シエラ、タゲを切らさないよう、いけるか!?」

「任せて――『完全魅了盾』!」

「グマ!?」

瞬間、ヒーラーたちのところに向かおうとした〈神熊〉がシエラに向く。

シエラのユニークスキル『完全魅了盾』はヘイト稼ぎではない。タゲ固定だ。

故にヘイト無視とか関係ない。

怒りモードでもタゲを安定させることができる、これが【盾姫】系列の大きな強みである。

「タネは割れた、ここから反撃行くぞ! タンクはシエラの近くに集まれ!」

「「「「おおー!」」」」