第2144話 〈エースシャングリラ〉も最上級1つ攻略です!
第2144話 〈エースシャングリラ〉も最上級1つ攻略です!
10月のダンジョン週間、それは〈エースシャングリラ〉の育成に費やすことに決まった。
〈ハンター委員会〉と共闘させる前に、まず〈エースシャングリラ〉を育成しておく。
ダンジョンは50人までしか入れないので、〈エースシャングリラ〉と〈ハンター委員会〉が組んだら、〈エデン〉がキャリーできなくなるためだ。
故に、〈エデン〉が〈エースシャングリラ〉を先にキャリーしておこうという判断である。
〈ハンター委員会〉は〈エースシャングリラ〉にキャリーしてもらえばいいのさ!
さあ、楽しい楽しいレイドボス戦の始まりだー!
装備はクラス対抗戦の前からちょくちょく〈トップマリー〉の従業員さんに作ってもらっていたので、すでに30人全員が最上級ダンジョンのレイドボス戦をしても問題ない装備になっていた。
素晴らしいぜマリー先輩! 作ったのはマリー先輩じゃないけど!
マリー先輩曰く。
「うちらもお得意はんが増えて嬉しいわぁ。うちの従業員たちも適正レベルで腕が振るえる言うて張り切ってるもんなぁ」
とのこと。
〈トップマリー〉は仕事を選ぶ。最上級ダンジョン入ダン者にはもちろん適正の装備を作ってあげたいのだが、その数はさほど多くはない。
〈攻略先生委員会〉、〈救護委員会〉、〈ハンター委員会〉のたった数十人しかお得意様がいないからだ。しかも持ち寄る素材にレイドボス素材は無し。ぶっちゃけ仕事がぬるい。レベルも上がらない。
そんなところに救世主。
親ギルドがレイドボスを軽く張り倒す〈エデン〉の下部 組織 ( ギルド ) 、〈エースシャングリラ〉のメンバーの装備には、もちろん〈エデン〉が採ってきたレイドボス素材がふんだんに使われた最上級装備が作製された。
3月にクイナダが分校に一度帰った時に贈られた、あの〈森界狼新王シリーズ〉装備を超える装備がじゃんじゃん作られ、〈トップマリー〉の従業員はここまで鍛えあげた腕を振るいまくり、今の自分にできる最高の装備たちを作り出してくれたのだ。
従業員たちが、それはそれはみんなツヤッツヤしていたとはマリー先輩の 言 ( げん ) だ。
〈エースシャングリラ〉のみんなもついに装備することができた最上級装備に胸を高鳴らせ、高鳴らせて――レイドボス〈フェアリークイーン〉戦が終わる頃には燃え尽きていた。
「ふへ~」
「ミツル君、大丈夫~?」
「大丈夫じゃない~。姉ちゃんは?」
「私は、ギリギリ平気、じゃないかな~」
両ひざを地面につき、口からエクトプラズム的な何かが出ているミツルと、杖を突き、両足がちょっと小鹿のようにプルプルしているがなんとか立っているソアが居た。
そしてここにいるメンバーほぼ全員、同じような感じだった。
「はっはっは! 豪快豪快! まさかたったの1日でレイドボス戦を10回も経験できるとは驚きですな!」
「グラジオラはなんで元気なの~?」
ちなみに元気なのはグラジオラだけだ。ミツルはやや恨めし気にグラジオラを見上げているな。そんなグラジオラは腕を組んだ状態で笑い飛ばしていた。
「ちょっとやりすぎたかしら?」
「いや、そんなことないんじゃないか? こっちにはシエラやトモヨ、モニカなど優秀なタンクにたくさん入ってもらったんだし。多分、まだレイドボス・連型に慣れてないだけだな」
「そう、かな?」
小首を軽くかしげるシエラに俺はきっと違うだろうと首を振れば、横に居たクイナダが汗汗しながら半笑いになっていた。
ダンジョン週間初日である本日は、まず以前できなかった30.5層のレイドボス狩りを敢行することに決定し、未だ登場しないエリアボスを笛で呼んでちょっと肩慣らししてもらった後、30層に到着。
〈エースシャングリラ〉30名、〈エデン〉からは20人出して30.5層のレイドボス、〈フェアリークイーン〉戦に臨んでもらったのだ。10回くらい。
そして10回が終わった時、みんなこんな感じになっていたのである。
うん、やっぱり連型に慣れていなかったからだな。
「だが、今日1日でみんなのLVが70まで育ったのは良きだな」
「ええ。これなら〈ネファイブ〉と戦わせられるわね」
サブマスターのシエラとも思いは同じの様子!
〈ネファイブ〉はまず〈フェアリークイーン〉でLV70まで育成してから挑むべしだ。
ということで2日目は〈ネファイブ〉を周回してもらった。
大丈夫、俺たち〈エデン〉が全力――ではないが、ちゃんとサポートしながら戦ったのでそんなに苦戦はしなかったよ。エステルには毎回〈戦艦・スターライト1号艦〉を出してもらって感謝だったな。
あ、ラナはそんなに宝剣を撃たないように。〈ネファイブ〉が簡単にやられちゃうからな?
「〈ネファイブ〉も順調ね! これなら明日はバルフのところに行っても大丈夫そうだわ!」
「いい!?」
本日の戦歴、10戦全勝、戦闘不能者無し。
途中の守護型ボスやエリアボスもガンガン倒してきたので、〈エースシャングリラ〉のLVは73から74にまで成長している。
本当なら〈ネファイブ〉でレベルキャップのLV75まで育てた方がいいのだが、俺たち〈エデン〉も20人参加するのでバルフ戦も余裕だろう。
あ、ラナは本気出さないようにね?
3日目、バルフ戦、12戦全勝、戦闘不能者無し。
だが、なぜか全て終わった時には、初日と同じような惨状が広がっているんだ。
不思議!
「なんで、〈エデン〉は、〈バトルウルフ〉戦になると、こんなに気合が違うんだろうね?」
「わ、分かる~」
ミツルとソアが一昨日と同じ姿で気になることを口にしているな。
「ん? そんなに違うか?」
「え? そ、それはもう、全然違いますよ?」
「だね~。なんか本気度が違うというか、好戦的というか……ゼフィルス先輩、〈ネファイブ〉とかはサポートに回ることが多かったのに、〈バトルウルフ〉相手だと結構前に出てきてたもん。普通に戦う人も多かったし」
「…………」
道理で今日の戦歴が昨日よりもだいぶ多いと思った。
てっきり〈エースシャングリラ〉のみんなもレイドボス戦に慣れてきたのかな、と思っていたのに。そうじゃなかった、だと?
「もしかしてゼフィルス先輩、自覚なかったん、ですか?」
「全くなかった」
「う、うん。なんかみんなそんな感じだったもんね~」
ミツルが目を丸くして聞いてきたので深く頷くと、普段動揺とかあまり見せないソアがなんか動揺して苦笑いしてた。
どうやら〈エデン〉は〈バトルウルフ〉が相手だと、人が変わるらしい。
マジ? おかしいな。心当たりを探ってみたら、結構該当する気もする……。
よし、気のせいということにしておこう。
「これでみんなのLVも75になったし、明日からはいよいよ〈猫界ダン〉だな。油断できないダンジョンだぞ?」
「いえ、僕たちにとっては〈樹界ダン〉ですでに油断できないダンジョンです!」
「はい! 最上級のネコちゃんは可愛いですか!?」
「姉ちゃん!?」
「可愛いぞ。楽しみにしておくといい」
「やったー!」
「ミツル、〈猫界ダン〉のネコは可愛いと同時に超強い。それこそ〈樹界ダン〉なんかよりもずっとだ。適正レベルが10違うだけのはずなのに、体感では20くらい変わってくるから気を付けろ」
「お、恐ろしいことを聞いた気がします……」
うむ。〈ダン活〉のネコは強いのだ。気を引き締めなおしたミツルに満足して、その日のレイドボス周回はお開きになった。
「もう〈救護委員会〉も〈攻略先生委員会〉も〈ハンター委員会〉もはるか後方になってしまいましたね」
「ユナ、ユナ、私たち、こんなに先に進んじゃって大丈夫なのかな!?」
「気が付けば、最上級ダンジョンの攻略者の証が胸にあるんだが、どうか?」
「普通に手に入れちゃったけど、これよくよく考えてみたら偉業なんね!? 私も言われて今気づいたんね!?」
ざわざわ、ざわざわ。
〈樹界ダン〉から帰還して〈最上ダン〉へ戻ってくると、〈救護委員会〉と〈攻略先生委員会〉と〈ハンター委員会〉の方々がこっちを二度見、三度見してざわめいた。
「え? ええ? えええええええええ!?」
「ちょ、あの胸に輝いている攻略者の証、〈樹界ダン〉のやつじゃねぇか!」
「うっそ!? もしかしなくても、〈樹界ダン〉を攻略しちゃったの!?」
「あれ知ってるぞ! 〈エースシャングリラ〉だ! 1年生も混ざっていたはずだが……」
「いち、ねん、せい? いち、ねん、せい、ってなんだ?」
「おい、こいつ1年生が認識できなくなってるぞ!」
「ひっぱたけば治るのだわ。えい!」
「あひゅんっ!? あ、ありがとうございます! 目が覚めました!」
「羨ましい……」
「混沌!!」
〈エデン〉に続く最上級ダンジョン攻略の報は瞬く間に学園中に広まったようだ。
すさまじくざわめいている。
それと同時にさっきまで疲れ切っていた〈エースシャングリラ〉の面々もようやく自覚が出来てきたようで、「あれ!? いつの間にか〈樹界ダン〉攻略済みになってんだけど!?」「私たちいつ攻略したっけ!?」みたいな雰囲気になってた。
ちょっと、スパルタ過ぎたか?
だがダンジョン週間は9日しかないので3日で攻略は仕方ないのだ。
とりあえず、〈エースシャングリラ〉も最上級ダンジョンの1つを攻略です!