第2152話 〈エデン〉を追い詰める美味すぎ究極料理様!
第2152話 〈エデン〉を追い詰める美味すぎ究極料理様!
「あ、みんなお帰り~」
「ハンナ! それにみんなも、用意してくれたのか!」
「うん。私たちもお昼取ろうと思って戻ってきたんだ~」
「ミーア先輩の最高料理、これは逃せませんでしてよ」
「は、はい! 私たちも食べてみたい、です!」
「もちろんだ! みんなで食べようぜ!」
ギルドハウスに帰還したらハンナたちがホールで準備して待ってくれていた。
そりゃみんな食べたいよな!
もちろん情報を流していた俺はOKしてみんなで昼からプチ打ち上げとしゃれこんだんだ。
こりゃ、ミリアス先輩も呼べばよかったぜ。いや今から呼ぼう!
「ここでスペシャルゲストの紹介だよー! なんと、ミーア先輩が来てくれましたー!」
「お呼ばれしてきちゃった」
「ってもう呼ばれてるー!?」
さすが、さすがだぜハンナ!
誰よりも先を見据えてる! さすがは〈生徒会〉生産隊長!
もちろん俺も大歓迎! ミリアス先輩が来るんだったら俺が料理を受け取りに行かなくてもよかったんじゃない? なんてこともその辺に蹴っ飛ばして無礼講だ!
「みんな、配置につけ!」
「〈スッキリン〉はこっちだよ~」
「助かるわハンナ」
みんなリフレッシュして席に着くと、ミリアス先輩とハンナが指揮する〈アークアルカディア〉の生産メンバーがメニューを次々とみんなに配っていく。
「俺たち〈エデン〉はこの後レイドボスだから、最初の一品目は自分にあったバフを選ぶようにな!」
それぞれ自分にあったバフの上がる料理アイテムを頼むと、いよいよミリアス先輩が待ってましたと言わんばかりに動き出す!
「それじゃあ出していくよ! お待たせしました! これが最高にして究極、私が作れる味の神髄の最高峰を探求して作り上げ、私自身もあまりの美味しさに3時間記憶が飛んだ逸品! ――〈究極ハンバーグ様〉だよー!」
「「「「おおおお!!」」」」
「続いてこちらが私が2時間半意識が飛んだ逸品! 〈究極唐揚げ様〉ー!」
「「「「おおおおお!!」」」」
「そしてこちらが私が2時間感動して食べ続けて5時間動けなくなった逸品! 〈究極王様カレー様〉だー!」
「んんんん!!!!!!」
次々登場する究極料理たち。
ミリアス先輩、分かってるな。
紹介文も秀逸。本当かどうか分からないが、なんか凄そうな紹介の料理たちにみんなが大注目&歓声を漏らす。
いや、まず香りだけで超すごい。よだれがあふれ出しそうだ。
「カ、カルア、垂れてる、よだれが垂れてるぞ!」
「んんん。これは耐えられない。不可避!」
うちの一番の食いしん坊なんて究極のカレー様が出てすでによだれが決壊していた。
リカが慌ててハンカチで拭うが、おそらくタオルが必要になるな。
「あ! ハンナ、〈幸猫様ファミリーズ〉にもお供えを!」
「そう言うと思って〈究極ステーキ様〉を貰って来たよ」
「ナイスハンナ! ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉〈神猫様〉! こちら究極にして最高の料理です! 一緒に食べましょう! そして素敵なドロップをお願いします!」
「またゼフィルス君が私の料理を捧げて祈ってる……!」
お祈り、大事!
運ぶだけでその香りにやられそうなステーキを運びきり、真剣にお祈りする。
是非〈幸猫様ファミリーズ〉の方々も、この味を味わってください!
究極料理をくださるミリアス先輩には感謝しかないぜ!
「さあ、配り終えたかな? それじゃあ音頭は、ゼフィルス君、お願いね!」
「任されたぜミリアス先輩。それじゃあみんな食べようか! いっただきまーす!」
「「「「「いただきまーす!!」」」」」
席に着いていただきます!
俺の目の前にあるのは、〈究極ハンバーグ様〉だった。
ハンバーグは至高にして素敵。
嫌いな人なんてまずいないだろう。だって美味しいんだもん!
ナイフを通すと、豆腐かと言わんばかりにほとんど手ごたえ無く肉が斬れる。
そしてぶわっとあふれ出す肉汁と香りでガツンと脳をやられた気分だ。
おかしい。まだ食べてないのに、香りだけでやられそう。
こんなの、実際食べたらどうなってしまうと言うのか。
もちろん勇者としてそんなことは許されない。勇気をもってこの究極へ挑む!
ささっと一口サイズに斬ったら、究極デミグラスソースの掛かったハンバーグを口にパクリと放り込む。
「~~~~~~!!!!」
ドカンと来た。
まるで〈六ツリ〉スキルの直撃を受けたかのような衝撃。
一口噛めば肉汁があふれ出して口の中を蹂躙する。
意識が口の中に持っていかれる感覚。
肉の旨味が噛めば噛むほどあふれ出して、幸せという名の攻撃を仕掛けてくるのだ。むしろ蹂躙ウェルカム。こりゃ、記憶や意識が飛ぶのも分かるというものだ。
「美味い……!」
おお、無事帰ってこられた。俺は耐えられたぞ!
見れば帰ってこられなかった人物が一定数いるな。
特に料理アイテムを食べ慣れていないであろう1年生たちは多くが一口目で固まってる。
ミリアス先輩もその光景を見て、分かる、分かるよと深く何度も頷いているくらいだ。
いや、これ、ガチで美味すぎて人生狂わすわ!
もういつもの料理には戻れないと言い出す人物が出ないことを祈るんだぜ。
「もう、いつものカレーには戻れないかも」
やばい、早速出ちゃった!
どうやらカルアは〈究極王様カレー様〉にやられてしまったようだ! そりゃ様が2つも付いているカレー様だもん!
どうしよう? さすがに俺の〈ダン活〉知識にも解決策はないぞ!
そうだ、こういう時は――〈幸猫様〉だ!
俺はパッと振り向いた。でもそこにあった皿にはすでに〈究極ステーキ様〉は載って無かったんだぜ。
〈幸猫様〉たちもう食べちゃったの!?
そのお顔は、大満足というようなキラキラだった気がしたんだ。満足いただけたようで良かったぜ。
おお〈幸猫様〉、カルアをお救い下さい。
そんなことを祈りながら、俺も冷めないうちにハンバーグを平らげたのだった。
「美味しかったな」
「ん。大変だった」
「何とか勝利できたが……」
「たはは~。死屍累々だね~」
リカ、カルア、メルト、ミサトが椅子の背もたれに体を預けながら周りを見渡せば、そこに無事な人なんてほとんどいなかった。
手強い者と戦った証拠だ。
1年生なんて、フォークを口の中に入れた態勢で固まっている者もいる。
「だが、バフはすさまじいものがついた。私なんてSTRとVITが3割増しに加え、『HP自然回復LV10』スキルが付いたぞ?」
「ん。〈究極王様カレー様〉の力はすさまじかった。STRが2割上昇、AGIが4割上昇。『火属性大耐性LV10』と『毒・火傷無効』が付いてる」
「みんな似たようなものだな。俺はINT5割上昇。『闇属性魔法威力+50』がついた」
「たは。私はRESが5割上昇で、『回復魔法威力+20』と『MP自然回復LV10』がついたよ~」
みんなそのとんでもないバフに目を疑う。
ステータス上昇だけでもとんでもない数値が上がっているのに、なんとスキルも超強いのが付与されているのだ。
まさに決戦用と言って差し支えない。
まあ、決戦するにはまず究極料理に打ち勝たなければいけないのだが、これに慣れないといけないとか、今後の人生が心配!
そんな〈エデン〉〈アークアルカディア〉〈エースシャングリラ〉メンバーだったが、最初に動き出したのは料理アイテムを食べ慣れている〈エデン〉だった。
「みんなー! そろそろ行くぞー!」
「やっとね! もう待ちくたびれちゃったわ!」
「この究極料理は危険ですね。まさか1時間半も動けなくなるとは思いませんでした」
うむ。比較的料理アイテムを食べ慣れている俺たち〈エデン〉でもこれである。
全員が動けるようになるまで1時間半も要したのだ。
〈アークアルカディア〉や〈エースシャングリラ〉の面々の中にはまだ動けない、もしくは意識を手放している者もいるっぽい。動けるようになるのはいつになるか……。
やはり、強力なバフは体に負担が掛かる、ということだろう。(違う)
ということで、一足先に復活した〈エデン〉は、料理アイテムの効果が切れないうちにレイドボスへ挑みに行こうと思います!
「みんな、いってらっしゃーい」
「お気をつけて、ご武運を!」
「い、いってらっしゃい、ませ!」
「あとで料理の感想も聞かせてね~」
「おう。あとは任せるぜ!」
ハンナ、アルストリアさん、シレイアさん、ミリアス先輩に見送られ、俺たちは午後の攻略に乗り出した。マジで後のことは任せる。
みんなバフの数値が高いので、まずは慣れるために50層のレイドボスを屠り、感触を確かめたところでいよいよ60層へ向かう。
「ここは、禍々しいわね」
「いったいどんなレイドボスなんでしょうね」
シエラとリーナが呟く。
それもそのはずで、60層の門はいつもと変わって真っ赤なオーラと黒寄りの赤で彩られた、なんとなく禍々しさを感じさせる門だったのだ。
この中で待ち構えるレイドボスは、ただ者ではない。そう感じさせる門だった。
さすがは60層という特別な階層に待ち構えるボスだぜ。門すら迫力が違う。
故に、俺たちもかなり準備してきた経緯があった。
「なんだか、この中にいる相手は、私がやっつけなくちゃいけない気がするわ」
「ラナの勘か?」
なんかラナの勘が中にいるレイドボスを滅せよと叫んでいるっぽい。
やべぇ。なにその良すぎる勘。マジラナなんですけど……。
いざ突入。
中で俺たちが見た者、それは。
「『看破』だよ! む、むむむ!? な、あれは、大魔王!? 〈大魔王・イビルゴッドドラゴン〉と出たんだよ!」
それは魔王を超える大魔王。しかも「ゴッド」付きに加えて「ドラゴン」の名を持つ邪神で竜の大魔王。
ダンジョンの終わりの足音が聞こえて来た気さえ感じる――強大なボスだった。