第2158話 〈神界ダン〉深層にはオリジナルボス出現!
第2158話 〈神界ダン〉深層にはオリジナルボス出現!
昨日はあの後、マリー先輩とタネテちゃんから出来立てほやほやの残りの3着、エミとユウカ、そしてカイリの専用装備を受け取って帰還!
エミは黄色を基調としたサチの色違いのふわふわのスカート装備。
もちろん金属アーマーな部分は無いので可愛らしい感じに仕上げてある。
ユウカも青色を基調としている、サチやエミと雰囲気は同じなのだが、ユウカの装備の方が露出が少なくて弓使いっぽい仕上げになっているな。スカートにもスリットが入っている。
カイリは〈 迷宮教官 ( ダンジョンインストラクター ) シリーズ〉とあって、調査探索の教授っぽい装備になっている。オレンジっぽい色を基調として、肌を見せない感じの革をベースとした軽装備。下はハーフパンツで上はコートにも似た感じの長袖だ。コートの背中側にはたくさんのポケットがくっついている。
「見て見てサチっち! ついに私たちの装備も完成だよ!」
「これで明日からの大魔王戦、もっと火力を出せると思う!」
「うわぁ! なにこれすご! 性能すご! というか私の大強化フルバージョン、これで本当にいいの!?」
3人とも、すごく喜んでくれたんだ。サチも一緒になってきゃぴきゃぴ騒いでいるのが最高。
これで明日の大魔王戦もさらに効率的になること間違いなしだな!
翌日からは結局大魔王を周回することになって、待ち構えていた大魔王が「ふははは! よく来たな!」と最初は息巻いていたのに、時間が経つにつれ「ふははは! よく――また来たの? もうやめないか? いや、我は何を?」みたいな困惑しているように見えるようになってしまったような気がするほど狩りまくった。いや、大魔王がそんなことを言うはずがないからもちろん気のせいだ。
なにせ、必要な素材がシリーズ装備9種分だからね、1人辺りの装備が8個から9個なので、合計約75個も装備を作るのだ。そりゃ素材も足らんわ。
そんなわけで、予想以上に時間が掛かり、俺たちが61層に踏み出したのは、約1週間後の日曜日になってからだった。
「やっと61層ね! もう大魔王戦はしばらくいいわ! 飽きちゃったもの」
「だ、大魔王様……!」
ラナの飽きちゃった宣言に俺は大魔王様への涙を禁じ得ないのよ。
でも今回集めたのは〈エデン〉分の最低限。
〈エースシャングリラ〉メンバーの装備を作る時はまた周回しなくちゃいけないから、その時までに元気になっててね大魔王様!
「〈神界ダン〉は不思議ね。61層は上級中位ダンジョンのランク10、〈時計の狂塔ダンジョン〉のボスなのね」
「59層が上級中位ダンジョンのランク9、〈 爬翔 ( ハショウ ) の火山ダンジョン〉でしたからね。どうなるのかと思いましたが、こうなりましたか」
シエラとエステルが言ったように、61層のボスはまだ 上級中位 ( ジョーチュー ) のボスだった。次の62層から 上級上位 ( ジョウジョウ ) ボスになるわけだ。
「ここからは深層に突入している可能性があるから、十分に気を付けよう。 上級中位 ( ジョーチュー ) 級だとしても油断するなよ」
「「「おおー!」」」
〈万界ダン〉まで、最上級ダンジョンでは1層から30層までが浅層、31層から60層までが中層、61層からは深層だった。
その理屈で言うと、ここからは深層になるのだ。
中層と深層だとその難易度がガラッと変わる。なにせ、 LV上限 ( レベルキャップ ) が解放されるからだ。
中層までは通常モンスターではLV70までしかレベリングできなかったのが、いきなりLV75までレベリングできるようになるのである。モンスターの強さももちろんグッと上がるというものだ。
問題なのが、〈神界ダン〉に突入した時点で俺たちのLVはカンストしており、ここでグッとモンスターが強くなっても俺たちはあまり強くなれない点だな。
まあ、だからこその最終装備なわけなんだが。
〈神界ダン〉はLVによるごり押しができないので、ドロップを狙い、装備を随時更新しながらゆっくりと進むべし、これが〈神界ダン〉のセオリーだ。
「『看破』! 第一形態は〈ゴッド・シックスティ・ワン・ワールドケイ〉だよ!」
「よし、普通のゴッドに戻ってるな!」
「普通のゴッドって何だろう?」
「むむ、私はこのボスあまり得意ではないのだが……」
時計型ボス、〈時計ダン〉の最奥ボスがレイドボス化したモンスターを俺たちでがっつり狩りに行く。
30層ごとに登場する特殊なオリジナルボスは〈ゴッド〉と頭についていない。
他のリクルート&レイドボス化したボスたちにはみんな頭に〈ゴッド〉と付く、そこが見分けポイントだな。ちなみに〈ゴッド〉と付くボスの方が弱いです。不思議!
でも時計型ボス〈ワールドケイ〉はヤバい。
なにせ、時を操るボスだ。それがこのリアルではかなりクリティカルヒットする。
前にも話したかもしれないが、この世界ではパワーやディフェンスはともかく、スピード系をいじられると感覚が大きく変わる。
バフやデバフでも、スピード系は特に感覚が変わるので苦手とする人は多いのだ。リカも下級職の時はパリィ系スキルをよく使っていたのでスピードが変わると失敗しやすくて苦手としていた。まあ、今は上級職になって 自動連続 ( オート ) パリィを覚えたので、スピードを変えられても問題なくなっているけどな。
だが、この〈ワールドケイ〉の時を操る行為はマジで半端ない。
時間の流れを遅くしたり、速くしたりしてくるのだ。
それも個人とかじゃなくフィールドを対象としているので全員の動きが遅くなったり速くなったりして事故が頻発する。
しかも時にはタイムストップまでしてくるのでみんなで一斉に一時停止状態になったりもする。
大縄跳びを想像してほしい。あれで縄が速くなったり遅くなったり、時には止まったりするのである。
リズムバラバラのぐちゃぐちゃになって事故が起こりまくったり失敗しまくったりするのも分かるだろう。
ということで、〈ワールドケイ〉はゲーム〈ダン活〉でもトップクラスにやりにくいボスとして知られていた。
ここはそんな〈ワールドケイ〉のゴッドレイドボスが登場する。
するとどうなるか?
なんとこいつ、俺たちの動きだけ遅くして自分は速くするなんてこともしてきたのである。
「ル・キ・ア!」
「『タ・イ・ム・ス・ト・ッ・プ』!」
俺たちの動きが遅いのにレイドボスだけ速いというとんでもない状況なのに、レイドボスは容赦なく全体攻撃魔法を放ってきた。
何とかルキアが間に合い、全体攻撃魔法をストップさせたところをモニカがブレイクして打消し、事なきを得る。おっと、速度が戻った。
「ゼルレカ! 素早さデバフをじゃんじゃんプレゼントしてやれ! ノエル、こっちは素早さと移動速度へ常にバフをかけ続けてくれ!」
「任せろ!」
「了解だよ~!」
ちょっとでも速度の差を埋めるために味方には素早さのバフ、ボスにはデバフを忘れない。
基本的にこれくらいしか対処方法が無いのだから厳しい。
あとは、またこっちの動きをノロくされてボスの動きが速くなったら、相手が魔法を使ってなくても先出しで防御スキルを使っておくとかすると安全度が上がるな。
「第一形態、突破!」
「次はユニークスキルに気を付けて!」
第一形態の〈ワールドケイ〉を突破しても、次は〈時計ダン〉のレアボスがレイドボスで出てくる。
普通に〈ワールドケイ〉のパワーアップ版なので、スピードを操る術も健在だ。
俺たちはみんな苦労しながらも時間を掛けて第二形態も突破した。
「何とかなったわね」
「第二形態だけで倒すのに15分も掛ったのだよ。ここのボスはなんて非効率なのかね」
「ニーコに激しく同意だな。ボス周回するのなら、なるべく短時間で倒せるボスが望ましい」
「あ、ゼフィルスがもう倒した後のことを構想しているわ!」
第三形態への形態変化中に補給しながら軽口を交わす。
俺たちの時間をゆっくりにさせたり止めたりするものだからいつもよりも攻略に時間が掛かるのだ。ニーコの不評も分かるというものだ。
「次の第三形態は、どこのボスがくるのかしらね」
「とりあえず、時計じゃないことは確かじゃないかしら? ああいう形のボスは他に戦ったことないもの」
「いや待て、なんか、あまり姿かたちが変わってないぞ」
「へ?」
ノッポな古時計型の第一形態から第二形態でアナログ時計が3つになって大変だったが、今度のは天使要素でも加わったのか、5つの機械の翼をはためかせた巨大時計。ノッポではなく、丸い姿のアナログ時計に多くの歯車が組み合わさっており、5つの大きな翼が円を描くようにくっついているといういびつな姿で現れたのだ。
どう見ても時計型。
しかし、ラナたちが知る限り時計型のボスはもういないはず。
つまりこれは――オリジナルボスだ。
「『看破』だよ! む、むむむ!? こいつは〈大時計堕天使・フォールドケイ〉と出たのだよ!」
「〈ゴッド〉が付いてない!?」
そう、第三形態として登場したボスは、なんとこれまで30層ごとに登場した〈神熊〉や〈大魔王〉以外には必ず付いていた〈ゴッド〉の名が無かったのだ。
つまりは――オリジナル。
普通のボスをレイドボス化したのではなく、30層毎に登場するようなオリジナルにして強力なボスという証左だった。
「ノンンンンンンンン!」
ボスの向かって右の翼が折りたたまれ歯車が回ると、スキルエフェクトが発生する。
「! スキルの発動が遅いです!」
「魔法の発動ならいつも通りだ!」
「スキルの時間だけ遅くされた!?」
それは『スキルノロノロタイム』。
俺たちの発動するスキルは、全て発動をかなり遅くされてしまったのだ。
「防御スキルに大きな影響が出るわ!」
「結界使いを防御担当にスイッチ! カタリナ、ラナ、防御!」
「お任せくださいまし! 『絶界』!」
「私に任せなさい――! 『神の守り』!」
続いて放たれる強烈なボスの攻撃魔法。
防御スキルのみを頼っていたらアウトだったな。防御魔法を使えるカタリナやラナ、ミサトやラクリッテをタンクにして防ぎ切り、反撃をガンガン叩き込む。
「ノンンンンンンンン!」
「今度は左の翼と右下の翼が折りたたまれたよ!」
「スキル、治りました!」
「代わりに魔法が遅くなりましたわ!」
「ちょ、遠距離攻撃の銃撃の速度が超ノロノロになったのだが~~!?」
もうお察しいただけただろう。
あの5枚の翼はそれぞれが何かを遅くすることに対応している。
右の翼が折れたらスキルが遅くなり、左の翼が折れたら魔法が遅くなる。
右下の翼が折れた場合は遠距離攻撃全般が対象で、上の翼なら通常攻撃が対象、左下なら俺たち自身が遅くなる。
もちろん折りたたまれた翼が広げられれば解除されるのだが。
複数折りたたまれることもあるため自分がどういう状態になっているのかしっかりと見極めるのが攻略のコツだ。
さらにもう1つ。
「あ! 右の翼が取れた!?」
「スキル、動きません!」
「発動もしなくなったよ!?」
折れるだけではなく、取れる場合もある。
その場合はストップ状態だ。また生えてくるまでタイムストップである。
「取れる直前、特徴的なスキルエフェクトがありましたわ!」
「全ての翼には意味がある。あの翼が折れたり取れたりしていると、特定の行動に影響が出るぞ!」
特に左下が取れるのが厄介。俺たち全員動けなくなってしまうので無防備に攻撃を喰らいまくる可能性がある。
そのためまずはスキルエフェクトを見極め、動けない間は防御スキルの後ろに隠れているようにしなければならない。
まあ、左下の翼はそう簡単に取れないので安心してほしい。
ギミックは単純だが、やりにくいことこの上ない。
結局ギミックを理解して行動に移すまでに7分。そこから慎重に慎重を重ねて攻撃し、20分掛けて第三形態も無事に撃破した時には、挑んでから1時間近くが経過しようとしていた。
「このボス、やりにくいわー!」
「周回はやめておこうな」
特大なエフェクトの海に沈んでいくボスを見ながらぷんぷんするラナに相槌を打つ。さあ、ここからはお楽しみの〈金箱〉タイムだな。