第2165話 学園祭1日目、警邏活動中の筋肉ハプニング!
第2165話 学園祭1日目、警邏活動中の筋肉ハプニング!
「はぁ、偶然なのね?」
「はい。偶然会いました! せっかくなんで、行く方向も同じだしってことで、〈S等地〉へ一緒に行くことになった感じです、はい」
「……分かったわ。もう普通に話しても良いわよ」
多分、無罪放免。
よかった。なにがよかったのかはさておき、俺が朝っぱらからデートにしゃれこんでいたというあれやこれやはもう追及されることはなさそうだ。
ふう。シエラがジト目じゃないとなんでこうも緊張してしまうのか。今回は吊り上がった目からニコォまで行ったからな。
俺にもよくわからないけれど、言葉遣いも丁寧になってしまったのだ。
朝の散歩をしていたら、偶然にもタバサ先生と遭遇した。
〈秩序風紀委員会〉のギルドハウスも〈攻略先生委員会〉のギルドハウスも〈S等地〉にあるので向かう方向同じだね。じゃあ一緒に行こうか。
そんな感じのそんな感じがあって、あんな感じになった感じだ。(おどおど)
そうしっかり説明したらシエラは納得してくれたよ。ジト目になったもん!
「あら? シエラさん。それに、ゼフィルスさん、も?」
「な! 2人で一緒に来るなんてどういうことなの! ゼフィルス、説明しなさい!」
なお、一難去ってまた一難。
今度はリーナとラナとばったり。そういえば今の俺、シエラと2人やん。
これ、タバサ先生の時と状況一緒! 俺の『直感』さんがまたも警報を鳴らす!
「私から説明するわ」
「あ、ちょっと待ってシエラ! 今なんか『直感』さんが反応したから俺に説明させて!」
「却下よ! やっぱりシエラが説明して。ゼフィルスは『直感』頼りに重要なことを言わない可能性があるわ!」
「な、なんて鋭い指摘!?」
結局シエラが説明することになり、目を吊り上げたラナが完成した。
でもシエラより恐ろしいと思わないのはなんでだろう?
「もう! ゼフィルスったら、タバサ先生と出勤デートした挙句、シエラにパスですって!? シエラ、今度は私の番よ!」
「もう着くわよラナ殿下」
「ちょっと遠回りしてくるわ!」
「ラナ殿下、そういうことでしたらわたくしも1つ」
「1つ、じゃないわリーナ。私とゼフィルスは一緒に出勤しただけよ。何もなかったんだから」
シエラが「何もなかったんだから」と言った場面で俺にジト目の横眼を送ってきます。
結局3人でわしゃわしゃ言って収拾が付かなくなりそうなところでラナの従者のエステルとシズが宥め、俺たちは無事〈秩序風紀委員会〉のギルドハウスに到着したのだった。
◇ ◇ ◇
「みなさん、今日は集まっていただき感謝します。欠席者はゼロ。素晴らしいですね。では、昨日までの取り決めの通り、各担当区域に向かってください。9時には警邏開始です。10時の開催までに不備は残らず取り除きましょうね」
〈秩序風紀委員会〉で朝礼、クエナが壇上ではきはきした口調でしゃべる。
さすがは総隊長。慣れてるなぁ。
「それではみなさん、学園祭期間中、よろしくお願いしますね」
「「「「おー!」」」」
こうして俺たちは持ち場に散っていったんだ。
「ゼフィルスさん、おはようございます」
「おはようアイギス。ああ、今日はアイギスが癒しだ」
「え!? あの、それはいったいどういう?」
「ゼニス、ちょっと撫でさせてもらっても良いか?」
「クワァ!」
いかん。口がちゅるんと滑った。
朝からシエラやラナ、リーナから問い詰められたからな。
なんだかアイギスが聖母に見えてしまったんだ。ゼニスはさながら、聖母を守る守護竜と言ったところか。
俺が撫でさせてと言うと喜んでやってきてスリスリ体を押し付けてくるゼニスが大変可愛い。
「うう、まさかのアイギスさんの1人勝ちですの?」
「リーナさん、ゼフィルスさんが今日は少し変なようですが、何か知っているんですか?」
「いえ、これは言わない方がよろしいですわ。アイギスさんはそのままでいらして」
「は、はい???」
ゼニスから癒し成分を分けてもらうと、いざ出発だ。
第一アリーナは去年も警邏の担当だったが、その時は主に外周だった。今回は内側だな。
めちゃくちゃ大きいので、第一アリーナだけで30組90人の警邏班がローテーションを組んで巡回しているというのだからすごい。
こんなに警邏班が居れば、俺たちの出動なんてそうそうないだろう。
そんなことを思っていたら。
「今日はこの観客席の一角に筋肉接待サービスエリアを設けた! さあ、一緒に筋肉しようじゃないかー!」
「あの! そこで筋肉されると困ります!」
「あ! その腕章! 〈秩序風紀委員会〉の方ですか!? そこの筋肉たちが観客席の一部を占拠してしまって!」
「え? ちょっと待って、その人勇者さんじゃ!?」
いきなり特大のハプニングに遭遇したんだ。
見ればバイトっぽい人たちが困ってる。
しかも筋肉接待って、初っ端から飛ばし過ぎなんじゃないの??
すぐに要請を受けて出動する。
「リーナ、報告は任せた」
「了解ですわ」
「そこの筋肉さんたち! 観客席の一部を不当に占拠しちゃダメですよ」
「ぬ! おお! ゼフィルスではないか! 久しいな! 今日も良い筋肉じゃないか!」
「ってマッスル先輩!?」
数十人のマッスルたちが筋肉を見せつけるようなタンクトップ姿で観客席の一部を占拠していたのだが、その1人に見覚えがある。あれは、〈筋肉は最強だ〉を立ち上げた伝説の筋肉、卒業していったはずのマッスル先輩だ! 本名は忘れた。(ランドルです)
「なんでマッスル先輩が観客席の占拠を?」
「なに、今年からはレイドボスと自由に戦えるのだろう? 我が心の筋肉たちと、熱い筋肉と魂の叫びを上げたくてな! 俺たちも参戦することにしたのだ! これは席の確保の一環である」
…………少しだけ俺たちが原因なのも交じってる!
レイドボスの召喚盤は、筋肉まで呼び寄せてしまうらしい。
「我々はここで筋肉を見る者を筋肉接待で招き、共に筋肉わっしょいするためにこの辺の席を筋肉で確保したのである」
お、おう。半分以上が筋肉語で占められていて頭の中で解析するのに時間が掛かったが、なんとか分かったぞ。
出場する仲間を観戦したいって意味、だよな? 多分、近くにいる人を巻き込んで。そして接待し、あわよくば筋肉を気に入ってもらおうということだろう。
あ、これ、布教活動だ!
「えっと、筋肉が、筋肉で、筋肉ですわ!」
あれ!? いつの間にかリーナが 電波 ( 筋肉 ) ジャックされてる!? 筋肉ですわ!?
どうやらリーナではこの難解な筋肉語はよく分からなかったらしい。
俺が代わりに〈秩序風紀委員会〉と連絡を取る。
「『あ、よかった。ヘカテリーナさんの説明ではよくわからなかったので』」
うむ、オペレーターの人も混乱していたようだ。筋肉の侵食率がヤバい。
「あー、マッスル先輩、そして筋肉たちよ! 〈秩序風紀委員会〉から勧告があった。席を確保するのは構わないが、ここで筋肉接待なる他の客を巻き込むような組織立った行動は取り締まりの対象になる、とのことだ」
「「「「????」」」」
筋肉の多くは訳が分からないという顔をしていたが、マッスル先輩は歯を見せるようなニカっとした笑いで頷いた。
「安心せよ。我らは筋肉の魂を心に秘めた者だ。惹かれ合う筋肉以外を無理やり引き込むことはしないさ」
「本当かなぁ」
俺、結構「一緒に筋肉しようぜ」って筋肉から誘われるんだけど?
もちろん俺は一緒に筋肉したことはない。
未だにあの筋肉語は解析できないんだよなぁ。
そして頷いたが最後、俺もサターンたちのように望まぬ筋肉に染まる可能性高し。
今後も誘いは断る所存だ。
他にも、席を確保するのは構わないが必ず誰かが座っているように、などと一応注意勧告だけしてその場を離れることにしたのだった。
バイトの人たちにも、あまり周囲に迷惑をかけるようだったらまた呼んで欲しいと言っておいたよ。
そういえば、1年生の時も2年生の時も、警邏したとき最初のハプニングは筋肉関連だった気がする……!
学園祭、筋肉との遭遇率高くない!?