第2167話 一難去ってまた一難。ゼフィルスは顔が広い!
第2167話 一難去ってまた一難。ゼフィルスは顔が広い!
「インサー先輩も来てたのか!」
「私たちだけじゃないさ! 見よ! あそこにいる我が精鋭たちを!」
「おお! 元〈ギルバドヨッシャー〉のメンバーがずらりと!! オサムス先輩もいるじゃないか!」
「ああ。私とオサムスは同じチームに所属しているからな。ゼフィルス氏との有意義な考察会、そしてレベル上げを経験した私たちはここ最近負けなしさ!」
「マジかよ!」
インサー先輩が指さした場所には元〈ギルバドヨッシャー〉所属の卒業生たちが現在のメンバーたちと揃ってずらりと観戦席に陣取っていたんだ。雰囲気がガチすぎる!
さっきの筋肉たちよりも姿勢が真っ直ぐで、とても純粋な気持ちで観戦する気満々なのだと雰囲気が告げている。学園祭見て回らないでいいの?
ちなみに〈ギルバドヨッシャー〉の卒業生の多くは進路をギルドバトル専門のプロリーグへと進んでいる。
その戦歴は目を見張るほどで、今年の4月から約半年間、インサー先輩が加入した所属チームはほとんど負けなし状態になっているらしい。他のチームも激動に次ぐ激動で、今プロリーグはお祭り騒ぎのてんやわんやのようだ。
卒業前にみんなの六段階目ツリーを開放させておいてよかったぜ。
「インサー先輩とは積もる話がありそうだな!」
「そうなのだ! やはり外はすごいぞ? 新たな発見の連続だ! 是非ゼフィルス氏の意見も聞かせてもらいたいのだよ!」
「是非参加しよう!」
「ゼフィルスさん、そこまでですわ」
「今は警邏中ですから」
「クワァ!」
「そうだった……!」
インサー先輩のあまりに魅力的なお誘いにふらふらそっちに行きそうになったところでリーナとアイギスから待ったがかかった。しかも、かなり圧が強い。両方の肩がポンってされたもん。
「申し訳ありませんインサー先輩。ゼフィルスさんはお忙しいんですの」
「はい。学園祭期間中はとてもではありませんが余裕もなく、話すことは出来かねると思われます」
「え? そうなの?」
「はい。そうなんです」
俺の予定を俺が知らないミステリー。
リーナが普通に断言しているのだが、俺の休みの予定はどこに消えたの?
あと、いつの間にか両腕がリーナとアイギスに囚われていたんだ。
「な、なんと……。ゼフィルス氏と三日三晩語り合うのを楽しみにしていたというのに! なんとか都合はつかないのか!?」
「つきませんわ。では、ごめんあそばせ」
「ゼフィルスさん。次は向こうですよ」
「クワァ!」
「おお?? イ、インサー先輩またなー! オサムス先輩たちにもよろしく言っておいてくれー!?」
「わ、わかったのだ。我々は3日間ここに居る。時間が空いたら来てくれよゼフィルス氏ー!」
「おーう!」
リーナとアイギスによって引きずられていった俺はその場を移動することになったんだ。
あのままでは本当に警邏のことを忘れてインサー先輩と語り尽くすことになっていたかもしれないし、これで良かった、のかもしれない?
「これは、予想外の事態ですわ。あのインサー先輩たちは、きっと新たな出し物であるレイドボス戦に興味津々に違いありませんわ」
「他にも卒業していった方が、例のイベント目的でやってきている可能性は高いです。ゼフィルスさんは本当に顔が広いですから、旧友との語り合いで私たちの時間が無くなってしまいかねません」
「完全に同意ですわ。2人で切りの良いところで引き離しますわよ」
「はい。私たちの時間のために」
リーナとアイギスが確保する俺の腕が大変幸せになったまま警邏は続く。
どうやら例の〈新・迷宮防衛大戦〉の話は、学園の外の至る所に伝わっているようで、卒業し、学園を去った先輩方が戻ってきているんだ!
マッスル先輩、ガルゼ先輩、インサー先輩などなど、名立たる方々が学園に帰ってきた! これは、とんでもないイベントになりそうな予感!
とここでオペレーターの方から通信が入る。
俺たちが仮名で〈通信機〉と呼称しているバッチから声が届いたのだ。
「『こちらオペレーターです。聞こえますか?』」
「聞こえますわ」
「『ゼフィルスさん宛てに研究員の方から〈召喚盤〉について打ち合わせがしたいと話がありました。そちらに出向くということなので警邏の仕事はこれで終わりとし、打ち合わせに向かってください。場所はナビします』」
「りょ、了解ですわ。ゼフィルス班は警邏の仕事を終了、直ちに指定の場所へ向かいますわ」
「一難去ってまた一難、ですか」
「……ゼフィルスさんは顔が広すぎるのですわ。いったいどれだけ手広く人と係わっているのでしょうか」
せっかくインサー先輩たちから離れたのに即で別の仕事で呼ばれる俺。
同じ班なのでリーナたちも同行するとのことだ。
これはイベントに関わる話なので仕事の範囲である。
しかしリーナとアイギスがため息を吐きながら俺の腕を開放し、幸せは逃げていったんだ。無念。
オペレーターさんが指定する場所は、控え室の1つだった。
すでに白衣の研究員が40人ばかり待機しており、ずらっと並んで待ち構えていたんだ。
「やぁやぁやぁ! ゼフィルス君、待っていた、待っていたぞ!」
「ミストン所長!? 所長自ら来たのですか!」
この独特のテンション高い口調。
最近生き生きしすぎて若返っている疑惑のあるミストン所長が真ん中で待ち構えていたんだ。
「もちろんだ! 今日は第一アリーナからしっかりデータを収集するつもりだからな! さあ本題だ、学園祭開始ギリギリになってしまったが、少し微調整の必要を感じてな、ゼフィルス君の意見が聞きたいのだ」
「俺の話で良ければ喜んで!」
なるほど、確かにデータを取るには第一アリーナは格好のポジション。
研究所が見逃すはずがなかった。
俺はミストン所長から懸念点や微調整の話を聞く。
「というわけでな。予想以上に〈新・迷宮防衛大戦〉の注目度が高いようなのだ。学園を卒業していった名高い者たちも次々来園している」
「それは自分たちも会いました。マッスル先輩にガルゼ先輩、さらにはインサー先輩にも」
「ほう、もう会っていたか。だがそれだけではないのだ。ここ2年間の学園を卒業した者たちが多くの場所で様々な活躍をしていてな。そもそも学園は大きく注目を集めていたところに、その中心となっていた学生たちが着目する〈新・迷宮防衛大戦〉とはなんだ、という話に発展し、昨年よりも腕に覚えのある者たちが学園に集っているのだ。はっきり言おう。〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の配下があれだけでは足りないかもしれない」
「なるほど。その数の調整を依頼したい、ということですね」
「さすがはゼフィルス氏だ。話が早いな」
要は想定していたより選手側の戦力が大きくなりすぎたので、攻め込んでくるモンスター側も相応の戦力にしたい、と言う話だ。
〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉以外のモンスターもかなりの戦力にしてあるのだが、選手側が強すぎてあっという間に殲滅してしまうと盛り上がりに欠けてしまう。
バランスが大事なのだ。モンスター側が強すぎず、弱すぎず、拮抗していい戦いを演出する、そのバランスが。
「また、ここまで来たのだからさらに盛り上げようという話にも発展していてな。学園のアピールのためにも〈ハンター委員会〉、〈攻略先生委員会〉、〈救護委員会〉に所属する精鋭たちも出場することに決まっている」
「おお!」
この学園都市は様々なところからの寄付で成り立っている。
ミストン所長の話を聞けば、最近発足され、最上級ダンジョンにも入ることが出来ているという公式ギルドは学園の新たな花形になりつつあると注目されているわけだ。
さらに最近の学園は、優秀な卒業生を教員や従業員として引き抜くことを多く行なっている。そのことについて、正当性や成果を見せる場面としても、この注目度の高い〈新・迷宮防衛大戦〉はうってつけなのだとのことだ。
今の公式ギルドは最近卒業したばかりの卒業生を多く中心に加えている。
つまり、まだまだ卒業生たちの参加者が増える!? ガルゼ先輩やインサー先輩たちだけじゃなく!?
やべぇ。夢の共演じゃねぇかよ!
こんなの盛り上がらないわけがない!
「それとだ。これは内密なのだが、ユーリ王太子殿下も来られるのだ」
「なんと!」
「「!?」」
こっそり、という口調でミストン所長が話す。その話にびっくりした!
後ろのリーナとアイギスからも驚きの感じが、見なくても伝わってくる。
マジかよ。ユーリ先輩まで参加するのかよ!!
マジでドリームコースじゃねぇか!
「それも踏まえ、モンスターの軍勢を考えると、レイドボスをあれだけでは厳しいのではないかという意見が多くてな」
「それはそうですね!」
例えばランク1の〈樹界ダン〉、その最初のレイドボスである〈フェアリークイーン〉の推奨レベルは60~70なのだ。〈樹界ダン〉のレベルキャップがLV75なのに加え、上級上位ダンジョンのランク10のレベルキャップはLV65なため大体そのくらいが適当だろう。
つまり、六段階目ツリー持ちが50人いれば倒せる設定になっているのだ。
〈バトルウルフ〉でも推奨レベルは70~75ほどなので、そう大きくは変わらない。
ボス補正持ちでそれなのだから、ボス補正の無い召喚盤のレイドボスならもっと簡単に倒されてしまうだろう。
そんな六段階目ツリー持ちが公式ギルドも参加するとなると、学生も合わせて300人以上参加する可能性が高い。
いや、ユーリ先輩やガルゼ先輩のLVは60に届いていないかもしれないけど。
まあ、それくらいの戦力がある、と見込んでいいだろう。
さらに今回の参加者は、見込みで3万人から5万人と予想されているとのこと。いくらレイドボスとはいえ数の力でやられてしまう可能性、非常に高し!
そこから逆算すると、今のレイドボスが15体ではミストン所長の言う通り、選手側の圧勝になりかねない。
ということで話し合い、ボスの数は増やすことで調整したのだった。
そういうことなら喜んで! もしよければ〈エデン〉が確保している召喚盤もお貸ししますよ!
しかし、ユーリ先輩たちもくるのか~。
やっべ、また楽しみが増えた!