第2171話 リーナとアイギスと休憩時間のデート食べ歩き
第2171話 リーナとアイギスと休憩時間のデート食べ歩き
「こほん。まだ初日なのにいろいろとありましたが、ようやく休憩時間ですわ」
「はい。なんとか見つからずに喧騒に溶け込めて良かったです」
「本当にな。というか、まさか第一アリーナの転移機能を使うことになるとは思わなかったぜ」
会場から選手控え室の一室で着替え、変装を済ませた俺たちだったが、普通に出待ちがたくさんいた。
このままでは変装していてもばれる。というところで転移陣。
なんとムカイ先生が手を回し、俺たちを転移で助けてくれたのだ。
さすがはムカイ先生、かっこよすぎる! 寡黙だけど、男子に人気があるのも分かるぜ。
こうして無事に変装状態で第一アリーナの外に出られた俺たちは、大通りを歩いていた。リーナもアイギスも私服姿っぽくて大変良い。こうしてみると、お祭りに繰り出した名家のお嬢様という雰囲気をビンビン感じるんだ。
「さて、どこに行きますかリーナさん?」
「まずは食事ですわ! もう11時も折り返しですもの。今食べなければ次は14時になってしまいますわ! というのは建前で、美味しいもの巡りはお祭りの基本です! いきますわよ!」
「リーナはお祭りの時は本当に食への探求心が強いな。もちろん俺も賛成だ」
方針は昼食になった。
リーナは1年生の夏祭りの時から食、特に甘いものに目がないのだ。特にお祭りの甘味が好きらしい。珍しくはしゃぐリーナはここでしか見られない。目に焼き付けておこう。
「むむ、あちらに香ばしくもスイーツのような甘さの香りが漂っていますわ。行きますわよ!」
「リーナのレーダーが何かを捉えたか」
「こ、これは。モチッコ焼きの香りですわ!?」
「モチッコ焼き!?」
さすがは指揮官にして戦場を俯瞰し、隠れたものを見つけ出す能力に長けるリーナ。
何かを嗅ぎつけた。幸せな腕を引っ張られてあ~れ~と連れていかれる俺。
3人で向かえば、そこにあったのはたい焼きならぬ、モチッコ焼き!
つまりはたい焼きのモチッコ姿バージョンだったのだ。
さらにその横にはベビーカステラのモチッコ姿バージョン、さらには揚げたっぽいお菓子、サーターアンダギーにも似たモチッコ姿バージョンまで売られている、モチッコフィーバー屋さんだったのだ! ここ、もしかしてクエナが言っていたモチッコ屋ってやつか!? 猫カフェみたいな感じじゃなかったの!?
「さあさあモチッコはいかが! 特にこの油で揚げたサーターモチッコは外はカリっと中はもちもちだよ!」
「こっちのモチッコ焼きは餡がたっぷり入ってるよ! 見てくれこの丸々と膨らんだモチッコ焼きを!」
「こっちのベビーモチッコもおすすめさ! 一口サイズでもちもちふわっふわ! 嵩張らず、一口で食べてしまえるから持ち運びも楽ちんだよ!」
「そこのモチッコたち、お買い上げですわ!」
「「「毎度ー!」」」
リーナの手腕がすごい。3店同時購入だと!?
なるほど、前々からリーナはどうやってこの少ない時間でリサーチをしていたのか、気になっていたのだが、こんなからくりがあったのか……!
「クワァ」
「大丈夫ですよ、リーナさんはちゃんとゼニスの分まで買っていますからね」
「クワァ!」
アイギスのボストンバッグが揺れる。
ゼニスも食べるのが楽しみらしい。
3日に1度食べるだけでいいという、超燃費の良さを誇るゼニスだが、べつにそれ以外食べられないわけではない。たまにアイギスが食べているお菓子をもらったりしている様子を見かけるしな。
「まずは戦利品確保ですわ。さあゼフィルスさん、あーんの時間ですわ」
「流れるようにあーんに持ち込むリーナさん。ちょっと憧れます」
リーナはこうして食べさせてくることが大好き。
ベビーモチッコなるものを俺に差し出して「食べて?」と迫ってくるんだ。
そんなの食べない男は居ない。
「いただきます!」
「はい、あーんですわ!」
パクリ。一瞬で口の中に幸せが広がった。
これ、本当に美味いな。カステラ、とはまた違うモチモチ感がある。
「んん? 今のはちょっと甘い雰囲気が足りなかったでしょうか? ――アイギスさんはどう思いました?」
「そうですね。少なくともイチャイチャしているようには見えましたので、ありかと」
「それなら良しですわね!」
「では次は私が。そうですね、あれが良いかもしれません」
俺がリーナから寄りかかられながらあーんしてもらっていたら、アイギスが別のお店へと走る。
そこに書かれていたのは〈バトルウルフアイスクリーム〉の文字。
いったいどういう原理なのか知らないが、普通コーンにボール型のアイスクリームを載せるという形になるはずが、ボールの部分がバトルウルフの顔だったのだ。
コーンから顔を出している感じのバトルウルフである。
「ゼフィルスさん、これを。バルフスクリームのシングルです」
「バルフスクリーム!? つうかこれどうやって作ってんの!?」
精巧ではないがしっかりバトルウルフの特徴を出しているアイスクリームがパナイ。
作成方法がマジ分からない。魔法か? まさか、俺の知らない未知の調理アイテムか!?
ちなみに〈バルフスクリーム〉は〈バトルウルフアイスクリーム〉の略、直訳すると〈バルフの悲鳴〉だ……! とんでもない略し方されとる!?
「ちなみに五段まで選べるみたいですよ」
「バトルウルフだからかな?? おおう、顔が五段になってる」
アイギスが目を向けた方向を見れば、五段に積み重なったアイスクリームバトルウルフを持った子どもの姿が……!
ああ!? 一番上からガブリといった!? バトルウルフの顔が4つになっちゃってんじゃん!(※ 悲鳴 ( クゥーン ) !?)
「はい。どうぞ、ゼフィルスさん。食べてください」
「お、おおう。アイギスもあーんスタイルで行くんだ? それじゃあ遠慮なく。あーん」
初めて食べたバトルウルフは、なんか甘かった。
「ゼフィルスさん。続いてこちらのチョコサボッテンダーはいかがでしょう? 美味しいですわよ」
「リーナ、いつの間に追加で購入を!?」
いつの間にかリーナが別の商品を持って俺に向けていた。あれ? サーターモチッコやモチッコ焼きはどこいったの?
リーナの手には、チョコバナナ、ではなくチョコでコーティングされたサボッテンダーの姿の何かが握られていた。
「というかナニコレ!?」
と食べてみると、おお、意外にいける。というか味はマシュマロだった。
チョコでフォンデュしたサボッテンダーのような見た目のマシュマロかよ……!
「見てください。クマアリクイクッキーですって!」
「いえ、向こうには〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉綿あめが売っていますよ!?」
「モンスターキャラを存分に生かした菓子がそこら中にあるじゃん!?」
気が付けば俺たちの周りはモンスターお菓子が売られている出店ばかりになっていた。
いや、なにここすごい。甘すぎる! ついでにカップルも多かった。
うん? もしかして俺、ここにリーナによって連れてこられた?
リーナこういうの大好きそうだからなぁ。
「なんだかゼフィルスさんに勘違いされている気がしますわ」
「まあゼフィルスさんですから」
「クワァ!」
なぜかリーナたちの信頼が別方向に向いている気がするけど、きっと気のせいだよね?
相変わらずリーナと回る時はお菓子が中心。でも、たまにはお菓子でお腹がいっぱいになってもいいだろう。
「しかし、なかなか人気がない場所がありませんわ」
「今年は一昨年や去年と比べ、さらに来園者が多いらしいですからね、休憩用テントくらいしか」
「そ、それはちょっと……」
お菓子の買い込みも一段落して休憩(?)に人気の少ない場所を探しているのだがなかなかそんな場所は無い。どこも人で溢れているんだ。
なお、休憩場所を探しているのに休憩テントはスルーするリーナとアイギス。あれ? 俺何か思い違いしてる?
「クワァ」
「まあいいか」
両腕が幸せだし。ゼニスも「これでいいじゃん」と鳴いてるしな。
そんな感じで甘い時間を過ごしていると、休憩時間もそろそろ終わるというところで通信機から緊急連絡が届いた。
「『休憩中のところ失礼します。オペレーターです。少々出動のお願いがあります』」
「こちらゼフィルス班ですわ。詳細を」
「『実は先ほど、ユーリ王太子殿下が学園にご到着されました』」
「おお!」
何の緊急連絡かと思ったら、確かにこれは緊急連絡だ。
どうやらユーリ先輩が来園したらしい!
迎えにいけばいいの? 喜んでいくんだけど! 挨拶がしたい!
「『これから凱旋パレードを行なうのですが、そこの護衛が別のハプニングに遭遇して抜けられなくなってしまいまして、持ち場を離れることにはなりますが、ゼフィルス班に是非護衛兼警邏をお願いしようとなった次第です』」
「承知いたしましたわ。ユーリ殿下の護衛、しかと承りましたわ」
「『ありがとうございます。ではそちらのオペレーターに引き継ぎます。彼女からの指示に従っていただければ』」
「委細承知いたしましたわ」
というわけで、俺たちは急遽第一アリーナではなく、パレードの護衛で学園中を歩くことになった。
これ第一アリーナで目立ちすぎたことで担当を外された、とかじゃないよね?
「うう、時間切れですわ」
「仕方ありません。次の休憩時間で挽回しましょう!」