第2175話 ユーリ先輩と結託!でもラナ相手には厳しいの
第2175話 ユーリ先輩と結託!でもラナ相手には厳しいの
学園祭が終わったら、俺からユーリ先輩に秘術を教えるということになった。
ダンジョン門が学園祭中は閉鎖しているからな。学園祭の期間中はひとまずスタンピードのことは忘れて楽しむべき! となったんだ。
これで学園祭後は中級、上級でくすぶっていた人たちも、より強くなることだろう。
下級職の人たちも大量に上級職になるだろうし、〈エンテレ〉や【ダンジョンインストラクター】による牽引戦法を使えば、短期間で六段階目ツリー開放者が爆発的に増えるだろうな。
また、今回の〈新・迷宮防衛大戦〉のデザインも、スタンピード対策の一環らしいとも聞いた。
「カイエン君にもスタンピードのことを話してね。何か有効な策はないかと相談したんだ。そしたら編み出してくれたのが、この〈新・迷宮防衛大戦〉さ。この経験は、きっとスタンピード戦で活きてくるだろう。素晴らしい案さ。僕の参謀に欲しいくらいだ」
とはユーリ先輩の言葉である。
内密にカイエン先輩にご相談していた上に、カイエン先輩もそれを聞いて、懸案事項だった今年の〈迷宮防衛大戦〉を組み合わせて、一石二鳥の妙案を作っちゃったってこと!?
確かに、今年の〈新・迷宮防衛大戦〉は、大魔王軍の侵攻から学園を防衛せよというコンセプト……!
そこを練習の場とし、多くの者にモンスターの軍勢との戦闘を経験させ、来たるスタンピード戦に備える案を提示したってことかよ!?
カイエン先輩、さすがです!!
そりゃユーリ先輩だってカイエン先輩のことを欲しがるわ!!
「でもさすがは学園長だね。すでに囲われていて引き抜くのは無理だった。どうもヴィアラン会長の娘さんと懇意にさせているようでね。ファグナー公爵家に婿入りさせようと画策しているみたいなんだ」
「カイエン先輩が、ファグナー公爵家に婿入り!?」
衝撃の事実すぎる……!
もうそこまで話が進んでいたのか!!
ヴィアラン会長は〈救護委員会〉のトップにして学園長の直系の孫だ。
聞けば学園長の家系は女系家族らしくて、ヴィアラン会長の子も娘さんばかり、優秀な婿を欲しがっていたらしい。
そういえばフィリス先生もリカも、ノーアもヴィアラン会長も……、学園長の孫ってみんな女性ばかりだった。女系家族だったのか。
〈ダン活〉では女系家族こそ最強。なるほど。納得である。
ってそういえば俺、ヴィアラン会長の娘さんと会ったことあるぞ! ちょっとあいさつした程度だったが、あの時学園長室に来てたのって、やっぱりカイエン先輩との婿入りの話だったりしたのだろうか!? おお~!
「ははは、希望が出てきてうっかり口が軽くなってしまったようだ」
「びっくりしまくったぜ。というか平民が貴族家と結婚とか普通にあるんだな」
「そりゃあるよ。他を寄せ付けない実力さえあれば貴族が是非婿に、是非嫁にと欲しがるのは当然さ」
当然らしい。
〈ダン活〉の世界だと貴族というのは実力者でなければならないからな。それに平民との距離がだいぶ近い。
故に実力のある平民は普通に貴族が欲しがるのだとのこと。マジか~。
その辺、もっと詳しく聞きたかったが、ここで時間切れ。
こんな時間だというのにユーリ先輩はまだやることがあるらしく、ここで解散になった。
「それじゃあゼフィルス君。学園祭が終わったら、楽しみにしているね」
「任せてくださいユーリ先輩。俺たちも学園祭が終わったら、〈神界ダン〉を攻略しながら備えておきますから」
「今以上に備えちゃうんだね……いや、心強いよ。よろしくね。――お互い、学園祭を楽しもう」
「おう!」
がっちりと握手。
学園祭が終わればユーリ先輩のパワーレベリングを始め、〈公式裏技戦術ボス周回〉の公開、〈エンテレ〉を使ったパワーキャリー&パワーレベリング方など、様々な技を伝授する。
周りが強くなれば、〈救世イベント〉の失敗率はそれだけ低くなる。
俺も全力で協力するさ。
こうして、波乱となった学園祭1日目は終わったのだった。
学園祭2日目。
今日はラナとエステルと警邏の仕事だ。
「聞いたわよゼフィルス。昨日お兄様と話したんですって?」
「もう情報が伝わってる!?」
「割と噂になってますね。パレードでも多くの方がユーリ様とゼフィルス殿が一緒に居たところを見ておりますから」
「ああ、なるほど」
エステルの話に納得する。
そういえば昨日の午後はほとんどユーリ先輩と一緒だった。
そりゃ噂になるわ!
「もう! 最初に私に会いに来ないでゼフィルスに会いに行くなんて、お兄様は薄情だわ!」
「いや、大事な話だったから。プライベートじゃなかったから」
「そうですよラナ様。それに後夜祭ではプライベートで会う約束をしているのですから」
「む~」
お兄ちゃんっ子のラナからすると、学園に来てまず自分のところにも来ずに俺のところに来たユーリ先輩が許せないらしい。
このままではまたユーリ先輩のお腹にラナの拳がグサッといきそうなのでエステルと一緒にフォローしておいた。止められなかったらすまん。
「それで、私たちが回るのはどこなの?」
「午前中は第一アリーナですが、午後は学園の各箇所を回る形ですね。ラナ様の警邏するお姿をなるべく多くの国民に見てもらうのが目的となります」
王族の前でトラブルを起こしたりする人はいない。ガチでいない。
故にラナが見て回る場所は昨日トラブルが多く報告された場所だ。
普通そういう場所に王族は近寄らせないものなんじゃないの? とも思うが、今のラナに勝てる一般人はいないのだ。うむ。
ということで「ここはラナ王女が警邏しに通る場所だぞ、もしトラブルの最中に来られたらヤバいぞ」と刷り込ませてトラブルを防止するのだ。
「これも公務の一環みたいなものよ! さあ、いきましょ!」
「だな。エステル、オペレーターとのやり取りは」
「そちらはゼフィルス殿にお任せしたく、私はラナ殿下の護衛を」
「了解だ。それなら俺が担当するか。――オペレーターへ、こちらゼフィルス班」
ということで午前中は第一アリーナをほぼ1周した。
午前中はみんな、落ち着いたものだったよ。
筋肉たちとかは普通にわっしょいわっしょいしてたけどな。そんなことをみんな落ち着いている中にやっちゃったらさ、ラナが「あれは何かしら? もっと近くで見てみましょうよ!」とか言い始めちゃうだろう!?
だがさすがに良識はあったのか、筋肉のみんなはちゃんと服を着ていたんだ。あんなにしっかり服を着こんでいる筋肉たちは初めて見たかもしれない。脱いでいたらその場で〈秩序風紀委員会〉の出番だったな。危なかった。
午前中でヒヤヒヤしたのはその1回だけ。ガルゼ先輩たちは普通に今日もレイドボスとガチの殴り合いを楽しんでいたからな。健全!
しかし、午後はもっとヒヤリとしたことが待ち受けていたんだ。
「ねえ、ゼフィルス、あれ見て」
「うん? ありゃ、『隠密』使いか?」
「やっぱり、なんか変な感じがすると思ったのよ! この学園祭で『隠密』を使っているなんて、何か良からぬことをしているに違いないわ!」
そう、なんとラナが『隠密』を使っている怪しい人物を見つけてしまったのだ。
『隠密』を使っている相手を『索敵』系スキル無しでどうやって見つけちゃったのか気になるところだ。俺は『直感』さんがあるから分かるけど、ラナは勘で見つけたの?
「捕まえるわよ! 御用よ!」
「いけませんラナ様! それに私には『隠密』の相手はうっすらとしか見えません! こういう時はオペレーターに相談するべきです! 援軍を呼びましょう!」
エステルは『索敵』系スキルを持っていないので『隠密』を使っている相手の居場所がうっすらとしか分からないようだ。
そんなところにラナを突撃なんてさせてはいけない。
「む。ならゼフィルス! ゼフィルスなら倒される心配なんてないわ! 突撃よ!」
ということで、俺が即でなんとかすることになった。
「エステル、オペレーターへの連絡は頼む!」
「承知です!」
「そこの2人! 『隠密』を解いて姿を現せ! こちら〈秩序風紀委員会〉の職務質問である!」
「え? ゼフィルス君かい?」
「なぬ!? もしかして、ユーリ先輩!?」
その声を認識した瞬間、昨日の記憶がよみがえる。
そう、『隠密』を使って行動していたのは、なんとユーリ先輩だったのだ。
ってあ! この『隠密』系装備、ハンナも使ってる 上級上位 ( ジョウジョウ ) 級のやつ! これはやべぇ!
「お兄様?」
「と、隣は―――おぶ!! 失礼しました! どうぞ行ってください!」
「う、うん。悪いね。ラナにはごまかしておいてくれ」
「了解だ」
「ちょ、どうなってんの!?」
こっちこそ聞きたい……!
ラナもユーリ先輩と気が付いたようだが、こっちに来る前にユーリ先輩たちが駆け足で離れていったのでセーフ。いや、マジでセーフ!
「ねぇゼフィルス。なんで逃がしたの? それに隣に居たの、私の見間違えじゃなきゃ、ソトナに見えたのだけど?」
ぎゃーアウトー! ばっちり見られてんじゃん! というか、『隠密』解いてないのになんで分かるの!?
そう、ユーリ先輩とソトナ先輩だったんだよ。
学園祭で『隠密』を使ってまで2人で行動していた理由?
どんな理由があったんだろうね。俺、分かんないな~。
昨日ユーリ先輩から、実力があれば平民を嫁に、という話がフラッシュバックするがきっと気のせいなのだ。
恐る恐るラナの方へ振り向くと、ラナの顔がすごいことになってた。
「き、きっとお昼ごはんを食べに来ていたんだろうな」
ユーリ先輩からの「ラナにはごまかしておいてくれ」という命を遂行する俺。
「……それなら逃げる必要は無いと思うのよね」
ごもっともです。
ユーリ先輩、やはり厳しいです! ごまかせなくてごめん! 今から謝っとく!
あと、お腹にはクッションとか仕込んどくのをおすすめしておきます!
「ゼフィルス」
「はい!」
「わ、私と手を繋ぎなさい」
「え?」
「手を、繋いで?」
「お、おう」
表情がいつの間にか落ち着いていたと思ったら、俺にやや上目遣いの照れ顔で手を差し出してくるラナ。
俺はもちろんラナの手を掴んだんだ。
「今日はもう離さないで」
「警邏中も?」
「警邏中も。もちろんプライベートの時間もよ」
「りょ、了解」
「うん」
なんだか一瞬でしおらしくなったラナ。
俺がチラッとエステルの方を向けば、エステルはニコニコ顔だった。良いらしい。
ユーリ先輩のあれが羨ましかったのかもしれないな。
「私も、勇気出さなくっちゃね」
なんだかラナが小さく呟いていた気がしたのだが、俺には聞き取れなかったんだ。
こうして俺は、ラナとずっと手を繋ぎながら警邏をすることになったのだった。
その後のユーリ先輩がどうなったのかは、ちょっと分からない。
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あとがき失礼いたします! お知らせ!
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詳しくは近況ノートをごらんください!↓こちらからどうぞ!
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/11054822666298346725
今回もイラストも、すごいですよ~。