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第632話 レアボス〈スリーネ〉。タバサ先輩の〈四ツリ〉

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第632話 レアボス〈スリーネ〉。タバサ先輩の〈四ツリ〉

レアボス出現でちょっと安心。これで外れてたらやばかったぜ。さすがにタバサ先輩にボス周回は早い。あと時間もあまりないしな。

「前に出るわ」

シエラは俺の情報どおり、まずは1人だけ前に大きく突出する。

もちろんこれにはわけがある。

「ヂュァァァァァァァァ!!」

レアボス〈邪球根・ネネネバナ〉、通称〈スリーネ〉がポップした。

その姿はまだ第一形態と言われる状態で、デカイ球根が地面の上に飛び出し、茎には数本の葉が伸び、頂点には真っ赤なチューリップが咲いているが、周りにうようよと根がうねっている。まあこれだけなら可愛いものだ。体長が10mに迫っていなければだが。リアルチューリップでかい!

初手、〈スリーネ〉の種爆弾。

チューリップの花が先頭のシエラに向けられ、全長1mに迫る大きな種を5発発射してきた。

これが結構厄介で、〈邪球根・ネネネバナ〉は初手に必ず種爆弾を発射してくるので集団で突っ込ませると被害が増すのだ。

ヘイトは関係なく、自分に一番近い者に撃つために、初手はタンク前進が安定だ。

「『シールドバッシュ』!」

ここで盾タンクには二つの選択肢がある。

防御スキルでやり過ごすか、勇気を持って盾突撃するか、である。

ちなみに挑発を選択するとスキル発動中に攻撃食らっちゃって隙が出来てしまうので推奨しない。注意だぞ。

おっと話がそれた。シエラは盾突撃の『シールドバッシュ』を選択したようだ。

下手をすれば攻撃に巻き込まれ、大きくダメージを受けかねない、やや危険度の高い選択だが、今回はタバサ先輩の実力を見に来ている。

シエラは敢えて危険に身を投じた様子だ。

「は!」

「ヂュア!?」

そして見事成功。

爆弾が後ろで爆発している音をBGMにシエラの盾突撃、『シールドバッシュ』が〈邪球根・ネネネバナ〉にヒットする。爆弾は完全に置いてきぼりになった形だ。

「――『オーラポイント』! 『挑発』! 『シールドスマイト』!」

そのままヘイトを稼ぐシエラ。

ふむ、〈四ツリ〉は温存か。

オーケーオーケー。シエラが自在盾を使い始めたらタバサ先輩の出番が無くなってしまいそうなので手加減上等である。ここ、中級中位ダンジョンだし。

さて、タンクがヘイトを稼いだら次は俺たちの出番だ。

「レグラムは左から、アイギスは右から側面を叩いてくれ」

「任せるがいい」

「了解しました! ――『チャージ』!」

俺の指示にレグラムとアイギスが攻撃態勢に移る。

アイギスはそのまま盾を構え、片手ランスを構えて溜めを作る体勢になる。

一度溜めを作ることで次の攻撃の威力を上昇させる『チャージ』を使った。この次に突撃系を使うと威力が5割り増しから2倍になるため、一度溜めてから突撃する戦法はメジャーな攻撃方法だった。【ナイト】系がよく使う戦法だな。

〈馬車〉をよく使うエステルには無いコンボだ。

「『騎槍突撃』!」

そうして〈馬〉に騎乗していないアイギスが右側面から突撃した。

「ヂュアアアアーー!」

見事に刺さったな。

ちなみに俺はと言うと、

「――『ライトニングバースト』!」

「ヂュアアアア!?」

魔法で花の部分を攻撃していたりする。

ここが弱点部位だからな。本来なら〈邪球根・ネネネバナ〉はタンクが足止め、〈火属性〉魔法で叩くが最も有効だが、無ければ無いで正面から正攻法でも問題無い。

「ヂュアアア!!」

「『城塞盾』!」

「『プレシャスソード』!」

「『スラストゲイル』!」

〈スリーネ〉が暴れまわり、葉と根で周囲を攻撃しだす周囲範囲攻撃を繰り出す。

これが〈スリーネ〉の主な攻撃方法で、故に接近戦のアタッカーだとダメージを受けやすい。さらには根の攻撃は状態異常攻撃にもなっている。命中すると状態異常にさせられてしまうので早期回復、ヒーラーの腕が試されるボスだ。

「『快癒の儀式』! 『全体回復の儀式』! 『聖水の儀式』! 『病魔払いの儀式』!」

タバサ先輩が回復魔法を使い前衛のダメージを回復していく。『聖水の儀式』でアイギスに掛かっていた〈毒〉の状態異常を解除し、さらに〈四ツリ〉の『病魔払いの儀式』で状態異常耐性を上げて支援する。

「タバサ先輩はもっと大技使って良いぞ? というかもっと大技を見せてくれ」

「そう? わかったわ。来て身代わりの式神――『 六転式札 ( ろくてんしきふだ ) 』!」

催促するとさっそくタバサ先輩は応えてくれた。

〈四ツリ〉の魔法、タバサ先輩が真上に杖を掲げると、六つの式神がタバサ先輩の真後ろに浮かんだ。直後、アイギスが盾で防ぐのに失敗し根のムチで叩かれる。あの根は状態異常にしてくる攻撃だ。アイギスはまた状態異常になることを覚悟したが、状態異常は起こらない。

その代わり、タバサ先輩の背後に浮かぶ式神、その内の一つが黒く変色して消え、残り5つになった。

「う、あれ?」

「アイギス、状態異常はタバサ先輩が引き受けてくれる! 構わず攻撃するんだ!」

「はい!」

そう、タバサ先輩の後ろに浮かぶ『六転式札』は状態異常の身代わり魔法。

パーティメンバーが受けた状態異常を、式神を一つ消費することで無かった事に出来る【メサイア】の奇跡だ。計6回まで状態異常攻撃を無効化出来る。

「援護攻撃も、――『口寄せの儀式・四』!」

さらに攻撃系の召喚術のご登場だ。

これも【メサイア】〈四ツリ〉の魔法。

タバサ先輩は自身の持つ〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉から1体のぬいぐるみ、ホワイトタイガーのような白く、そしてちょっと大きめなぬいぐるみを取り出したのだ。

こんなときに何を、と思うかもしれないがこれは立派な魔法であり、〈四ツリ〉の口寄せには必要な物だ。

ちょっと変わっているが、口寄せは物に命を降ろす魔法なので、それなりの触媒というかアイテムが必要になる。ぬいぐるみなどを始めとした〈依り代〉カテゴリーのアイテム、これに命を与える奇跡だ。

ぬいぐるみだったはずのホワイトタイガーの目に光が宿り、生命を帯びたように巨大化。体長2メートル半の大きな巨体になって顕現した。

「お願いね」

「―――――」

「ヂュア!?」

「わわ?」

タバサ先輩の言葉にぬいぐるみがまるで生きているかのように〈スリーネ〉に飛び掛った。トラ型のぬいぐるみがシエラのサイドで攻撃を始めた。

道中鬼の式神で慣れていたシエラもホワイトタイガーにはビックリだ。

「おっと、〈スリーネ〉が第二形態になったか」

さすが、これだけボコボコにすれば形態変化も早く、地面から蔓性のバラの蕾が生えてきて種ガトリングをし始めた。弾幕のように範囲に無差別攻撃を繰り返していく。これは地味にダメージが加算されていくのだ。

「『回復の儀式』!」

透かさずタバサ先輩が前衛を回復させていく。

さらにそこからどんどん〈スリーネ〉の形態は変化していき、邪悪そうな紫の葉っぱが生えまくり、赤かったチューリップが徐々に紫へと変化していく。

攻撃もだいぶ変化してきて魔法まで使い始めるが、前衛のシエラは〈四ツリ〉を使っていないにも関わらず崩れない。

ぬいぐるみは少しの間耐えながら攻撃を繰り返していたが、やがてポンと元のぬいぐるみに戻ってしまった。根の蔓によって吹っ飛んでいったので後で回収しようと思う。

オートで動く召喚獣は一定ダメージを受けると消えてしまうのだ。

時間が経つにつれ第二形態を経由して第三形態、第四形態と膨れ上がり、とうとう最終形態、なんだか狂った花の女王みたいな見た目へと変貌してしまう。

花の顔面に牙が見えており近づいたら食われそうな見た目になってしまった。

「……みんな、強いわね」

「そりゃあな。俺の自慢のメンバーたちだ」

タバサ先輩の驚きの言葉に頷いて答える。

だが、これもヒーラーの援護あってこそだ。

〈毒〉〈麻痺〉〈睡眠〉〈即死〉〈混乱〉と数々の状態異常を放つ〈スリーネ〉だが、タバサ先輩はその全てに対応して見せたからな。やっぱタンクとヒーラーが安定しているとアタッカーが十全に動けて強いわぁ。

「おっとユニークくるぞ! レグラムとアイギスは後退! シエラは自在盾展開、全力防御だ!」

そうこうしているうちにレアボスで最も危険で威力のある攻撃、ユニークスキルが発動されようとしていた。アタッカーは危険なので全力で下げる。

アタッカーを普通に屠ってしまうのがレアボスのユニークスキルなのだ。

「『 四聖操盾 ( しせいそうじゅん ) 』!」

そしてシエラは〈四ツリ〉を開放、シエラに付いていた四つの小盾が宙へと浮き、シエラの思い通りに動く自在盾となる。

「ヂュアアァァァァァ!」

「――『ディバインシールド』!」

瞬間、〈スリーネ〉は赤色に輝く様々な巨大種や根の槍、鋭いガラスのような葉を放ってきた。〈ネネネバナ流・ 邪悪種流葉群 ( じゃあくだねりゅうようぐん ) 〉だ。

直線範囲攻撃。それをシエラは真っ向から四つの盾をクロスするようにして防御するスキル『ディバインシールド』で受け止めた。

「わ、すごいわね。クラス対抗戦でも見ていたけど、圧倒的な堅さだわあの盾」

「そうだろうそうだろう。俺たちのサブマスターだからな」

その様子を見たタバサ先輩が驚愕に目を見開く。

俺とタバサ先輩はすでに攻撃の直線上から身を引き、逃れているため余裕を持って観戦できる。

あのユニークスキルは一番近い者にヘイト関係なく狙う上に流星群的な連続攻撃なので回避が難しい。しかも狙われている者が動くと、直線範囲攻撃中の〈スリーネ〉も振り向いて追ってくるおまけつきなので、狙われている者が逃げるとなぎ払いみたいな攻撃になり被害が増すやっかいな攻撃だ。立ち止まって受けきるのがセオリー。

盾タンク推奨ボスの所以だ。

そのためシエラにはあそこでガッツリ攻撃を受け止めてもらい、その隙に俺たちは攻撃する。

「レグラム、ダウンとっていいぞ」

「任せるがいい。『紫電一閃』! ――『六耀斬』!」

「ヂュアァァァ!?」

ユニークされたらダウンを取りに行くのが〈ダン活〉プレイヤーの 性 ( さが ) だ。

十分タバサ先輩の実力は見たし、今日はこれで終わりにしよう。

というわけで、

「総攻撃だ!」

レアボス〈スリーネ〉はこれにて撃破され、残されていたのは二つの〈金箱〉だった。

その片方には、〈上級転職チケット〉が入っていた。