第633話 〈テンプルセイバー〉へご案内。その頃学園長は
第633話 〈テンプルセイバー〉へご案内。その頃学園長は
目的は達成したのでそのまま転移陣を使い、〈中中ダン〉に帰ってきた。
「いや~いいお宝が手に入った! お疲れ様!」
「はい。お疲れ様」
「お疲れ様です」
「ああ。お疲れ様」
「…………お疲れ様」
俺、シエラ、アイギス、レグラム、タバサ先輩の順に挨拶すると、タバサ先輩がやや呆然としているのに気がついた。
「どうかしたのですかタバサ先輩?」
それに気がついたアイギスが話しかける。
「いえ、結構圧倒されて。これが本当のSランクに向かうギルドの姿なのだと思ってね。驚いていたのよ」
「最後のドロップもすごかったですからね」
何やらタバサ先輩の中で葛藤があった様子だ。
「このギルドは常識外れなの。普通のギルドと比べられても困るわ」
「しかし、慣れれば新しい世界が開けるが、な」
「レグラムがそんな冗談を言うなんて珍しいな」
俺を見て言うシエラ。シエラが俺の常識を疑っているのはいつものことだ。しかし、レグラムがそんなことを言うなんて珍しい、と口にしてみれば、なぜかすごく何か言いたそうな顔で見つめられた。
はて?
「仲がいいのね」
「そうね」
「……ゼフィルスさん。改めて私も〈エデン〉に入らせてもらえるかしら」
うむ。実力も申し分ないし性格も良し、【メサイア】の 職業 ( ジョブ ) も良い。ステータスを見せてもらったがそれほど偏った編成になってはいなかった。
元々〈白の玉座〉使いだったので回復寄りのステータスだったのだが、むしろヒーラーとしてかなり機能するステータスだ。悪くない。
採用決定だな。
それにタバサ先輩もパーティメンバーとだいぶ打ち解けられたようだしな。
そんな感想を抱いているときだった。〈中中ダン〉に声が響いたのは。
「タバサ! え、えええええ〈エデン〉に入るとはどどどどどどどどどどういうことだ!?」
そのむっちゃ動揺した声の主は、「騎士爵」のシンボルを胸につけた上級装備を着た男子だった。
足をガクガクさせながらフラフラとタバサ先輩の方へ近づいていく。
誰だ? と最初は思ったがすぐピンと来た。ユミキ先輩、仕事が早すぎるぜ。
「カサンド。どうしてここにいるの?」
「た、たたたたタバサが、え〈エデン〉に移籍しようとしているという噂を聞いたので確認に来たのだ! ほ、本当なのか!?」
ふむ。でまかせではないな。
現在タバサ先輩、絶賛〈エデン〉面接中である。そして合格5秒前だった。
「それは本当よ。私、〈エデン〉に移籍したいの」
「そ、そんな!?」
騎士男子の動揺が激しい。とても信じられない、信じたくないという表情をして目を見開いている。
「――し〈白の玉座〉が目当てなのだな? そ、それなら安心してほしい。今〈エデン〉に〈決闘戦〉用の果たし状を送っているところだ。それを待ってからでも遅くは無いだろう?」
男子は動揺しつつもなんとか冷静に努めてタバサ先輩を説得するようだ。
そしてやはりあの果たし状は〈白の玉座〉を 廻 ( めぐ ) ってのものだったらしい。
シエラがこっそり近づいてきて二の腕をちょんちょんと指でつついてきたぞ。後ジト目だ。やばい、もっとやってほしい。
「無理。今日ダンジョンを一緒に攻略して分かったわ。〈テンプルセイバー〉では〈エデン〉には勝てない。今はランクが上でも、すぐに抜かれてしまうわ」
「な、なんだとぉ!?」
タバサ先輩がナチュラルに煽る。
いいぞもっと言ってやれぃ!
「〈テンプルセイバー〉は1日でダンジョンを攻略できる? しかも初めて挑む中級中位ダンジョンで、放課後の時間だけで最奥まで進み、初見のはずのレアボスを初めて組んだ人と一緒に挑み、誰一人犠牲も無く討伐することはできる?」
「な、な、なにを言っているのだ? そんな世迷言が……」
おかしいな。なんだか普通の攻略が世迷言扱いされてる。
「出来ないなら無理。〈エデン〉には〈ダンジョン馬車〉も〈白の玉座〉も〈竜の箱庭〉もある。上級職が同数なら〈テンプルセイバー〉は負けるわ」
「そんなことは!」
騎士男子の動揺は最高潮だ。だんだん息が荒くなってきた。大丈夫かな? 急に倒れたりしない?
そして騎士男子はハッとした様子でこちらを振り向いた。
俺と目が合うと、ギリギリで踏みとどまったかのように汗を拭う仕草をして再びタバサ先輩に向き直る。
「し、しかし〈白の玉座〉さえ取り戻せれば、タバサは〈テンプルセイバー〉を出ることはないだろう?」
「…………」
その言葉にタバサ先輩は否定をしない。〈白の玉座〉のある〈エデン〉に加入したいというのがタバサ先輩の切望だからだ。
「俺たちは近々〈エデン〉と〈決闘戦〉をする。タバサ、その時まで脱退を待ってくれ」
騎士男子はそう言うと俺に向き直った。
……ふむ。
「〈エデン〉のギルドマスター、ゼフィルス氏で相違ないか?」
「ん? おう。俺がゼフィルスだ」
「お、俺は〈テンプルセイバー〉所属の者でカサンドという。果たし状の答えはどうなっているのか、答えを聞きたい」
え? 果たし状? 知らないな~。
と、言うことも可能なのだがさすがにこの雰囲気では口にしない。
今の会話からするとやはり〈白の玉座〉を賭けて〈決闘戦〉をしたいということで間違いなさそうなので、中身は読んでないがとりあえず受けることにした。
どうやら〈白の玉座〉を死守しないとイコールタバサ先輩の加入は無しになるようだ。ならこの〈決闘戦〉、負けられないぜ。
「場所を移そう」
さすがに注目を集めすぎたしな。俺は場所を移すことを提案した。
「ならば是非俺たちのギルドハウスにきてほしい」
どうやら話し合いの場は〈テンプルセイバー〉のギルドハウスで行なうようだ。
◇ ◇ ◇
ところ変わり、ここはC道にある〈テンプルセイバー〉のギルドハウス。
そこへ、とある大物が足を運んでいた。
「こ、こちらです学園長!」
「うむ、すまんの。それで、この果たし状を書いたのは君たちかね?」
前に〈テンプルセイバー〉のギルドメンバーが集まっていた大部屋の円卓の間で、学園長が見覚えのありすぎる果たし状を見せながらそう言っていた。