第647話 レアボス祭り激戦区。〈放蕩獣鉄剣〉!
第647話 レアボス祭り激戦区。〈放蕩獣鉄剣〉!
〈エデン〉に新たに上級職が増えて二日が経った。今日は月曜日だ。
新たに上級職に就いたリカとシズは、シエラとカルア、他にも数人と組んで中級上位ダンジョンで新しい 職業 ( ジョブ ) の練習に精を出しているとのことだ。
今日の夕方には四段階目ツリーも最終調整する予定。ギルドバトルでお披露目だな。
楽しみだ。
そしてニーコだが、昨日ついにLVがカンストし、晴れて上級職、高の下、【トレジャーハンター】へと〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉した。
とうとうトレハンがメンバーに加わったのだ! 素晴らしい。
ニーコも喜んでいたぞ。両手を挙げてわーいしていたからな。若干やけくそ気味に見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
そして俺たちは月曜日、またレアボス祭りに奮闘していた。しかし、
「出ないなぁ~」
「出ないわね~」
ラナと隣同士に座って「ふぅ」と息を吐く。
エステルが用意してくれた冷たい麦茶が熱くなった身体を冷やしてくれて心地良い。
現在〈 鎧獣 ( よろいじゅう ) の 鉄野 ( てつの ) ダンジョン〉の最下層、その 救済場所 ( セーフティエリア ) で休憩を取っていた。
うむ、俺たちのレアボス討伐祭り(ドンコンガ狩り)は難航していた。
いや、戦闘自体は全勝だ。
上級職になったリーナに加え、ニーコも上級職となり銃撃スキルを獲得できたため練習がてらアタッカーとしてガンガン撃ってもらったが、明らかに最初の頃より勝ちやすくなっていた。全体の戦闘能力がかなり上がっているのに加え、ニーコのスキル『ラストアタックボーナス』も取りやすくなった。
周回は順調だ。
何度か〈笛〉を回復するついでにシエラやカルアも連れて来て攻略者の証を入手させたりもするくらい余裕がある。
難航しているのはドロップだ。
ニーコの『レアドロップコレクション』に加え『ラストアタックボーナス』も出来るだけ発動させるようにして倒し、〈幸猫様〉〈仔猫様〉による『幸運』や〈 金猫 ( きんねこ ) の 小判 ( こばん ) 〉も発動して〈金箱〉ドロップ率はなんと3割にまで上昇している。
これは〈木箱〉がドロップしないレアボスだからこその確率だな。10回に3回は〈金箱〉が出ている。
10戦すれば6個は〈金箱〉という計算だ。
そして俺たちが持っている〈笛〉の数は6個、24回〈笛〉を吹くことが出来る。
成功率は70%なので大体14回~18回くらいレアボスをツモるな。平均16回。
さらには【トレジャーハンター】のスキル、『ドロップ率UP』シリーズの『装備ドロップ率アップLV10』をオンにして、装備のドロップを出やすくしている。
そのおかげで今日は半分以上が装備ドロップだ。
しかし、目的の〈放蕩獣鉄剣〉は未だにドロップしない。
「エステル、今のレアボスで何体目~?」
「初日から数えて46体目ですね。〈金箱〉は26個ドロップしています」
ラナの緊張感の抜けた問いにエステルが麦茶のおかわりを注ぎながら微笑んで答える。
聞いただろうか?
土曜日、いや、金曜日から始まったレアボス祭りは通算46戦を行ない、〈金箱〉は26個もドロップしていた。すごい。
レアボス〈金箱〉産ドロップが26個? 上級装備も落ちまくり? マジ?
まあ残念ながらそう美味しい話ではない。実際はレアボスの〈金箱〉産とはいえ 中級上位 ( チュウジョウ ) 級のドロップも落ちるからだ。というか割合はそっちの方が高い。
上級のレアドロップは10個くらいだ。それでも多いほうだけどな。
ちなみに〈上級転職チケット〉はさらに1枚落ちているが、これについては保留とした。
今〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉してもギルドバトル本番で新しい 職業 ( ジョブ ) の力を活かしきれるかは分からない。なら、使い慣れた下級職の方がいい、との判断だな。
四段階目ツリーを開放し、急に出来ることが多くなると最初は戸惑いの方が強くなる。実際夏休みにしっかりプレイヤースキルを磨いた俺が言うのだ。間違いない。
しかし、そうなると保留のこの1枚、誰に使うべきか。
そういえばアルルのレベルはどこまで上がっただろうか? あとで聞いておこう。
それはそれとして、上級のレアドロップがゲットできたのは少し嬉しい。これでいくつかの装備を換装することが出来た。
だが、だ。肝心の〈獣王ガルタイガ〉が求める〈放蕩獣鉄剣〉がドロップしないのだ。
確かにドロップすればラッキーとは思っていたが、いざドロップしないと悔しい。
何が何でもドロップさせてやるという気になる。
「ゼフィルスさん。残りの〈笛〉の回数は何回ですの?」
「残り6回だな。それがダメなら撤収だ」
「〈決闘戦〉は明日ですものね、狙ってのドロップは本当に難しいですわ」
リーナが片手を頬に当てて憂う。
そうだな。特にこの世界ではダンジョンのボスドロップを狙うのは無謀だと思われている。欲しい装備があれば買うか作るのが常識となっていた。
〈獣王ガルタイガ〉が俺に依頼してきた理由だな。
ちなみに〈放蕩獣鉄剣〉はドロップのみ、レシピは存在しない剣だ。
リーナもさすがに無理そうだと思っているようだ。
しかし、待ってほしい。俺にはまだ奥の手がある。
「最後のチャンスだからな。俺もこれを使おう」
「あ!」
そう言ってテーブルの上に出したのは〈 金 ( きん ) 当 ( あ ) タ~ル(中級)〉。
次のドロップで〈金箱〉が絶対にツモる、〈金箱〉率100%にする超アイテムだった。
それを5つ並べる。それに全員が注目した。
「出来れば使いたくはなかったが、使うなら今しかないしな」
今はニーコがメンバーにいる。
〈金箱〉率が大きく上昇中なのだ。
これを使ってしまうとニーコがマジ寂しいになってしまうので勿体無くて使うか迷っていた。
しかしだ。〈 金 ( きん ) 当 ( あ ) タ~ル(中級)〉は中級でしか使えない。使うならいつよ? 今でしょ! となるんだよなぁ。
「む、ぼくの商売敵がいる」
おお、ニーコにとっては〈 金 ( きん ) 当 ( あ ) タ~ル(中級)〉は商売敵だったようだ。初耳である。
もちろんニーコの冗談だ。冗談だよね?
「こほん。今回はこれを使っておこう。これで出なければ次の機会だ」
「むう、確かにぼくも毎日 これ ( 周回 ) に付き合わされては時間がなくなってしまうからね。今回は見逃しておくさ」
残念ながらニーコの貸し出しスケジュールはこの後もいっぱい埋まっているのだが、むしろトレハンに転職したので増えているのだが、それは内緒にしておこう。
「ねぇねぇゼフィルス! 早く使って再戦しましょ! 次に〈金箱〉を開ける番なのは私なのよ!」
「そして共に開けるのは私です」
〈金箱〉確定と聞いてラナがテーブルに乗り出した。
そしてエステルもなぜか気合が入っておられる。
やる気がみなぎったなら結構だ。
「んじゃ、みんな元気が出たみたいだし、行きますか!」
「「「「おー」」」」
休憩終了。〈 鉄嶽獣 ( てったけじゅう ) ・ドンコンガ〉よ、また再戦だ!
(ウホッ!?)
そうして〈金箱〉確定の結果だが、すごいぞ。
「〈放蕩獣鉄剣〉ゲットよーー!!」
「ラナが一発で当てたーー!?」
まさかである。
信じられねぇ。いや信じられるか、この王女、〈 金 ( きん ) 当 ( あ ) タ~ル(中級)〉を使ったら一発で目的の物をツモりやがったのだ! マジかよ。
ラナが宝箱から取り出し高らかに掲げるそれは紛れも無い、〈放蕩獣鉄剣〉だった。
ちょっとその掲げ方! まるで勇者しか抜けない剣を引っこ抜いたみたいなんだが!?
かっこよすぎる!?
くっ!? ゲームでは、「出ない出ない、勿体ないけど確率上昇系使用、って使ったら即行出た!? 今までの苦労はいったい……」という現象は良く起こるのだ。これも妖怪の仕業だろう。
おのれ妖怪め! 狙い通りだったな。(グッ!)
ラナが〈金箱〉の一つから取り出したのは薄い青紫色の装飾に彩られた〈放蕩獣鉄剣〉。何度見ても間違いない。
「わわわ、結構重いわ!」
「ラナ様、預かります」
「ありがとうエステル! ――ねぇねぇゼフィルス、これで良いんでしょ? 私、やったわよ!」
「ナイスだラナ! よくやった!」
いえーい! とラナと両手ハイタッチをキメる。
エステルもやりたそうに後ろで待ってるみたいだぞ?
その後、ラナは全員といえーいした。
そしてエステルの〈金箱〉からは、
「これは、両手槍のようです」
「おお! 〈マテンロウ〉か!」
〈金箱〉からエステルが取りだしたのは紛れもない上級武器。
エステルが装備している〈リーフジャベリン〉と同じ両刃の槍。
白銀の槍はまるで美術品かと思わせる美しい光沢と姿形を取っていた。綺麗で美しく、そしていかにも強そう、高級品のようだ、などなど様々な言葉が浮かんでくる。
なんだこれ、テンション上がるぞ!
性能的には『貫通強化LV10』しかなく、その分攻撃力が高いという攻撃特化装備だ。強化すれば上級上位ダンジョンの上層までは戦えるほどの性能を持っている。
「綺麗ですね」
「も、もうちょっと見せてくれたまえ!」
「もう、ニーコさん身を乗り出しすぎですわ!」
リーナとニーコのテンションも高い。
今までの上級武器も大体こんな感じだった。
そこでふと、エステルが〈マテンロウ〉に目を奪われているのに気がつく。
珍しくエステルがジッと見つめているのだ。気に入ったのかな?
「エステル、その〈マテンロウ〉だが、使ってみるか?」
「! よろしいんですか?」
「もちろんよろしい。というかエデンで両手槍装備出来るのエステルしか居ないし、エステルが当てたのだから何の問題も無いぞ」
「わあ! とうとうエステルの武器も上級装備になるのね!」
やっぱりこの〈マテンロウ〉はエステルが使った方がいいよな! ラナも大賛成のようだ。
「こ、これを使おうというのかね? これほどの芸術品、とんでもない価値が付くと思うのだよ? しっかり保存の良い環境に置いて掲示しても――」
ニーコはコレクターの性が出ているようすだ。
しかし、俺は武器をただ飾っておく気など無い。
「装備は使わないとな!」
「oh~」
ニーコは少しだけガクっと肩を落とした。
「ゼフィルス殿、この武器、ありがたく頂戴いたします」
「おう、〈マテンロウ〉は強いぞ~。これからも頼りにしているな、エステル!」
「はい!」
こうしてエステルは武器を換装し、〈マテンロウ〉を装備することになった。
そしてその後は〈 金 ( きん ) 当 ( あ ) タ~ル(中級)〉を使わずに残りの〈笛〉5回も周回し、みんな上機嫌で帰還したのだった。
とりあえず、〈白の玉座〉を正式に〈エデン〉の物にするため、〈獣王ガルタイガ〉の所へ行こうか。