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第652話 〈北西巨城〉陥落、開始4分ジャストの攻撃!

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第652話 〈北西巨城〉陥落、開始4分ジャストの攻撃!

一方で、赤本拠地から距離が近く、〈エデン〉の白本拠地から距離が長い〈北西巨城〉。

先に先取される可能性が高いこの巨城を狙っていたエステル、カルア組は無事に隣接マス確保に成功していた。

「ぶい」

「お見事ですカルア。さすが〈テンプルセイバー〉の皆様、もう少しで隣接マスを取り逃すところでした」

「ん、相手も中々やる。ユニークスキルでダッシュしなきゃ危なかった」

現在エステル、カルアはゼフィルスに指示されたルートを通り、本拠地から西方向へまっすぐダッシュ。

北側の観客席を越えたところで北西へ斜めに2マス移動し(図J-11)、また西へ進路を変更、そのまま巨城へ駆け抜け、隣接マスを確保していた(図G-11)。

この、途中に挟む北西へ斜めに2マス移動するのがポイント。まずここまで西に一直線に進むのに意味がある。

この位置(図L-13)は観客席を越えたところを意識している。ここから南北へ進むことが可能で、南にも進むことのできる位置取り、つまりは〈中央西巨城〉も視野に入れているポイントだ。このマスから斜めに南へと進み〈中央西巨城〉へ向かう布石となるため取っておくべきマスだ。

〈テンプルセイバー〉の方が本拠地が近いのだ。もし〈北西巨城〉を相手に先取された場合、すぐに〈中央西巨城〉に進めるようにする一手と共に、〈テンプルセイバー〉との競争に勝つための一手でもある。

この中央にあるZ型の観客席は白本拠地から抜けるためには15マス掛かるが、赤本拠地から抜けるための必要マスは12マスだ。(図J-14地点)

故に、そのまま本拠地から西へ真っ直ぐ向かえばインターセプトされてしまう可能性が高い。

観客席から離れて進むのが正解だ。ここで斜めに2マス北西に進むことでZ型観客席から離れる、するとどうだろう、赤本拠地から白チームを押さえるために必要なマスが15マスになるのだ。(図J-11まで進まなくちゃいけないため)

この15マス目(図J-11)を赤が先に取れなければ白チームをインターセプトできないわけだが、白チームも本拠地から掛かるマスは15マス、赤チームも15マスだ。ではどっちが有利かというと白チーム有利となる。

理由は対角線。

斜めにマスを移動した場合、十字にマスを移動した時よりも時間が掛かるのだ。マスは四角形、真横に進むより対角線に進むほうが距離が長いからだ。

赤チームは15マス目に進むまで斜めに3マス移動しなければならない、それに対し白チームは2マスでいい。

つまり同じ15マス目であっても白チームの方が距離が短いという逆転現象が発生するのだ。

15マス目(図J-11)を取り合おうとすると白が有利だ。ここを通ればほぼ確実にインターセプトを躱し〈北西巨城〉の隣接を確保出来る。

だからこそ必要な一手と2人はゼフィルスから教わっていた。

ゼフィルスがなぜ観客席沿いに南へ下り赤をインターセプトしなかったのか、その理由である。一見そっちの方がインターセプトしやすく見えるが、実は対策があるのでできないのだ。開発陣が仕掛けた絶妙な引っかけである。

つまり初動ではまっすぐに〈南東巨城〉〈北西巨城〉を目指し、巨城の周りを囲ってしまうのが最善なのである。

しかしこれをすると中央にある巨城に隙が出来るため、それをインターセプトするための一手を入れる。これで隙が無くなるという戦法をゼフィルスは実施していた。

エステルたちも、もし〈テンプルセイバー〉が真っ直ぐ〈北西巨城〉を目指してきて間に合わないようならすぐに進路を〈中央西巨城〉に移すよう言われていた。

そして〈テンプルセイバー〉の初動だが、見事に目先のインターセプトのしやすさに引っかかった。エステルとカルアはゼフィルスに教えてもらった戦法でこれを見事に回避していた。

しかし、これでも〈テンプルセイバー〉は元Aランクギルド。

〈馬〉に乗って駆け抜けるメンバーは足が速く、〈蒼き歯車〉を装備したエステルに匹敵するスピードを誇り、〈北西巨城〉を取りにきた。

その数、なんと5人。

5人が〈馬〉に乗って駆けて来たのだ。

これがどういう意味か分かるだろうか?

今まで〈エデン〉が相対してきたギルドはみんな、初動はメンバーが足並みを揃えるという戦法を取ってきた。

これにはメリットはあるが、足並みを揃えるという点でスピードが遅くなるという大きなデメリットがあった。

しかし、〈テンプルセイバー〉はその最大のデメリットを〈馬〉に騎乗することによって緩和したのだ。

これにより、〈エデン〉はツーマンセルしかいないためにまっすぐ1本の線を引くしか出来ないのに対し、〈テンプルセイバー〉は同時に横2列、横3列の線を引き、マスを大量取得して隙をカバーすることを可能にしていた。つまりはゼフィルスがしていた2人戦法を5人以上でやってきたのだ。おかげで〈中央西巨城〉への隙を潰しつつ、〈北西巨城〉を取りにきつつ、さらにインターセプトしに来たのである。

とんでもない手数だった。さすが、元Aランクギルドである。

しかし、スピードなら〈テンプルセイバー〉を含めてもこの〈決闘戦〉でトップはカルアだ。

〈テンプルセイバー〉の方が〈北西巨城〉は近い、故にゼフィルスがしたように巨城の周りを囲み、インターセプトしようとしてきたのだが、そのインターセプトがされる寸前、カルアがユニークスキルの 差込 ( さしこみ ) で〈北西巨城〉の隣接マスを確保したのだった。

「くっ、なんという速さだ! 俺たちのスピードに勝るだと!?」

「むふふ」

保護バリアによって弾き出され、驚愕に目を見開くのはこの部隊を率いるカサンドだった。

〈テンプルセイバー〉の能力は、何も〈白の玉座〉に浸りきったものではない。

初動で負けていても対人で勝てるから最初はいいのさ、なんて考えはしていない。

むしろ初動でかなり優勢を取るのが〈テンプルセイバー〉である。

そうして相手が慌てて対人を選択してきたところを迎え撃つのを得意としていた。

背中を見せ、逃走する者を後ろから、なんてことは騎士道に反するからだ。

ただ以前までは対人を仕掛けてきた相手に対し、「受けてたとう! ふっ、我が勝利だ!」で通ったのだが、最近では「受けてたつ! ギャー!?」という感じだ。騎士の名が泣いてる。

彼らが初動は良くても黒星を重ねてきた理由だ。

少し話が脱線したが、そんなために自分たちより早く巨城に隣接したカルアに驚愕していたのだった。

この世界では足並み揃えて戦法が一般的なので、〈エデン〉のように足の速いツートップがまず隣接を確保するという戦法が珍しいのだ。

しかし、カサンドが気になるのはそれだけではない。

「(なぜ巨城を攻撃しないのだ?)」

すでに〈テンプルセイバー〉の5人は巨城に攻撃を開始している。このままなら1分ほどで巨城は落ちるだろう。

しかし、同じく隣接マスを取ったカルアとエステルが攻撃していないのだ。

目の前でガリガリ巨城を削られているのにである。普通なら巨城が攻撃されたら差込狙いで自分も攻撃するのが一般的だ。最後の一撃先取がルールなのでラストアタックは激しくなりやすく狙うなんてとても出来ないため、争うように攻撃するしかないのだ。

しかし、カルアとエステルは冷静沈着。

むしろ言葉を交わす余裕すら持っていた。

カサンドらは信じられない気持ちで隣を気にしつつも、巨城を攻撃していく。

そして、相手の狙いの一部が分かった。

「待たせたわねエステル!」

ラナ率いるギルドメンバーの到着である。

「(なるほど時間稼ぎ、仲間を待って巨城を落とす心算だったか!)」

これで〈エデン〉は7人になった。

数の上では逆転だ。

巨城はまだ5割弱のHPを残しており、陥落していない。

もし相手と拠点を取り合っていたらすでに陥落寸前、いや〈テンプルセイバー〉が確保していた可能性が高かっただろう。

だからこそ時間稼ぎのために敢えて攻撃には加わらず、仲間を待ったのだとカサンドたちは看破したのだ。

「(なんという忍耐か。巨城の隣接を確保できたのだから普通は攻撃したくなるはず、それを抑えるのは並大抵のことではない、しかし、我らも負けぬ!)」

これが上級生の普通の感覚だ。しかし〈エデン〉はまったく違う。

「時間まで残り10秒ですね。そろそろ配置に付きましょう」

「そうね!」

「みなさんお願いいたしますわ」

「ええ、任せて」

「了解した」

なんというか、和やかだった。

巨城が現在進行形で削られているのに、〈エデン〉のメンバーは巨城ではなく、なにやら位置を気にしている。しかもメンバーが揃ったというのに攻撃もしてこなかった。

それは〈テンプルセイバー〉メンバーたちにとって不思議な光景だった。

巨城の前にエステルとカルアが立ち、距離が離れたところで他のメンバー、ラナ、シエラ、シズ、メルト、リーナが間隔を空けたり、前後にずれたりして、とても陣形とは呼べない何かが出来ていた。

その配置にいったいなんの意味があるのか、カサンドたちには見当も付かなかった。

しかし、十秒後にはその理由が分かった。

「『 攻陣形 ( こうじんけい ) 四聖盾 ( しせいたて ) 』!」

最初は盾を浮かせたシエラがスキルを使った。

それにまったく合っていない形でそれぞれの〈エデン〉メンバーが準備をし始める。

見れば全員が左手の腕時計を注視していた。その時間は試合開始から3分55秒を指していた。

「『インパクトバッシュ』!」

スキルを使ったのはやはりスピードの遅い小盾突撃をしたシエラだった。

4つの小盾が空気を切りながら巨城へと突撃していく。

「行きなさい! ――『大聖光の四宝剣』!」

「『マルチバースト』!」

「ユニークスキル『アポカリプス』!」

「『ハイパーカノン』ですわ!」

続いてラナ、シズ、メルト、リーナが攻撃、それは一斉攻撃に見えてバラバラの攻撃だった。

〈エデン〉が拠点への一斉攻撃。いや一斉攻撃と言うにはバラバラだ。単純に攻撃を開始したというのが正しいか。だが、それに反応して〈テンプルセイバー〉の攻撃密度が上がる。

巨城のHPは2割強だ。せっかくここまで削ったのに奪われるわけにはいかないと、ラストアタック用に取っておいた手数で攻撃する系のスキルで全力で攻撃を始める。しかし、

「『 64 ( ろくじゅうよん ) フォース』!」

「『閃光一閃突き』!」

カルアとエステルもスキルを発動する。

そして試合開始から4分。

――――〈北西巨城〉が陥落した。

先取したのは――〈エデン〉だった。

―――〈ジャストタイムアタック〉、成功。

ポイント〈『白4390P』対『赤630P』〉〈ポイント差:3,760P〉。

〈巨城保有:白2城・赤0城〉

〈残り時間56分00秒〉〈残り人数:白15人・赤15人〉

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後書き失礼します。

近況ノートに添付で図を貼り付けました! こちらからどうぞ↓

https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16817139555729803243