第670話 大面接開始! まずはセルマ先輩とトモヨの番!
第670話 大面接開始! まずはセルマ先輩とトモヨの番!
翌日。木曜日。
昨日はあれから大変だった。
あのテンションが振り切れて戻って来れなくなったラミィ研究員が、一周回って冷静になったらしく、ミストン所長の元へ俺を連れて行ったのだ。
やっぱりクラス対抗戦第4位に輝いた〈51組〉全員の高位職を発現させたのはやりすぎちゃったかもしれない。
しかし後悔はしていないけどな。
色々なクラスに派遣されたことで少なくなった研究員たちに囲まれつつミストン所長に発現条件をあれこれ聞かれ、俺もそれに少しだけ答えておいた。
とはいえ「それが本当に発現条件に必要な事なのかは分からないが、こういうことをすれば発現しやすくなるのではないか?」という 体 ( てい ) でだ。
うむ、今回はっちゃけすぎて色々と口出ししすぎてしまったかもしれないが、実は俺も全て正直に発現条件を生徒たちに教えたのではない。
少し大げさに条件を盛ってある。
例えば【タイムラビット】が発現した彼には「時計を10個用意しろ。自分の周りに囲むように並べたらその中心で1時間瞑想してみてくれ」と指示を出したが、別にこんなことをしなくても時計を5つ以上持ち歩いただけで条件は満たせる。
これは統計を取っている研究員たちも首を傾げざるを得ないだろう。
だって俺が指示を出した事を過去の【タイムラビット】発現者はやってないのだから。
何が原因か研究するはずだ。つまり、俺の言う事を鵜呑みにせずしっかり研究しろ、というのと俺が「正確なことを知っているわけではない」と印象付けたわけだ。
こんな感じにちょっとズレたことを語っておいた。ヒントとしてな。
なんでヒントを話したのかというと、俺たち〈ダン活〉プレイヤーはゲームの世界にちゃんと 職業 ( ジョブ ) のヒントが隠してあったが、この世界ではそのヒント自体入手する方法が難しいからだ。
職業 ( ジョブ ) のヒントとは、主人公としてクエストで各地を回る際に触れるものであり、一般人や研究者はもちろんそんなヒントに触れる事は出来ない。
だから研究が滞っているのではないか? と俺が考え直した。さすがの〈ダン活〉プレイヤーだってノーヒントで1021職を全て発見する事は難しかっただろう。
そう考えれば、この世界でも1021職全てを発見するためにはヒントが不可欠であると思うのだ。だからヒントを教える。少しだけどな。
研究員たちは俺の言葉を一言一句逃さないよう血走った目をしながらメモを取っていたな。うむ、研究、頑張ってほしい。
また、昨日はシャロンが〈エデン〉に加入することになった。
やったぜ! とうとう念願だった【姫城主】が仲間に加わったぞ!
しかし、まだ喜ぶのは早い。〈転職〉が実際に始まるのは週末の土日だからだ。
さらにシャロンには今所属しているギルドがあるのでその脱退もしなくてはならないため、正式な加入はもう少し後になる。
加入したら盛大に歓迎会をしないとな!
と、実はその流れで〈51組〉の有望な人材を引き抜こうとしたのだが、そこでミサトから待ったが掛かった。
内容を要約すると、「〈エデン〉に加入するチャンスを待っている子は多いよ。ここはもっと募集を広げるべきだよ」というものだった。
なるほど、確かにその通りだ。優秀な人材は広く募集すべきというのは同意である。
時期も良いため、俺は夏休み前から計画していた第二回大面接の開催を決めた。
さすがは〈エデン〉が誇るプロフェッショナルスカウトマンのミサトだ、すぐに行動してくれたよ。
前回はすぐに募集を打ち切ってしまったが、今回は丸1日募集の時間を作った。しかし1日の募集だけで大丈夫なのかと思うが、ミサトから言わせるとこれで十分らしい。
ミサトが言うならそうなのだろう。
今回の募集は、将来Bランクに至るときに〈エデン〉に加入してもらう人材の募集だ。
以前よりも意識の高い人たちが来るに違いない。
いい人が来るといいなぁ。
そして現在15時、俺は早速面接会場に決めた場所、〈戦闘3号館〉の〈練習場〉に来ていた。
以前のように色々動きを見せてもらうためだ。
そこにはすでにミサトが選抜した人たちが面接を待っていた。
「準備はいいみんな~? いいところ見せて〈エデン〉に加わっちゃおうね~!」
「「「おおお~~!!!!」」」
ミサトが面接に来た優秀な人材を煽っていた。煽るの上手いな!
むっちゃやる気になった学生たちが下級生、上級生問わず燃えていた。
人数はざっと20人。これが第一選抜グループの人たち。
ミサトが選抜した人たちを七つのグループに振り分け、今日と明日で面接をするのだ。
土日の〈転職〉まで時間が無いのでスピード面接だ。しかし手は抜かない。
「ゼフィルス君~」
「今日こそ一緒のギルドになっちゃうからね~!」
面接に集まった人たちのうち、結構な数が顔見知りだった。
というかほとんど俺の授業の生徒だった。みんな一学期の生徒だな。手を振ってきてくれる。
俺と同じギルドになりたいだなんて、慕われているようでとても嬉しいな!
俺も笑顔で手を振り返した。
「おう~、みんな頑張れよ~面接官は俺だけど」
「あはははは」
「ゼフィルス君一緒にダンジョン行こうね~」
それは約束できないな。〈エデン〉に合格したらになる。
しかし、先ほど言ったように俺は手を抜く気はないぞ。
「まずはナンバー1番~ナンバー20番までね」
「ほう。1番はセルマ先輩か、何々? 【闇錬金術師】か~」
「はい! ゼフィルス先生久しぶりですね!」
「久しぶりセルマ先輩」
早速面接開始。最初の方は【錬金術師】に就く二年生のセルマ先輩だった。
確かこの面接の順番は応募の順番通りのはずなので、セルマ先輩は一番最初に応募してきてくれたことになる。
さすが、いつも俺の授業で教卓の前の席を独占していただけあるぜ。
「抜け駆けよ! 錬金先輩が抜け駆けしているわ!」
「何自分だけちゃっかり名前で呼び返されたりしてるの! 許されないわよ」
「おほほほほ。これがトップのご褒美よ。お先に失礼しますわね」
「せ、清楚ぶってるわ」
最初のグループがほとんど知り合いだからだろう。
みんなわちゃわちゃ楽しそうだ。そうだ、〈ダン活〉は楽しまなきゃいけない。
俺の生徒たちはみんな分かっているようだ。
「な~んかゼフィルス君が的外れなこと考えている気がする~」
「ん? どうしたんだミサト?」
「ん~ん、じゃあ早速始めるよ。――セルマ先輩、まずは現在の 職業 ( ジョブ ) を使った事故アピールをどうぞ~」
「ねえミサトちゃん、なんか今 自己 ( ・・ ) アピールが違うように聞こえたのだけど気のせいかしら?」
「気のせいっすよ~、なんちゃって」
なんだろう、ミサトとセルマ先輩がなんか言葉遊びしてる。楽しそうだ。
気を取り直したセルマ先輩が、中級の巨大錬金釜を取り出して手慣れた様子で錬金作業をしていく。ハンナには及ばないが、中々のスピーディさだ。
さて、セルマ先輩は【闇錬金術師】に内定しているらしい。
【闇錬金術師】か~。上級職になれば 生産 ( 闇錬金 ) も 戦闘 ( ダンジョン ) もできる【闇の魔女】になれる。というか、ほとんど闇の魔法職だな。
【闇錬金術師】系統は邪悪な物特化。
闇系の強力なアイテムを多く作れる反面、普通のポーション類が作れない側面を持つ【闇錬金術師】は、実はあまり生産に向いていない。生産職なのに。
上級職になれば闇の魔法使いたる【闇の魔女】になれるため、生産3割、戦闘7割くらいの比率で育てるのが最善だ。デバフ魔法アタッカーなので【闇の魔女】は中々強いのだ。
闇系のアイテムを使いながら戦う独特な戦闘スタイルは、割と人気があって使う者も多かった。
正直なところ、錬金の腕よりも戦闘できるかの方が知りたいところなのだが。
「セルマ先輩はダンジョンには潜るのか?」
「へ? う、ううん潜りませんわよ」
「そうか」
そりゃ【錬金術師】だから普通は潜らないよな。……俺の脳裏に可愛い幼馴染の姿が過ぎったが、それは置いておこう。
「うーむ。これは悩むな」
「な、悩んでる! あの勇者君が錬金先輩を採用しようか本気で悩んでるわ」
「な、なんてことなの!?」
「これが、トップバッターの威力?」
「ふふふ~♪」
俺が腕を組んで悩ましい姿を見せるとなぜか周りがざわついた。
おっと、いけない。しかし、悩ましいのも事実。悩ましいのは採用方面じゃないけど。
【闇錬金術師】はその特性上、上級職込みで育成論を組む。【闇の魔女】になるときSPを50貯めておくくらい極端な育成をするのが俺の最強育成論だ。ステータスだってINTに振る必要がある。
せっかく〈転職〉し、LVゼロからやり直すのに上級職を知らないで育成するのは勿体無すぎる。悩ましいな。
いいや、とりあえずは保留で、まだまだ大面接は始まったばかり、先は長いのだ。俺は顔を上げて先を促した。
「よし、次行ってみよう~」
「は~い! ではお次は~〈戦闘課1年12組〉所属の~トモヨさんで~す!」
「おお!」
続いて現れたのは、二つの大盾をその身に持つ女子。彼女も俺のよく知る生徒の1人だ。
「今日はよろしくお願いします、ゼフィルス先生!」
「おいおい今は先生じゃないぞ、普通にゼフィルスでいい。しかし〈12組〉ということはこの前のクラス対抗戦で出てたのか?」
「じゃあ、ゼフィルス君で。残念ながら、クラス対抗戦では会えなかったけどね」
「そうか~、それは残念、残念なのか?」
「あははは~」
どうやらトモヨは連合に参加していたらしい。しかし、残念ながら俺とは会わなかったようだ。しかし二盾使いとは強いな。俺の話をよく吸収しているようで嬉しくなる。
「ん? そういえばエステルが〈12組〉に強い盾使いがいますと言っていたが、もしかしてトモヨのことか?」
「あ、そうそう、私エステルさんと戦ったから。負けちゃったけどね」
「マジか」
おいおい、そういうことなら話は早いぜ。エステルが先のクラス対抗戦で唯一俺に紹介したい人がいますと言っていた二盾使い。
エステルにそこまで言わせるとは、あとで紹介してもらおうと思っていたけど、トモヨのことだったのか。
「ゼフィルス君~後が押してるよ~」
「おっとそうだった。じゃあトモヨ、ちょっとミサトの攻撃を防いでみてくれ、タンクを見たい」
「おっけー」
「じゃあ少し離れて、ミサトは魔法攻撃してみてくれ。まずは『シャイニングブラスト』で」
「あいよー、―――『シャイニングブラスト』!」
少し距離を取ったトモヨにミサトから〈光属性〉の閃光が放たれた。これは三段階目ツリーの中々強力な魔法攻撃、さて、トモヨはどう防ぐのか。
「『盾流し』!」
トモヨが選択したのはなんと、受け流し系! 二盾のうちの片方を内側から外側へ払うようにして簡単に流してしまったのだった、しかも両手を使わずに片手のみで。
「おお! ブラボー!」
思わず拍手を送る。いいな今の! すっげぇかっこよかったぞ!
俺もやってみたい! いや、後でやってみよう!
受け流しは盾のロマンだよ。しかも簡単に弾くように受け流した。なんとスムーズな流しなんだ。あれは映える。
なるほど、エステルが優秀と言ったのも分かるぜ。これは第一候補だな。