第695話 練習風景継続。オリヒメさんとカタリナの番!
第695話 練習風景継続。オリヒメさんとカタリナの番!
「うわ、こう振るんだ。なるほどなるほど~」
「【姫城主】は『防壁召喚』が鍵だ。だからこれはLV10まで振っておく。攻撃を防ぐ壁に使えるのはもちろんのこと、相手を誘導したり、自分の姿を隠して奇襲にも使える、使い方次第で様々な戦術に使える便利なスキルだ」
これはただの壁を呼び出す単純なスキルだが、全体攻撃系、範囲攻撃系に非常に有効でこれを盾にするだけで味方の損耗をとても抑えることが出来る。
後衛の守りに建てておくだけで後衛を気にしなくても良くなるし、便利なスキルだ。後衛は壁を盾にして援護射撃すれば良し。
しかもLV10だとクールタイムが少なく、僅か12秒で再発動できるようになるため絶対に取得させておく。
「だが気をつけないといけないのがタゲだな。ボス相手にはタゲ取りが重要だ。しかしターゲットはボスから見えていないといけない。だからこれの後ろに隠れるときは注意だな。タゲの相手を見失うとボスは次の目標に向かってしまうから」
「これはギルドバトル用のスキルかと思っていたけれど、ボスでも使えるんだね~。すごいねゼフィルス君、物知り~」
「ふふ、それほどでもある」
シャロンにSPを振ってもらい、取得した〈スキル〉〈魔法〉の使い方を伝授していった。
シャロンの尊敬の眼差しがちょっと気持ちよかった。
「これで二段階目ツリーまでは一通り教えたな。後は練習あるのみだ」
「よーし私、頑張るよ! 念願の高位職になれたし、ゼフィルス君にもメルト君にもいっぱいお世話になったもん。これはダンジョンとギルドバトルで活躍して返すから!」
「楽しみにしてるぜ」
シャロンのやる気がすごい。
気合を入れたシャロンだったが、一つ気が付いたように俺の耳元に顔を近づけてこっそりお礼を言ってきた。
「色々教えてくれて、ありがとうねゼフィルス君!」
「お、おう!」
甘い!
シャロンって声が結構甘可愛いので耳元で囁かれるとちょっとドキドキする。
あと、シャロンは横ではなく正面にいたので少し抱きつくような形になってしまった。おかげで色々と近くて少し動揺してしまう。
シャロンって男子と距離が近い子なんだよ。
お礼を言ったシャロンは「また後でね!」と言ってまずはスキルの試し撃ちへ向かっていった。
それを見送っていると続いての受講者が来る。
「見てましたわよゼフィルスさん」
「いや、見ないでくれよオリヒメさん」
オリヒメさんだった。
なんだか前にもあったような気がするぞこのやり取り。
「うふふ。前はリーナさんといい感じだったと思いますが、そういえばゼフィルスさんには特定の方はいらっしゃいませんでしたわね」
へんなところを見られてしまった。オリヒメさんは相変わらず甘酸っぱい青春が大好きらしい。
「シャロンさん、可愛いですわよね。女性の魅力的な部分も大きいですし。ゼフィルスさんはどう思いましたの?」
「なんのことやら」
「もう、殿方はシャイでいけませんわ。シャロンさんがあんなに接近したんです、バッチリ見えていたはずですわ」
オリヒメさんの言いたいことは分かる。確かに胸部装甲の大きさに少し動揺したのはある。
シャロンは俺よりも背が低いので、正面から耳を傾けるイコール下を向くのだ。当然視界にはいっぱいの胸部装甲が広がっていたが、これは見なかったことにするのが紳士の嗜みである。
「でもシャロンさんはリーナさんのような感情ではなく純粋な感謝みたいですから、仕方ありませんわね」
「さてさて、話は終わったな。では後もつかえているし【人魚姫】の〈育成論〉行くぞ~」
この話題を続けているとなんかやばそうなので切り上げる。オリヒメさんは少し残念そうだが、さっきから周りで練習していたメンバーたちが聞き耳を立て始めていた気がするのでこれ以上はいけない。
「はい。ゼフィルスさん、改めてよろしくお願いいたします」
オリヒメさんも気持ちを切り替えたようなので早速俺流の最強育成論を伝授していくとする。
その前に、一つ聞きたいことがあったな。
「そういえばオリヒメさんは攻略者の証の状況はどこまで進んでるんだ?」
「それでしたらすでに 初級下位 ( ショッカー ) までは全て取得させていただきましたわ。来週には 初級中位 ( ショッチュー ) も全て確保できる予定ですわ」
「さすが学園のサポート、早いなぁ」
攻略者の証。
これはダンジョンをクリアしたときにダンジョンがくれる、試練を乗り越えし者の証だ。
なんでこんなことを聞いたのかというと、オリヒメさんは他の課からの〈転課〉組だからだ。
オリヒメさんは元々は地上で回復の手助けをする〈回復課〉にいた関係上、ダンジョンにはあまり潜っていなかった経緯がある。
そこで問題なのが〈道場〉だ。
〈道場〉の上のランクに入ダンするには攻略者の証が必要。これはダンジョン入ダンのルールで学園側にも変える事の出来ないダンジョンルール。
初級下位 ( ショッカー ) の証3つ所持者になれば LV20~LV30 ( ランク3 ) が使用できるし。
初級中位 ( ショッチュー ) の証3つ所持者になれば LV30~LV40 ( ランク4 ) が使用できる。
つまり攻略者の証をほとんど持っていなかったオリヒメさんは〈新学年〉に入ったはいいが、〈道場〉の制度を受けられないのだ。そのままならば。
こういう他の課から〈戦闘課〉に移ってきた学生は割といる。
しかし、そこは迷宮学園、しっかりと考えてありました。
学園はちゃんと攻略者の証を取得させるキャリー部隊を用意していたのだ。
つまり、若い組に〈転課〉できるような優秀な学生は攻略者の証も学園から援助されるということで、オリヒメさんを含む数十人の学生たちはいくつかの班に分かれ、ダンジョンの攻略をキャリーしてもらっているのだ。何その制度すごい。
もちろん〈道場〉の〈ランク4〉に入れる 初級中位 ( ショッチュー ) の証までだが、とても助かる制度である。
ちなみにだが、実は〈アークアルカディア〉のカイリもキャリー組に参加していたりする。カイリのユニークスキル『パーティインビジブル』は『探知』系のスキルを使ってこない初級ダンジョンでは無類の強さを誇るからな。
モンスターに一切見つからず、真っ直ぐボス部屋へ直行が可能だ。
学園には当然最短ルートの地図もあるので、直ぐ行って、速攻ボスを狩って帰ってくる簡単なお仕事だったそうだ。あ、ボスを狩るのはまた違う担当者な。
カイリは優秀な学生だとして学園から人気があるらしい。引っ張りだこなんだそうだ。
上手く名を売れたようだな。カイリも喜んでたよ。
そんな訳で学園からのサポートを受けまくり、無事にLV20へと至り二段階目ツリーを開放したオリヒメさん。育成は順調なようだ。
【人魚姫】は「男爵」「姫」カテゴリーの高の上。
同じカテゴリーに【歌姫】がいるように、系統はほとんど同じだ。
ポジションは歌をメインに使うヒーラーで、【歌姫】のヒーラー版だ。
貴族系の〈姫職〉では唯一と言っていい純ヒーラーなのでその能力はとても高い。
正直【巫女】でもヒーラーとしては十分な性能を持ってはいるのだが、歌っている最中はずっと継続回復効果を及ぼす【人魚姫】の回復力には及ばない。
「しかしオリヒメさん、高の中から高の上へ〈転職〉なんて思い切ったことするなぁ~」
「あの時は少し事情があり【巫女】を選んだのです。ですが私が元々なりたかったのは【人魚姫】の方でしたから。ゼフィルスさんには感謝していますわ。これでレグラム様を今以上に支えられます」
どうやらオリヒメさんの原動力はレグラムのようだ。愛されてるな~レグラム。
ちょっと羨ましいぞ。
そんな雑談も交えつつSPを振っていき、どのようにスキルを使うのかを伝授していく。
「バフの『祝歌』系とデバフの『呪歌』系は各種入れておきたい所だな。これで戦法が一気に広がる」
「はい。バランスの良い構成だと思います」
元々【人魚姫】に就く気だったオリヒメさんはそのスキルもご存じだった。
一つ一つ確認しながら取得していってもらったが、不満は無い様子でよかったよ。
ちなみにオリヒメさんの装備は本当に人魚みたいな貝殻装備、では無く海のようなブルーを基調としたドレス装備だった。〈海の渚ドレス〉か、似合うなぁオリヒメさん。ひらりと揺れるロングスカートが清楚さ全開だ。
貝殻は髪留めだけのようだ。さすがに本当の人魚みたいな装備はしていない。
オリヒメさんが終わると次はカタリナだ。
「侯爵」のカテゴリー持ちの彼女が就いたのは【深窓の令嬢】。後衛タンク兼魔法アタッカーだ。しかしヒーラーとしても活躍できる非常に強力な 職業 ( ジョブ ) だ。
「カタリナのタンクは対遠距離攻撃専用だ。何しろ後衛だからな、相手に遠距離攻撃をしてもらわないと始まらない。その分相手を選ぶことにはなるが、魔法を使ってくる敵や遠距離攻撃をしてくる敵に対してはかなりの強さを発揮する特化型の 職業 ( ジョブ ) だ」
「はい! ご教授よろしくお願いします!」
【深窓の令嬢】のバリアによって守られながら、敵から攻撃を受ける前衛を他に用意するという手も使えるが、基本的に【深窓の令嬢】はRES特化で育成するのが正解だ。盾なんか持てないしな。
じゃあ物理の遠距離攻撃に弱いのではないかと思われるが、物理遠距離攻撃をRESで受け止める結界が多数あるため、結界で受ければ問題は無い。
また、結界使いであるミサトが『リフレクション』などの反射が使えるように、【深窓の令嬢】も同じく遠距離攻撃をパリィ、相殺、反射などをすることが可能だ。
前衛盾職が苦手とする遠距離攻撃、これに対応する特化職こそが【深窓の令嬢】である。
まあ上級職になれば対遠距離攻撃だけではなく近距離にも対応出来る 職業 ( ジョブ ) になるのだが、下級職では対遠距離特化職扱いで、近距離戦のボス相手にはアタッカーとヒーラーで対応してもらうことになるだろう。
そのやり方も一緒に伝授する。
【深窓の令嬢】は魔法タンクが非常に優秀だ。
その上アタッカーもヒーラーも出来る。遠距離から仲間を援護しつつのタンクが出来るのだ。敵が遠距離型でないとその本領が発揮出来ないという条件こそあるものの、相性の良い敵相手ならば無類の強さを発揮する。
この機会に後衛タンクという概念をカタリナに知ってもらうとしよう。
そして【深窓の令嬢】の立ち回り方法をメインに伝えていった。