第697話 可愛い天使なフィナと可愛い悪魔なエリサの番。
第697話 可愛い天使なフィナと可愛い悪魔なエリサの番。
最後になったのは2人、いや3人?
「えへへ~。エリサお姉ちゃんもフィナお姉ちゃんも可愛いのです」
「く~、この可愛い反応よ! もうこの子うちの子にするわ!」
「何を言っているのですか姉さま。普通に愛でてください」
もう完全に緩みまくっている顔で2人に抱きついているのは我らが【ロリータヒーロー】のルル。左手にエリサ、右手にフィナを抱きしめて頬をスリスリとこすりつけていた。
エリサはそんなルルにハートを撃ち抜かれた様子でデレデレ。
フィナもいつものクールな表情が解けて頬を赤らめ小さな笑顔まで浮かべてルルを撫でていた。
むしろルルが愛でられているまである。
何この尊い光景? シェリアの手が止まってるぞ。
誰かスクショください!
「ずいぶん仲良しになったんだな~」
「あい! ルルとお姉ちゃんたちは仲良しなのです!」
俺の言葉に、3人の視線がこっちを向いた。
やべぇ。
尊すぎて眩しい!
どうしよう。これからエリサとフィナにはステータスを振ってもらって練習してもらわなければならない。当然そうなればルルとは離ればなれ、この尊い光景ともおさらばだ。
そんな事をしていいのか? 本当にいいのか? 怖くてシェリアのほうに顔向け出来ないぞ。
そんな葛藤をしていたら普通にフィナが目の前にいた。
「では教官、ご教授お願いいたします」
「あれ!? 梃子でも動かないような仲良しだったのに!?」
「これから貴重な教えをいただくのです。ルルちゃんとはまた機会がありますから」
「あい! 愛でるだけで他を疎かにするのはダメなのです! 愛でるときは愛でる、やるべきことはちゃんとやる。それが正しい愛好家の姿なのです!」
「ルルがとても大人なこと言ってる!?」
いつまでも子どものままのルルでいて!
そういえばルルって同い年なんだよな。いつもうっかり忘れてしまうんだぜ。
「というわけでエリサちゃんがルルちゃんと戯れている間はフィナちゃんに任せるわ!」
「姉さまも練習してください」
いつものフィナのクールなツッコミが姉に飛ぶ。
エリサは茶目っ気があるよな~。たまに自分の事をちゃん付けするし。
エリサはこんなことを言っているがフィナのことが気になるらしく、結局ここに残った。
ルルを抱きしめたままなので説得力は皆無なのだが、なんだかんだ言いつつフィナのことをとても大事に思っている様子なのだ。
それはフィナも同じのようだが。
「んじゃ、フィナの【アークエンジェル】の育成法を伝授するな」
「お願いいたします、教官」
フィナはそう言って両手を前にして一度頭を下げる礼を取ると〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉から〈 聖銀 ( ミスリル ) の天剣〉と〈 聖銀 ( ミスリル ) の天盾〉を取りだした。
これは上級装備。
聖属性の付いた片手剣と聖属性耐性を持つ大盾だ。
両方とも〈 鎧獣 ( よろいじゅう ) の 鉄野 ( てつの ) ダンジョン〉レアボス、〈 鉄嶽獣 ( てったけじゅう ) ・ドンコンガ〉からの〈金箱〉産ドロップ品。
レグラムが持つ〈ミスリルソード〉と同じミスリル製だが、こっちの方が強いぞ。
聖属性の剣と大盾は【アークエンジェル】の発現に必要な装備だったため貸与したのだが、フィナは未だにそれを使用しているのだ。
ちなみに大盾だが、形はヒーターシールド型、大盾と言ってもさほど大きいというわけではなく横幅がやや広い程度。俺の〈天空の盾〉より一回り大きい程度ではあるが、フィナの体格から本当に大盾、という感じに見えてしまう。
性能は〈天空の盾〉よりも強い。大盾だし上級装備だしな。
この装備、大盾じゃなかったら俺が使ってもよかったんだが【勇者】の適性に大盾は無いのが残念。小盾までしか装備出来ないんだよなぁ。
というわけでせっかくのシリーズだし、一緒に使った方が映えるだろうとフィナに貸与した経緯があった。
そしてフィナの防具だが、こちらは一応白と青を基調とした鎧装備。
フィナのポジションはタンクヒーラー。タンクとは絶対に崩されてはならないパーティの要だ。つまりそれだけ質の良い装備で揃えなければならないため、装備ドロップの上級装備を結構与えていたりする。
見た目は聖なる白の衣に青のアーマーを装着している感じで素晴らしく神々しい。
バリバリに天使をイメージしてマリー先輩に〈デザインペイント変更〉をしてもらい装備を着てもらっていたりする。見た目重視でも有り、性能重視でもある良装備だ。むっちゃ強くて、可愛くて、硬いぞ~。そしてかっこいい!
「【アークエンジェル】は攻撃、防御、回復、強化とオールマイティに色々出来る。メインはタンクだが攻撃に転じても良し。ヒーラーに転じても良し。防御しながら自己回復すればとんでもなく硬いタンクになれる強力な 職業 ( ジョブ ) だ」
「はい!」
「その育成の仕方は色々有るんだが、フィナの要望を含めた俺のオススメはこんな感じだな」
俺は何枚かのメモを取り出すと、そのうちの1枚をオススメの育成としてフィナに見せる。これは最強育成論をベースにフィナ用に作り直したものだ。最強育成論は日々更新される。
この世界に来て半年。俺もリアルの戦法に慣れてきた。人との相性もあるため、それを織り込んだ育成の方針だった。
もちろんこれがお気に召さなくても良い。他にもまだ4枚用意してあるからな。
「これでいいです」
「え? まだいくつか見てないのがあるぞ?」
「教官がオススメと言うのです、そこに間違いが無い事は他のメンバーを見れば明らかですから」
なんと思い切りの良い。
フィナが少しかっこいいぞ。さすがクールキャラ。シエラと気が合いそうだ。
「嬉しいことを言ってくれるな~」
「教官、教官のオススメで私を強くしてください」
「おっし、任せろ!」
フィナは本当にタンク向けな性格してるな。思い切りが良い。見た目は小さくて絶対タンク向けじゃないんだが。
しかし、1枚目は確かに俺が最もフィナに合うだろうと組んだ育成法だった。これで良いと言ってもらえてちょっと嬉しいぞ。
「んじゃ、SPを振ってみよう! 二段階目ツリーだから特色を出すには少し弱いが、パッシブスキルの『大天使の剣LV2』『大天使の盾LV2』『大天使の衣LV2』は振っておくように、これは心得系だから、ステータスの不足を補ってくれる」
「はい!」
「タンクなので挑発系スキル、防御スキルは絶対に外せない。そしてメインの回復魔法にユニークスキルを取得する!」
「はい!」
ユニークスキル『大天使フォーム』、俺の『 勇気 ( ブレイブハート ) 』と似たような自己ステータスバフの能力だが、大天使へ変身するのが良し。
絶対に覚えさせて後で見せてもらおう。
あ、でも変身だからまずは男子のいないところで試したほうがいいのか?
う~ん、見たい! でも変身に慣れてから見せてもらおう。ギルドに加入した直後に男子の前で変身してくれというのは、ちょっとアウトな気がするのだ。
そうして俺の指示の下、フィナのSP振りも終わる。
「教官、ありがとうございました。少し練習してみます」
「ルルとハグしなくて良いのか?」
「…………」
俺がそう言うとフィナの視線が未だ抱き合っているエリサとルルの方へ向く。エリサの口がニヨニヨしている。フィナは半目だ。
「……姉さまが終わるまで待機しています。ルルちゃんも可哀相ですから」
あ、フィナが折れた。
「もうフィナちゃんは素直じゃないんだから~。じゃ、ルルちゃん、今度はフィナちゃんにくっついてあげなさい」
「ラジャ~、なのです!」
「…………」
立ち上がったルルがエリサから離れ、フィナに正面から抱きついた。
瞬間、クールだったフィナの口元が緩む。
そしてニヨニヨとそれを見つめるエリサ。それに気がつくフィナ。
「……姉さま、何を見ているのですか」
「フィナちゃんとルルちゃんが可愛くてつい」
「いいから行ってください。教官を待たせるなんて何事ですか」
エリサは良い性格しているな。
さすがにフィナも恥ずかしがっているようなのでエリサの脇から手を入れ持ち上げて回収する。
「ほらエリサはこっちだ」
「あ~れ~」
おっと、つい子ども扱いするように持ち上げてしまった。
しかし、なんかエリサってこういう事をしやすい性格をしているんだ。見ろエリサは気にした様子もない。むしろ楽しんでいるようにも見える。
こんな対応でもいいようだ。セーフ。
エリサを引き取ったら続いてエリサにも伝授を開始する。
「エリサはヒーラーだ。しかも特殊な悪魔ヒーラーだ。魔法と戦法を教えるのでよく吸収してくれよ」
「任せてよ。これでも勉強は出来るんだからね」
エリサとフィナは〈新学年3組〉。
他のメンバーができすぎているため目立たないが、勉強もかなり出来るのだ。
エリサの 職業 ( ジョブ ) 【ナイトメア】は特殊だ。
普通のヒーラーでは無く、相手にダメージを与えながら味方を回復させるドレインヒーラーとしても活躍ができる。
通常のドレイン系も有用だが、相手を〈睡眠〉の状態異常にした後に使えるドレイン系の魔法が強力で、〈睡眠〉状態ならMPまで吸収することが出来る、そのためポーション不足に陥ることは無かった。さらには二度と目を覚まさないようにする〈即死〉効果まで使えてしまう。
しかも〈睡眠〉状態ならほぼ確殺に出来る為、戦闘開始→即全体睡眠→MP吸収→永眠即死、のコンボで道中のモンスターが弱いのなんの。永続ループだったなあれは。
もちろんボスには使えないコンボなのでボス専用の戦法も伝授する。
それをふむふむと聞いていたエリサは聞き終わると目を輝かせていた。
「すごい! 何それかっこいいじゃない! それ試してみたいわね!」
気に入ってくれたみたいなので育成論を披露しつつSPを振り、エリサも二段階目ツリーのステータス振りが完了する。
これで全員のステータス振りが完了した形だ。
後は練習あるのみだな。
そう思っていたところで待ち人来たる。
「ゼフィルスさん、お待たせしたわ」
「待ってたぜタバサ先輩!」
先ほど言っていた後で合流するメンバーの1人、タバサ先輩だった。
今回の練習のメインはタンクとヒーラー。
メインヒーラーで一番実績が多く、また教え上手で最近は〈エデン〉のメンバーからの信頼も厚いタバサ先輩にお越しいただいたのだった。
よし、全員集まったし、一通り練習したらダンジョンに行きますか!