第698話 タバサ先輩合流からダンジョンへ、あれ大混雑?
第698話 タバサ先輩合流からダンジョンへ、あれ大混雑?
「ヒーラーとはパーティの連携の要。いくらタンクが上手く攻撃を防いだとしてもいずれは限界が来てしまいます。それを回復し安定させるのが私たちの仕事です。相手の攻撃を脅威とさせず、味方に自分たちが有利だと認識させ、安心して戦闘を行なってもらい、勝利の流れを引き寄せる。それがヒーラーの役割なのです」
「「「「はい!」」」」
ヒーラーで経験豊富なタバサ先輩が加わり、新メンバーの練習がとても充実したものに変わる。
特にオリヒメさんは元々【巫女】に就いていてタバサ先輩と同じ 職業 ( ジョブ ) だったため相性が良いようだ。
【巫女】の使い方についてまだまだ半人前だったと、タバサ先輩の魔法を分析し、今の【人魚姫】に活かそうと頑張っていた。
さらには〈転職〉によって新しくヒーラーポジションになったエリサや、ヒーラーとしても立ち回れるカタリナ、フィナにもヒーラーとしての立ち回り方を教えてくれる。
俺もまだまだリアルの立ち回り、特に対人については未知の部分があるのでタバサ先輩の薫陶は大変ためになる。俺も勉強させてもらった。
勝利の流れを引き寄せるのはヒーラーか、深いな。
他のメンバーたちはアシスタントメンバーたちの薫陶を受けている。
例えばフラーミナとシェリアのペアの場合。
「フラーミナさん、もちろん戦闘を行うのは使役しているモンスターですが、術者が何もしなくていいということではありません。使役モンスターと術者は一心同体。常に使役モンスターのことを意識し、援護したり、補助したりと戦闘を有利にするために立ち回ってください」
「はい! ルーちゃん離れて! 『マジックショット』!」
フラーミナのワンドから飛び出した魔法の矢が仮想敵の的へと命中する。
それまで仮想敵を攻撃していた〈リーダーウルフ〉のルーちゃんはフラーミナの指示で跳び退いており、〈スーパーモチッコ〉のチーちゃんは『モチモチ拘束』で元々動かない的を拘束していたりする。連携の練習だ。
ちなみに【犬力者】とは魔法を使うことが出来る。また【群れの長】だと物理職だったため現在魔法職としての感覚を養っている最中だ。
テイマーは自身がやられてしまうと使役モンスターも戦闘不能扱いになってしまうという強力なデメリットがあるため、出来れば後衛の方がいい。
慣れない魔法をシェリアの教えの元、どういうタイミングで援護するか、補助するか、術者自身が敵を攻撃するのかなど、色々と教えてもらっているようだ。
そしてタンクのシャロンとロゼッタはというと。
「とう! 『小回り回避』なのです!」
「ま、また消えちゃった!?」
「シャロンさん、後ろです!」
「とう!」
「わあ!」
ルルの通常攻撃が炸裂。
シャロンのカイトシールドにカンと軽い音が響いたかと思うとシャロンは尻餅を突いてしまう。
「うう、ルルちゃんが強すぎるよ~」
「2対1ですけど、ここまで一方的にやられるとは思いませんでした」
どうやらシャロンとロゼッタはルルと模擬戦をしていたらしい。
攻撃スキルだといくらタンクでも一撃で戦闘不能になるのでルルは優しく軽めの通常攻撃で攻めていたようだが、あのすばしっこくクルリとでんぐり回避してしまうルルを捉えるのは中々難しいようだな。
「ふ、2人とも盾で受けることばかりに意識しすぎています。わ、私たちタンクの役割は敵の足止め、なので、相手を常に見なくては、いけません。視界に相手の一部を絶対入れるようにして、見失わないようにするのです」
おお、ラクリッテがしっかりコーチしてるぞ!
まだ少しオドオドしているが、盾使いの1人で最近急激に力をつけてきたラクリッテはかなり自信を持っている様子だ。後輩2人にしっかり教えることが出来ていた。
しゃべり方はまだたどたどしいが、頑張れラクリッテ!
「じゃあ次は私が歌ってバフ乗っけるから、バフを受けた動きに慣れてみよう」
そして最後はアシスタントのノエル。やはり支援回復をしっかり乗せられるのはタンクだ。タンクは自分にバフが乗って力が増したとき、力に振り回されず立ち回らなければならない。
これはゲームとは違う感覚的な部分だな。ゲームではいくらバフが乗っても操作性は全然変わらなかったが、リアルだと感覚が結構変わる。思った以上にスピードが出ちゃった、とかな。
その辺の制御も出来たほうがいいので、バフ担当のノエルがバフの有り無しで感覚を養わせているところだ。声掛けの練習などもしている。
「素早さ上げるよー『テンポアップエール』! 私の声を良く聞いて! 聞き逃さないでね! 聞き逃すと急に感覚が変わって狂うよー!」
「「はい!」」
この訓練は授業ではなかなかできないし身につかないからな。練習あるのみだ。
こうして今日の午前中はしっかり練習場で練習した。
その後全員で昼食を取り、午後からはまた別の練習をする。
「午後からは実戦形式の練習だ。ということで、ダンジョン行こうか!」
そういうことになった。
とはいえ彼女たちはまだLV20。初級中位ダンジョンがせいぜいなので、今日はゴブリンが多い〈野草の草原ダンジョン〉へ向かってゴブリン相手に練習をしてもらう。
アシスタントも込みなので総勢13人という大所帯だ。
3パーティを組んでレイド戦でもないのにダンジョンに入っていった。
「ゴブッ!?」
「ゴブゴブーーー!?」
「あ、ゴブリンが逃げてくよ!」
しかしトラブル発生。ゴブリン 逃走 ( ・・ ) 。
いや、そういえばあったなそんな行動。あまりに戦力差が懸け離れすぎているとモンスターは逃走してしまうのだ。
普段ゲームでも低レベルのダンジョンに数パーティで行くなんて事はほとんどしないのでうっかり忘れてた。
ちょっと大戦力で来すぎたな。
「まあいいか。ボス部屋行こうぜ!」
ボスはボス部屋から逃げられない。
まあ、俺たちも5人までしかボス部屋に入れないのだがそれはともかくだ。
ボス戦の方がより学べるしそっちの方がいいだろう。
あれ? 5人しかボス部屋に入れないのなら13人で来た意味なくね? と後になって気が付いたが、これは気のせいということにしておいた。全部逃走するゴブリンが悪い。
そしてボス部屋の前へ到着するが、ここでも問題が発生していた。
「やべ、人多いな」
「……みんな〈新学年〉の学生みたいね」
「ボス周回できないじゃん……」
「ボス周回?」
タバサ先輩の言うとおり、なんとボス部屋の前は多くの学生でごった返していた。
マジかよ。いや、道中からなんか人多いなとは思っていたんだ。
そうか〈転職制度〉のせいで全員LVが下がったから初級ダンジョンの需要が上がったのか。マジうっかりしていた。
さすがにまだボス周回を周知するわけにはいかない。
残念ながら3パーティでボスへそれぞれ挑み、軽く練習しつつ後がつかえているので蹴散らして、俺たちはそのまま転移陣で帰還したのだった。
「物足りない」
「でもみんなそれなりの手ごたえはあったみたいよ?」
タバサ先輩の言葉に視線を向けると新メンバーが今の〈ナイトゴブリン〉戦の話で盛り上がっていた。
新しい戦闘、新しい魔法の威力、新しい実戦での立ち回り。
たった一戦しか出来なかったが、彼女たちにはかなりの糧になったようだった。
「仕方ないな。今日はまた練習場で練習するか」
「また強くなったらみんなでダンジョン行きましょうね」
ということで、午後も練習場で練習することになったのだった。
来週になれば〈新学年〉学生たちはまた学園の授業で〈道場〉に通わせてもらえる。
学園ではLV40までは面倒見てくれることなっているのに加え、来週は2回〈道場〉のカリキュラムが組んであるようだ。
新メンバーたちは早ければ来週には全員三段階目ツリーが開放されているな。
三段階目ツリーが開放されれば中級ダンジョンにも挑めるようになる。
人気の無いダンジョンならボス周回も出来るだろう。
また〈ダイ王〉周回だな!(ジュガアッ!?)
なんだか〈ダイ王〉が悲鳴を上げて後退っている光景を幻視した気がしたが、きっと気のせいだろう。
とても楽しみだ。