第747話 ミラクル〈パーフェクトビューティフォー現象〉
第747話 ミラクル〈パーフェクトビューティフォー現象〉
最奥のボス攻略は5人まで。
そこにパーティの括りは存在しない。5人が門を潜ればその5人がパーティと見なされる仕様だ。この5人は別のパーティでも問題ない。
よって、俺たちのように2パーティで行動しているメンバーも、自由にボス戦メンバーを選出できるというわけだ。
これがフィールドボスであれば2パーティ攻略と判断されてパワーアップしてしまうところだが、最奥のボスだけはこれに適応されない。そもそも基本5人までしか入れない作りだからこそのシステムだな。
何が言いたいかというと、
「ニーコには『装備全集ドロップ率アップ』と『レシピドロップ率アップ』をオンにして、ボス戦は全部参加してもらう!」
「な、なんてスパルタなんだ!? 予想はしていたけどさ!」
うむうむ。ニーコもだいぶ〈エデン〉のやり方を理解してきたな。
よろしく頼むぞ!
「狙いは上級装備のレアボス〈金箱〉産、その全集。目的は上級ダンジョン攻略のための装備を整えることだ! ギルドハウスでハンナとアルル、そしてマリー先輩が首を長くして待っている!」
「……聞き間違い、じゃないんだよねぇ……、聞き間違いであってほしいなぁ」
ニーコの言葉になぜか妙な雰囲気が 救済場所 ( セーフティエリア ) に流れる。
シエラがジト目だ! やったぜ!
「はぁ、諦めなさいニーコ。私たちは付いていくだけよ」
「さすがシエラだ! 俺のことを良く分かっている!」
うむ、さすがに〈姫職〉のみんなをいつまでも初期装備のままではいさせられない。
初期装備では上級ダンジョンは心もとないからな!
手に入るレアボス〈金箱〉産の装備の方が断然強いのでここで装備集めだ!
「んじゃ、早速行ってみよう! まずは慣れている俺たちから3人、リーナのパーティから2人選出してボス戦だ! ニーコはもちろん参加で!」
「おー」
俺の気合の入ったセリフと、ニーコのやけくそ気味の「おー」と共に、レアボス狩りは始まった。
この日から上級装備が整うまでレアボス狩りに没頭することになる。
今回はニーコが『装備全集ドロップ率アップLV10』と『レシピドロップ率アップLV10』を発動しているため レシピのシリーズ全集 ( ・・・・・・・・・・ ) のドロップ率がかなり上がっている。
〈金箱〉が出やすくなるよういつもの〈 金猫 ( きんねこ ) の 小判 ( こばん ) 〉を装着したニーコに掛かれば、さほど苦労せずに全集がドロップするだろうと考える。
ふっふっふ、楽しみだ!
俺は1ヶ月近くの時間を掛けてここでレシピ全集を狙う予定だ。それくらい力を入れれば三種類の全集は集まるだろう。
1ヶ月掛けてもゲーム時代のペースからしたらこれでも全然早いからな。ゲームでは上級ダンジョンの進出は早くても1月か2月くらいだった。
それが10月には進出できるようになっているのだ。1ヶ月装備集めに奔走するくらい問題は無い。
1ヶ月もあれば、よほど運が悪くなければ装備を整えることができるだろう。
装備が整ったらすぐにでも上級ダンジョンに挑む予定なので、1ヶ月は最長の場合だけどな。とはいえ実際には妖怪が悪さをするので大体期限ギリギリになると俺は経験から知っている。
そう、思っていた。
俺は、まだゲームの感覚が抜け切っていないようだ。いや、リアルラックに慣れていないと言うべきか。
それは、全員が〈宵闇の祭壇ダンジョン〉のレアボスを経験し、数日掛けて〈金箱〉を開けまくり、ダンジョン週間の最終日最後のレアボスを俺、ラナ、シエラ、リーナ、ニーコで仕留めた時のことだった。
――――〈金箱〉が四つ出た。
「ぱ、パパパ、〈パーフェクトビューティフォー〉だーーーーー!!」
気が付けば俺は感動に拳を握り締めながらシャウトしていた。
出てしまったのだ。
あの〈金箱〉が四つという素敵で素晴らしい現象。
〈パーフェクトビューティフォー現象〉が!!!!
「みんな、すぐに配置に付け!」
「私はこれよ!」
「ゼフィルス、ちょっと、落ち着きなさい!」
「ゼフィルスさんのテンションが高いですわ!」
「ふおおお! 〈金箱〉じゃないか! ところで配置とはなんだね?」
俺の指示にラナがすぐに反応、しかしシエラ、リーナ、ニーコには伝わらず、どうどうと落ち着かされてしまう。
そんな場合ではないぞ!
「みんな聞いてくれ、〈金箱〉が四つ。素晴らしいことだ」
「またいつものが始まったわ」
「ゼフィルスさんはいつまでも子どものようで、素敵ですわね」
「リーナ君はアレを素敵と見るかね。あれ? シエラ君もか?」
「しかし! 全員で宝箱を開けるには一つ足りない。だからこそ一つは2人で共同作業にしようと思う。これでみんなで開けられるぞ!」
「……そうね」
「え? これはつまりゼフィルスさんと協力して開けるということですか?」
「いや、勇者君とは限らないのでは……、いや、やっぱりなんでもないよ」
「待ちなさい! そういうことなら私がゼフィルスと開けてあげてもいいわよ」
「お待ちくださいラナ殿下。これは簡単には譲れませんわ。ゼフィルスさんと共同作業をするのは私です」
「む、リーナやる気ね」
「私も立候補させてもらおうかしら」
「シエラまで!」
「ぼ、ぼくは遠慮させてもらうよ。……勇者君がマジ勇者なのだよ」
俺が〈パーフェクトビューティフォー現象〉が如何に素晴らしいかを説いていることに集中している間にラナ、シエラ、リーナの間で何かが行なわれたらしい。
気が付けば勝者という顔をしたシエラがそばにいた。
ラナとリーナはガクンとしている。
この〈パーフェクトビューティフォー〉を目の前になぜガクンとなっているのか、俺にはよく分からなかった。
「あれ? シエラと俺が一緒に開けるの?」
「そういうことになったの。ゼフィルスは、嫌かしら?」
「全然そんなことは無いぞシエラ。シエラと開けられて俺は嬉しい! なんだか良いものが当たりそうな気がするんだ」
「そう?」
シエラほどの美少女が一緒に宝箱を開けようと誘ってきました。
もう、ね、期待値が2倍どころの騒ぎではないのですよ。
これで良いのが来なかったら嘘だろう!
つまり良いもの確定だ!
〈幸猫様〉〈仔猫様〉も、よろしくお願いいたします!
「よし、〈幸猫様〉と〈仔猫様〉へのお祈りは済ませたな? せーので開けるぞ?」
みんな、ビンタの用意は良いか? 行くぞ!
「せーの!」
俺の掛け声と共に全員が宝箱を開ける。
俺はシエラに合わせながらゆっくりと慎重に開けていくのだ。
そして中身を見た瞬間、俺は脳内でビンタのラッシュを食らったことを幻視した。
「これは、綺麗な片手剣ね――」
「――〈陽聖剣・ガラティン〉だと!!」
シエラの言葉で何とか再起動した俺はそれを見て驚愕した。
それは〈ダン活〉では装備版聖剣の一種。
闇を切り裂き太陽の力で敵を滅ぼす、いくつかのゲームでも登場するようなそこそこ名の知れた剣。
思わず手に取り宝箱から取り出して、赤く装飾が美しい鞘からそれを引き抜くと、〈陽聖剣・ガラティン〉は金色の光を放ちながらその刀身をあらわにした。
「か、かっこいい……!」
「ええ」
思わず見入る俺とシエラ。
シエラが見入るほど引き付けられる魅力のある剣。
非常に強力で、強化すれば上級の上位のボスでも通用するとまで言われている片手剣だ。
「これ、俺が使っても良いか?」
「良いと思うわ。というよりゼフィルスが使うべきよ。これは」
「おう」
思わず言ってしまった俺が使う宣言に、サブマスターであるシエラは納得を通り越してむしろ推してきた。
防具の装備シリーズレシピ全集がこの前手に入ったばかりなのに、こんなに立て続けに俺の装備が強化されて良いのか?
そんな思いが僅かに心に燻るが、俺はすぐに背中に背負っている〈天空の剣〉を外して持ち、少し感傷に浸りながらも「今までありがとな」と声を掛けて〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉に収納、〈陽聖剣・ガラティン〉を代わりに装備する。
こうして、俺は装備を更新した。
今後俺の相棒は、〈陽聖剣・ガラティン〉だ!
〈幸猫様〉〈仔猫様〉、素晴らしい装備をありがとうございます!
しかし、これはあくまで序の口。
今回〈金箱〉は四つあったのだ。
〈パーフェクトビューティフォー現象〉の奇跡はこんなものでは終わらなかった。
だって狙っていたラナの防具シリーズ〈慈愛聖衣シリーズ全集〉、そしてシエラの防具シリーズ〈聖盾光鎧シリーズ全集〉、最後にエステルの防具シリーズ〈貴装蒼鎧シリーズ全集〉、三つのレシピすべてがドロップしていたからだ。