第763話 目的地到着。上級攻略必須のアイテム!
第763話 目的地到着。上級攻略必須のアイテム!
俺たちは1層の洞窟を潜り抜け、ようやく崖の上へとたどり着いていた。
「到着だ! アレが2層への〈階層門〉だな」
「やっと着いたのね~。あの洞窟、なんだか圧迫感があったわ」
「実際狭かったですし、スキルも思うように使えなかったですからね」
「私も、あれほど狭い場所での盾の運用が難しいとは思わなかったわ。自在盾が壁や天井にガンガン当たったし、ゼフィルスにも当てちゃったし」
「ん、あれは、ちょっと笑った」
「気にすんなってシエラ。あれは仕方ない」
実際狭い洞窟で浮遊する盾を四つ同時に動かしているのだ。ぶつけるのなんて当り前だ。敵の攻撃を防御したら盾は吹き飛ばされることもざらなのだからどうしたってぶつける。
俺にぶつけたときだって敵の攻撃で吹っ飛んだ盾が当たっただけだ。
シエラが操っている状態では当たっていないのだから十分すごいぞ?
「うーん、でも崖の上って変な場所ね、奥が霧で見えないわ」
「これは霧の壁、ダンジョンの果てと言われているものね」
「シエラはよく知ってるな。あっちは行き止まりだ。霧の中に入ったら問答無用で霧の外に追い出される、文字通り霧の壁だな」
「一応中級にもあるダンジョン機能ね、でもこの目で見たのは初めてよ」
崖の上には次の階層へ繋がる〈階層門〉が洞窟の直ぐ近くに配置されていた。
周りはゴツゴツした岩の荒野で、モンスターはおらず、奥は霧が深く何も見えない。
この霧の先に進んでも、進めずに戻ってきてしまう不思議な霧だ。
大人しく〈階層門〉を潜りましょう。
「よし、第2層へ行くぞ!」
「「「「おおー」」」」
俺たちはそのまま〈階層門〉を潜った。一度霧に突っ込んでみたいと思ったのは内緒。いや、今度やってみよう!
「ここが、第2層! ……なんだか第1層と変わらないわね」
「ここでも〈馬車〉は使えないようですね」
期待一杯にラナが腕を広げてウェルカムの体勢を取っていたが、すぐにやめた。
第2層も山岳地帯。ビルのような縦長の山々が立ち並んでいるダンジョンだったからだ。
いや、むしろ柱みたいか?
地面は相変わらずでこぼこ状態で足場は悪く、とても〈馬車〉では走行出来ない。
エステルには『悪路突破LV10』があるが、ここは〈馬車〉自体が通行不可扱いな地形とでも思って欲しい。ここを走破するには別の〈乗り物〉が必要だ。
ちなみにエステルの〈戦車〉装備、〈蒼き歯車〉はこの悪路でも走行が可能だな。さすがは〈戦車〉。
「さて、カルア、今度はあっちに行きたい。索敵頼む」
「任せて。『エージェント猫召喚』!」
「「「にゃー」」」
「ん、黒猫隊、索敵よろしく、方角はあっちらへん」
「「「にゃー!」」」
「ん、いってらっしゃい。『ソニャー』!」
俺が指示すると早速黒猫隊を召喚して放ち、自分も耳の後ろに手を当てるポーズで索敵する。
「! モンスター同士が戦ってる?」
「ああ、たまにそんな事もある。ここは上級だし頻度も高い」
群れを成した構成でエンカウントするモンスター、イメージ的にみんな争わない仲間なのかなと想うが、ちゃんと争っていたりする。
「縄張争いかもしれないな。一説によれば、これのおかげでモンスターが増えすぎるという現象が抑えられているらしい」
「そうなんだ。ゼフィルス物知り。あ、あっちなら4体。行けそう。『ピーピング』!」
入口の〈階層門〉付近は 救済場所 ( セーフティエリア ) 。まずはここでしっかり索敵する。
「ん、大体分かった。こっちから行く」
「おう。みんな出発だ。シエラ、前を任せる」
「了解よ」
「ゼフィルス、罠を発見したっぽい。進行上にあって回避出来ない」
「爆破してしまえ」
「了解、『罠爆破』!」
ボカーンッ! 爆破破壊完了。
有り余るAGIを活かしたカルアがこの場から消えて先行、罠を爆破して直ぐに戻ってきた。
ふっふっふ、順調順調。
カルアの索敵もかなりのものだ。罠も大体見逃さないので俺たちは楽なものである。
そうしてモンスターと戦闘すること3回、罠を爆破すること4回。
回避できる罠はなるべく回避するが、何しろこの道なき道である。比較的歩きやすいところを縦列で進んでいるためどうしても回避出来ない罠はあるので、そこは爆破して通った。
さすがに上級罠は解除出来ん。DEXが圧倒的に足りないからな。
そうして俺たちは、一つの巨大な山の麓へとたどり着いた。
「これ、山というより巨大な岩かしら? 地面にめり込んでいるのだけど?」
「そんな感じだな。俺も初めて知ったぜ」
シエラと覗き込むと、山と地面に境目のようなものがある。切り立った崖ってこんな感じなのか。
こんなことでもなんかちょっと新鮮に感じるな。探索してるって感じがする。
「それで、第3層の〈階層門〉はどこなの? やっぱりこの上?」
ラナがちょっと気後れしたような顔をして山を見上げる。ここの山は一段と巨大だからな。だが安心して欲しい。ここは登らない。後最初に2層までって言ったぞ。3層には入りません。
「いいや、今日は2層までしか潜らない予定だぞ? この山に来たのは俺の『直感』が囁いたから来てみたんだ」
「! ゼフィルス、それって!」
俺は『直感』が働いたで誤魔化しつつ、それを指さして説明する。
うむ、ラナは逸早く気がついたみたいだ。『直感』が囁いたというのは方便だが、俺の常套手段でもある。何が囁いたのか、それはもちろん。
「ここを見ろ、鍵穴だ」
「「隠し扉!」」
ラナとカルアが同時に叫んだ。
それは見間違うことは無い。隠し扉の鍵穴だった。
そう、俺の目的は最初からこの隠し扉の中身、宝箱に入っているアイテムだ。
ここには上級ダンジョン攻略のための必須アイテムが眠っている。
俺は早速自分の〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉から〈隠し扉の万能鍵(銀)〉通称〈扉の銀鍵〉を取りだした。
これは 上級下位 ( ジョーカー ) まで使える隠し扉の万能鍵だ。
「あ!」
そしてラナが反応する前に即で鍵穴に挿してガチャリと開放した。
「あー! ゼフィルスそれはずるいんじゃない!?」
「まあまあ、今度見つけたらラナに代わってやるさ」
「絶対よ! 約束だからね! って、わー!」
さすがラナ、次に鍵を使う約束を取り付けた。速攻だったよ。
そしてゴゴゴゴと開いていく隠し扉にテンションがマックスになった。
「上級ダンジョンの隠し扉! すっごいテンションが上がるわ!」
「ん! ん! ん!!」
ラナが片手を挙げたポーズでテンション高々に叫ぶとカルアもブンブンと音が鳴る勢いで頷く。
岩の一部がスライドするように開くと、中は通路、そして奥には金色に輝く〈金箱〉が一つ鎮座していたのだった。
「「〈金箱〉!」」
その言葉と同時に全力ダッシュ×3人。
エステルとシエラは相変わらずの微笑で後ろから付いてくる。
「むふ、1番!」
「むー!」
まあ、カルアが1番だよな。分かってたよ。
これの中身は知っているので開けるのは任せる。
俺はボスドロップで初の〈金箱〉をいただくからな。ふふふふふ。
「カルアに勝てなかったわ!」
そりゃ勝てないよラナ。AGIが段違いだもの。
「あなたはいいの? というか何を取りだしているの?」
悔しがるラナを横目に俺が〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉を漁っていると、シエラがなぜかジト目で問うてきた。なんだか知らないけれどありがとうございます!
「ふっふっふ、何しろ上級産だからな。準備は怠っていない、これを見よ!」
「そ、それは! 〈幼若竜〉じゃない! こんな所に持って来て良かったの!?」
「良いのだ!」
俺がジャジャンとテロップがつきそうな勢いで取りだしたのは、ラナの言うとおり〈幼若竜〉。
ちゃんと俺たちが当てた〈エデン〉の〈幼若竜〉だ。
―――〈幼若竜〉。
スキル『解読』『解析』『看破』『絵解き』という四つのスキルを内包する強力な鑑定系アイテム。
『解析』スキルは『鑑定』を内包しているし、『解読』は『レシピ解読』を内包しているため、こういう宝箱では必須アイテムだ。実はさらにもう二つ有用なスキルがあり、『看破』スキルは相手モンスターの『識別』に使えるし、『絵解き』スキルは上級ダンジョンのとあるギミック類を解放するのに必要になる。
実を言うと、マリー先輩のようにギルドで保管するアイテムではなく、本当はダンジョンに持ち込むべきアイテムなんだよ〈幼若竜〉って。
俺が正しき〈幼若竜〉の使い方を教えてやるよ! こうやって使うのだ!
「さあ鑑定の準備は万全だ。これからはどんなアイテムでも当てていいぞ」
「今までは〈幼若竜〉なんて無くてもあなたが鑑定してくれていた気がするのだけど、どうして急に持って来たの?」
「はっはっはシエラ。この先は上級だぞ? 俺だって分からないアイテムが出るかもしれないだろ?」
俺がそう言うと、シエラはきょとんとした顔をした。まるで思ってもみなかった言葉を言われたみたいな反応だった。シエラには珍しい反応だ。レア顔ゲット!
「言われてみれば、そうね……。私が間違っていたわ。ゼフィルスにだって分からない物も――」
「レシピよ! 〈金箱〉産のレシピが当たったわ! ゼフィルス、読めないから『解読』して頂戴!」
「…………」
おかしいな。
せっかくシエラを説き伏せたのになぜかジト目に戻られてしまったぞ?
ラナがちょうど良いわねと言わんばかりに〈幼若竜〉にそれを持っていく。
レシピは『解読』が無いと読むことはできない。俺でも分からない唯一のアイテム。
うむ。〈幼若竜〉を出しておいてちょうどよかったなー(棒)。
「ん。『解読』する。やらせて、ゼフィルス?」
「いいぞ。じゃあカルアに任せよう」
「カルア、お願いね」
「ん、『解読』!」
俺が抱える〈幼若竜〉の前に〈金箱〉からドロップしたレシピを広げたラナが陣取り、カルアが〈幼若竜〉に触れてスキルを発動した。
〈幼若竜〉がピカッと光ると、レシピの文字が日本語へと変化する。
俺以外の全員がラナの持つレシピを覗き込んだ。そこにはとあるアイテムの作り方が書かれている。
上級ダンジョンを攻略するには必須のアイテム。
とても重要なアイテムで、真っ先に採りに来た物。
「えっと、〈 転移水晶 ( てんいすいしょう ) のレシピ〉?」
ラナが読み上げるそれに頷く。
それは錬金で作ることが可能な、ダンジョンから転移リングのあるダンジョン門に行き来するための転移アイテムだ。
そして、次の探索のときに転移リングの前で〈転移水晶〉を使うと、前回転移で帰った位置へと戻ることが出来る超優秀なセーブアイテムでもある。
これで〈救護委員会〉の助けが無くても上級ダンジョン探索のリスクを大きく下げることが可能だろう。
これがあれば、今まで上級ダンジョン進出で燻っていた学生も、上級ダンジョンに進出出来るようになる!
消耗品なので売り上げも期待できるぞ! ふはははは!!