第770話 相手を知れば作戦を立てる。今日は帰さないぜ?
第770話 相手を知れば作戦を立てる。今日は帰さないぜ?
Dランク昇格試験〈10人戦〉、出場メンバー。
サチ【魔剣士LV75】、エミ【魔本士LV75】、ユウカ【魔弓士LV75】、トモヨ【堅固盾士LV73】、カタリナ【深窓の令嬢LV58】、フラーミナ【犬力者LV58】、ロゼッタ【姫騎士LV58】、オリヒメ【人魚姫LV58】、エリサ【ナイトメアLV58】、フィナリナ【アークエンジェルLV58】。
以上10人に決まった。
すんなり決まって良かったよ。
「では続いて、相手のDランク試験官を務めるギルドについて、セレスタン、報告を」
「承りました。まず相手のギルドは〈ファイトオブソードマン〉。以前はCランクギルドにいたこともある実力のあるギルドです」
俺がセレスタンに振ると、セレスタンが席から立ち上がり、資料を片手に説明する。
しかし、相手のギルド名が出たところでメルトが眉を寄せた。
「その名前は聞いたことがあるな。確か、この〈エデン〉のギルドハウスの前の前、その前の保有ギルドでは無かったか?」
「良く覚えていますねメルト様、前の前の前って……」
ミサトが呆れた様子でメルトを見ているが、実は俺も覚えていたりするぞ?
ここはC道に150あるギルドハウスの一つ。そこを以前使っていたとかどんな確率だと思われるかもしれないが、あったのだから仕方が無い。
――〈ファイトオブソードマン〉。
夏休み前までこのギルドハウスを利用していたギルドだったが〈サクセスブレーン〉との〈ランク戦〉に敗北し、現在はDランクにその身を落としているギルドだ。
ちなみにだが、〈サクセスブレーン〉はその後、当時Bランクだった〈テンプルセイバー〉に〈ランク戦〉を挑み、これに勝利してギルドハウスが入れ替わり、ここのギルドハウスは〈テンプルセイバー〉のものとなり、後は知っての通り、〈エデン〉と〈決闘戦〉で負けてまた持ち主が入れ替わって、現在このギルドハウスは〈エデン〉が所持しているという経緯がある。
「はい。〈ファイトオブソードマン〉は学園からの覚えも良く、Dランクのギルドとしては高い実力を持っています。そしてその一つが、上級職が在籍しているところにあります」
「え? 上級職がいるのか?」
俺の言葉と共に〈アークアルカディア〉側にざわめきが起こる。
「とはいえDランクギルドに落ちる際、〈サクセスブレーン〉の引き抜きがあったらしく3名いた上級職のうち2名が〈サクセスブレーン〉に移籍、現在の〈ファイトオブソードマン〉の在籍者は1名、ギルドマスターのみとなっております」
「それでも上級職がいるのは脅威だな」
どうやら〈ファイトオブソードマン〉の方でも色々あったらしい。
それが原因でCランクギルドに返り咲くことが出来ないのか?
そんなことを考えていると1人から手が挙った。オリヒメさんだ。
「あの、質問なのですが、上級職がいるギルドがDランク試験などして大丈夫なのですか? 公平性に欠けるのでは。確か〈エデン〉がDランク試験を受けたときは全て下級職のギルドが試験官であったと聞きました」
よく調べているな。
俺たちがDランク昇格試験の時に担当してくれた〈花の閃華〉ギルドは全員が下級職のギルドだった。全員が女の子で構成された、なんとも華やかなギルドだったな、懐かしいなぁ。
しかし、確かにオリヒメさんの言うとおり、試験というのは公正公平でなくてはならない。
上級職のいるギルドが試験官であり、元Cランクギルドということで実力は確か、そんな強力なギルドがEランクギルドの相手をするのは不公平ではないか、とオリヒメさんは案じているのだ。
しかし、
「これは言いにくいことでありますが、〈アークアルカディア〉には上級職が2名在籍しているためと思われます」
「あ!」
セレスタンの返答にオリヒメさんは今気がついたと手を口に当てる。
ああ、なるほど。そういうことか。
俺もうっかりしていたが、Dランク試験に出場するメンバー10人と〈アークアルカディア〉の全メンバーでは印象が変わる。
実際出場するメンバーは、半分以上がレベルリセット組であり、中にはオリヒメさんのように〈転課〉してきて日が浅い者もいる。シロウト集団とまではいかないが、経験不足が目立つだろう。何しろ、Eランク試験のときの出場者が3人しかいないのだから。
しかし〈アークアルカディア〉全体で見ると、出場者では無いメンバーのうちニーコとアルルの2名は上級職だ。
出場しないのは〈エデン〉〈アークアルカディア〉の都合で有り、試験を受けるのは〈アークアルカディア〉だ。
公平を期すなら上級職のいるギルドが選ばれるのがむしろ自然なことだった。
「ニーコ様、アルル様は戦闘職では無いため、その配慮として上級職が1名である〈ファイトオブソードマン〉が選ばれたのだと考えます」
「ありがとうございますセレスタンさん。おかげで納得がいきました」
「お力になれて何よりです」
「学園の選定に不備はなさそうだな」
今まで黙っていたレグラムもオリヒメさんから視線を受けて一つ頷いていた。
「〈ファイトオブソードマン〉の資料を作成しておりますので、みなさん確認してください」
セレスタンの言葉に【ハードワーカー】のサトルが手際よく資料を配っていく。
俺も確認すると、〈ファイトオブソードマン〉の構成、LV、人数、 職業 ( ジョブ ) 名などが記され、後半にはギルドバトルの成績や得意としている戦法などが載っていた。
相変わらず仕事が早すぎないかセレスタン? 〈ファイトオブソードマン〉が試験官に選ばれたの、今朝なんだけど? これはいつ作ったものだろう?
「ギルドマスターは上級職、3年生は全員LVカンスト、2年生はLV50の者もいればカンストもいてとバラバラで、1年生メンバーは……2人だけか。そして〈新学年〉も3人。こちらはおそらく出しては来ないだろうな」
「試験官ですから、経験豊富な3年生、2年生メンバーで来るでしょうね」
「俺たちのときと一緒だな。そして、これがギルドマスターの情報か」
セレスタンと軽く意見を交換しつつ、俺は唯一の上級職であるギルドマスターの資料に注目する。その 職業 ( ジョブ ) 名を見て、俺は唸った。
「ああ~、う~、なるほど?」
「……どうですかゼフィルスさん、〈アークアルカディア〉は勝てますか?」
ん? と、その言葉に資料から顔を上げると、Dランク出場者全員がこっちを向いていた。
今言ったのはカタリナのようだ。
「試験合格はしたいけれど、それだけじゃないの」
「私たちは、できれば勝利したい。無敗の〈エデン〉の名に泥を塗りたくは無いのです」
フラーミナとロゼッタが真剣な表情で言う。見れば全員が同じような目をしていた。
無敗の〈エデン〉。
確かに今まで敗北は一度としてない。〈アークアルカディア〉は1度有るけどな。相手は〈エデン〉だったからノーカンでいいと思うけど。
でも、無敗にそこまで拘っては無かった。ギルドバトルは負けるときは負ける。
だが、勝ちたいと言われたらその道を示してやるのがギルドマスターの務めだろう。
「もちろんいいぞ。ならば俺が勝利への作戦を伝授しようじゃないか!」
だから俺は壇上に立ち、少し決めポーズ的に片手を前に出しながら宣言する。
「相手は〈ファイトオブソードマン〉。もう相手が試験官だとは考えるな、相手は倒すべき敵であり全力をもってこれを撃破する! 俺が作戦を立てる、みんなそれを頭に叩き込むんだ」
「「「「はい!!」」」」
心地の良い揃った返事を聞き、俺はワクワクと気分を高揚させながら、作戦を即興で練りながら、出場メンバーたちに教えていった。
ふっふっふ、今日はもう帰さないぜ?