第778話 対人戦大激突。〈アークアルカディア〉の無双。
第778話 対人戦大激突。〈アークアルカディア〉の無双。
〈ファイトオブソードマン〉のタンクが前に出て、その後ろに魔砲使いである【マジックシューター】男子が砲を構え、隣にいる【双剣士】の男子がどんなことでも対応するべく構えていた。
完全に待ちの姿勢。5対3という不利な状況であるのと、時間稼ぎを目的にしているのが分かる構えだった。
そこへ突っ込むのは、タンクのフィナリナとアタッカーのサチだ。
「私が抑えます。サチさん」
「任せて! 数で押すよ!」
フィナリナが前に出るとサチが後ろから追随する。
体の大部分が隠れる〈 聖銀 ( ミスリル ) の天盾〉を構え、フィナリナが砲撃を防ぎつつ突っ込む構えだ。
そしてまず始まるのが撃ち合い。
「吹き飛べー『フレムシュート』!」
「逸らします。『エルワルツカーテン』!」
「なに! 砲撃が、曲がる!? ならば――『散弾砲』! な! これもほとんど当たらないだと!?」
当然タンクを狙わず後衛に向けて砲撃する魔砲使い男子だが、その火属性の砲撃はフィナリナのスキルによって曲げられ、明後日の方へ向かってしまう。
『エルワルツカーテン』は特殊な防御スキル。
フィナリナを中心として周りの空間に特殊な力場が形成され、ここを通ろうとする遠距離攻撃に大きな影響を与えるスキルだ。つまりは特殊な力場によって軌道が捻じ曲げられズレたのである。
しかもこれは効果時間がそれなりに長く、フィナリナを対象に空間が歪んでいるためフィナリナが動けば効果範囲も移動できる非常に有用なスキルだ。
これを発動したからには効果が消えるまで遠距離では中々当たらなくなる。
だが、これは味方の遠距離攻撃にも影響を与えるので中々使いどころが難しいスキルでもある。
しかし、エリサにとっては何の問題もなかった。
「次は私の番ね! 行くわよ! 『誘いの魅力』! 『誘いの睡魔』! 『悪魔の投げキッス』! 『悪魔の微笑み』!」
「あの悪魔っ娘だ! 防御しろ! 『ライトレフトシールド』!」
「俺、防御スキル持ってない!」
「弾幕で防げるかな!?」
「おい!」
それは直接相手に作用してしまう強力な状態異常やデバフ攻撃。
『誘いの魅力』は相手を〈魅了〉にし『誘いの睡魔』は〈睡眠〉へ、『悪魔の投げキッス』は〈混乱〉、『悪魔の微笑み』は攻撃力と魔法力の低下だ。
相手に直接作用するためレジストか防御スキルを挟むしか手はない。エリサが指定した場所付近に影響する小範囲攻撃だ。
「ぐお!? せ、世界が、歪む!?」
「なんの! 攻撃力が下がったところで!」
「う、美しい」
「イエッス! 相手を封じたわよ!」
双剣男子は〈混乱〉に、タンク男子は状態異常は全てレジストしてデバフだけ掛かり、魔砲使い男子は歪んだ空気が頭を覆い〈魅了〉されて目がハートになってしまう。
〈混乱〉か〈魅了〉になると自制が効かなくなり、また仲間を敵と思い込んで攻撃してしまうこともある強力な状態異常。
本来ならレジスト率が高い〈混乱〉や〈魅了〉だが掛かるときは掛かる。耐性を備えてもエリサは『状態異常耐性貫通』を持っているため低確率で貫通するのだ。
「さすがエリサちゃん! いい仕事する~! いっくよ~『魔剣・バーストストライク』!」
「カーテンの効果が切れました。エミさん、ユウカさん」
「待ってたよ! 『魔本・ビッグフレアバースト』! 『魔本・フリズドジャベリン』! 『魔本・ラージボールフレア』! 『魔本・ビッグフリズドバースト』!」
「任せてくれ、『魔弓・光の四矢』! 『魔弓・パワーショット』! 『魔弓・魔矢』! 『魔弓・ハイパワーバスターショット』!」
「行っくよー! 『魔剣・波斬』! 『魔剣・ロングエッジ』! 『魔剣・ノックバスター』! 」
「ふんぬぅぅ! 『ウォーシールド』!」
唯一状態異常に掛からなかったタンク男子が防御スキルで3人娘からの攻撃を防御する。そこに容赦なく攻撃が当たりまくった。全快したはずのタンク男子のHPが面白いように減っていく。
「ぐおおぉぉ!? HPの減りがヤバイ! お前たち、何混乱してやがる! 試験官としての任務を思い出せ! というか、マジHPがピンチだから助けろお前たち! ――あ」
「トドメです。『エルライトブレイカー』!」
「ほげぇぇぇぇ!?」
タンク男子はエリサ含め4人の攻撃を防御スキルで防ぐも、最後はフィナリナの〈三ツリ〉光属性斬撃スキルによってHPがゼロになり、そのまま退場してしまう。
タンク男子は頑張った。
「は! ここはどこ!? 俺は誰!?」
「知りません! 『大天使バッシュ』!」
「ぐおお!?」
双剣男子の〈混乱〉が解けた。もう少し早ければタンク男子を助けられたかもしれないが、時すでに遅し。
そして状況がまだ把握できていないところにフィナリナがいい一撃を見舞ってしまう。
バッシュ系のスキルなため強いノックバックを狙った攻撃で、双剣男子はノックバックしてしまう。
「サチさん、今です!」
「『魔剣・フィフスストライク』!」
「あばびゃびゃびゃ!?」
哀れ双剣男子はノックバックダウンを取られ、その後はエミとユウカの遠距離攻撃によって退場してしまう。
そして残った魔砲使い男子は。
「うおおお!? 1対5は無理! さすがに無理だあああ!? 助けてソードマーン~~!!」
なんとか〈魅了〉が解け魔砲で牽制しつつバックダッシュでトモヨとソードマンのいる隣マスへと逃げ込んだのだ。見事な引き際だった。
トモヨとソードマンは戦闘しているうちに1マス隣に移動していたようだ。
「シャッハー! お前たち、ちょっとやられるの早すぎじゃね!?」
「状態異常にやられました! 相手の悪魔っ娘ですが、強力な状態異常攻撃をいくつも保有しています! 強すぎますよ!?」
「そいつはやべぇな。シャハ、お前は下がってろ! トモヨさんを倒したら俺が纏めて相手してやるよ!」
「うっす!」
「くっ」
慌てて逃げてきた魔砲男子と会話しつつもしっかりトモヨを相手に有利に立ち回るソードマン。
すでにトモヨのHPは2割ほどで、この短時間にどれほど激しい攻勢を掛けられたかが窺えた。
しかし、これでもソードマンの猛攻をかなり防いでいるほうであり、トモヨの評価はうなぎ上り、いつの間にかトモヨはさん付けで呼ばれるようになっていた。
「まだ、まだ、なんだから! 『盾流し』!」
「シャッハ! すげぇ! すげぇぜ! ソードマンの俺と1対1でここまで持つタンクはほとんどいないんだぜ!?」
「それは、どうも、ありがとね!」
大剣の二撃が来ると防御しようとしたところでいきなり大剣が手放され、と思ったら左右から双剣の二撃が来て、頭が付いていかないうちに上下左右からの素早い連続攻撃が放たれる。
これが真のソードマンを自称する彼の自由剣技。
体中に剣を装着しまくり、一瞬のうちに武器を換装して装備して攻撃、早さも重さも連続性も思うがまま。
大抵のタンクはこの変幻自在な剣技についていけず直撃を受けまくって退場してしまう。
ソードマンは相手にどういう隙があり、どの剣でどう叩き込めば相手を斬れるのか、それを勘で判断していた。伊達に真のソードマンと名乗っていない。
それに対してトモヨは二枚盾という自由度を最大に活かし、固い防御で攻撃を受けまくっていた。
1枚の盾なら2本の左右からの同時攻撃に対応できないが、トモヨならできる。
トモヨはソードマンと相性がよかった。もちろんそれだけではなく、プレイヤースキルもソードマンがこれまで相手にしてきたタンクの中でかなり実力の高いほうである。だが、それだけでは上級職であり実力者である【アイ・アム・ソードマン】を押さえ切れなかっただけのことだ。
「さーて、そろそろお客が来る、悪いがそろそろ終わりにするぜ。シャッハ! ――『ファイブブーストソードマン』!」
「な! まだ上がるの!?」
それは五段階目バフ。
実はこれまでにソードマンは4度のバフをその身に与え、その度に攻撃力と素早さが上がっていた。
これは【アイ・アム・ソードマン】のユニークスキル。『アイ・アム・ソードブーストマン』の効果で、『ブースト』と付いているスキルを段階的にギアを上げるがごとく強化を 重複 ( ・・ ) させて掛けることが可能というとんでもないスキルだ。
『ワンブースト』から始まり、現在『ファイブブースト』、つまり五段階目、五重のバフが掛かっている状態なのが今のソードマンだ。
トモヨがこれほど早く追い詰められた理由である。
「大丈夫、まだ間に合うから。ユニークスキル――『大防御』!」
「お、こいつは!?」
5段階目バフにより、もはや目にも留まらぬ速さで切り込んだソードマンだが、トモヨの『大防御』のそのあまりの固さに目を見開いた。
それはトモヨのユニークスキル。
あのエステルの馬車突撃を防いだり、ジーロンとトマの二撃同時のユニークスキルを防ぎきった強力なユニークスキルである。
これによって防御を突破できなくなったところに、とうとうメンバーが間に合った。
「トモヨさん! 『ライトハイヒール』!」
「トモヨちゃん! 『ダークエクスヒール』!」
「わわ! 大変! 『魔本・ビッグヒーリング』!」
「シャハ、マジかよ……」
マスへ飛び込んできた5人、そしてフィナリナ、エリサ、エミによってトモヨの尽きかけのHPが、ギリギリのところで全回復したのだった。