第842話 〈エデン〉にCランク戦を挑むか?(全員上級職)
第842話 〈エデン〉にCランク戦を挑むか?(全員上級職)
〈エデン〉メンバー6人が新たに上級職となった。
やったね! これで防衛戦〈15人戦〉で全員上級職を出せるよ!
ふう、ちょっと、やり過ぎてしまったのかもしれない。
全員が上級職。そんなギルドに勝つには相手も全員が上級職でなくてはならない。
果たしてDランクギルドにそんなところあるのか? と聞けば、NOと答えが返ってくるだろう。
うむ。
つまりは――〈エデン〉は絶対勝てないギルドになってしまった。
そんな所にQPを支払ってまでランク戦をしたいと思うギルドは、普通いないだろう。
ゲームではこっちがいくら強くてもNPCは挑んできてくれたんだけどな~。
だが、中途半端に弱体化させて相手を誘い、逆に討ち取られてもつまらない。
やるからには全力だ!
とはいえ防衛戦が出来ないのならBランクに上がれないので本末転倒、いや大転倒だろう。ひょっとしたら二度と起き上がれないかもしれない。〈ギルバドヨッシャー〉みたいに。
しかし、安心してほしい。
今まで〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉の機会があったのにもかかわらず今日までしなかったのに、今日突然〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉したのにはそれ相応の理由が生まれたからだ。
つまり。
「――〈エデン〉に挑んできたのは〈ディストピアサークル〉というDランクギルドね。〈新学年〉の学生のみで構成された新ギルドよ。メンバーは15人で構成されているわ」
「そうかそうか~」
シエラの言葉に俺は満面の笑みで頷いた。うむ、うむ、うむ!
そう、実はランク戦の打診があったのだ。3秒で許可を出した。
故の防衛戦力の強化だった。全力で迎え撃ってやるよ!(全員上級職)
いったいどういうことなんだ、だって?
俺も一字一句同じ事を思った。1秒でその辺に捨てたけど。
〈エデン〉は今、ノリに乗っているギルドである。上級ダンジョンへの進出も成功していると学園では結構話題を呼んでいる他、先の学園祭で〈ヘカトンケイル〉撃破の貢献ランキングで上位を多く制した。
そんなギルドにDランクが挑んでくるってどうよ?
普通は避けるだろう。
しかし、勝つ気が全く無いのならどうだろうか?
そう、この〈ディストピアサークル〉は別の事を狙って挑んできたのである。
それが、
「狙いは十中八九引き抜き、いえ、引き抜かれですわね」
リーナの言葉にシエラが頷いた。
ここはギルドハウス。6人を〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉させたあと解散し、改めてここに首脳メンバー、シエラとリーナに集合してもらって話し合っていたのだ。
その理由が〈ディストピアサークル〉の対応である。ふはは!
「リーナの言うとおりね。〈ディストピアサークル〉の狙いは〈エデン〉に吸収されることでしょう。このCランク防衛戦で〈エデン〉が勝てばBランク戦に挑めるようになるわ。さらにBランク戦で勝てば上限人数が10人増える、〈アークアルカディア〉も先日Dランクに昇格して上限人数が5人増えた。あら、見事に〈15人戦〉の人数と同じ数ね」
シエラの言うとおり、まさかこんな手を使おうとするギルドがいるとは。リアルってすごい。
要は売り込みだ。
〈ディストピアサークル〉は〈新学年〉のみで構成されたギルド、つまり全員が高位職。
〈転職制度〉で高位職となった〈新学年〉15人の集まりというギルドだ。
新進気鋭でギルドを設立してから僅か1ヶ月と10日でDランクまで登ってきた。
まあ、一度は通った道みたいなもの、Eランク昇格試験もDランク昇格試験も軽く突破したようだ。
そして彼らが真っ先にしたのが〈エデン〉へのCランク戦の打診というのだからすごい気合いだ。
QPは学園祭のクエストでギリギリ稼いだようだが、それを 擲 ( なげう ) ってまで〈エデン〉にギルド戦を挑みたい理由とは何か?
ユミキ先輩とセレスタンの調べが今さっき届いたことでそれが分かったのだ。
「〈ディストピアサークル〉のメンバーは確かに粒ぞろいのようね。そして最低でもCランク戦でアピールし、〈エデン〉に引き抜かれたいという思惑が見えるようだわ」
「枠が増える前にこれほど大きな売り込みを仕掛けてくるとは中々やりますわね。〈ディストピアサークル〉の頭脳陣の考えは悪くないですわ」
シエラもリーナも、〈ディストピアサークル〉の考えには思うことはあるものの、作戦自体は悪くないものだと思っているようだ。
「〈ディストピアサークル〉の全てを吸収することはさすがに出来ませんが、Cランク戦で直接見定め、何人か引き抜くのは悪い話ではないと思いますわよ。むしろ引き抜かれが〈ディストピアサークル〉の存在理由みたいですし」
「まさか引き抜かれる前提でギルドを作ってくる所が現れるなんてね。でも引き抜きを歓迎するギルドなんて普通はいないから、私たちは喜ぶべきなのかしら?」
リーナは引き抜きに肯定的だ。ただ全員ではなく、光る個人を見定めて1人1人勧誘したい考えのようだ。
シエラも、優秀な人材の引き抜きに肯定的な意見を出している。
相手からすれば、ギルド全体を吸収してほしいんだろうな~。優秀な個人だけを引き抜かれたらもうディストピアも何もない。残った人たちは解散するしかないのではなかろうか?
〈エデン〉を狙ってきたのも今一番勢いがあると見られたからだろうし。
それは〈ヘカトンケイル〉戦で証明しているしな。
いや、むしろ一番目立つ〈エデン〉に仕掛けることで観戦に来た他のギルドにもアピールしたい考えか? うーむ、考えれば考えるほど悪くないな。
「ゼフィルスさんはどうお考えですか?」
おっとここで俺の出番か。さて、どう答えたものかな。
「ユミキ先輩の情報、メンバーとその 職業 ( ジョブ ) を見る限り、良い人材はいるんだよな~。だけど〈エデン〉に必要ないと思う 職業 ( ジョブ ) も多い」
ユミキ先輩情報で15人の 職業 ( ジョブ ) はすでに全て判明している。さすがだ。
その中でも俺が注目しているのが2人いる。
狼人でありながら「獣人」カテゴリー、高の上【獣装者】に就く元2年生の〈新学年〉男子と、「兎人」カテゴリーであり高の上【タイムラビット】に就く同じく元2年生の〈新学年〉女子である。
【獣装者】は物理系のアタッカー&タンクだ。攻撃型、防御型、スピード型、どの方向にも育成が可能、さらには斥候系にも秀でている文句無しの優良職。
特にユニークスキル『超進化』というスキルが優秀で、使うと獣寄りな姿に変身して自身の能力を大きく高めてくれる。
ガルゼ先輩が就いている【獣王】の下級職だな。尤も上級職へのルートは四種類あるのだが。さて、彼はどこに向かおうとしているのか。
【タイムラビット】は〈光属性〉と〈氷属性〉を得意とする魔法使い系で、アタッカーやヒーラー、バッファーやデバッファーとして幅広く活躍が可能な 職業 ( ジョブ ) だ。
特に味方のスピードを早め、相手のスピードを落とす性能がメガ強く、ギルドバトルを始めボス戦でも猛威を振るう。上級職になると一時的にボスの時を止めるユニークスキルなんてものまで覚える優良職だ。時使い、欲しい。
この2職は上級職になると良い感じになる。それはそれは良い感じになる。
上級ダンジョン攻略やギルドバトル戦でも是非欲しい 職業 ( ジョブ ) だ。
そしてその他の男女13人は、「獣人」系が3人、ノーカテゴリーが10人だ。しかしこちらは微妙。「獣人」系は全て高の中である。
Sランクギルドになった時のメンバー構成を考えると、必要ない 職業 ( ジョブ ) かなと言った感想だった。
だからハッキリ言おう。
「俺は〈ディストピアサークル〉全体の吸収には反対だな。だが、少数気になる人材がいるからスカウトすること自体は賛成だ。先方には、こちらはギルドバトルで個人の資質を見極め、スカウトする用意があると伝えたいな」
「承知しましたわ。ではそっちの方向で詰めてみましょう」