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7-6 ★ 王女様と下着泥棒

【コミカライズ化!】リンドバーグの救済 Lindbergh’S Salvation — novelba.com · All chapters

7-6 ★ 王女様と下着泥棒

「この最悪の状況を好転する方法があれば、教えてください。考えても考えても答えが見つからない」

本当にこの人は浮気をしたのだろうか。王子という 体裁 ていさい はどこへやら、 素 す で泣きじゃくっている姿から、女心をもてあそぶような 人柄 ひとがら には見えないのだが。

「そういえば、ミミ様もご一緒に 滞在 たいざい されているとうかがったのですが……彼女はどちらに」

俺とチャールズは目配せ。マーガレット王女様と一緒にいるとは口が 裂 さ けても言えない。

「妻は体調が 優 すぐ れないので、別室にて休んでいます。旅の疲れでしょう」

「そうでしたか。山賊に捕らわれ、さぞ大変な目に 遭 あ われたとうかがいました。ご 心労 しんろう も 相当 そうとう だったでしょう」

――本当にこの人が浮気を?

気遣 きづか いのできる心優しい青年にしか見えない。かといってマーガレット王女様が 嘘 うそ を 吐 つ いているとは思えない。となると両者の 意思疎通 いしそつう に行き違いがあったのか。

――でもメラニー・チーズマンに届いた誕生日の贈り物の件はどうなる?

その時、コンコンッと扉が鳴らされた。ジーニーが扉を開けて 来訪者 らいほうしゃ を 伺 うかが う。顔を出したのはなんと。

「ミミ! 一体どうしたんだい」

俺は席を立つと、入口へ近付いた。

「ミミ様? そうですか、 貴女 あなた が……」

ハンター殿下は立ち上がり、扉へと歩み寄る。

「お初にお目にかかります。ハン……いえ、フランク・エーデルワイスです。ご体調が 優 すぐ れない時に、突然うかがい、誠に申し訳ございません」

「ミミ・リンドバーグです。お目にかかれて嬉しく思いますわ。お話し中のところ大変恐縮ですが主人に少し用がありまして……ジーニーさんも来てくださる? 頼みたいことがあるの」

「は、はい」

ジーニー、ミミ、俺の三人は廊下に出ると、扉を閉じた。ミミは廊下の 隅 すみ へ俺たちを連れて行き、辺りに人がいないのを確認した。

「マーガレット王女様がいないの」

「な、なんだって?」

「図書室にいらっしゃいませんでした?」

「ジーニーさんにそう聞いたから、すぐに向かったのだけど見当たらないの。客室にも、他の部屋にもいなかったわ。表口と裏口の衛兵さんに尋ねたけど、出入りは無かったって。大使館の中にいるはずだけど、うっかり鉢合わせしたらと心配で……一緒に探してくれない? 本当はパムに頼みたかったのだけど、あの人も見つからないのよ」

――パム。ガメラでもギメラでもなく、パメラだったんだよなぁ。

先日、彼女が大使の前で自己紹介をした時に、俺はずっと名前を間違えていたことを知った。旅券の再発行の為、彼女もまた大使館に滞在している。俺とミミの手が離せない時、ギメラ……いやパメラは、王女様の退屈しのぎに付き合ってくれていた。

「パメラさんと王女様は一緒にいるかもしれないな」

「手分けして探しましょう。ミミ様がお調べになったのは、図書室と、出入り口ですか?」

ジーニーが訊ねた。

「ええ。一階はまだ調べきっていないわ」

「では私は三階を調べましょう。アルフレッド殿下は二階をお願いします」

「分かった。絶対に客人とマーガレット王女様を 鉢合 はちあ わせするわけにはいかないからな」

「あのフランクという使者、何かあるの?」

「あれはハンター殿下だよ!」

「な、なんですって?」

「事情は後で。見つけたらすぐに別室に待機させて欲しい。王女様にはエデンの関係者が訪れているから隠れた方が良いと言うんだ」

ミミは一階、ジーニーは三階、俺は二階を探し始めた。

「ああもう 一体 いったい どこにいるんだ!」

仕事中の職員にも聞いたが「誰も見てない」という。

どうやら二階にはいないようだと階段へ向かっていると、どこからからふわりと秋の風が吹いて、俺の 頬 ほお を 撫 な でた。廊下の突き当たりのそば、物置だと思っていた扉が開いていて、なんとその向こうに青空がのぞいている。バルコニーだろうかと扉を開けてみると、腰丈ほどの鉄柵が設けられており、地上へつづく階段があった。

――非常階段か!

階段の下、緑に覆われた空間から、女性と思われる楽しげな話し声が聞こえる。階段を下りた先、煉瓦塀に囲まれた空間があり、そこに木扉があった。扉には 錠穴 じょうあな があったが、 既 すで に解かれているらしく、風が吹くたびに 蝶番 ちょうつがい がキィギィと音を立てる。そっと扉を押し開けると、そこには桜色の絨毯が広がっていて、木椅子に二人の少女が腰掛け、摘んだ花を束ねながら楽しげに談笑していた。

――まるで秘密の 花園 はなぞの だな。

「やっと見つけました、マーガレット王女様、ギメラさん」

「司祭様、私はパメラですって!」

「あ……すみません、つい」

「地味に傷付きます。心に 深手 ふかで を負いました」

「地味なんですか、深手なんですか。それはそうと探したんですよ。驚きましたよ、大使館の中に、こんな秘密の 花園 はなぞの があるなんて」

「パムさんが見つけたんですよ」

「そうなんです。秘密の 花園 はなぞの の 鍵 かぎ をシモン様からいただきましてね」

パメラが上着のポケットから古ぼけた 鍵 かぎ を取り出した。

「シモン様が、この鍵が使える 扉 とびら を探してみては、とステキな提案をしてくださったので、王女様と探検を。そしてこの 花園 はなぞの を見つけたのです」

――へぇ。シモンにしては意外で 粋 いき な 計 はか らいだ。

「見つけた、ここでしたか……全員が総出で探していましたよ、まったく」

秘密の 花園 はなぞの に新たな客人が現れた。 白髪頭 しらがあたま に 髭面 ひげづら ……この変装をパメラが見破ったことは記憶に新しい。

「シモン様、お 髭 ひげ がずれていますわ」

「ずれるんですよ、おまけにカツラが 蒸 む れて……ああ暑い!」

彼はカツラと 髭 ひげ を剥ぎ取った。

「シモン様、すてきな場所を教えていただいて、ありがとうございます」

「まぁ、教えるというか…… 鍵穴 かぎあな を探してみてはと提案しただけですけど」

「すてきな謎解きですわ! 見てください、もう少しで 花輪 はなわ が完成するんです」

パメラは王女様とともに 花邑 はなむら に入っていく。

「おまえにしては 洒落 しゃれ たことをするじゃないか、シモン。秘密の 花園 はなぞの の 鍵 かぎ を渡すなんて」

「パメラさんが僕のそばを離れないので困っている、とケビン大使に相談したら……ここの 鍵 かぎ を貸して下さったのです。パメラさんも王女様も退屈しているだろうし、女性は花が好きだろうから、と」

シモンは肩をすくめて微笑を 湛 たた えた。

「花で喜んでくれるのなら……可愛いものですよ」

「花だけでは喜ばない女性がいるのか?」

「贈り物がいつも花ばかりで、 代 か わり 映 ば えしないと言われたことがあります」

うつむくシモンの面持ちに、木漏れ日の影がちらついた。

【つづく】

次話の更新は【6月15日(土曜日)】を予定しています。

本作をご愛読いただき感謝感激です。

旭山リサ