LNCrawler

211話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

211話

久しぶりの我が家のベッドが気持ちよく、窓から日が差し込んでいるのはわかっていてもなかなかベッドから起きれない。

最近少し涼しくなった気がするから、ベッドの中が心地いい。俺がこの世界に来たときからとくに暑かったわけではないが、今くらいが俺にはちょうどいいな。

まぁ今日は予定があるわけでもないし、二度寝だろうと三度寝だろうと好きにしてもいいのか。

せっかく帰ってきたんだし、今日一日くらいはゴロゴロしてようと思って意識を手放しかけたとき、ノックの音が聞こえた。

「どうした?」

薄眼を開け、毛布にくるまったままノックの主に声をかけた。

「…朝食の準備ができました。」

そういやここでは仕事をしてるやつに合わせて食事を作ってるから、起きたら食うってわけにもいかないのか。いや、べつにあとで1人で食うのは問題ないだろうが、せっかく作ってくれた料理が冷めるのも悪いし、帰ってきてるんだからみんなで食うべきか。

「顔洗ったら行くから先に行っていてくれ。」

「…はい。」

アリアが扉の前から離れて行く足音を聞きながら、だるい体を無理やり起こし、部屋備え付けの洗面所に向かった。

顔を洗うために手を合わせて水を溜めると少し冷たい。お湯にすれば良かったなと思いながら、せっかく溜めたのだからと水で顔を洗うと一瞬肺が締め付けられるような感覚になり、一発で目が覚めた。だが、一度で顔を洗いきれた気がしなかったから、冷たい水で二度三度と顔を洗い、タオルで水気を拭き取った。

次の予定は黒龍の素材集めだが、とくに急ぐことでもねぇんだよな。

少なくともジャンヌたちが村から出ていくまでは変なことされないように見張るためにも村にいたいし、せっかくだから学校にも行ってみたいんだよな。

次の遠出はそのあとでも十分だろ。

なんて悠長なことをしていてガントレットがぶっ壊れたら笑えないけどな。

そのときのためにも違う武器の練習もしとくべきかもな。

今後の予定を考えながら準備を終わらせ、部屋から出たら、セリナがいた。

「おはよう!」

「あぁ、おはよう。…どうした?」

「さっきまで門のところにいたんだけど、そしたらリキ様に謁見したいって人が来たから知らせに来たよ!」

わざわざ門からここまで来たのか?

なんでさっきアリアは起こすついでに伝えなかったんだ?

「ガキどもか?なら朝食のときで……門にいたら?ってことは村の外のやつか?俺に会いたがるやつなんているとは思えないんだが、誰だ?」

誰だと聞いたところでたぶん知らないやつだろうが、寝起きでうまく頭が働いてないみたいだ。

「ジャンヌさんだよ。」

…知ってるやつだった。

「…昨日会ったじゃねぇか。なんか話し忘れたことでもあんのか?なら門番に伝えておけばあとで聞くっていっとけ。」

「ん〜…。たぶんリキ様に挨拶がしたいのは本当だと思うけど、それ以上にジャンヌさんはこの村に入りたいんだと思うよ?」

あまり自信がないのか、セリナは疑問形で推測を述べてきた。

「この村に入ったってなんもねぇだろ。もしかして朝食をタカリに来たのか?」

「タカリ?朝食を一緒にっていったら喜ぶかもね。ジャンヌさんってカンツィアさんと似てる部分があるから、子どもたちに会いたいんじゃにゃいかにゃ?」

カンツィア?…あぁ、ロリコンのことか。

「あぁ…。」

そういやあいつはロリコンと同類だったな。むしろロリコンより範囲が広いらしいから、よりタチが悪そうだ。

「使いの子が門で返事を待ってるんだけど、にゃんていったらいい?」

本人が来てるわけじゃねぇのか。SSランクになると存在が武器みたいなもんだから本人が来ると警戒させちまうとか気を使ったのか?それともただ偉ぶってるだけなのか。

「とりあえず謁見の予定を決めたいだけなら飯食い終わるくらいの時間に来るようにいっておけばいいんじゃねぇか?他にも用があるなら飯食いながらで良ければ聞くって伝えてくれ。」

こういうのはアリアに任せてるからな。

「正式な謁見だったら数日後にするものにゃんだけど、リキ様らしくていいね。」

セリナはニコニコしながら皮肉とも取れることをいってきた。

無知で悪かったな。

どうやらセリナは以心伝心の加護を使って連絡を取ってるみたいだ。だったら最初からそれでアリアに伝えれば良かったんじゃねぇか?確か門のところにアリアとサラに繋がる指輪が1つずつ常備されてるようなことを昨日の村の案内のときにいっていた気がするし。アリアなら俺と繋がるブレスレットを持ってるはずだしな。

「にゃんかリキ様にお礼をいいたいらしいけど、二度もお邪魔したら悪いからあとでジャンヌさんと一緒に来るってさ。」

「お礼?」

「使いの子が学校に通ってるんだってさ。そのお礼みたい。」

「お礼をいわれるようなことじゃねえんだけどな。というか礼をいうなら俺じゃなくてアリアとかサラとかガルナとかガキどもにだろ。」

「私も先生やる予定だよ〜。」

「そうか。頑張れ。」

「はい!」

だいぶてきとうな返しになってしまったが、セリナは嬉しそうにしているから問題ないか。

「そろそろ食堂に行かないか?」

「は〜い。」

間の抜けた返事をしてきたセリナが俺の腕に絡みついてきた。

鬱陶しいから振り払おうとしたが、抵抗された。これ以上は面倒だったから、無視して食堂に向かうことにした。

朝食を終えて、俺とアリアは応接室にしている部屋でジャンヌたちを出迎えた。

「カンツィアがいってた通り本当にここは楽園ね。」

第一声がそれかよ。

やっぱりジャンヌはロリコンと同類みたいだ。

「ジャンヌ。」

「あぁ…ごめん。…ゴホン。この度は謁見の機会をくださりありがとうございます。」

豚乙女に注意されてジャンヌがいい直した言葉を聞いたら、なんだか背中がゾワッとした。

「そんなかしこまらなくていい。昨日と同じく普通に話せ。じゃないとなんだか気持ち悪い。」

「…本当に失礼なやつね。まぁでもその方が私も楽だから助かるわ。」

ジャンヌが俺にジト目を向けたあと、軽く笑ってから1人だけソファーに座った。

残りの3人はジャンヌの後ろに立っている。

豚乙女は昨日会ったが、他の2人は初めて見るな。

2人とも12歳くらいか?

1人はずいぶんと落ち着いているがもう1人は頑張って直立不動でいようとしているけれど、緊張しているのか時折ピクピクと動いている。目があったときにゆっくりと目を逸らされたし、こういう場に慣れてないんだろう。

「んで、何しにきた?用があるなら昨日のうちに話せただろ?」

「昨日はこの子たちがいなかったからね。」

あらためてジャンヌの後ろの落ち着いている方を見た。

金髪碧眼の綺麗な顔つきをした女の子だ。黙って立っているだけで同年代の男の視線を集めるようなタイプだろう。長い髪は冒険者なのに丁寧に手入れがされているように艶やかで、肌の露出は少ないが、傷一つなさそうな白く綺麗な肌をしているのだろうと思わせる雰囲気を纏っている。ハッキリいってしまえば冒険者というより貴族のお嬢様といった印象だ。

まぁジャンヌも黙っていれば似たような印象だったろうし、こういうのがグループに所属していてもおかしくはねぇか。

「初めまして。クレハです。今回、こちらの学校に通わせていただいています。このような素晴らしい施設を無償で提供してくださっているカンノ殿に感謝申し上げます。」

ずいぶんとかしこまったいい方で感謝を述べてきたクレハという子どもが、綺麗な姿勢で一礼してきた。

ずいぶん仕込まれているな。もしくは本当に貴族だったり、ただ単に賢い子なだけかもしれないが、マナドールとは違っていい意味でお人形さんみたいな見た目と雰囲気のせいでジャンヌにいいように操られてるんじゃないかと邪推しちまうわ。

「役に立ってるなら何よりだ。こっちに迷惑さえかけなければ好きに利用してくれてかまわない。」

「ありがとうございます。」

あらためて礼をしてきたクレハから視線を外して、もう1人の子どもへと視線を移した。

目が合うとビクリと肩がはね、視線が泳ぎ始めた。

少し癖のある栗色の髪を肩口で揃え、忙しなく動く瞳も栗色をしている。この子は既に革鎧を装備していて、その姿からは新人冒険者という雰囲気がにじみ出ている。同年代の男からしたら、クレハが高嶺の花なのにたいして、この子は親しみやすそうなタイプだな。

俺がガン見していたから余計に緊張させてしまったのか、その子は唇がわなわなと震えながら、何度か口をパクパクと動かし、一度唇を強く閉じた。気合いの入れ直しか?

「こ、このこのこのありがとうございましゅ!ユリャでふ!」

バサッという効果音が発生しそうなほど勢いよく頭を下げてきた。

凄まじい勢いの挨拶だな。噛みすぎて何をいってるのかはほとんどわからなかったが、感謝の気持ちだけはしっかりと伝わってきた。

最後のは名前でいいんだよな?

頭を上げたユリャの顔は真っ赤だった。

「思いつきで作ったものでそこまで感謝してもらえるとはな。ユリャでいいのか?」

「あっ…ユリアです…。」

ユリャってのも噛んだだけみたいだな。めちゃくちゃ恥ずかしそうに俯いて訂正してきた。

「そうか。間違えて悪いな、ユリア。これからも学校は好きに利用してくれ。」

「あ、ありがとうございます!」

また勢いよく頭を下げてきた。

褒められた所作ではないかもしれないが、俺は嫌いじゃないな。

「ちょっと!なんか私に対してと態度が違すぎじゃないかしら?」

「当たり前だろ。それで、用はこれだけか?」

「当たり前ってなんでよ!」

めんどくせぇな…。

「そんくらい自分で気づけねぇのか?いや、気づけねぇから聞いてんのか…。クレハとユリアは礼儀をわきまえてるから、俺はそれに返しただけだ。それに感謝を示してきた相手を無下に扱うつもりはねぇよ。だが、お前はどうだ?俺は面倒なことが嫌いなんだ。これで察してくれ。」

ジャンヌは眉根を寄せて考えたあと、わからなかったようで首を傾げた。

「…どういう意味?」

ただ単に俺の中でジャンヌが面倒なやつという部類に入っちまってるだけなんだが、これを正直にいったらまた面倒になりそうだからどうするかと考えていたら、豚乙女ことピグレが口を開いた。

「カンノさんはジャンヌとは対等でいたいってことよ。だから変に飾りたくないのよ。気兼ねなく付き合える関係って素敵じゃない?」

この豚は何をいってんだ?

「え?あっ…ふ〜ん。そうなんだ。ならしょうがないわね。」

しかもなぜかジャンヌが満更でもなさそうな顔をしてやがるのがイラっとくるが、これ以上話を広げても面倒だからもうそれでいいや。

「それで、用は済んだのか?」

「え?…いえ、この子たちがお礼をいいたかったというのもあるけれど、今日来たのはこっちの村も見せてもらいたかったからよ。」

…。

「は?わざわざ一般用と村民用に分けてるのに頼めば見せてもらえるとでも思ったのか?」

「え?ダメなの?私が頼んでるのに?」

こいつは何様なんだ?しかもまだ頼まれてはいないと思うんだが。

俺がため息をつくと、ピグレが苦笑いを浮かべた。

「俺がいえたことじゃねぇけど、最低限の礼儀作法くらいは覚えた方がいいと思うぞ。」

本当に俺がいえたことじゃねぇんだけどな。

「私だって礼儀作法くらい身につけているわよ!あなたは知らないかもしれないけれど、高ランク冒険者は貴族と接する機会も多いのだから。」

…そういやこいつは最初にあらたまった話し方をしようとしてたな。気持ち悪かったから普通に喋れといっちまったが。じゃあ馴れ馴れしいのは俺のせいでもあるのか。

「ごめんなさい、カンノさん。ジャンヌは対等に話せる相手ができて舞い上がってしまっているだけで、決して見下しているわけではないの。気を悪くしないでもらえると嬉しいわ。」

「ちょっと!ピグレ!変なこといわないでよ!」

…めんどくせぇ。

「もういい。わかった。お前と話すのは疲れたから、俺らに迷惑さえかけなきゃ好きにしてかまわねぇ。ただ、ほとんどがガキどもの住居だから、建物内には入るなよ。」

こういっておけば見られて困るようなところがあっても入られることはないだろう。

「…それでは村民用区画に入るための通行証を作るので、登録作業をしてもらいます。」

面倒になった俺からジャンヌの相手を引き継ぐようにアリアが話し始めた。

村民用区画に入るにも通行証が必要なのか。

アリアがジャンヌたちに説明している間、アリアの指輪が反応しているのが視界の隅に映った。もしかして同時進行で以心伝心の加護を使っているのか?

「何をしたらいいの?」

「…既に持っている通行証を貸してください。」

アリアの指示を聞いてジャンヌが通行証を取り出すと、他の3人も取り出してアリアに渡した。

アリアがアイテムボックスから何かの板を4つ取り出してテーブルの上に置いた。その板には魔法陣のようなものが描かれていて、少しずつ光り始めたと思ったら、それ以上強くはならずに淡い光を放ち続けている。

魔法陣のようなものが描かれた板の上にそれぞれの通行証を置いたところで扉がノックされた。

「入れ。」

誰かわからないが、とりあえず入室の許可を出すと扉が開き、ヴェルが現れた。

「アリア、これでいいのかい?」

ヴェルは脇に抱えていた巨大な水晶を前に出し、アリアに確認を取っていた。

それを確認したアリアはあらためて何かをアイテムボックスから取り出してテーブルの上に置いた。あれは木の枠か?

「…ありがとうございます。この上にゆっくりと置いてもらえますか?」

「ソフィアにも念押しされたよ。いくら僕でも無駄に物を壊したりはしないさ。」

そういってヴェルはアリアがテーブルに置いた木の枠の上にバカでかい水晶を静かに置いた。あの木の枠は水晶を固定させるものだったのか。

ヴェルはそれで用が済んだとばかりに応接室から出て行った。

ヴェルはあれを運ぶためだけに使われたのか?

「…それでは1人ずつこの水晶に手を置いてください。」

「なら私からお願いするわ。それにしてもずいぶん大きな水晶ね。」

ジャンヌが独り言とも質問とも取れる言葉をもらしながら水晶に手を置くと、水晶が濁り始めた。

ステータスチェック用の水晶じゃねぇのか?

俺が疑問を持ってアリアを見たら、アリアはジャンヌの言葉に答えずに詠唱を始めていた。

「我願う。示されしものを、 他 た に見えぬ光となりて、指定されし空間へと表したまえ。」

『プロジェクション』

アリアが魔法を発動すると水晶とアリアの間に薄っすらと模様が浮かび上がっていた。

アリアがそれを見て少しだけ驚いた顔をした気がしたが、なんか予想外のことでも起きたのか?

「我求める。文字にて示されし記録を指定せしものへと写したまえ。」

『トランスファー』

今度は薄っすらと浮かんでいた文字がテーブルにあるカードの置かれている板の1つに吸い込まれるように消えていった。

「聞いたことない魔法ね。それに詠唱もずいぶんと短いし、何か起きたようには見えなかったけれど、何をしたのかしら?」

ん?こいつらには今の現象が見えてなかったのか?

「…戦闘に使うことのない魔法なので、ジャンヌさんが聞いたことがなくても不思議ではありません。…これでジャンヌさんの登録は終わりました。他の方も同じようにお願いします。」

微妙にジャンヌの質問には答えずにアリアはピグレとクレハとユリアにも同じように登録を終わらせた。

「…これで終わりです。次回からはその通行証を門番に渡してもらえれば、通ることができます。」

「ということだ。あとは好きにしてくれ。ただ、さっきもいったけど、建物内には勝手に入るなよ。」

「そんなことしないわよ。でも、この屋敷内はちょっと見てみたいのだけれど、ダメかしら?」

普通は村長宅を見せてくれなんてお願いするやついねぇだろ?バカなのか?

まぁこの屋敷内には個人の部屋以外は見られて困るものはないだろうからいいっちゃいいけどさ。

俺がなんて答えるか考えていたら、また扉がノックされた。

「入れ。」

「失礼します♪」

やたらテンション高く入ってきたのはヒトミだった。

「どうした?」

「アリアに呼ばれたから急いで来たんだよ♪」

どういうことかとアリアを見た。

「…ジャンヌさんたちにこの屋敷を案内してあげてください。お願いします。」

どうやら案内を頼むためにアリアが呼んだみたいだな。

「え?……………それじゃあ案内するからついて来てね♪」

アリアに頼まれて驚いた顔で一瞬固まった瞳がニコリと笑顔に戻り、ジャンヌたちを連れて応接室から出ていった。予想外のことを頼まれて、テンションを無理やり上げたように見えたが、大丈夫か?

「…ヒトミには悪いですが、今手が空いている方で適任がヒトミしかいませんでした。」

俺とアリアしかいない応接室で、アリアが呟いた。

「スケジュール管理はアリアに任せてるんだから、問題ねぇだろ。それより、さっきの浮かんでた記号はなんだ?」

「…浮かんでいた記号?………リキ様には水晶から映し出した文字が見えていたのですか?」

あれは文字だったのか。

「薄っすらとだけど見えてたな。本当は見えないものなのか?」

「…周りから見えなくしたつもりでしたが、さすがはリキ様です。ジャンヌさんたちの反応からして、他の方には見えていなかったと思います。」

だとしたらこの目のおかげだろ。まぁ見えたところで文字が読めねえから意味がないんだが。

「なんでわざわざ他のやつに見えなくしたんだ?」

「…この水晶はソフィアさんがステータスチェックを改良したものなので、相手がその時点で所持しているスキルや加護まで映し出します。そのことを相手に気づかせないため、水晶内に浮かぶ文字を見えないように濁らせる魔法を組み込み、それを他の方に見えないように外に映し出しました。そして、その映し出したステータスをこれに写しました。」

そういって、アリアは魔法陣が描かれた板の隙間から1枚のカードを取り出した。よく見ると他の板にも切れ込みがある。もしかしてと思ったら、アリアが他の板からもカードを取り出した。

「…これがジャンヌさんのステータスでこれがピグレさんのステータス、そしてこれとこれがクレハさんとユリアさんのステータスです。確認しますか?」

…は?いや、個人情報保護法なんてないとは思っちゃいたが、マジかよ!?

「さすがにやり過ぎじゃねぇか?」

「…念のためです。敵に回らない限り他者に公開するつもりはありません。」

…アリアが味方で本当に良かったわ。

一瞬だが8歳児に恐怖を覚えたよ。

「そうか。ということはあいつらに渡したカードにもあいつらの情報が入ってるのか?」

「…いえ、あれにはただの簡易的な情報と履修済みのものがあればその記録しかありません。村民用区画への出入り許可はこの魔法陣に乗せた時点で完了しています。」

マジか…。さっきの魔法とかは登録作業には不必要なことだったのかよ。あたかも必要なことのように見せて相手のステータスを盗むとか…いや、俺も鑑定で人を見たりしてるからなんもいえねぇな。

それにアリアが考えてやってることだろうし、悪いようにはしないだろう。

「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

アリアとの会話の途中で、少し離れたところから叫び声が聞こえた。この声はユリアか?

…さっそくだが、あいつら出禁にするか。

「…どうしますか?」

「とりあえず見に行くか。」

「…はい。」

返事をしたアリアは魔法陣が描かれた4つの板だけアイテムボックスにしまって立ち上がった。そしてそのまま俺について扉に向かった。

「水晶はいいのか?」

「…あれは重すぎてわたしでは持てないので、ヴェルさんに頼みました。」

ヴェルが水晶を持って来たのにはちゃんと理由があったわけね。

アリアは見た目的には華奢だが、かなりレベルを上げているから見た目では信じられないほどの力があるはずなんだが、そんなアリアが持てない重さとかどんだけだよ。

どのくらい重いのかにちょっと興味があるが、まずは面倒ごとを先に片付けるべきか。

最後に水晶をチラリと見てから、俺らは応接室を出て、叫び声のもとに向かった。