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219話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

219話

散歩して帰ってきたおかげか、夕飯のステーキが美味しそうに見える。

あれからたいして時間は経っていないが、気持ち悪さがおさまり、腹も減った。だからといって刺身はしばらくいらないが。

今日の夕飯はフレドたちが仕留めた魔物のお裾分けらしい。脂身が少なめだから肉を食っている満足感を得ながら、硬すぎないから顎が疲れることはない。

なかなかいい肉だな。なんの肉かは知らんが。

「リキ様。少しよろしいでしょうか?」

俺が肉を頬張っていたら、隣のローウィンスが声をかけてきた。

いつもなら普通に話し始めるのにあらたまってどうした?

真面目な話なのかと思い、口いっぱいに入っていた肉を飲み込んでからローウィンスを見た。

「なんだ?」

「どうやら聖女様がクローノストの勇者様のパーティーに加入したそうです。」

「…聖女?」

「はい。イルメスト聖国で女神の祝福を受けたとされる女性の方です。常に1人しか存在せず、支援に特化した方で、アンデッドに対して有効なスキルを持っているという噂もあります。歴代の聖女様は戦う力はあまりなかったのですが、今代の聖女様は自衛できる程度の戦闘力はあると伺っています。前回と前々回の二度の大災害を乗り越えた優秀な方です。能力だけでいうなら、アリアさんがもう1人いると思っていただければわかりやすいでしょうか。」

アリアみたいなやつか。そりゃ優秀なんだろうな。

「それで、アラフミナに来るわけじゃないのに俺に関係なくないか?」

「聖女様は魔物を感知する能力に優れているとのことです。そして、魔物を含めた魔族を嫌っている可能性が高いので、気をつけていただきたく思った次第です。クローノストは冒険者の町といわれる場所なので、立ち寄ることもあるかと思い、先にお耳に入れておいて欲しかったのです。」

「そうか、ありがとう。」

つまりは俺の仲間に攻撃してくる可能性があるってことか。その場合は女神のなんちゃらだとしても敵として接するしかねぇな。

「できればアラフミナの王族として、イルメストともクローノストとも敵対することは避けたいと思っていますので、リキ様にも協力していただけたら幸いです。」

つまりはクローノストには大災害が終わるまで近寄るなってことか。

まぁあの国はあんま好きじゃねぇし、あの勇者にも近寄りたいとは思わねぇから、用ができない限りは行くことはねぇだろ。

「あぁ、あの国にはとくに用もねぇし、今のところは行く予定がねぇよ。ただ、あっちから来られたら面倒だから、そのへんはそっちでなんとかしてくれ。」

「わかりました。それではアラフミナに大災害に関する被害があった際にクローノストには助力を求めないので、リキ様、よろしくお願いいたします。」

「…は?」

「アラフミナの巫女長は首都にいます。つまり巫女長が大災害を察知した場合、ラフィリアに被害が及ぶということです。その場合、これだけ近いスルウェー領が無事ということはないかと思うので、前もって誰かに助力を求めなければなりません。その場合、いつもであればクローノストの勇者が第一候補に上がります。そのために先に貸しを作ろうと以前の魔王退治を手伝ったのですから。ですが、クローノストに助力を頼めないのであれば、他に頼むしかありません。アラフミナのあの勇者は使えませんから。なので、リキ様にお願いしたいと思います。アラフミナのあの勇者で対応できる程度ならリキ様のお手を煩わせるつもりはありません。ただ、あれではどうしようもない場合にはよろしくお願いしたいと思っております。…ダメでしょうか?」

勇者の扱いが酷いな。最終的にはあれ扱いだもんな。ちょっと可哀想に思う。

たしかに雑魚だし、頑張りも足りないんじゃねぇかとは思うが、あいつもいきなり異世界に連れてこられて、強くなって世界を救えって無理やり戦わせられてるんだから、それを考えたらもうちょい優しくしてやってもいいんじゃねぇかとは思う。

俺も最初は自分との待遇の違いにイラついたりもしたが、生活が安定した今なら正直同情する部分もある。俺は自分に降りかかる火の粉さえ払っていれば基本自由だが、あいつは召喚紋で一生自由を奪われる身らしいしな。本人がそれを知ってるかは知らんが。

まぁあいつとは性格が合わねぇだろうから、仲良くすることは無理だろうが。

「俺らが相手できる敵なんてたかが知れてるだろうが、前情報がある状態で、アリアが大丈夫だと判断したときに限り手伝ってやるよ。俺らで無理な場合はクローノストの勇者に頼んでくれ。その間、俺らは魔族の仲間を連れてどっか行ってるから。」

これが俺が出来る最大限の譲歩だな。

死ぬ可能性があることを俺はしたくねぇし、そんな危険な場所に仲間を連れて行きたくねぇ。

ある敵を倒さなきゃどこにいようが関係なく世界が滅ぶなんて状態になったら覚悟を決めるしかないが、逃げ場があるなら無理なんかするもんじゃねぇだろ。

「ありがとうございます。リキ様に倒せない敵でしたら、クローノストの勇者では無理だと思いますので、そういっていただけるだけで十分に安心できます。」

こいつも俺のことを過大評価してるからな。

まぁ判断するのはアリアだから、無理な依頼は断るだろう。…たぶん。

その後は聖女や勇者の話を聞きながら飯を食ってたんだが、どうやら聖女ってのは勇者並みに優れたジョブらしい。

ただ、王から任命された異世界人なら誰でもなれる勇者とは違って、女神の加護を得ている女しかなれないとかいうかなりレアなジョブらしいがな。しかも女神の加護はこの世界で1人しか持つことが出来ないらしいし、生娘でなくなったら消失するらしいから、本当に選ばれたやつしかなれないジョブだ。逆に選ばれちまったら普通の生活は送られなくなりそうな呪われたジョブでもあるのかもだが。

んで、今回の聖女はそろそろ引退を考えているらしい。まだ25歳らしいが、次の大災害が起きたときに戦える歳ではない可能性があるから、新しい聖女を教育する時間を作るためにも今回の大災害を乗り切ったらすぐに引退するつもりらしい。

その相手に選ばれたのがクローノストの勇者らしい。ただ、大々的に発表された話ではないから、あくまでローウィンスが仕入れた情報が正しければという話だが。

まぁそれっぽい理由をつけてはいるが、ローウィンスからの情報を聞く限り、ただただ前回の大災害のときにクローノストの勇者に助けられたときに惚れたから、理由をつけて結婚しようとしてるようにしか聞こえなかったがな。

夕食が終わり、それぞれが帰るなり仕事に行くなりしているなか、俺ら訓練組は食堂に残って話をしていた。

主にユリアとクレハの今朝の反省点と明日の訓練の説明といったところだ。だから喋ってるのはユリアとクレハとアリアとセリナくらいで、俺はいるだけで暇だ。

他にもテンコとニアがいる。テンコは同じく暇そうにしているが、ニアは意外にも真剣に話を聞いて、たまにメモなんてしてやがる。あの2人とは戦い方が違うだろうに参考になることがあるみたいだな。

しばらく話し合いが続き、俺は狐形態になったテンコを膝上でモフモフしながら暇を潰していたら、話し合いに一区切りついたようだ。

もうこのまま解散って流れになりそうだな。

だから聞くなら今か。

「なぁユリア。精霊が喜びそうなところって知らないか?」

「精霊が喜びそうな場所ですか?」

急に話を振られたユリアは少し困ったような顔で聞き返してきた。

「あぁ、精霊が何を好むのかを俺はよく知らねぇし、テンコに聞いても特にないようなことをいうからさ。精霊使い歴の長いユリアなら何か知ってるかと思ってさ。」

「そういうことですか。えっと、私はウンディーネにたまに魔力を与えるくらいしかしてませんが、お婆ちゃんには精霊樹の森に連れて行ってあげると精霊が喜ぶって話を聞かされました。でも、私の実力ではまだ精霊樹までたどり着けないので、行ったことはありませんが…。」

「乙女の集いのメンバーを連れて行けば楽に行けんじゃねぇの?それでも苦労するほどの場所なのか?」

「いえ、行くだけなら他の方についてきてもらえれば問題ないんですが、お婆ちゃんが1人でも精霊樹まで行けるくらいに強くなってから行った方がいいといっていたので、できれば冒険者ランクがA…せめてランクBになってから行こうかと思ってました。」

名前からして精霊に関係ありそうな場所だな。

それなりの実力がないと危険な場所か。まぁ俺はそこに行ければいいだけだから、イーラやセリナを連れて行けば大丈夫だろ。

「どこにあるんだ?」

「カテヒムロの東側に広がる森の中心にあると聞いています。」

カテヒムロってクランからもらった地図の場所だよな?あとはピグレに酷い二つ名を付けた勇者がいるもしくはいた国か。まぁ本人が喜んでるからそれはいいんだけど。

アイテムボックスからカテヒムロの地図を取り出し、開いて確認してみた。

文字は読めないが、東側にデカい森っぽい場所があるな。これの中心か。ただ、そもそもカテヒムロの場所がわからん。

「アリア、カテヒムロってどこにあるんだ?」

「…アラフミナからでしたら北東の位置になります。アラフミナの東がクルムナ、クルムナの東が旧ニクイヨツ、そして旧ニクイヨツの北側に接している国がカテヒムロです。」

なんとなくの場所はわかった。

「どのくらいで行ける?」

「…精霊樹の森まででしたら、イーラで半日もかからず行けるかと思います。ドライガーやイグ車なら6日から10日ほどだと思います。」

クローノストよりは少し遠いみたいだが、イーラで向かえば誤差の範囲か。

「そうか、ありがとう。」

ユリアを見たらポカンとしていた。

なんでそんな顔をしているのかはわからないが、ユリアはまたいい情報をくれたから感謝だ。

「ユリア、ありがとな。」

「あ、いえ、はい。」

「んじゃ今日はこれで解散だ。ユリアとクレハは疲れてるだろうから、明日のためにも早く寝ておけよ。」

「「はい。」」

ユリアとクレハが声を揃えて返事をし、今夜の話し合いは解散となった。