239話
239話
小走りで進むアリアのあとをついていく。
この階はリスタートから出てすぐのところに1体の魔物がいたが、アリアのロッド一振りで吹っ飛ぶ程度だから、レベル上げとしては選択ミスなんじゃねぇか?
アリアは魔物を壁際に吹っ飛ばしたあとは生死の確認もせずに先に進んでいるから、そもそも経験値が入ってない可能性すらある。
今日ってユリアとクレハのレベルをカンストさせるのが目的だったよな?
あと、ユリアは昨日教えた精霊との合体に慣れる練習だったか。
そんなことを考えていたら、アリアが壁際で立ち止まった。
まだリスタートから出てきてから少ししか進んでいないが、その壁に俺の観察眼が反応しているから、また隠し部屋だろう。
「…セリナさん、確認お願いします。」
「ん〜?あぁ、けっこういそうだけど、そんにゃに危険にゃ感じはにゃいね。」
「…ありがとうございます。それでは中に入ります。クレハさんは今度は『ホーリーフェザー』を使ってもらおうと思うので、詠唱しておいてください。ユリアさんは中に入ってからでいいので、大精霊を取り込んでください。ここの討伐を終え次第、地下40階に下りるので。イーラは攻撃はしないでクレハさんを護ってください。」
「「はい。」」
「は〜い。」
どうやら俺はやることがないみたいだな。
「我願う。彷徨える者に降り注ぐは清き羽、触れし者を救済へと導きたまえ。」
アリアはクレハが詠唱を始めたのを確認して中に入り、続いてクレハとイーラとユリアが入っていき、俺とセリナも続いた。
壁を通り抜け、視界があけると、そこには30体は超えていそうな動く骸骨がいた。
俯瞰して見てるわけじゃねぇから正確な数はわからねぇが、なかなかな量だな。
今回のスケルトンどもは破れた布や壊れた装備を着ているやつがチラホラいるし、ほとんどのやつが何かしらの武器を持ってやがる。
なんだろうなこの既視感は。
ただ、そのスケルトンどもは俺らの侵入に気づいていないのか、1体もこちらを見てはいない。
だが、金属同士がぶつかる音はするし、スケルトンどもが飛び跳ねたりしているのがスケルトンどもの向こう側にたまに見える。
一瞬魔物同士で殺しあってんのかと思ったが、たぶん先に来ていたやつがいるんだろう。
あぁ、思い出したよ。
前にここに来たときも先に戦ってるやつがいたから、魔物を横取りせずに外に出ようとして攻撃されたんだったな。
けっきょく俺を攻撃しただろうやつは先に逃げやがったから、仕返し出来なかったんだったな。まぁ顔を覚えてねぇから、出来事だけ思い出したところでどうにもならねぇんだが。
そもそもあいつは6人でこんなスケルトンに苦戦してたくせに、その仲間を裏切って1人で出ていったから、生きてダンジョンから出れたのかもわかんねぇけど。
俺は軽くため息をついて、壁際に座った。
それを見たイーラとセリナが真似するように俺の左右に座った。
アリアも近づいてはきたんだが、座らずに立ったままスケルトンどもを見ている。
昔来たときと違い、今回はスケルトンどもを挟んだちょうど反対側に他の冒険者がいるようで、こちらからは人が見えないからか、ユリアは状況がよくわかっていないみたいだ。それでも何が起きているのかが気になるのか、俺らの方に近づきながらスケルトンどもの向こう側を必死に見つめている。
ただ、クレハだけは急いでスケルトンどもの方に駆け出したところで俺たちの行動に気づいたのか、中途半端な位置で立ち止まり、俺たちとスケルトンどもを交互に見ていた。
クレハが何かいいたそうにしているが、魔法の詠唱後に発動せずに溜めている状態だと喋れないのか、困った顔をしながら何度も俺たちとスケルトンどもを交互に見ている。
そのクレハの行動からか、それともスケルトンどもの向こう側が見えたのかはわからないが、ユリアが状況を把握したようで俺たちとスケルトンどもを交互に見始めた。
「え!?助けないんですか!?」
「こんな弱い魔物相手に助けるも何もねぇだろ。仮に助けが必要なのだとしても、助けを求められる前に手を出したら、面倒なことになる可能性があるからな。人の獲物を奪うのはマナー違反だ。」
前にここで会ったやつらはたしかリーダーっぽいやつが戦う気がなかったうえに魔物の数も今の倍以上いた気がするから、負けるのも仕方がなかったといえなくもないが、スケルトン30体ちょっとならどうとでもなるだろ。
これすら倒せないほど弱いなら、なんで隠し部屋なんかに入ろうと思えたのかを聞きたい。
いや、べつに理由なんか聞きたくはねぇけど、一度痛い目にあっておいた方が馬鹿どものためになるだろ。
俺もそうやって学習したしな…。
「でも、あきらかに劣勢ですよ?」
「そんなに助けたいなら、助けが必要かを聞いてくればいいじゃねぇか。それでもし助けを求められたら、このスケルトンどもの装備はこっちでもらうという条件は飲ませろよ。」
「…え?この中に1人で入れってことですか?」
なぜかユリアの顔から血の気が引き、ブルッと体を震えさせた。
ユリアは一応あいつのパーティーメンバーだろ?なんでSSランクのパーティーメンバーがスケルトンなんかにビビってんだよ。
ホラーは苦手ですとかふざけたことをぬかす気か?
いや、普通に考えて向こうに行くまでに何体かは倒さないといけないだろうから、それで文句をいわれてしまうかもっていう心配か?
それなら納得だ。俺でも1体もスケルトンを倒さずに向こうまで行くのはたぶん無理だ。それで経験値が奪われたとか文句をいわれたら殺したくなるしな。
「わかったよ。イーラ、確認してきてくれるか?ただ、スケルトンは1体も殺すなよ。経験値が奪われたとか文句をいわれたら面倒だからな。」
「羽で飛んでいけばいいの?」
「いや、人型のままでだ。」
「は〜い。…ん〜、こいつらなら大丈夫かな?」
セリナでも行けそうな気はしたが、念のため物理無効を持ってるイーラに行かせることにした。
イーラは少し悩んでいたようだが、そのまま歩き出し、スケルトンの群れのど真ん中を突っ切ることにしたみたいだ。
てっきり向こう側までジャンプするかと思ったら、まさかそのまま歩いて行くとは…。さっき確認されたときに否定したのが、跳ぶのもなしだと思われたのかもな。俺は羽を生やすのはなしって意味でいったんだが。
イーラがスケルトンどもの中に消えてからしばらくして、スケルトンどもをかき分けるようにイーラが出てきた。
何体かのスケルトンがイーラに攻撃しているが、イーラは完全に無視している。
掴みかかってくる相手にだけ、手で払って拘束を解いていた。
イーラがスケルトンの群れから完全に出てきても、何体かのスケルトンが手に持った武器でしつこく殴りながらついてきている。だが、イーラは殴られるだけなら気にしてすらいないようだ。
「武器も経験値もいらないから助けてだってさ。」
マジか…。
まぁ、失敗は誰にでもあるよな。
ここは初心者向けダンジョンっていわれてるから、昔の俺みたいに勘違いしてここまで来ちまった可能性もあるだろう。そういうことにしておこう。
「アリア、任せた。」
「…はい。それではクレハさん、予定通りにお願いします。」
『ホーリーフェザー』
もともとここでは俺の出番はなかったから、あとはアリアに任せることにした。
魔法を発動前で止めていたせいでずっと静かだったクレハが、アリアの指示でやっと魔法を発動させることができたみたいだ。
クレハが魔法名をいい終えると、何もなかったはずのスケルトンどもの真上に急に大量の光る羽が舞い散った。
それらがヒラリヒラリと舞い降り、広範囲に広がった光る羽に触れたスケルトンどもが急に苦しみ出した。
羽が何枚か当たった程度では倒せないみたいだが、範囲攻撃みたいだから複数相手にはちょうどよさそうだな。
「というか、こんな広い範囲に攻撃したら、向こうの冒険者たちにも当たっちまうんじゃねぇか?」
「…これは特殊な魔法なので、本に書かれていたことが正しいのなら、悪しきものにしか効果はないとのことです。」
なら俺が当たったらダメージを受けるってことか?
まぁそれは冗談にしても、そんなんどうやって判断するんだよ。
「善とか悪とかって何を基準にしてんだ?」
「…本に書かれた悪しきものとは堕ちた者やアンデッド、瘴気のことを指しているようでした。他にも試されていないものもあるとは思いますが、普通の人間に効果はないそうです。あと、アンデッド以外の魔物にも効果はないそうです。例外として、瘴気を吸収した魔物の弱体化という意味でなら効果はあるらしいです。」
悪しきものとか落ちたものとかいわれても何いってんのかわかんねぇよ。
まぁ、俺はホーリー系の魔法は覚えてないし、俺に効果のある攻撃でないならどうでもいいか。
「そうか。ならべつにいい。」
「…はい。それではクレハさん。もう一度お願いします。」
俺がアリアと話しているうちに羽が降り終えていたらしく、全てのスケルトンが完全にターゲットを俺たちに変えて、向かってきていた。
だが、ダメージを負っているからかスケルトンどもは足を引きずるように歩いているため、移動速度はかなり遅い。
「我願う。彷徨える者に降り注ぐは清き羽、触れし者を救済へと導きたまえ。」
『ホーリーフェザー』
またクレハの生み出した光る羽がスケルトンどもに降り注いだ。
どうやらスケルトンどもは瀕死状態だったようで、羽を浴びたスケルトンどもは少しずつ数を減らし、羽が尽きる前にスケルトンは1体もいなくなった。
アンデッドなのに瀕死状態って自分でいっていて意味不明だがな。
スケルトンどもがいなくなったから、先にいた冒険者たちが見えるようになった。
向こうは6人いるから、1人も死んではいないみたいだな。
冒険者たちは呆然としていたが、向こうも俺らに気づいたようで、歩いて近づいてきた。
そういやホーリー系の魔法でアンデッドを攻撃すると素材が残らねぇんだな。まぁ人骨なんかいらねぇからいいけど。
「いやー助かった!ありがとな!」
雰囲気的にリーダーだと思われるやつが笑いながら礼をいってきた。
こいつはこんな雑魚相手に死にかけてたってのに何笑ってんだ?
リーダーっぽいやつの後ろにいる5人を確認したが、さすがに誰一人笑っていなかった。目が合うと3人は気まずそうに頭を下げてきたが、1人は勢いよく目を逸らされ、最後のローブを着た女に限っては何度か俺とクレハを交互に見るたびに顔が青白くなっていやがる。
なかなか失礼なパーティーだな。
「お前がリーダーか?」
「おう。そっちはあんたがリーダーか?」
やっぱりこいつがリーダーなのか。
「あぁ。つーか、お前は何笑ってんだ?リーダーなら自分のパーティーメンバーを危険にさらしといてヘラヘラしてんじゃねぇよ。」
「はぁ?助けてもらったことは感謝するが、うちのパーティーのことはあんたに関係ないだろ!」
「おまっ!やめろ!」
さっき俺から目を逸らした男がなぜか必死にリーダーを止めている。
さっきは失礼なやつだと思ったが、立場はわきまえてるのかもな。
それにしても、なんかイラっとしたからといって、つい余計なことをいっちまった。
たしかにこいつらがどうなろうと俺には関係なかったな。
なに、らしくないことやってんだろうな。
「あぁ、そうだな。お前らがどうなろうと俺には関係ねぇな。悪かった。」
てきとうに謝罪をして、スケルトンどもの装備の回収に移ると、イーラとセリナも手伝いにきたようだ。
俺らが回収作業をしていたら、後ろから冒険者どもの声が聞こえてきた。
「なんだよ。感謝してんのになんでそんな嫌味いわれなきゃならないんだよ。」
「やめろ!相手を考えろ!馬鹿が!」
「馬鹿!?さっきからなんだよ。いくらなんでもビビりすぎだろ。たしかにあの強いアンデッドの群れを消滅させたのは凄いけど、たまたま有効な魔法を知ってただけだろ?」
「おまっ!いいからもう少し声落とせ。あの背中のマークが見えねぇのか!?『歩く災厄』だぞ!」
「「「「え?」」」」
「そうよ。それにあの女の子のマークはたぶん“乙女の集い”よ。なんで一緒にいるのかはわからないけれど、リーダーお願いだから今日だけは静かにしてて。本当にお願いだから。私はせっかく助かった命を無駄にしたくないの。」
途中から声を抑える努力はしていたみたいだが、聞き耳立てずとも全部聞こえてるんだが。
チラリと後ろを見ると、“乙女の集い”のマークに気づいたのはさっき顔を青くしていた女みたいだな。
同じパーティー内でも情報を持ってるやつと持ってないやつがいるわけか。
それにしても“乙女の集い”が有名なのはわかるが、なんで俺までそんなに知られてんだよ。
学校なんて始めたし、グループ所属のガキどもが大量にいるから、グループマークが知られてんのはわかるが、なんでこのグループマークを見てグループ名よりも先に俺の不名誉な二つ名が出てくんだよ。
そのあとはさらに声を抑えたみたいで小声すぎて何を話してんのかはわからなかった。
俺が装備を回収し終えて振り向いたら、アリアたちが移動していた。
どうやら出口の壁まで先に移動してたみたいだな。
冒険者どもはまだコソコソと話し合っているから、無視して俺らは隠し部屋から外に出た。
外に出たところでアリアがまた『リスタート』を発動させて潜っていったから、俺らもそれに続いた。
空間を通ると、先に通っていたクレハがやけに険しい顔をしていた。
「どうした?」
「魔物の気配が急に強くなったので、警戒しているだけです。」
気配って、ずっとスキルかなんか使ってんのか?それは疲れそうだな。
それともセリナみたいに感覚でわかるとかか?
まぁどちらにせよこの階は強くてもミノタウルス程度だから、どうとでもなるはずだ。
それでも油断せずにちゃんと警戒するのは偉いと思う。
「そういや今日は人が少ないな。」
「早朝だからじゃにゃい?」
独り言のように呟いた俺の言葉をセリナが拾い、返してきた。
「そういやまだ日が昇りきる前だったな。ん?じゃあなんであいつらはこんな時間にダンジョンにいるんだ?スケルトンに負けるような雑魚が夜中に出歩くとか自殺行為じゃねぇか。」
「あれはしょうがないんじゃないですかね…。」
「…リキ様が邪龍を討伐したおかげで、草原にマッドブリードがあまり発生しなくなったため、夜でも山に近づかないように気をつければ出歩けるようになりました。もちろんある程度戦闘できなければ危険ではありますが。それにここは人気のあるダンジョンのため、時間をずらして人が少ない時間に来たのだと思います。」
ユリアがなぜかあいつらのフォローをしたと思ったら、今度はアリアが俺の問いに答えた。
そういや前は入り口や1階にめっちゃ人がいたな。あんなんじゃ多少戦える冒険者からしたらなんの練習にもならねぇか。
それで人が少ないところまで下りたら、今度は魔物の方が強くて全滅か。そんな感じのやつらが前にいたな。実際の全滅してた理由は知らんけど。
それなら時間をずらして、自分に合った階層で戦った方がいいか。でも、そこまで考えられんのに隠し部屋に入るあいつらは考える頭があんのか馬鹿なのかよくわかんねぇやつらだな。
まぁどうでもいいんだけどさ。
「俺らがこんな早朝に来たのもそういう理由か?」
「…いえ、今日中にジョブを変えに神殿に行きたいので、念のため早めに来ました。」
「え?今日中にジョブチェンジまで行うのですか?」
俺が納得したら、今度はクレハがアリアに疑問をぶつけた。
レベル上限までって話は昨夜もしたし、ダンジョンに入る前にもしたってのに何を驚いてんだ?
「…はい。『戦士』でしたらこのダンジョンだけでレベル上限までいけると思うので、問題ないです。」
「私のレベルはまだ70ですよ?」
「…上限が100レベルのジョブなので、問題ないです。今日と明日は技術的なことは一度置いておいて、レベルを上げるだけのため、わたしたちについてきてもらうだけなので、昼までには終わると思います。」
ん?アリアのいい方だとクレハたちは戦わないのか?
というか、たぶん俺らに魔物狩りをやらせる気だな。
さっきのでなんかモヤモヤしてたからちょうどいい。
「テンコ、いけるか?」
「大丈夫。」
首に巻きついているテンコを撫でながら確認を取ると、返事とともに俺の右腕に降り、体に入ってきた。
なんでわざわざ右腕から入ったのかと疑問に思ったが、右手首に巻かれたリボンを見て察した。
首に巻きついたまま俺ん中に入ってきたら、俺の首にリボンが結ばれるんだろうな。間違いなく俺のテンションが下がるだろうから、テンコは気を使ったのかもしれない。グッジョブだ。
俺がテンコが入ってきてステータスが上がった感覚を確かめていたら、さらにアリアがステータスアップの魔法を俺とセリナにかけたようで、気持ちいいぐらいに体に力が漲ってきた。
「…それではリキ様とセリナさんは先頭をお願いしていいですか?魔物は殺して放置で大丈夫です。」
「わかった。」
「は〜い。」
「イーラは?」
「…イーラはわたしと後ろで、クレハさんはセリナさんをユリアさんはリキ様をよく見ていてください。」
「は〜い。」
「「はい。」」
それぞれが返事をして、久しぶりのダンジョン攻略が始まった。
まぁいうほど久しぶりじゃねぇんだけどな。
いきなり走りだした俺とセリナのあとをクレハとユリアがついてくる。
あえて遠回りして下り階段に向かっているんだが、この階は魔物が少ないな。…おっ!ミノタウルスいんじゃん。
「セリナ、あれは俺がやる。」
「は〜い。」
右手だけに精霊術の身体強化を試してみたが、部分発動も出来るみたいだな。
さらにスキルの上乗せも試したかったが、走っているせいでミノタウルスの間合いに入るまでにもうほとんど時間がないから諦めた。
ミノタウルスは既に俺らに気づいていて、斧を持ち上げて構えていた。
俺がさらに加速して間合いに入ると同時にミノタウルスが斧を振り下ろしてきたが、右にステップして避け、ちょうどいい位置に下がっていたミノタウルスの左頬を殴りつけると、硬い肉を抉り取るような感触が拳から伝わってきた。
昔はあの斧がめちゃくちゃ速く感じたけど、慣れれば余裕を持って躱せるな。
ミノタウルスは鼻から下を失ったうえに首の向きをグジリと嫌な音を立てて強制反転させたから、さすがに死んだだろと判断して、俺はそのまま先に進んだ。
あとはイーラが処理するはずだ。
その後は猪みたいな顔をした人型マッチョマンが3体いただけで、下り階段に着いてしまった。
たぶんあれはオークの進化系とかだったんだろうけど、ミノタウルスより弱かったから、たいした経験値は得られていないだろう。
地下40階は基本がオークでたまにミノタウルスって感じか。前回来たときはオークしかいなかったしな。
「「え?」」
地下40階は前にマップ埋めは終わらせているから、階段に着き次第そのままの勢いで下っていったら、後ろから間の抜けた声が聞こえた。
階段を下りきってから振り返ってみたが、誰かが怪我をしてるとかではなさそうだから、無視して走ったまま地下41階を進んでいった。
「セリナ、ここからは初めてだから、何か違和感あったりしたらすぐに教えてくれ。とりあえずマップを埋め次第下りてく予定だ。」
「はい。」
あとはクレハがレベルカンストの自己申告をしてくるまで、魔物を殺しながら下りていくか。
隠し部屋でも見つからない限りはノンストップだな。
早速、地下41階の魔物が5体同時に現れた。
1メートルはありそうなくらいデカい芋虫のような見た目をした緑色の魔物か。
俺らには気づいているようだが、あまり動きは早くなさそうだな。
じゃあ………終わったみたいだ。
俺がセリナと何体ずつ分けようかと考える前にセリナが加速して近づき、輪切りにしていきやがった。
いや、それだけなら楽ができたからありがたいくらいなんだが、セリナが走りながら振り返ってドヤ顔してきやがったのがなんかイラッときた。
べつに挑発されたわけでも喧嘩を売られたわけでもねぇのはわかっているんだが、自然と俺の走る速度が上がり、魔物を求めてさらに奥へと進んでいった。