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248話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

248話

さっき朝食を食い終えて、食後の休憩にもう一度寝ようかと思っていたのに、なんで俺はこいつの相手をしなきゃいけねぇんだ?

「あんたあの子たちになにしたのよ!?」

出会って第一声がこれだ。面倒くさそうこの上ないな。

急にジャンヌがやってきたらしいんだが、アリアたちじゃ対応出来ないってことで俺が呼ばれ、渋々応接室で対面している。

ジャンヌは本気で怒ってる感じではないが、なぜかちょっと興奮してるみたいだ。

というか、こいつは馬鹿なのか?訓練のために俺にあの2人を預けたのを忘れたのか?

「なにって訓練したんだが、忘れてたのか?」

「そういうことじゃないわよ!なんであの子たちはあんたの宗教に入ってるのかって聞いてるの!」

そんな質問はされてねぇし。

というかそもそもあの2人がリキ教に入ったことを俺が知らなかったし。

「いや、知らねぇよ。そんな話を俺は聞いてないし、勘違いじゃねぇのか?」

「え?そうなの?でも、2人揃ってあなたのとこのマークに似てるネックレスをしてたから、私も見間違いだと思って確認したわよ。そしたらリキ教に入ったとかいってたのよ!おかしいじゃない!絶対あんたが何かしたんでしょ!?」

一瞬落ち着いたかと思ったら、またヒートアップしやがった。

というかなんでこいつ1人できたんだよ。宥め役のピグレも連れてこいよ。

「んなこといわれても、俺はあの宗教関係には一切関わってねぇから知らねぇよ。嫌われるようなことはした覚えがあるが、リキ教に入る理由は見当もつか…。」

そういや俺の庇護下にいれば強くなれるんだったか?だとしたら案外それが理由かもな。

ただ、これを教えていいのかわからねぇし、教えたとしてもこいつが自分のとこの仲間が俺の庇護下にいることを許容できるとは思えねぇからいわねぇ方が良さそうだな。

「嫌われることってなにしたのよ!?」

今度は別のことに突っかかってきやがった。

めんどくせぇ…。

「訓練したんだから嫌われても仕方ねぇだろ。」

「意味がわからないのだけど!?」

本当に理解できてない顔をしているが、こいつの訓練はそんなに優しいのか?

それとも“乙女の集い”のやつらはマゾ…いや、やる気が有り余ってるやつばかりなのか?

まぁ乙女の集いのことは知らねぇし、そこまで興味もないからどうでもいいんだが、訓練内容はわざわざクレハに契約させてまで秘密にしてるんだから、俺が余計なことをいうべきではないだろう。

「訓練内容は秘密らしいから、俺は答える気はねぇよ。宗教に関しても俺は知らねぇから、本人から聞けよ。もしくはグループ内でリキ教に入るのは禁止とかにすればいいんじゃねぇか?」

「べつに宗教に関しては周りに迷惑をかけなければ自由にさせてあげたいんだけど、いきなりあなたのところの宗教に入るなんておかしいじゃない?」

「それは俺も同意見だが、うちのは改宗する必要がないし、決まりごとなんかもたぶんないからとりあえず入ってみたとかじゃねぇか?」

俺自身が日本にいた頃から宗教に興味がないから、なんで入ったかなんてわかるわけがない。とくに俺は神でも英雄でもないから、奴隷や村人以外でリキ教に入るやつらの意味がわからん。

「アリアちゃんならわかるかしら?」

「あぁ、アリアなら知ってるかもな。だが、アリアと話すならピグレも連れていけよ。」

「なんで!?」

「お前が嫌われたいならべつにかまわねぇけど、アリアと敵対したらこの村から追い出すからな。」

「それは困る!午後だとピグレが授業あるから、その前にアリアちゃんに聞きに行こうと思うんだけど、アリアちゃんって今はどこにいるの?」

「知らん。」

「いや、確認してよ!」

「めんどくせぇな。」

「それくらいいいじゃない!以心伝心の加護を付与したアクセサリーがあるんでしょ?」

俺はため息をつきながら、仕方なく以心伝心の加護でアリアに連絡を取った。

どうやら今は屋敷内にいるらしく、これから来るとのことだ。

これからだとピグレがいないんだが、俺がいるからまぁいいか。

「ここに来るらしいからちょっと待ってろ。」

「じゃあ急いでピグレを呼ばなきゃ!」

「俺がいるからいいよ。」

ジャンヌが指輪に魔力を通そうとしたのをやめさせた。

アリアがすぐに来るってのにピグレが来るまで待つのは面倒だ。

まぁいわれたことを守ろうとするのは偉いというか真面目だなとは思うけどな。

「いいの?アリアちゃんに嫌われたりしない?」

「今みたいに前のめりな話し方をしなきゃ大丈夫だろ。…たぶん。」

「気をつける。」

凄え真面目な顔でジャンヌがいった。

そんなにアリアに嫌われたくねぇのかよ。

まだ仲良くもない相手にここまで嫌われたくないとか思う意味がわからん。

まぁ俺はアリアにだいぶ救われてるから、嫌われたくない気持ちは理解できなくないが、俺はそこそこの付き合いがあるからこそだしな。

「それと、2人の訓練ありがとね。」

話が終わったから、これからアリアが来るまで無言タイムかと思ったら、ジャンヌがいきなりお礼をいってきた。

意外だな。

いきなり文句をいいにきたから、預けたことを後悔してんのかと思ってた。

「交換条件だったから、礼をいわれるようなことじゃねぇよ。」

「私がいいたいからいってるだけ。これでも本当に感謝してるのよ。クレハはちょっと悩んでたみたいだったから、息抜きにここに連れてきてみたんだけど、あなたの訓練のおかげで何か掴めたみたいなの。だからありがとう。」

この瞬間が初対面だったらドキッとしたかも知れないほどのいい笑顔でまたお礼をいわれた。だが、残念なことに俺がこいつに好意をもつのはしばらくは無理だろうな。嫌いなわけではないが、性格が残念だし。

それと、どうやらクレハは冒険者をやめたいとはいいださなかったみたいだ。

あれだけやられて心が折れないってのは凄いを通り越してやべぇな。

でも、そのおかげでこいつと敵対することにならずに済んだし、良かったっちゃ良かったか。

こいつが本気でキレたら、たぶんまだ勝てないだろうし。もちろんタダでは負けるつもりはねぇけど。

「なら受け取っておく。」

俺がジャンヌに答えたところで、扉がノックされた。

「…アリアローゼです。」

「入れ。」

なんかジャンヌがソワソワしてるんだが。

アリアが入ってきて一礼し、俺の後ろに立とうとしたから、隣に座らせた。

「…わたしに聞きたいこととはなんですか?」

「クレハとユリアのことなんだけど、2人がリキ教に入った理由って知ってる?」

俺が前のめりになるなといったからか、俺のときとは全く違く、普通にアリアに質問していた。まぁいわなくてもこいつは俺とアリアで態度が違っただろうけどな。

俺がそんなことを考えていたら視線を感じてアリアを見ると、アリアが俺を見ていた。

話していいかってことか?

そんな確認を取られたって、そもそも入信してたことを知らなかったから、何を気にしてるのかすらわからねぇよ。

「アリアの判断で好きにすればいい。いいたくなきゃ無理にいう必要はねぇし、隠す必要がないなら教えてやれ。」

「…はい。クレハさんとユリアさんがリキ様を怖がっていたので、リキ様は仲間には優しい方だと丁寧に伝えたら入信しました。」

…は?

「…え?」

一瞬意味がわからねぇと思ったら、ジャンヌも同意見だったのか、呆けた顔で疑問の声がジャンヌの口から漏れた。

「2人に怖がられるって何したの?」

さっきの笑顔は見間違いだったのかもしれないと思えるほど怒りを隠せていない笑顔を俺に向けて、ジャンヌが質問してきた。

「ただの訓練だよ。」

「ユリアが怖がるのはまだ理解できるわ。でも、クレハが怖がるなんてよっぽどだと思うのだけれど?」

「…リキ様には少しだけ2人の相手をしてもらいました。ただ、リキ様はクレハさんにたいして本気は出していません。たぶんですが、圧倒的に強い相手と戦うことに慣れていなかったためかと思います。グループの方針に口を出すべきではないかもしれませんが、強くしてあげたいと思うなら、ジャンヌさんが本気で相手をしてあげる機会を作ってあげた方がクレハさんのためになると思います。」

アリアが返事を引き継いだから、ジャンヌが困った顔をした。どうやらアリアにはあの笑顔を向けるつもりはないみたいだな。

ここまで対応があからさまに違うといっそ清々しい。

それにアリアのいい方もうまいな。

たしかにクレハにたいしては本気をぶつける前に終わったからな。ユリアには自分で出来る強化をほぼ全て使って腕を引きちぎっちまったが。

あとは威圧でほとんど動けてないところを痛めつけたってのもいってねぇし。

まぁそんなこといったら間違いなく面倒なことになるから正しい判断だと思うけどな。

「ありがとね。ちょっと訓練方法を見直してみることにするわ。」

こいつは基本的に素直だよな。

冒険者の最上位にいるってのに人にいわれたことをちゃんと聞けるってのは凄いと思う。

「満足したか?べつに入信を強制しちゃいねぇし、宗教に入らなくたって俺は2人にはなんもしねぇから、お前がやめさせたいならやめさせてかまわねぇからな。」

「いいえ。2人が決めたのなら、好きにさせるわ。宗教は心の拠り所のためにあるようなものだと私は思っているから、今の2人に必要なら私が口を出すことではないからね。教えてくれてありがとう。まだしばらくの間私たちはここにいるから、よろしくね。あっ、そういえば新しく2人“乙女の集い”に入ったの。今度紹介するわね。」

ジャンヌはなぜか俺を見ながら話しているけれど、“乙女の集い”のメンバーをわざわざ紹介されるような仲ではないと思うんだが。

学校に通うからよろしく的な意味か?

いや、社交辞令か。

「あぁ、またな。」

「またね。」

ニコリと笑ったジャンヌが席から立ち、アリアに小さく手を振ってから退室していった。

ジャンヌが乗り込んできたって聞いたときはさすがに昨日はやり過ぎたかと思ったが、問題なかったみたいだな。

怖がられるくらいは許容範囲だ。

俺だって訓練で腕を引きちぎられたら、そいつを怖いと思うだろうし。

でも2人は潰れなかったみたいだし、10日もかけた訓練が無駄にならなくて良かった。

これでしばらく俺は暇になるし、せっかくだから俺も学校に通ってみるかな。