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253話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

253話

合格者が30人近くいたからか、門にはそこそこの列ができていた。

俺のせいで出遅れた俺とリスミナは、その最後尾に並ぶことになったから、地味に待たされた。

1人ずつ本登録をしているから、時間がかかってんだろうな。

その待ち時間で1つ気づいたことがある。

今まで文字が読めなかったから気づいてなかったんだが、門の上部の壁に描かれていたのは模様ではなくて文字だったらしい。

『問題を起こした者の命は保証しない』

そんな物騒なことが書かれていた。

俺はこの村のことを知っているから気にしないが、他のやつらはよくこんなことを書いている村に入ろうと思うな。

問題を起こすつもりがなくても俺なら出来れば入りたくねぇと思うわ。

あとは門の横に立てられた看板みたいなやつに生徒は貴族とか平民とか関係ないから偉ぶらず、先生のいうことは聞けってことをオブラートに包んで書いてあった。

まぁこんなとこにわざわざ貴族が来るとは思えないが、貴族だからって調子に乗ってるやつがいたら面倒だしな。

しばらくして順番が回ってきたから先にリスミナに行かせ、続いて俺の番となった。

門番だけではなく、門の受付も獣人だけみたいだ。獣人部隊とやらに選ばれてるやつらは犬とか猫が多いけど、他にも兎だったり、よく見ると犬猫じゃなくて狼だったり虎だったりと、獣人といってもいろんな種類がいるから、見ているだけでもちょっとおもしろい。

今日の受付の1人は毛量の多い犬タイプの獣人なんだが、椅子と腰の間からフッサフサの尻尾が見えたせいで無性にわしゃわしゃしたくなったけど、村のガキたちにいきなりそんなことしたら変なやつだと思われるから我慢だ。というか、獣人の尻尾を触るのはケツを触るのと同じ感覚だと聞いちまったから、いくら同性でも触るわけにはいかないんだがな。

そもそも今はテキーラなんだから、尻尾でなくて獣耳だろうが、いきなりモフリ始めたら捕まるだろ。

「通行証の提示をお願いします。」

俺がゆっくりと揺れるフサフサの尻尾に目を奪われていたら、受付が声をかけてきた。

通行証ってのはこのカードのことか?まぁそれ以外にサラからは何も渡されてないから、カードを受付に渡した。

「本日試験を受けて合格された方ですね。でしたら本登録しますので、この水晶に手を乗せてください。」

冒険者ギルドに置かれている程度のサイズの水晶が受付のところに置かれていたから、指示通り手を乗せようとしたらイーラが念話を送ってきた。

「え?いいの?」

イーラが何に疑問を持ったのかよくわからなかったから、そのまま水晶に手を乗せちまったけど、なんかマズかったか?

「え?イーラさん?」

そういうことか。この水晶がステータスチェックだってことを失念してた。

「お前は何も見なかった。いいな?」

「…え?あっ、はい。もちろん何も見ていませんし、邪魔するつもりもありません。確認のためお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

こいつらは俺をイーラと勘違いしてるかもしれないが、口止めすれば関係ないだろ。

イーラを敵に回そうなんてやつはいないだろうからな。

「テキーラだ。」

「かしこまりました。少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

「あぁ。」

なんか言葉遣いがより丁寧になった気がするが、イーラって村のガキどもにそんなに改まった対応される立ち位置なのか?ちょっと意外だな。

「ねぇ、これどうやるんだっけ?」

「バカ!ちゃんと教わっただろ。」

「だっていざ対応すると緊張しちゃって全部忘れちゃったよ。」

「とりあえずステータス移して、そのあと今朝渡されたあのケースに入れて、魔法陣の真ん中に名前を書くんだよ。それで名前だけ上書きされるはず。」

「そうだった。思い出せたけど、手が震えて書けないから変わってくれ。」

「無理だよ。俺も間違ったらと思ったら震えが止まらなくなっちゃったし。」

目の前で受付の2人が小声で話しているが、周りが静かだから聞こえてんぞ。

それにしてもイーラってかなり怖がられてんだな。本人は2人にいわれてることを気にしてないみたいだからいいけど、いくら小声でも本人目の前にして余計なことはいわない方がいいと思うけどな。

けっきょく最初に対応してた方が本登録の続きをし、カードを渡された。

「こ、こちらが通行証になっております。紛失いたしますと試験からやり直しとなってしまいますので、お気をつけください。」

渡されたカードを眺めると、表の端っこに小さくカンノ村通行証と書かれているだけのシンプルな作りだった。

「俺が通っていることは誰にもいうなよ。」

「僕は誰にもいいません。ですが、通行の際に毎回ステータスチェックをすることになるので、門番内での共有はお許しください。」

「それはかまわない。だが、余計なやつにはいうなよ。あと、同じ門番だとしてもセリナにはいうなよ。」

「かしこまりました。」

ここにいるやつらはみんなイーラを怖がってるみたいだから、たぶん誰にもいわないだろ。

仲間を恐怖で縛るのは好きじゃねぇが、俺が学校に通ってる少しの間だけだから許してくれ。

登録は終わり、口止めも済んだから、俺はリスミナのところに移動した。

「ずいぶん時間がかかったね。私のときはステータスチェックしてすぐ終わりだったのに、何かあったの?」

「俺を担当した子が操作に慣れてなかったらしくて、時間がかかっちゃったみたい。」

「操作?私のときはそもそも何かを操作してる感じはなかったけど、私が見てなかっただけなのかな?」

「俺もわかんないけど、そうかもね。」

俺らは話しながら噴水広場になっているところまで進み、とりあえず何をすればいいのかすらわからなかったから、案内のところに向かうことにした。

俺はもともと学校内のことをだいたい知っていたからとくに確認とかしなかったが、リスミナは受付でちゃんと次は案内のところに行くように聞いてたらしい。しっかりしてんな。

噴水広場をこえて、総合案内のようなものがあるという建物に入った。

中は広々としていて、くつろげるようにいくつかのテーブルが用意されている。

知ってるやつが目に入ったけど、今の俺はテキーラだから、見なかったことにしよう。

壁は掲示板になっているのか、紙が貼ってある場所が数ヶ所あり、どこか冒険者ギルドに似せたような雰囲気がある。

ただ、見た目は似てても利用者がみんな静かにしているから、冒険者ギルドとは全くの別物だ。ここでも勉強してるっぽいやつがいる。やっぱり大人になってるのにわざわざ学校に来るだけあって、みんな真面目に勉強してるみたいだ。

受付には俺ら以外の合格者たちが並んでいたから、俺はリスミナと受付の最後尾に並び、順番を待った。

「お待たせしました。どうしましたか?」

俺らの順番がきて、受付から声をかけられた。

「あの、今日合格したんですけど、この後どうしたらいいですか?」

リスミナが対応してくれたんだが、俺らはまだどんなコースがあるのかどころか、基本的な利用方法すらわからないから、曖昧な質問になってしまった。

「あちらの壁に本日から始まる授業が貼り出されています。その紙に集合場所が書かれているので、この1日の半分を計れる大きな砂時計の砂が落ちきった後に始まるこちらの砂時計が落ちきるまでに集まってください。登録などは必要ないので、直接向かってください。少しでも遅れた場合は参加できませんので、お気をつけください。村の地図はあちらの壁や外にも何ヶ所か用意してあります。見方がわからなかったり、迷ってしまわれた場合はこの腕章を着けている者に声をかけてください。」

めちゃくちゃデカい砂時計の砂があと少しで落ちきりそうだ。もうすぐ太陽が真上にくる頃だろうから、昼を示す砂時計っぽいな。その隣のまだ始まってない砂時計はそこそこ大きいが、何分くらいを計るのかわからねぇから、今日はこの砂時計が見える位置にいた方がいいかもな。

受付の腕章に目を向けるとウチのグループマークが描かれていた。俺が腕章を見ていたことに気づいた受付がわざわざ腕章を見やすいように前に出してきてくれて、マークの下にカンノ村治安維持部隊と書かれているのが見えた。

「問題ごとが起きた場合も私たちに知らせてください。私たちは子どもで、リキ様直属の戦闘要員の方ほどの実力はありませんが、一般の冒険者の方々には負けない程度には鍛えています。なので、遠慮せずに声をかけてください。」

「ちなみにサラ先生はここではどのくらいの強さになるんですか?」

俺直属の戦闘要員とかは意味がわからなかったが、一応受付からの説明が終わったようだ。だから次はコースが書かれているらしい掲示板に向かおうかと思ったら、隣のリスミナがいきなり質問をした。

「サラ先生はリキ様直属の戦闘要員ですので、同じく直属の戦闘要員である隊長と副隊長を除けば、私たち治安維持部隊の誰よりも強いと思います。ですが、戦闘要員の中ではあまり戦闘に関わらないので、失礼ながら戦闘能力だけでいうなら下の方かと思います。」

受付が凄くいいづらそうにしながらもちゃんと答えた。

こんなことまで答えてくれんだな。しかもあくまで本人の予想で答えたんだろうが、だいたい合ってると思うし、よく見てんだな。ただ、治安維持部隊の隊長と副隊長が誰なのかはわからねぇが。

「あの強さで下の方って…もしかしてリキさんよりも直属の戦闘要員の人の方が強いのかな?」

「リキ様より強い方を私は見たことがありません!」

リスミナはべつに質問したわけではなく、独り言のように呟いただけっぽいが、受付が大きな声を出して答えてきたせいでめちゃくちゃ驚いていた。

この建物内に人はけっこういるが、みんなが静かにしているから、受付のガキの声がかなり響いた。

そのせいで、まるで時間が止まったかのように周りのやつらの動きが止まっていた。ただ1人を除いて。

否定したいけど、今の俺がいっても逆効果だろうな。

「あら?それは私よりも強いということかしら?」

「はい。」

1人だけ動きが止まるどころかこっちに近づいてきていたのはわかっていたが、今の俺は知り合いじゃねぇから見ないようにしていたのに、向こうから絡んできやがった。

こいつは人に絡むのが趣味なのか?

聞き捨てならないとばかりに笑顔で近づいてきたジャンヌの質問に受付は即答しやがった。

「ふ〜ん、そう。なら今度、試合をしてもらおうかしら。子どもたちがここまでいうのだから、きっとあいつは逃げたりなんてしないでしょうしね。」

「リキ様は忙しいので、セリナさんに完膚なきまでに負けたような人の相手をする時間はありません!」

あっ、ジャンヌの笑顔が引きつった。

周りのやつらもザワザワとしだした。これは変な噂が流れそうだな。そんなことになったらジャンヌが怒って、また屋敷に来るパターンだろうな。めんどくせぇ。

「えぇ、たしかに油断していたとはいえ、セリナちゃんに負けたことは認めるわ。でも完膚なきまでにではないわよ?」

「大勢の人の前で裸にされたと聞いたのですが。」

「下着はつけてたわよ!」

「それはセリナさんの優しさでは?」

「…。」

ジャンヌが黙っちまった。

それに反比例するように周りの喧騒が激しくなる。

これは一旦離れた方が良さそうだな。

「おい、リスミナ。面倒なことになりそうだから、一旦外に出んぞ。」

「「「…え?」」」

俺が素の話し方でリスミナに声をかけちまったから、リスミナが驚いたのは仕方ないと思う。だが、なんで受付の2人までが驚いた顔でこっち見てんだ!?こいつらの前で俺はまだ喋ってなかったから、違和感もなにもないと思うんだが。俺の喋り方自体が変なのか?

「ジャンヌさん。ごめんなさい。失言しました。撤回するつもりはありませんが、ジャンヌさんを怒らせるいい方をしてしまってごめんなさい。悪いのは私です。どうか、リキ様に怒るのはやめてはもらえないでしょうか?あっ、こんなところから謝ってもダメですよね?すぐ床に頭をつけますので…。」

受付のガキがなぜか急に態度を変え、受付カウンターを飛び越えてジャンヌの横に立ち、そこから流れるような動作で土下座をしようとしたところで、ジャンヌが咄嗟に止めた。

「ちょっと待って!いきなりどうしたの?べつに怒ってないから、ね?土下座なんてしないで。ちょっと話に混じりたかっただけだから。大丈夫よ。あいつに会っても今日のことはいわないから。お願いだから泣かないで、ね?私もごめんね。」

なんかいきなりわけわかんねぇ状況になったんだが。

ついていけてないのは俺だけかと思ってリスミナを見てみたら、リスミナも呆気にとられた顔をしていた。

周りを見渡しても、ほぼ全員が呆けた顔をして見ている。

もしかしたらガキ相手にジャンヌが威圧でも使ったのかもな。大人気ねぇやつだ。

「なんか話も終わったみたいだし、俺たちは掲示板を見に行こうか。この後お昼も食べなきゃだしさ。」

「え?…え!?……あ、うん。そうだね。」

リスミナに二段階で驚かれ、俺とジャンヌたちを交互に数回見たあと、同意してくれた。

土下座しようとする受付とそれを止めようとするジャンヌなんだが、側から見ると抱き合っているようにも見える。だから、リスミナは仲直りしたと勘違いしたのかもな。

今のは挑発した受付が悪いから、しっかり怒られて反省すればいい。それも勉強だ。

ということで、あとはジャンヌに任せた。と心の中で思いながら、これ以上面倒なことにはならなそうだから外に出るのはやめ、リスミナと掲示板に向かった。