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254話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

254話

コースはたしかにいろいろあった。

今日始まるやつだけでも冒険者基礎以外に商業基礎や貴族文字なんてのもあった。

冒険者基礎は5日間みたいだが、開始日が毎日あるみたいで、他のコースのように一度始まったコースが終わるまで待つ必要がないみたいだ。それだけ人気のあるコースなんだろう。

既に始まっているコースの開始場所なんかが張り出されている掲示板が近くにあったからそっちも見てみたが、魔法基礎やら農作業やら言葉遣い、他にも冒険者や魔法の応用コースなんかもあるみたいだな。

アリアが神薬なんて作ってたから調合系のコースもあんのかと思ったが、あれは個人的に作っただけか。

いろいろ一度ずつ見てみたい気持ちもあったが、基礎の決められた日数を続けて受講して卒業しないと応用のコースは受けられないっぽいから、とりあえず冒険者基礎を受けることにした。リスミナは最初から冒険者コースを受けるつもりだったみたいだから、午後の授業も一緒みたいだ。

そこまで決めた頃にめちゃくちゃでかい砂時計の砂が落ちきった。そしたらめちゃくちゃでかい砂時計が自然と回転を始め、それに合わせて授業の開始を知らせる砂時計を受付が手動でスタートさせた。

砂の落ちる速度からしてまだまだ時間がありそうだったから、俺はリスミナと飯を食いに行くことにした。

俺らが受付のある建物から出るときにはジャンヌが起こした騒動は既に収まっていた。

ジャンヌが子どもに強く当たることはないだろうと知っていた俺は全く気にしてなかったんだが、リスミナはけっこう心配していたみたいで、俺が掲示板に貼られたコースを見ていたときもチラチラとジャンヌと受付の2人の方を見ていた。

だから、飯食う前に収まって良かったな。これで気兼ねなく飯を楽しめるだろう。

俺たちは噴水広場に隣接している食事処にやってきた。

一応時間がわかるように受付の近くにいた方がいいだろうと思っていたが、どうやら食事処にある砂時計も時間を合わせてあるらしい。多少のズレはあるだろうけど、まぁこれを目安に早めに教室に向かえばいいだけだから問題はないだろう。地図を見て場所は把握してるしな。

「リキさんって有名なだけあってお金持ちなんだね。」

料理の注文を終えて待っている間に、店内を見回していたリスミナがしみじみといった感じで呟いた。

一瞬そんなことねぇからってリキとして答えそうになっちまったが、咄嗟に口を噤み、一拍置いてから答えた。

「…どうしてそう思ったの?」

「こんなに大きくて充実した学校を作れるのもそうだけど、こんなにたくさん貴重な砂時計を用意出来るなんて、お金も人脈もないと無理だろうからさ。」

たしかにこの規模の学校を作る金があったことには俺自身でも驚きだが、砂時計が貴重?100均で売ってた気がするんだが。

「砂時計って貴重なの?」

「前にパーティー組んでた人がお金に余裕があるときに買った砂時計を自慢してたのを聞いただけだから、私も詳しくは知らないし、本当なのかもわからないけど、元パーティーメンバーが買ったのはサラ先生が休憩時間を計るために使ってた大きさくらいの砂時計で金貨1枚もしたらしい。」

…は?5分だか10分計るだけの砂時計で金貨1枚!?

俺が驚いているのを見ながらも、リスミナはそのまま話を続ける。

「それだけ高価なものだから、取り扱ってるのも大きな商会だけらしいし、私たちみたいな冒険者じゃ知らないのが普通だと思うよ。でも高いだけあって、常に同じ時間を計ってくれるんだって。真似して作ろうにも作り方を知ってるのはいくつかの国の王族とその王族お抱えの細工師だけらしいから、作れないらしいよ。たまに偽物が売られてることもあるらしいけど、偽物は途中で砂が詰まったり、時間が一緒じゃなかったりするから、ちゃんとした商会以外から買わないようにって元パーティーメンバーにいわれたけど、そもそも冒険者が使う機会なんてないからそんな高いの買わないよね。」

最後は軽く笑ってしめくくったが、そんな高価なものをこんな大量に用意してんのか!?

金貨1枚とかならイーラやセリナが持ってるのを見たことあるから買えなくないかもしれないが、小さいので金貨1枚もするんなら、あの馬鹿でかい砂時計は買える値段じゃねぇだろ。

アリアなら自作する可能性もあるが、作り方がわからないものはさすがに見ただけで真似しては作れないだろうし。

…いや、リスミナがいってることが本当なら、作り方を知ってる可能性があるやつが近くにいたな。

たぶんローウィンスが関わってんだろう。

まぁ俺は納得いったが、これを変装してる俺が説明するのはおかしな話だから、なんと答えるべきかと悩んでいたら、まるで空気を読んでくれたかのように注文した料理がきた。

今までは字が読めなかったから、こういったのが食べたいってリクエストしてアリアに選んでもらったり、店のオススメにしてもらっていた。だから、今回がこの世界にきて初めて自分で選んだ注文かもしれねぇ。

べつにたいしたことではないんだが、俺にとってはちょっと特別感のある料理だ。

記念すべき初めて注文した料理が目の前に並べられた。

俺が頼んだのはステーキとサラダとパンとスープとトマト系のパスタとパイ生地で包まれたミートドリアだ。

パイ生地で包まれたミートドリアはあのなんちゃって目玉焼きを出してたところにあったメニューなんだが、あのときはアリアたちに好きなのを食っていいといった手前、アリアたちが頼んだのをもらうのも悪いと思って食べれなかったから、ずっと気になってたんだよな。

だからといってちょっと頼みすぎた感があるが、パスタは日替わりみたいだったから今日を逃したら二度と食べられない可能性があるし、スープとサラダは外せない。メインの肉は絶対頼むつもりだったから、セットのパンも頼みたくなっちまって、いざ料理が運ばれてきたら2人席の8割近くを占領しちまった。

俺が馬鹿みたいに気になったメニューを全部頼んだのに対して、リスミナはカレーとバターロールっぽいパンが2つだけだ。ちなみにここのカレーは前にアリアが作ってくれたスパイス効いてる赤黒いカレーだ。

日本のカレーに馴染んでるとカレー?と思っちまうかもしれねぇが、誰がなんといおうがこれがこの世界…いや、カンノ村のカレーだ。

アリアが俺のリクエストに応えるために試行錯誤して作ってくれたんだからな。誰にも文句はいわせねぇ。

まぁそこかしこからこのカレーの匂いがしてるから、けっこう人気あるみたいだし、そんな心配をする必要はなさそうだがな。

「リスミナはそれで足りるの?」

「今日は午前中ほとんど動いてないからね。それにお昼は携行食で済ませることも多いし、このくらいで十分かな。テキーラくんはたくさん食べるんだね。」

リスミナはぎこちない笑顔を向けてきた。

普通の一食で腹いっぱいになるやつからしたら、この量は異常に見えちまうかもな。

うちのやつらはめちゃくちゃ食うから、この程度の量で驚かれるのはなんか新鮮だ。

「俺もダンジョンとかに行ってるときは携行食で済ませちゃうけど、ここは気になる料理が多くて、ついつい大量に頼んじゃったよ。」

「それは私も思った!他で聞いたことないメニューが多いから気になるよね!このカレーっていうのも聞いたこともなかったから頼んでみたんだけど、凄くいい香りなのに見た目がちょっと怖いね。」

カンノ村のカレーは赤黒いからな。初めて食べるものが赤黒いと躊躇する気持ちはわからなくはない。

だからといって俺がそのカレーが美味いと知ってるような発言をするのもおかしいから無難に答えるべきだろ。

「それだけ香りがいいんだから、美味いのは間違いないと思うよ。それじゃあ、いただきます。」

「テキーラくんも勇者様の真似とかするんだね。」

俺が飯を食い始めたら、リスミナが微笑みながら意味のわからないことをいってきた。

答えるために、とりあえず口に含んだ分のサラダを飲み込んだ。

「勇者の真似?」

「カテヒムロの勇者様が「いただきます。」っていってるのをみんなが真似して一時期流行ってたんだけど、違うの?」

勇者の影響力、凄えな。

「俺の場合は親や周りが使ってたから、それが普通になってるだけだよ。」

「そうなんだ?勇者様は昔からいるみたいだし、その影響を受けた地域があってもおかしくないもんね。」

日本のことには触れずに、でも嘘にならないように答えたら、リスミナは勝手にいいように解釈してくれた。おかげで余計なことをいわずにすんで助かった。

俺は会話をしながらも気にせず食べすすめていたんだが、リスミナは話の区切りがついた今、やっとスプーンを持って、カレーをすくって口に含んだ。

「っ!?ゲホッゴホッゴホッゴホッ…。」

そしてむせて吐き出した。

汚ねぇな。でも、俺の飯にはかかってないようだし、あとでテーブルを拭けば問題ねぇか。

かなりスパイスが効いてるカレーだから、むせるのは仕方ないとスルーして飯を食ってたんだが、いまだに咳が止まらないリスミナが少し心配になってきた。

『ハイヒール』

「大丈夫?」

意味があるかはわからないが、気休め程度に回復魔法をかけながら声をかけたら、そのおかげなのかやっと治ったようだ。

「思ったより刺激が強くて、ビックリして変なところに入っちゃった。それより、テキーラくんのご飯を汚しちゃったよね!?ごめんなさい!新しいの頼むからちょっと待って!」

「気にしないでいいよ。食べ物にはかかってないから。」

「え?」

「あぁ、俺は目はいいからさ。俺の目で見えないほど細かいのならべつに気にしないからいいよ。」

相手が小汚いやつなら直接かかってなくてもなんか嫌だが、そんなやつとはそもそも一緒に飯を食わねぇしな。

俺が気にせず食い続けているからか、リスミナはどうしたらいいかわからずオロオロしていた。

1分くらいオロオロとしていたリスミナは、少し落ち着いたのかアイテムボックスだと思われる空間からタオルを出してテーブルを拭き始めた。

その後、何事もなかったように食べ始めたが、急に驚いた顔で俺を見てきた。

そんなにカレーが美味かったか?気持ちはわかる。

「今、ハイヒール使ってなかった!?しかも詠唱なしで!」

どうやらカレーに驚いたわけじゃなかったみたいだ。

「咳してたから聞こえてなかっただけじゃない?ちなみに俺は魔導師だから、ハイヒールくらいは使えるよ。」

「魔導師!?強いんだろうなとはなんとなく思っていたけど、そんなに凄い人だったんだ!?いや、でも魔導師だからってヒール系は全員が覚えられるわけじゃないはずなんだけど…。」

とりあえずすっとぼけてみたが、リスミナは別のことに疑問を持ったようだ。

ただ、そんなことをいわれてもどちらもSPで取れたものやその結果に得たものだし、何かしら取得条件があって、俺がたまたま満たしてたならラッキーだってだけだから凄くもなんでもない。

だから返答に困って、あえて返答をせずに食べ続ける選択肢を取ることにした。

リスミナも返答がないことを気にすることなく食事を再開し、雑談を交えながら俺らは昼休憩を過ごした。