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271話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

271話

サラが全員から見える位置で立ち止まると、先に広場にいた村人たちがサラの方に近づいていった。だが、なぜかアリアたちと一緒に来ていたセリナとヴェルは離れていった。

今回はヴェルも参加するのか?

しばらく2人を目で追っていたんだが、どこに行くつもりだ?

…俺が買い与えたのにこんなことをいうのもなんなんだが、やっぱりビキニアーマーとか生で見ると違和感が凄え。いや、ヴェルに似合ってはいるけどさ。

「今日はパーティーでの戦闘訓練をしてもらうのです。これから声をかけられた人は指示に従ってほしいのです。」

サラが話し始めたから、セリナとヴェルのことを気にするのはやめた。

指示を出すようなことをいったから、サラがパーティーを決めるのかと思ったんだが、ちょっと違うみたいだ。

集まった冒険者をサラが見て回りながら、声をかけている。そして、声をかけられたやつらはセリナたちの方に向かっていった。…どういうことだ?

しばらくするとサラは俺たちのところに来て、一人一人を観察するように視線を送った。

「あなたとあなたとあなたはあちらにいるセリナさんとヴェルさんのところに行ってほしいのです。」

サラは俺とデュセスとクレハに対して、セリナたちのところに行けと指示を出した。

意味はよくわからなかったが、とりあえず指示に従って歩いて移動を始めた。

「クレハに背中をツンツンされてるよ〜。」

しばらく歩いて周りに人がいなくなったところでイーラからの念話がきた。

イーラを纏っているせいかなんも感じなかった。いや、イーラを纏っていなくても革鎧の上からじゃ気づかないだろと思いながら振り向くと、クレハが俺を見ていた。

「…もしかしてイーラさんですか?」

予想外のことをいわれて目を細めたら、睨んだと勘違いされたみたいだ。クレハが一瞬体を震わせてから、ネックレスを強く握りしめた。

いや、たしかにちょっと目に力は入っちまったが、そこまで怯えるほどの威圧はかけてねぇぞ?単純になんでわかったのかを疑問に思っただけだ。

「よくわかったな。他のやつも気づいてんのか?」

「いえ、たぶん気づいてないです。イーラさんに似た気配を感じていただけで確証がなかったので誰にもいってません。」

イーラの気配とかわかるもんなのか?オーラみたいな?まぁそんなものが本当にわかるなら、表面はイーラだからバレても仕方ねぇのか。

「なんで嘘をつくの?あなたは“乙女の集い”と仲がいいと聞いている。クレハは『無邪気』のイーラを知っているということはそれなりに事情を把握しているはず。それなら嘘をつく必要はないと思う。」

「嘘ですか?」

「そう。テキーラはイーラではない。リッ!?」

デュセスだけを視界に入るようにして『威圧』を使ったら、凄い顔で言葉を区切り、勢いよく離れていった。

べつにクレハにバレる分にはかまわねぇが、誰の耳があるかもわからねぇんだから、そろそろ学習してくれという意味も込めての威圧だ。効果があってくれることを祈る。

「!?」

『威圧』を解除してからクレハに視線を戻したんだが、なぜか下唇を強く噛みながらネックレスを握りしめて立ち止まっていた。『威圧』の効果範囲には入ってないはずなんだが、若干泣きそうにも見える。

今の話の流れで俺がリキだってことはわかったと思うが…あぁ、そういやなぜかクレハは俺に怯えてるんだったか。

「そんなに怯えんな。俺はクレハが敵対しない限り、なんもしねぇよ。あと、俺はこの姿のときはテキーラだ。だから、普通に接してくれ。」

クレハはコクリと頷いたが、ガッチガチのままじゃねぇか。

こういうときにアリアがいればどうにかしてくれるんだが、アリアはサラの方にいるからな。

まぁクレハはしっかりしてそうだといってもまだ子どもだし、いきなり切り替えろっていわれても無理だわな。

まぁ仕方ねぇかと思いながらクレハの頭をクシャクシャと雑に撫でるとビクッと肩を揺らした。

「急には難しいかもしれないけど、慣れてくれ。」

クレハの頭から手を離して歩き始めるとクレハが少し遅れてついてきた。

俺が『威圧』を使ったせいでけっこうな距離をとっていたデュセスは、恐る恐るといった感じで間合いをはかるかのように近づいてきた。

「なぜ、いきなり私を殺そうとしたの?」

たった一度戦っただけで俺の素手の間合いを把握しているのか、俺が得意としている間合いの少し外からデュセスが話しかけてきた。

「してないよ。ただ、デュセスにはそろそろ俺がテキーラだってことを理解してもらいたいなと思っただけだよ。べつに口を塞ぐでもよかったけど、勢い余って歯を折っちゃったら悪いしね。」

「…ごめんなさい。これだけ離れていれば誰にも聞こえないと思っていたけれど、私の認識が甘かった。」

「まぁ気をつけてくれればいいよ。次は口を塞ぐ方向でいくから。」

「っ!?…気をつける。」

こんな何度もやられて許してやるとか俺も心が広くなったな。

ただ、俺は約束は守る主義だから、次デュセスが俺のことを喋ろうとしたら歯を折る勢いで口を塞ぐがな。まぁ俺もそこまで鬼じゃねぇから、次の失敗までは『一撃の極み』は使わないでやるけど。

サラの人選びが終わってみたら、セリナとヴェル側に送られたやつらの基準がなんとなくわかった。たぶんだが、先生役の村人より強い、もしくは同等の実力がありそうなやつらをこっちによこしたようだな。

人数合わせなのか若干村人より弱そうなのが混ざっているけど。

こっちが36人でサラ側に72人か。けっこうな差があるが、先生役がこっちが2人に対して向こうは10人近くいるから、まぁ妥当っちゃ妥当か。

「ちゅ〜も〜く!こっちの授業を受け持つセリナと。」

「ヴェルだ。」

「よろしくね〜。」

セリナはニコニコしながら手を振っているが、生徒側は反応に困っているのか誰も返さない。それでもセリナは全く気にしていないようで、話を続けた。

「それじゃあ、まずは6人パーティーを作ってね!あまりに決まらにゃいと私が勝手に決めちゃうからね〜。」

セリナが先生役をやるとずいぶん緩い感じになるな。まぁ嫌いじゃねぇけど。

「あと3人どうする?」

隣のデュセスが話しかけてきたが、あと3人?…あぁ、デュセスの中では俺とクレハは決定なわけね。まぁ俺も知り合いの方が助かるけどさ。

「クレハは俺たちと一緒で大丈夫?」

「パーティーなら一緒の方が嬉しいです。」

クレハを見たところ、無理している感じではないから大丈夫そうだな。震えもおさまってるっぽいし。

さて、あと3人か。

周りの動きを確認すると、2人組や3人組は出来始めているが、そのあとを迷っているみたいだ。

今の俺らは3人とも近接物理なんだよな。

俺は魔法を使えば遠距離もいけるが、剣の練習がしたいから近距離を希望するつもりだ。

そうすると遠距離のやつ…少なくとも中距離のやつがいいな。

まぁ全員近接物理のゴリ押しでもべつにいいんだが。

というか、俺が考えているうちにもう全員が2人組か3人組になっちまってるから、6人組にするには3人組のやつらを誘うしかねぇじゃん。

「あそこの3人組でいいんじゃないかな?」

俺が顎で示した先にいるのは優男のスミノフ含む3人組だ。

スミノフと一緒にいる2人は知らん。というか、こっち側にいるやつはデュセスとクレハとスミノフ以外は見たことない気がする。基礎の授業が別だったやつらだろう。いや、ちゃんと見回してみたら、見たことがあるような気がしなくもないやつらもいるな。

「わかった。」

「はい。」

…。

あぁ、俺が声をかける感じね。リスミナだったら声をかけてきてくれるんだが、しゃあねぁか。

俺がスミノフたちに近づくと、3人ともが俺を見た。警戒というよりは探るような見方だな。

「俺はあっちにいる女2人と組んでるんだけど、一緒にパーティー組まない?」

俺の問いかけを聞いた3人が軽く話し合い、あらためて3人の視線が俺を向いた。

「あぁ、よろしく。僕はスミノフ。」

「よろしく。モヒートだ。」

「アドニスです。よろしく。」

「こちらこそよろしく。俺はテキーラ。」

かるく挨拶を済ませ、男3人を連れてデュセスとクレハのところに戻り、再度名前だけの軽い自己紹介を済ませた。

「は〜い。みんにゃパーティーが決まったようだね。それじゃあ、まずは少し時間をあげるから、パーティーで戦い方を話し合ってからの戦闘訓練をするよ〜。質問がある人がいたらいってね。」

みんな周りの出方をうかがっているような空気を出すだけで質問しようとしないから、このまま作戦会議になるのかと思ったら、スミノフが手を上げた。

「僕たちが何と戦うのかを事前に聞いてもいいだろうか?」

「いい質問だね!情報収集は大事だからね。対戦相手は私かヴェルちゃんだよ。せっかくだから武器も教えてあげるけど、私はこの2本の棒で、ヴェルちゃんは素手だよ。」

セリナは普段使っている短剣と同じ程度の長さの金属の棒を両手に1本ずつ持って見せてきた。

完全にナメてるな。実力としてはそのくらいのハンデがちょうどいいのかもしれないが、こんな子どもにハンデをつけられるのは実力を知らなければそうとうムカつくだろう。

「僕は普段使っている武器を持ってきてしまったんだけど、刃を潰した武器を貸してくれるのだろうか?」

「にゃんで?みんにゃはいつもの武器を使っていいんだよ?たぶん私たちにほとんどダメージを与えられにゃいと思うから。危にゃくにゃったら2対6ににゃるかもだけど、こっちで判断するから、遠慮せず本気できて大丈夫だよ。」

ずいぶん煽るな。

周りのやつらからの殺気のようなものをヒシヒシと感じるんだが。直接向けられてない俺でこれだけ感じるんだから、セリナはかなりの威圧のようなものを向けられてるんだろう。だが、セリナはなんも気にしていないかのようにニコニコしてやがる。

「もしかして、セリナ先生がここの村で1番強いのですか?」

いつも爽やかスマイルのスミノフでさえイラついているのか、目を細めてセリナを見ながら確認をしていた。

「そんにゃわけにゃいよ。1番はリキ様以外ありえにゃいね。それにここでは序列にゃんて決めてにゃいから誰が2番かはわからにゃいよ。でも、リキ様以外との殺し合いにゃら、私は負けにゃい自信があるけどね。」

「2番はイーラだし!」

イーラは納得いかなかったのか、念話で文句をいってきた。

一瞬セリナの目がこっちを向いたから、イーラはセリナにも念話を送ったっぽい。だが、セリナからは返事はこなかった。

「セリナは勝てるとはいってないぞ。殺し合いなら死なない限り負けじゃないとかそんなことだろ。だから張り合うな。」

たしかにセリナはかなり強いが、物理無効を持つイーラには、MPが少なくあまり魔法が使えないセリナでは勝ち目がない。だが、イーラの攻撃もセリナに当たるとは思えないから、どっちが強いともいえないし、セリナの負けないというのはそういうことだろうと予想を立ててイーラを宥めたが、イーラは俺がいった意味をよくわかってないっぽい。まぁいいけど。

「ヴェル先生もセリナ先生と同じくらい強いということですか?」

スミノフは今度はヴェルに質問をしたが、ヴェルは苦笑いを返した。

「セリナと比べられると困るね。ただ、リキ様の戦闘奴隷以外の人間に負けるつもりはないよ。それにここにいる人間じゃあ、よっぽどいい武器を使わなければ僕に傷1つつけられないんじゃないかな?いや、数人例外がいるみたいだけど、本気できてもらってかまわないよ。」

ヴェルが例外っていったときにめっちゃ俺を見てきたんだが、たぶんこの剣じゃ龍の鱗には傷すらつけられないんじゃないか?

テンコの力を使えばいけるだろうが、べつにヴェルを殺したいわけじゃないからな。

ズボンをくいっと引っ張られたから何かと思ったら、デュセスが俺を見ていた。

なんのようかと思ったら、またくいっとズボンを引っ張ってきた。

いや、なんだよ。なんかあるならいえよと思って眉根を寄せると、くいくいくいくいとめっちゃ引っ張ってきた。

あぁ、屈めってことか。

なにかと思いながら屈んだら、デュセスが口を耳元に近づけてきた。

「出来ればでいいけど、実際の強さはどうなのか教えてほしい。あなたの仲間に怪我をさせたくない。」

耳に息がかかるほどに近いのに、ギリギリ聞こえるかくらいの小声でデュセスが問いかけてきた。

あれだけいわれたから気を使ったんだろう。

今度は聞かせてくれという感じで耳を俺に向けてきたが、デュセスの身長に合わせるのが面倒だから、念話で返すことにした。

「セリナは広い場所での殺し合いなら俺より強いんじゃねぇか?ただ、ヴェルはいうほどじゃねぇと思う。頑丈なのは確かだが、今まで俺が知り合ったやつらでヴェルより強いやつはそこそこいるしな。でも目を狙いでもしなきゃ普通の武器では傷つけられないから、気にせず戦えばいいと思う。ちなみにセリナは防御力はたいしたことないだろうけど、そもそもここにいるやつらじゃ攻撃を当てられねぇだろうから、遠慮はいらないと思うぞ。」

デュセスが驚いた顔で見ているが、それは俺の念話に対してなのか、話した内容に対してなのかがよくわからん。

俺がデュセスに念話で説明していた間もヴェルとスミノフの話は続いていたんだが、やっと終わったみたいだ。

直接話していたスミノフだけでなく、ヴェルが龍族だってことに驚いてるやつがけっこういるな。納得いったのかどうかはよくわからないが、どうやらスミノフは手加減しないで攻撃することにしたみたいだ。

あとはかるく6人で話し合って、だいたいの役割決めたら戦闘訓練みたいだな。