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285話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

285話

朝日が出る前にアリアに起こされ、準備を終えて向かおうと思ったときには既にサラがいなかった。

こんなに早くにでかけるなら、誰かに見られる心配もほとんどないだろうから一緒に行こうかと思ったんだが、サラはやることがあるらしくて俺が起きたときにはもう向かっていたらしい。

集合は朝日が出切った頃って話だったのに、ずいぶん早いんだな。

まぁいないのなら仕方がないと、なぜか待合室で待っていたローウィンスと一緒にカンノ村を出て、東のダンジョンへと向かった。

ローウィンスはかるく朝飯を食べてきたらしいが、時間が時間だから屋敷の方の朝飯はまだできていなかった。さすがに俺のためだけに用意させるのも悪いからと携行食を食べながら歩いていて気づいたんだが、普通に門から出てきちまったな。

ローウィンスと一緒だったから無意識にってのもあるが、既に俺自身が隠す気があまりないのかもしれん。

まぁ、もう教室で受ける授業もねぇし、スミノフにさえバレなきゃいいだけなんだからいいか。ってか、今までの感じからして、スミノフにバレてもどうとでもなりそうな気がするけど、一応バレるまではテキーラでいよう。別人になりきるのもわりと楽しいからな。若干面倒ではあるが。

ローウィンスと雑談をしながら街道を歩いていたんだが、自然が多いからか、緑の匂いを乗せたわずかに湿った空気が心地いい。なんて柄にもないことを思っちまった。

街道の先、ダンジョンの入り口辺りに人影があった。

まだ日は完全に顔をだしてはいないが、既に何人か集まってるっぽいな。

人影の正体が完全に見えるほどに近づいたことでわかったが、俺とローウィンス以外は全員集まってるみたいだ。

まぁ、腕時計とかないんじゃ正確な時間で待ち合わせできねぇから、早めにくるしかないもんな。

「おはようございます。お待たせしてしまったようですね。申し訳ありません。」

「おはよう。私は今さっき来たばかりだから大丈夫だよ。」

「おはよう。僕たちもそんなに待ってないから、気にしないで。」

ローウィンスの謝罪にリスミナとスミノフが答えて、デュセスとサラが頷いた。

サラはけっこう前に屋敷を出たと聞いた気がするんだが…まぁサラが「遅えよ」とかいうわけねぇか。

そもそも他のやつらが早すぎるだけで、俺らは遅刻してねぇけどな。

「予定より少し早いけど、準備が出来てるなら早速ダンジョンに入ろうと思う。今日のうちに半分は終わらせたい。テキーラとアインは準備はいい?」

デュセスが全員に視線を送ってから確認を取ってきた。

「私は大丈夫です。」

「俺も問題ないけど、なんであと4日もあるのにそんなに急いでるの?」

「何があるかわからないのだから、無理ない範囲で早めに終わらせるのは依頼を受ける場合の基本。昨日を含めた5日間というのは情報収集も兼ねた期間だと思うけど、私たちは既に情報を持っているのだから、全ての日程を使う必要はない。今回は点数を集めた時点で合格なのだから、早めに終わらせるべき。」

俺がなんとなく気になったことを軽い気持ちで質問したら、思いのほかしっかりと答えられた。

まぁでも、いわれれば納得だな。早く終わることにわざわざ時間をかける必要はねぇしな。

それなら今日一日で終わらせればいいんじゃねぇかと思ったが…なんとなしにローウィンスとリスミナを見た。

1日で半分ってのがこの面子での無理のない範囲での早めっていう判断なわけね。

「確かにそうだね。余計なことをいってごめんね。」

「わからないことがあるのは仕方ない。いつでも聞いてくれていい。」

「ありがとう。」

デュセスは俺が依頼とかをあまり受けたことがないことを知っているからか、対応が優しいな。口調は淡々としてるから、知らなければ近寄りがたいタイプに見えるかもだが。

「リスミナは冒険者ギルドには行った?」

「行ったよ。とりあえずキラントの牙とキャタックラーの粘液とオークファイターの毛皮の納品依頼は受けてきたけど、他はちょうどいいのがなかったよ。」

「十分。ありがとう。」

2人で話を進めているが、こいつらはついでに冒険者ギルドの依頼を俺たちに手伝わせる気なのか?

「授業と関係ない依頼もやるの?」

「授業の依頼で必要な部位は限られているから、他の部分を無駄にしないためにリスミナには依頼を受けてきてもらった。」

「どういうこと?」

デュセスの説明ではよくわからなかったから質問したんだが、デュセスは無言で俺と目を合わせて止まった。

「…先に今日やる依頼内容の確認からする。今日はゴブリンソルジャーがいれば追加で剣を集め、その後地下26階まで下りてキラントの臀部を採取。地下30階でイグニーの肉の採取をして、地下35階ではバーニングベアの毛皮の採取。地下40階はミノタウルスがいれば表皮の採取。最後に地下41階のキャタックラーの分泌液の採取をする予定。そのときに授業の依頼用の部位以外を捨てるのはもったいないから、冒険者ギルドの方に依頼があるなら納品して、報酬をみんなで分けるのがいいと判断した。」

なるほど、どうせ討伐するならついでに他の部位も採取して冒険者ギルドで売ろうってことか。

授業をこなしながら金稼ぎもするっていうのは賢いな。

「よく思いつくね。」

俺が褒める意味を込めてデュセスにいったら、デュセスは無言でリスミナを見た。

「冒険者は拠点を変えるときの移動ついでに護衛の依頼や荷物運びの依頼を受けたりとかするからね。」

どうやらリスミナの案みたいだな。

経験からきてることなんだろうが、無駄をなくそうと思いつけるのは素直に凄いと思う。

「説明も終わったから、ダンジョンに入る。先頭はリスミナとアイン。すぐ後ろに私とスミノフがつくから、テキーラは魔物探しを任せてもいい?」

「かまわないよ。」

「じゃあ、リスミナのリスタートで地下15階から行く。」

デュセスが話し終えたタイミングでリスミナが『リスタート』を発動し、全員で地下15階へと下りた。

地下15階ではゴブリンソルジャーを3体だけしか見つけられなかった。

その3体を倒して装備品を奪い、さっさと地下26階まで下りることになったが、いくら最短の道のりを知っているからといって地味に時間がかかるな。

俺以外はここのダンジョンに来たのが昨日が初めてらしいから、1階から順に下りることになった。

俺が『リスタート』を使うのが手っ取り早いんだが、ソロってことになってるのにダンジョンの深いところまで行ってるのはおかしいと思われる可能性があったから、来たことないことにしておいた。

そのせいで、無駄に走っての移動をするはめになった。まぁ、地図をリスミナが持っていたからそこまで時間がかかってるわけではないんだがな。

地下26階の魔物は全長が俺より少し大きいんじゃないかというような蟻だった。

2本の触角を揺らしながら、艶のある黒いボディーから生えた細い6本の足を動かして近づいてきている。

この階に下りてくる前にデュセスが補足していたが、臀部は傷つけてはいけないらしい。あと、酸をケツから出してくることがあるらしいんだが、酸を出される前に殺さないといけないといわれた。

そんな注意をしてくるくらいだからよっぽど強い酸なのかと思ったら、べつに当たったところで目や傷口に入らなきゃ平気らしい。レベルが低すぎると皮膚がかぶれたりするらしいが、かりに目や傷口に入ったところで、よほどの子どもでもない限り激痛が走るだけで失明したり死んだりはしないとのことだ。

キラントの攻撃で注意するべきは噛みつきだけらしい。突進攻撃もしてくるが、このメンバーなら問題ないとデュセスはいっていた。

何階にどんな魔物がいるか覚えてなかったんだが、リスミナがキラントの牙の採取とかいってたから、てっきり獣系の魔物なのかと思っていたら蟻かよ。

どうでもいいことだが、あの顎はこの世界では牙らしいな。

「キラントの表皮は硬いから、リスミナが正面から引きつけて、アインが細い首を落として。リスミナは牙の攻撃に気をつけて。」

「「はい。」」

デュセスの指示で2人が走り出した。その少し後ろをデュセスとスミノフが追い、俺とサラは傍観だ。

リスミナがキラントの気をひくためか、走って近づいた勢いを乗せた剣の一撃をキラントの顎に叩きつけた。切ったというより殴ったって感じだな。

キラントが頑丈なのは本当のようで、リスミナの攻撃では傷1つつけれてなさそうだ。

まぁリスミナの攻撃はキラントをひきつけるためだから、目的は果たせてるだろう。キラントがリスミナの方に顔を向けながら、威嚇するように顎をカチカチと鳴らしてるからな。

その隙に横から回り込んだローウィンスがキラントの首を狙って剣を上段から振り下ろした。

綺麗に入ったと思ったんだが、キラントの首は落ちなかった。あんなに細い首なのにけっこう頑丈なんだな。それでもダメージは与えられていたようで、キラントが狙いをリスミナからローウィンスへと変えたのが気配でわかった。だが、なぜか触覚を振っただけで顔は向けていない。…ん?ケツをローウィンス側に向けたな。そういやケツから酸を出すんだったか。

一応リーダーとして指示をするべきかと思ったところで、デュセスとスミノフが同時にキラントに飛びかかり、デュセスが腹部と胸部の間の細いところを切り落とし、スミノフがククリナイフでキラントの頭を縦に切り裂いた。

俺がわざわざ指示する必要がなさそうだな。

「失敗して申し訳ありません。」

みんなのところに歩いて近づいていたら、ローウィンスがスミノフに謝罪しているのが聞こえた。

べつにあれは失敗っていうか、武器の性能やキラントとローウィンスのレベル差の問題だろうからどうしようもなかった気がするがな。

「大丈夫だよ。もともとキラントはCランク冒険者のパーティーが相手にするような魔物だから、2人だけだと一度で倒せなくても当たり前だよ。」

爽やかな笑顔でローウィンスを励ましている姿は正に優男だ。

あんなイケメンに優しく対応されたら、惚れちまう女も多いだろうに、ローウィンスからはそんな気配が微塵もねぇ。ローウィンスは男の好みが普通とちょっとズレてんのかもな。

それとも整った顔は鏡で見慣れてるから、イケメンは異性のプラス要素にはならないとか?まぁどうでもいいが。

今の戦闘を見る限り、デュセスとスミノフで魔物の討伐をした方が早く終わりそうなんだが、次もローウィンスとリスミナにやらせるつもりみたいでアドバイスなんかをしてやがる。

デュセスに関しては今後またリスミナとパーティーを組む可能性がゼロではないから、未来のためにアドバイスをしている可能性もあるが、スミノフとローウィンスの関係は授業限定にもかかわらず、丁寧に教えている。

面倒見がいいからなのか、何かしら考えがあるだけなのかはわからんが、他人のために行動できるのは立派だと思う。

俺がそんなことを考えているうちにデュセスたちが牙と臀部の回収を終え、次のキラント探しに移った。

どうでもいいことだが、デュセスのいっていた臀部というのは蟻の腹部のことみたいだな。確かに腹部というよりケツって方がしっくりくる気持ちはわからなくない。

その後は俺がスキルを使ってキラントを探し、ローウィンスとリスミナがデュセスとスミノフのフォローを受けながら討伐するという流れで6体のキラントを倒した。

こいつらの素材が何に使われるのかはわからないが、そこそこ点数がよく、1体につき3点だから18点を得ることができた。

探せばまだいるだろうが、とりあえずは十分だということで、俺らは次の納品依頼のために地下30階へと小走りで向かった。