LNCrawler

287話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

287話

けっきょくバーニングベアはデュセスとスミノフが討伐して、リスミナが解体、ローウィンスがその補助をすることになった。ちなみに俺は見てただけだ。

誰も何もいってこなかったから、まぁいいかと周りの警戒だけしていた。

合計4体のバーニングベアを討伐し、昼飯を挟んでのミノタウルス狩りのために地下40階に下りようとしたんだが、またデュセスからのアドバイスがあるようだ。

「地下40階の主な魔物はオークファイターだけど、もともとボスであったミノタウルスが稀に発生している。今回はオークファイターを3体ほど倒している内にミノタウルスがいれば表皮を取るために討伐する予定。いなければそのまま下りる。オークファイターの倒し方はバーニングベアと変わらない。武器を使ってきたり、複数体いるときは連携をしてきたりするのに気をつければいい。だけど、テキーラとスミノフはこの程度気をつける必要もないと思うから、細かいことはいわない。」

残りの討伐はデュセスとスミノフと俺ですることになっているせいか、説明が少し雑になったな。

まぁミノタウルスがいた階にいたのは二足歩行の猪みたいなやつだったのは覚えているから、そこまで気をつけるほどの相手じゃなかったしな。

地下40階に下りてから最短距離を進みながら気配を探ると、違う道に進めば2体いるのがわかった。

ダンジョンマップと照らし合わせ、少し遠回りになるがたいした差はないと判断し、デュセスたちに確認せずに道を曲がった。

何かいわれるかと思ったが、誰も文句をいわずについてきたみたいだな。

俺がリーダーだからというわけではなく、俺が魔物を見つけたんだとわかってるだけだろう。

最短の道から逸れて少し進んだところで二足歩行の猪、オークファイターを見つけた。

もうローウィンスたちの練習を優先させずに倒しちゃっていいことになったんだよな?

オークファイターに接近しきる前に確認しようと振り向いたら、目が合ったデュセスに頷かれた。

まだ何もいってないんだが、このタイミングで無言で頷くってことは倒していいってことだよな?

まぁ、ダメだったとしたらまた次のオークファイターを探せばいいだけだ。

走りながら鞘から剣を抜き、手前のオークの左側を抜けながら首を切り落とした。

すぐさま足に力を入れ、一息に奥にいるオークの右側へと抜けながら、剣を振り抜いて首を切断した。

やっぱり1体倒したあとにどうしても一度止まっちまうな。セリナだったら止まることなく走りながら2体とも殺せるだろうに、今やってみた感じでは俺にはまだ出来そうにねぇ。

武器の性能の差だけじゃなさそうなんだよな。

1体目を切った勢いのまま片足を軸にして一回転して切りつければいけるか?でもそれだと2体目の首に狙いをつけるのが難しそうだよな。それに一瞬とはいえ背中を向けることになるのもよくねぇだろうし。

俺が考えごとをしていたら、なぜかデュセスが隣に並んだ。

俺も解体を手伝えってことかと目を向けると、何かをいいたそうにしているデュセスと目が合った。

「なぜ1人で2体とも倒したの?」

「え?だってもう俺らで倒しちゃってもいいっていわなかった?」

「倒すことに問題はない。でも、1人で倒すなら、なぜ直前で私を見たの?」

「倒していいかの最終確認の意味で見たんだけど…。」

他に何か勘違いするような意味があるか?

なんで1人で倒したかと聞かれたってことは1人は任せたって意味だと思ったってことか?

「…………そう。それならいい。」

俺が確認を取ろうと思ったら、その前にデュセスが納得して離れていった。顔は何かいいたそうなままだったけどな。

リスミナたちがオークファイターの解体をしているのを眺めながら気配を探ると、階段に向かう途中にまた2体いるみたいだな。

オークファイターを3体倒したら下りるみたいなことをいってた気がするから、今回はミノタウルス討伐はなしになりそうだ。

あっ、解体してるローウィンスがオークファイターの血を顔にモロにくらった。

まだ解体に慣れてないから、切る場所を失敗したのかもな。俺自身が解体のことをあまり知らんから、実際の原因はわからんけど。

というか、多少失敗したところで、王族なのに解体できてること自体が凄えよな。

途中からはデュセスも解体に加わり、ローウィンスに教えながらさっさと解体を終え、次のオークファイターのいるところに向かった。

次のオークファイターも敵の数が同じなんだから手こずるわけもなく、さっさと終わらせた。

ミノタウルスに関しては最初から、いたら討伐程度に考えていたらしく、依頼はあえて受けずにきたそうだ。だから、ミノタウルスを探すことなく、下り階段にたどり着き次第、地下41階へと下りた。

地下41階で気配を探ると、集中したうえで察知範囲ギリギリのところに1体いるみたいだな。

とりあえず気配の方に走りながら、ふと気になったことを近くを走るリスミナに聞くことにした。

「そういやこの階は魔物の粘液と分泌液を取るみたいな話だったと思うけど、何が違うの?」

急に質問されたリスミナは一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに戻り、速度を上げて俺の隣に並んだ。

「聞いた話だと粘液はキャタックラーの脇腹あたりの内臓に溜まってる液体で、分泌液はキャタックラーを拘束してると額あたりから滲んでくる液体みたいだよ。それらが何に使われてるのかまでは私は知らないけどね。」

ちゃんと違うものなんだな。

「その説明からするに生きたまま拘束しなきゃいけないの?」

「そうだね。たぶんキャタックラーが見えたらデュセスが説明してくれると思うけど、殺さないようにね。」

殺しちゃいけない魔物なのか。聞いといてよかったな。

リスミナと話しているうちにキャタックラーが目視出来るところまできた。

キャタックラーってのはこいつか。そういやミノタウルスの次はデカい芋虫だったな。

「キャタックラーは体当たりと糸や粘液を飛ばしてくる以外の攻撃手段はほぼない。でも殺すと分泌液を採取できないから、テキーラは殺さずに捕まえて。」

さらに端的な指示になったな。

まぁわかりやすくていいけどさ。

捕まえろっていわれてもどうすればいいんだと思いながらも、考えているうちにかなり近づいちまったから、仕方なくキャタックラーの横に回って抱きつくように取り押さえた。

巨大芋虫に抱きつくとか不快で仕方がないが、イーラ越しだからなんとか我慢できる。毛虫だったらさすがに拒否っただろうけどな。

こいつらからしたら全部まとめて魔物だから気持ち悪いも何もないのかもしれないが、現代っ子の俺は虫に直接触るのはさすがに嫌悪感がある。カブトムシとかてんとう虫とかなら平気なんだけどな。

だから極力無心になろうとしてんのにこいつが暴れるせいで、どうしても意識しちまう。

動きが遅いくせに力はあるようだからちゃんと押さえつけなきゃならねぇってのに、柔らかいせいで潰さないように気を使わなきゃならねぇから変に疲れる。

「テキーラはそのまま捕まえていて。リスミナは分泌液が出てきたらガーゼで吸って。スミノフとアインは周りの警戒。粘液は私が取り出す。」

「押さえるのを手伝わなくていいの?」

「テキーラなら1人で十分。それより他のキャタックラーが現れて邪魔される方が困る。」

スミノフが気を使って俺に声をかけてきたんだが、なぜかデュセスが即答した。

スミノフは一度デュセスに視線を向けてから、また確認するように俺を見た。

キャタックラーとやらを取り押さえるのは変に気を使って疲れるから、変わってくれるならありがたいが、手伝いだけならべつに必要ねぇな。

「このくらいなら大丈夫だよ。周りの警戒をよろしく。」

俺がスミノフに答えると、スミノフはなぜか苦笑してから離れていった。

デュセスは俺らのやり取りを気にすることなく、目の前でキャタックラーの解体を始めやがった。

「普通はキャタックラーを冒険者ジョブが1人で拘束なんて出来ない。だからスミノフは戸惑っていただけ。テキーラは普通じゃないのだから、気にする必要はない。」

デュセスが生きたまま解体をしてるせいで、キャタックラーの暴れ具合が激しくなってきたのを潰さないようになんとか押さえていたら、いきなりデュセスにディスられた。

いや、デュセスが拘束しろっていったんじゃねぇか。

「粘液袋は取れた。分泌液はどう?」

「話で聞いてたよりは取れたけど、まだちょっと少ないかな。」

デュセスにいい返そうと思ったら、話が変わっちまった。

わざわざ掘り返してまで文句をつけたいわけじゃないから、もういいけど。

「キャタックラーは痛みを与えれば、より分泌液を出す。だから生きたまま粘液袋を取り出すのが効率がいい。本当は拘束し続けるのにもっと苦戦するから、粘液袋を取り出した頃には規定量の分泌液も取れるのだけど、拘束してるのがテキーラだから仕方ない。テキーラはそのまま拘束を強めてゆっくり絞め殺して。」

なかなか残虐だな。

生きたまま内臓を取って、抵抗させずに胴体をゆっくり押し潰して殺すとか魔物相手でも一瞬戸惑う。

殺すこと自体はもう気にしないが、わざわざ苦しめるっていうのはな。まぁ必要なことなら仕方ないのかもしれんが。

というか、目の前で同族がこんな殺され方をしてイーラはなんも思わんのかね。

「イーラは魔物がこんな殺され方をされても平気なのか?」

「ん?なんで?イーラは関係ないから何も思わないよ?弱いのが悪いんだし。」

なんとなく念話で確認してみたら、凄く軽く返された。そういや魔族は同族だからとかいう考え方があんまねぇんだったな。まぁ俺自身、全くの他人がいたぶられてたところで、知ったこっちゃないと思うかもしれんけど。

…。

しゃーない。

俺が腕に力を込めて徐々に拘束を強めていくと、しばらくしてキャタックラーの肉が潰れて皮膚が裂けたような感触がイーラ越しにもかかわらず、わずかに腕に伝わってきた。それなのにキャタックラーの体液が出てこないと思ったら、どうやらイーラが食ってるみたいだな。おかげで不快感は我慢できるレベルだ。

抵抗が激しくなってきたキャタックラーの頭をリスミナだけでは押さえられなくなって、デュセスが手伝い始めたところで、キャタックラーが断末魔のような鳴き声をあげた。

不快感が半端じゃないが、そのまま少しずつ絞める力を強めていたら、キャタックラーが徐々におとなしくなり始め、最終的には抵抗がなくなった。それでもしばらくは続けていたが、一切動かないからもう死んでると判断して腕を離した。

イーラを纏っていたおかげで、腕を離した部分のキャタックラーの表皮はズタボロだったのに、俺の腕は一切汚れていない。

あからさまに不自然だが、誰も突っ込んでこないから、気にしなくていいか。

「テキーラのおかげで予定より多く取れた。ありがとう。」

「それなら良かったけど、あまり気分がいいもんじゃないね。」

「なぜ?」

デュセスが不思議そうに首を傾げた。

「魔物だからってわざわざ痛めつけるのがあんま好きじゃなくてね。まぁストレス発散で魔物を殺したりする俺がいえたことじゃないけどさ。」

「人間同士でだって拷問したりするのに、魔物を痛めつけることに気分を害すなんて珍しい。」

「いや、人間相手にも好んで拷問とかしないよ!?よっぽど憎い相手ならべつだけど、だいたいは即殺すし。強さが拮抗していて、結果的にズタボロにしたってのはあるかもだけど。」

「どうせ殺すなら同じでは?それに捕まった時点で自死を選ばなかったのだから、拷問を受けるのは自業自得。」

あぁ、デュセスも考え方が普通じゃないタイプなのか。いや、俺も自分が普通だと自信を持っていえるわけじゃねぇけど、そこまでおかしくはないはずだ。

だが、死が身近なこの世界では弱肉強食な考えが普通なのかもしれん。強ければだいたいのことは許されるってか。その考えは嫌いじゃないけどな。

「まぁ今回は必要なことだから、気にしないことにするよ。」

「納得できたならいい。それなら次もお願いする。」

「了解。」

デュセスに答えた俺は余計なことを考えるのはやめ、次の気配のもとへと走って向かった。