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306話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

306話

しがみついていた子どもが泣き止んだところで引き剥がし、洞窟内を物色したが、貨幣の蓄えはなかった。

あるのは食い物と服と装備類くらいだったから、仕方なく装備類だけを全てアイテムボックスにしまった。

「アリアたちがもうすぐ到着しそうだよ〜。」

ひと通り洞窟内の確認を終えた頃にセリナに声をかけられた。

道を作るとかなんとかいってた気がするが、思ったより早いな。

「じゃあいったん外に出るか。」

セリナに答えた後、子どもたちが立ち上がろうとする気配がして振り向いた。

「お前らはここで待ってろ。この洞窟に魔物が入ってこないようにくらいは気をつけてやるが、ついてきて魔物に襲われても助ける気はねぇからな。」

俺が声をかけると不安そうな顔をしたが、反論することもなく、おとなしく座り直した。

置いていかれるのが不安なのはわからなくないが、そこまでは俺の仕事じゃねぇからな。

セリナたちを連れて外へと出ると、何かを叩きつけて破壊するような鈍い音が聞こえてきた。それもわりと近場から頻繁に聞こえてくる。

警戒しながら音のする方に視線を向けると、音の原因は既に見えるほどの距離にいやがった。

気配察知をするまでもなくはっきりと見えるほどの巨体。

…あれはイーラか?

よく見れば周りにアリアたちもいるからイーラなんだろうな。

なぜか巨大なスライムとなって倒れた木々を吸収しながらこちらに進んできているようだ。

木々を倒してるのはウサギとヴェルとニアみたいだな。

3人ともが打撃で木々をへし折っているから、その音がここまで響いていたみたいだ。

テンコの姿は見えないが、イーラの後ろにでもいるのかね?

それにしても、イーラの体積がおかしくねぇか?

イーラと思われる巨体の少し前を歩くアリアと比較して見た限り、普段の人型の10倍じゃ済まないサイズだと思うんだが、サイズが変えられるにしても差がありすぎだろ。

アリアたちが到着するまで、なんとなくずっと見ていたんだが、目の前に到着した巨体イーラはなかなかの威圧感だ。

「…お待たせしました。昼を過ぎてしまってごめんなさい。」

俺の目の前まで歩いてきたアリアが、ペコリと頭を下げた。

べつに謝るようなことではねぇと思うけどな。

「俺らがついた時には既に昼だったし、その時点でオーガキングの討伐は明日にすることにしてたから気にすんな。」

「…ありがとうございます。…イーラ、もう大丈夫です。」

アリアの言葉を聞いたイーラが縮んでいき、いつもの人型となったところで走って近づいてきた。

あのサイズがあっという間に縮んでいくのは見ててちょっと面白いななんて思っているうちに、イーラがタックルするように抱きついてきやがった。

力を入れたから痛みはないが、イーラのタックルは既に立派な攻撃なんだから、加減しろし。

「アリアが道を作れなんていうから遅くなっちゃってごめんね。」

アリアのせいにしやがったよこいつ。

若干呆れながらもイーラが通ったところに目を向けたら、確かに道が出来ていた。

土を固めただけの道ではあるが、邪魔な草木が一切なく、普通サイズのイグ車なら余裕で通れる幅がある。しかも遠くまで見通せるところを見るに、ほぼ直線でここまでの道をつくったんだな。

これはイーラも頑張ったようだから、あまり叱るのもよくねぇか。

「アリアは間違っちゃいねぇし、人のせいにすんなよ。まぁでも、なんだかんだ手伝ってくれてありがとな。」

イーラの頭をてきとうに撫でると、俺の腹に顔面を擦り付けてるイーラからだらしない笑い声が聞こえてきた。

「テンコも、手伝った。」

近づいてきたテンコが俺の右手首を掴みながら主張してきた。

綺麗な道になってるのはイーラが力技で地面を押しつぶして、テンコが整えたって感じか?

まぁイーラが通っただけでここまで綺麗にはならねぇもんな。

「あぁ、ありがとな。アリアもな。」

テンコの頭を右手で撫でるついでに左手でアリアの頭も撫でておいた。

「ウチも!…。」

「自分も…。」

近づいてきたウサギとニアが話しきる前に2人の頭も撫でた。

そこまでして撫でられたい気持ちがわからんが、拒否るようなことでもねぇからな。ただ、面倒だったから雑だったかもしれんが、それは許せ。

「あぁ、見てたから知ってる。頑張ったな。ありがとう。」

若干投げやりになっちまった感が否めないが、満足そうな顔を見るに2人はこれでいいらしい。

ヴェルはヒトミと何かを話してるみたいだから、放置で平気だな。

「騎士たちはどんくらいで来るんだ?」

俺がアリアに質問したら、アリアはセリナを見た。それにつられて俺もセリナに目を向けると、セリナは耳をピクピクと動かしながら俺を見た。

「静かににゃったおかげでイグ車の音がわずかに聞こえるね。でももう少し時間がかかりそうだから、ご飯食べたらちょうどいいくらいじゃにゃいかにゃ?」

「じゃあ各々好きに休憩してくれ。一応魔物は警戒しておけよ。」

「リキ様〜、メデューサは〜?」

さっきから腹にしがみついてるイーラが確認してきたが、探すまでもなくそこに転がってんだろ。いや、そもそもメデューサの見た目を知らなきゃあれがメデューサだとはわからねぇか。

「そこに転がってるやつがメデューサだ。サーシャは既に片眼を取ってるから、あとは好きにしろ。下半身はどっか飛んでっちまったから、食いたきゃ自分で探せ。」

「は〜い。」

返事をしたイーラがやっと俺から離れ、メデューサの死体のもとへと走っていった。

ひとまず騎士たちがくるまでは休憩だな。

昼飯として固形タイプの携行食を食べ、食後の休憩をしていたら、俺の耳にも何かが近づいてくる音が聞こえてきた。

道に目を向けると、遠くにイグ車っぽいものが見える。その周りにはドライガーに乗って追走してる全身鎧のやつらもいるな。

「そういや、オーガキングの討伐は明日にするとして、今夜はどこで泊まるか決めてなかったな。オーガキングの生息地の近くに町とか村ってあるかわかるか?」

「…一般的には近くというほどではないかもしれませんが、わたしたちにとってはすぐに行ける距離にアヤレジ王国の王都コヤハキがありますので、そこで宿を取るのがいいかと思います。そこでしたら、上級者向けのダンジョンや強めの魔物が生息する場所が近くにあるので、戦闘訓練にもちょうどいいかと思います。」

ん?この旅でレベル上げもするつもりだって話をアリアにしたっけか?

まぁいいか。

「じゃあ用が終わり次第そこに向かうとするか。」

「…はい。」

ふと、ジャンヌにジョブの話をされたことを思い出した。

今まで魔王で十分だったから気にしてなかったが、自分に適したジョブがあるなら、そっちの方がいいよな。

というか、俺はずっと殴るか蹴るかの戦闘なのに格闘家のジョブを手に入れられてないってことは他に条件があるのか?

そんなことを思いながらジョブ取得を使用したら、格闘家がありやがった。しかも剣士と戦士のジョブまで増えてやがる。

…いつからあった?

そういや久しくジョブ取得してなかったな。最後にしたのは精霊術師を手に入れたときか?

もしかしてけっこう前からあったのか?

剣士と戦士は上限100レベルだから、まだいい。だが、格闘家は上限が300だから、さっき大量に倒した魔物の経験値を無駄にしたのはもったいねぇな。

いや、魔王のレベルは上がってるし、武闘家や精霊術師はカンストしてるから無駄じゃねぇんだけどさ。

………さっきの大量の魔物を倒したことで格闘家のジョブが手に入ったんだろう。間違いない。そう思っておこう。

もしかしたら武闘家がカンストしたから手に入ったジョブなのかもしれないしな。

とりあえず似てるタイプの武闘家と格闘家のジョブを交換してみたが、スキルは減ってなさそうだ。やっぱり武闘家の上位ジョブなのかもな。武闘家レベル1ではなかったはずの『気纏』が格闘家レベル1に変えてもスキル欄に残ってるから、上位スキルなはずだ。上限も300だしな。

あとは魔導師を剣士に変え、剣士がカンストしたら戦士にするかと決めたところで、騎士たちのイグ車が俺らの前に到着した。

やけに大きなイグ車が3台あり、その内の一台から4人の騎士が降りてきた。その他にドライガーに乗ってる騎士っぽいやつらが4人いるから、合計8人の騎士が俺の前に並んだ。

その内の1人が前に出てきたところで全員が鎧の顔部分を外したから、なんか話があるのかもな。

一応立ち上がり、目を合わせると、騎士の代表っぽいやつが話し始めた。

「本日は協力ありがとうございます!生存者はおりますか?」

「あぁ、あの洞窟の中に子どもが6人いたぞ。」

「ありがとうございます。」

礼をした騎士代表が後ろの騎士たちに目で指示をすると、5人の騎士が洞窟へと向かい、2人の騎士はイグ車を護る位置へと移った。

騎士代表は俺の前から動かないが、他になんかあるのか?

「まだなんかあるのか?」

「あ、えっと…これは個人的に気になったことなのですが、2つほどお聞きしてもいいでしょうか?」

「なんだ?」

やけにあらたまって聞かれたが、なんかあったのか?

「ありがとうございます。それでは1つ目ですが…この道はいつ作ったのですか?」

「今さっきだが、何か問題があったか?」

「今さっきですか!?…あ、いえ、問題はありません。森の中にしっかりとした道があることに違和感があったために気になってしまっただけです。」

あらためて聞いてきたから、なんか法律に触れたのかと思ったわ。

ここは他国だから、アリアが知らない可能性もあるからな。もちろん俺は国ごとの法律など知らん。

「問題ないなら良かった。それで、もう1つはなんだ?」

「はい。途中で大変荒れた場所があったのですが、あそこでメデューサとの戦闘があったのでしょうか?」

「ん?荒れた場所?…あぁ、あそこは魔物が多かったからまとめて殺すために魔法を使ったせいだな。」

「…アヤレジ王国の騎士の非礼に対しての憤りをこの国の森に向けてしまい、ごめんなさい。次からはちゃんと相手もしくは所属の国に返すようにします。」

アリアがなぜか俺の言葉に補足して謝罪した。

そういやもとはあいつにイラついたから、そのストレス発散のためにアリアが用意してくれたんだったな。

しかも今の国名はさっきアリアから聞いた気がする。

これから向かうのがその国の王都だったよな?

面倒ごとになる気しかしないから、泊まる場所を変えた方がいいんじゃねぇか?

俺がそんなことを考えていたら、目の前の騎士の顔が強張った。若干青くなってる気がするが、何かいたのかと後ろを見てみるが、特に何もいない。

一応気配察知の範囲を広げてみたが、やっぱり何もいない。

もしかして俺に対しての表情なのか?

だが、俺は威圧なんてしてねぇぞ?

「急にどうした?ここに来る途中で毒でも食らったのか?」

「い、いえ。なんでもありません。この森は冒険者以外立ち入ることは滅多にないので、人を巻き込まないでいただければ、広範囲魔法を使っていただいても問題ありません。そして、こんなことをお願いできる立場ではないかもしれませんが、我が騎士団員が非礼を働いたさいはその騎士団員に直接制裁を加えていただいてかまいません。なので、どうか我が国と敵対する前に話し合いの場を作っていただきたく思います。」

ん?急にどうした!?

なんかいきなり話が大きくなっているんだが、なんか勘違いさせるようなことをいっちまったか?

「何を勘違いしてんのかわかんねぇけど、騎士が個人でふざけたことをしたからって、その国を相手にしようなんて考えねぇよ。もし、国の命令で騎士団が敵に回るっていうなら対処するしかねぇが、俺から率先してそんな面倒なことをする気はねぇから、変なこというなし。そもそもあんたを見る限り、あんたの国を相手にできるほどの戦力がうちにはねぇよ。」

目の前の騎士は1対1なら問題なく勝てるだろうが、それなりに強そうだ。少なくともケモーナの歩兵よりは強いだろう。

このレベルのやつが何百何千と向かってきたら、さすがに相手を出来る自信がねぇ。

そんなことが出来るのはマナドールみたいな化け物だけだろ。

もしかしたらサーシャならスキルが特殊だから相手ができる可能性もあるかもしれないが、わざわざ試そうなんて思わねぇよ。

戦争なんてあのケモーナでの一戦だけでお腹いっぱいだ。

俺の返答を聞いた騎士がなぜかチラリとアリアを見た。

何かあるのかと思って俺もアリアを見てみるが、無表情で騎士を見ているだけだ。

もしかしてアリアが頭脳担当って話を『道化師連合』から聞いたりしたのかね。

まぁいい。

「聞きたいことはそれだけか?」

「あ、はい!ありがとうございました!それでは私も仕事に戻りたく思います!」

頭を下げた騎士が、洞窟の方へと歩き出そうとしたところで、セリナが耳をピクピクさせながら渋い顔をしたのが視界に入った。

そのままセリナが洞窟の方に向かおうとしたんだが、何かあったのか?

「どうした?」

「え?あ、え〜と…ちょっと私も手伝ってこようかにゃって思って…それとももう次の町に行く?それにゃら急ご?すぐ行こう!そうしよう!」

セリナが急に俺の手を掴んで引っ張り出したんだが、怪しすぎんだろ。

「なんかやばい敵でも現れたのか?」

「そうじゃにゃいんだけど、あにゃがち間違いでもにゃいというか…。」

ごにょごにょと訳のわからんことをいいだしたんだが、本当に急にどうしたんだ?

「お母さんを返せ!」

叫ぶような声が聞こえ、声のする方に目を向けると、騎士に抱えられた子どもが暴れてるみたいだな。

数人の騎士がそれをなだめようとしているが、見るからに困ってるな。

「いや、だからあれは君のお母さんではなく、君を攫った魔族だったんだよ。」

「わけのわからないことをいうな!お母さんはお母さんだ!お前たちが隠したんだ!お母さんを返せ!この人攫い!」

あまりにも暴れるせいか、騎士の腕から落ちたガキが地面を転がった。

ガキはすぐに立ち上がり、鼻息荒く騎士を睨みつけた。

「私たちは人攫いではなく、君たちを助けにきた騎士団員だから、安心してほしい。」

あの騎士は子どもの扱いに慣れていないのか、困ったように眉尻を下げながら、ぎこちない笑顔を向けていた。

あの騎士がいいやつなのか、騎士全体がそういう教育を受けているのかは知らないが、助けようとした相手にこんなこといわれても対応してやるんだな。置いていきゃいいのに。

俺がガキの方に歩き出そうとしたら、セリナが近づいてきた。だが、俺が左手をあげて止めると、それ以上は何もしてこなかった。

そのままガキのすぐ横まで近づいたが、ガキは騎士を睨むのに集中しているのか、俺には気づいていないようだ。

さすがに騎士は俺に気づいているようだが、口を開けたり閉じたりしているだけで、特に何もいってはこなかった。まぁ止められたところで止まるつもりはねぇが。

右足を軽くあげて、靴底をガキの肩にあて、軽く踏み出すように押した。

かなり加減はしたんだが、なんの構えもとっていなかったガキは受け身も何も取れずに5メートルくらい転がっていった。

防具なんてつけていないからか、それだけで擦り傷だらけになりやがった。

よく吠えると思ったら、やっぱり弱いんだな。

「なにすんだ!」

痛々しい姿になってはいるが、怒りのせいか痛みを気にしたそぶりもなく立ち上がって睨みつけてきた。

睨むことしか出来ないと自覚しているからか、全力を注がれた睨む力だけはなかなかのものだな。

「調子にのるなよクソガキ。優しく対応してくれるからって騎士に当たり散らしてんじゃねぇよ。」

「こいつらがお母さんを隠したから、返せっていってるんだ!」

「そいつらはお前の母ちゃんには一切関わってねぇよ。お前の母ちゃんを殺したのは俺だ。隠したんじゃなく、殺したんだよ。だから、恨むなら俺を恨め。騎士に当たってんじゃねぇ。」

睨みがさらに鋭くなったかと思ったら、ガキは睨みながら泣き始めた。ずいぶん器用なことをするな。

「なんだ?悔しいのか?なら強くなって復讐でもすればいい。お前の母ちゃんが先に殺しにきたから返り討ちにしただけだが、お前にとってはそんなん関係ねぇもんな。それとも今やるか?お前の母ちゃんみたいに無駄死にしたいなら好きにすればいい。俺は敵対するやつを殺すだけだからな。いつでも相手してやるよ。」

薄く笑いながらガキを見下ろしていたが、ガキは攻撃してくるわけでも逃げるわけでもなく、ただただ睨んできやがる。

勝てないのはわかっているけど、下がりたくはないんだろうな。

クソガキのくせに一丁前に男なんだな。

このまま続けても時間の無駄だからと騎士に視線を向け、顎でこのクソガキを連れていけと示したら、ちゃんと伝わったようで、慌てたように抱きかかえて馬車の方へと走っていった。

今度は大人しく抱きかかえられたクソガキだったが、馬車に入って扉が閉められるまでずっと俺のことを睨んでやがった。

あれは本気で強くなって復讐にくるかもな。

「…なぜ、悪者のように振る舞ったのですか?リキ様に感謝することすらなく、あんな目を向けてくる相手を助ける意味があるのですか?」

隣で不機嫌な顔をしているアリアが疑問をぶつけてきた。

他にも殺気立ってるやつが何人かいるな。

まぁ少し前の俺なら殺してたかもしれねぇから、アリアたちからしたら不思議なのかもな。

隣のアリアの頭をなんとなくグシャグシャと撫で、殺気立ってるメンツに顔を向けた。

「あいつにとってはメデューサが母親みたいだし、母親を殺されて憤るのは当たり前だ。そんな状態のやつを宥めるなんて不可能だから、怒りを向ける相手を明確にしてやっただけだ。その方が時間を無駄にしないで済むからな。本当に復讐にくるかはわからねぇが、それを決めるのはあいつだから、勝手にすればいい。敵対するなら殺すだけだし、関わらないなら俺の知ったことじゃねぇ。そんなことよりコヤハキだったか?とっととそこに向かうぞ。」

「…メデューサを殺したことを後悔しているのですか?」

話は終わりのつもりだったんだが、アリアが質問してきた。

俺が気に病んでるとでも思ったのか?

「後悔はしてねぇよ。かりにあいつの母ちゃんだと知ってたとしても、あの状況なら殺してただろうしな。いきなり殺しにきたメデューサの自業自得だ。最後の最後まで戦うのをやめなかったのはメデューサ自身だし。まぁあのクソガキは気の毒つーか、あのクソガキに対して多少は悪いと思う部分もあるっちゃあるかもな。謝る気はねぇけど。」

俺がアリアの質問に答えたら、アリアはジッと俺の目を見てきた。

真意を探ろうとしてるのか知らんが、奥の奥まで覗かれてる気分だ。

しばらく俺の目を見ていたアリアは納得したのか目を伏せた。

「…リキ様が気にしていないのであれば、わたしからいうことは何もありません。余計なことをいってごめんなさい。」

「周りに迷惑をかけた魔族だとしても親は親ですか…。」

静かになっていたからか、ニアがボソッと呟いた言葉が耳に届いた。

そういやニアの父親が魔族なんだったな。しかも人間に討伐されてるから、思うところがあるのかもな。

残念ながらこういうときにかける気の利いた言葉が思い浮かばなかったから、聞こえなかったことにした。

「リキ様は優しいね♪あの人間はムカつくけど、リキ様が気にしないならどうでもいいや♪あとは騎士たちに任せて早くコヤハキに行こ♪」

静まり返った空気を晴らすためか、ヒトミが明るい声で次の行動を促しながら腕に絡みついてきた。

せっかく気を使ってくれたみたいだし、この流れでこの場を離れるとするか。

チラッと騎士たちの方を見ると、馬車を護って周りを警戒していたやつと目が合った。

目が合ったやつは一瞬慌てた感じに見えたが、すぐに真顔に戻って俺らの方に体を向けた。

「なんでしょうか!」

「俺らはもう次に向かって大丈夫か?」

「はい!あとは私たちがやっておくので、問題ありません!」

なんかずいぶんとかしこまられてる気がするが、害があるわけじゃねぇからいいか。

「じゃあ頼んだ。」

残りは騎士たちに任せ、俺はアリアたちを連れて森の奥へと進んでいった。

もうイーラの変身を見られても問題があるわけではないと思うが、なんとなくだ。