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310話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

310話

残り10体だと思っていたら、なぜかオーガが増えてきて、全滅させるのにけっこうな時間がかかった。

終わってみたら、あちらこちらにオーガの死体が転がっているという凄惨な光景が広がっていた。

しかもセリナたちが最初の位置から離れて戦闘をしていたから、かなり広い範囲にオーガの死体が転がっている。

どう見てもさっき追加されたオーガ以上の死体が転がってやがるが、いつのまに増えたんだ?

まぁこっちに被害がほとんど出ずに殲滅できたから、それはどうでもいいんだが、それよりもヒトミの進化だな。

オーガの残りを討伐している最中に進化許可申請がきた。

その時は戦闘中に進化して平気なものなのかと疑問に思ったが、本人が申請してくるくらいなんだから大丈夫なんだろうと許可した。その瞬間に少しだけ光った気がしたが、とくに何も変わっているようには見えなかった。

その後もヒトミはオーガを素手で倒していたみたいだが、魔王になったのか?

そういやヒトミが素手で戦ってるのは初めて見たかもな。

念のため気配察知の範囲を出来る限り広げて周囲を探るが、魔物の気配はないっぽいな。

倒しきったことを確認したところで、ヒトミが上機嫌な笑顔で近づいてきた。たぶん進化についての報告でもするつもりなんだろう。

近づいてくるヒトミに視線を向けつつ、ヒトミのステータスを確認した。

レベルが36しかないのは進化したからリセットされたのだろうとスルーし、種族名を見て眉間にシワが寄った。

シャドウ?

キングもクイーンもついていないが…もしかしてさっき倒したのってオーガキングじゃなかったとかか?

そういや敵の名前を確認しなかったな。

一度ヒトミから視線を外し、転がった死体の中からオーガキングだと思っていたものを探した。

この中から見つけるのは難しそうだなと思ったが、観察眼のおかげか普通に見つかった。

その死体に向けて『解説』を使うと『オーガキングの死体』と出た。

ってことはヒトミが殺したのはオーガキングで間違いないはずだ。なのに魔王になれなかったのか?

いや、ただ単に経験値がまだ足りないだけかもしれん。ヒトミは『シャドウキング』はサーシャよりも上位の種族のようないい方してたしな。

視線をヒトミに戻すと、既に目の前まで来ていたヒトミがそのまま俺の腕に絡みついてきた。

「リキ様♪シャドウに進化できたよ♪もっと経験値をためて、すぐにあたしも魔王になるからね♪」

ヒトミは切り替えが早いのか、さっきまで壊れかけていた気がするのにもう明るくなってやがる。

ヒトミの目をジッと見ていたら、ヒトミはニコニコしたまま少しだけ疑問を含んだ表情で首を傾げた。

無理して明るく振舞っているわけではないっぽいな。全てを含めてヒトミの性格なんだろう。

「あぁ、期待してる。」

「ウフフ♪ありがとう♪頑張るね♪」

向上心のあるやつは成長も早いだろうから、思ったことをいっただけなんだが、これだけでヒトミのやる気がさらに上がったように見えた。

まぁ、人に期待されると嬉しくなる気持ちもわからなくはねぇけど。

「リキ様?」

ヒトミとの会話がひと段落ついたところで、なぜかセリナが恐る恐るといった感じで声をかけてきた。

「どうした?」

ジッと目を見られている意味がわからず眉根を寄せていたら、セリナがニカッと笑ってヒトミと反対側の腕に絡みついてきた。

「いや、何がしたいんだ?」

「リキ様が戻ってるかの確認だよ〜。またおかしくにゃっちゃったのにゃらアリアに頼まにゃきゃだからさ〜。」

そんなに警戒されるようなことをした記憶がないんだが…。

というか、またっていわれたが、俺がおかしくなったことなんてあったか?それともセリナはちょいちょい俺をおかしなやつだと思ってたってことか?

「まぁいい。そういや、俺の記憶よりオーガの死体が多いんだが、何かわかるか?」

俺の質問に対して、なぜかセリナが目を見開いた。

「え?覚えてにゃいの!?私たちが奇襲したあとにオーガキングが咆哮して仲間を呼んだんだよ?そのせいで私の察知範囲外にいたオーガたちがどんどん集まってきて、正直逃げたいくらいだったのにリキ様は私の声を無視するし、周りを気にせず暴れるからリキ様に近づくことも出来にゃいしで、凄く大変だったんだよ!?」

それで俺から離れて戦っていたわけか。やっぱり戦闘狂はなしだな。

「それは悪かったな。次から気をつけるよ。そんなことより、他のオーガが集まってきたって、今まで一度もセリナの察知範囲に入ってないのにどこにこんな大量にいたっていうんだよ?」

「そんにゃこと…いや、うん、いいんだけどさ。オーガたちがどこにいたかっていうのは私も不思議にゃんだよね。ほとんどが森のさらに奥から来てるのはわかってるんだけど、オーガキングからそんにゃに離れた場所にいる意味がわからにゃいんだよね。それが違う集団だっていうにゃらわかるけど、咆哮を聞いて集まってくるってことは同じ集団だろうからさ。」

俺はセリナが何に疑問を抱いているのかがわからない。

べつに手分けして狩りをしていただけかもしれねぇし、集落みたいなところにいたやつらがあの咆哮を聞いて駆けつけただけかもしれねぇじゃん?あれだけうるさい咆哮なら、セリナの察知範囲外まで届いてもおかしくねぇし。

「どういう意味だ?」

「どういう意味って?」

俺の質問に対して、可愛らしく首を傾げて質問を返された。

意識して可愛くしてるわけじゃないんだろうが、素材がいいせいかあざとく見える。顔がいいっていうのもデメリットがあるんだな。

俺がどうでもいいことを考えていたら、アリアが近くに来たから目を向けた。

困ったときのアリアだ。

「…魔族であれば1つの集団を複数に分けるという知識がありますが、魔物でそういう考えを持っているものはほとんどいません。仮にいたとしても、その場合は強い個体が森でいえば中心、山でいえば頂上の方にいるのが一般的です。なので、このように逆の配置になることは普通はありません。それに先ほどオーガキングを観察した限りでは集団を統率する知能があるようには見えませんでした。つまりは力だけで上に立っていたのでしょう。だからこそ分散していることにセリナさんが違和感を得たのだと思います。」

俺が理解できてなかったからか、アリアが詳しく教えてくれた。

隣のセリナからは「そこから!?」みたいな目を向けられている気がするが、常識だったのか?まぁ今知ったから問題ないだろ。

もちろん余計なことをいわれないようにセリナとは意図的に目を合わせず、アリアの方を見続けている。

「オーガキングが自分の力を過信して人間を狩ろうとしてたからとかじゃないのか?」

「…人間を狩ろうと思っていたにしては場所が中途半端かと思います。ここまでくる人間は頻繁にいるわけではないと思うので。それに魔物は他の魔物を狩ることも基本はありません。稀に力を得られることに気づいてしまって他の魔物や同種の死体を食べる魔物が現れることもありますが、その場合でも分かれて狩りをするという発想は出てこないかと思います。」

「私たちに気づいてる様子もにゃかったから、察知範囲も狭いだろうし、何かを狙って移動していた感じではにゃさそうだしね〜。」

「裏に操ってるやつがいるってことか?」

「…それはわかりません。わたしが気づけなかっただけで、あのオーガキングが特殊な個体だった可能性もあります。強いて怪しい者をあげるなら、ここに来る途中で出会った魔族ですが、もう確認の取りようがありません。それにオーガたちも全て倒してしまったので、誰かが何かを企んでいたのだとしても、もう関係ないかと思います。」

「誰かの計画を阻止しちゃったのだとしたら恨まれるかもしれにゃいけど、私たちを恨む人たちが増えたところで特に何も変わらにゃいしね〜。」

「文句をいわれたら黙らせればいいだけだしね♪」

両隣の声のトーンと内容が一致してないような気がするが、殺しちまったものはどうにもならねぇし、気にするだけ無駄か。

恨まれたところでどうでもいいしな。

「まぁそうだな。」

俺が答えたタイミングで腰にポスッと軽い衝撃があったから首だけで振り向いて確認すると、狐耳が見えた。テンコが後ろから抱きついてきたようだ。

というか、こいつらはなんで俺にくっついてんだ?両腕と腰を掴まれてるんだが、拘束されてる気分だな。

他のやつらに目を向けるとイーラとサーシャは死体処理をしているようで、ウサギとヴェルは暇そうにこっちを見ている。ニアも2人の隣にいるんだが、なぜか目を閉じて深呼吸をしている。これだけの戦闘をしたあとだから、意識的に心を落ちつせてるのかもな。

空を見上げて明るさを確認してみたが、まだまだ明るいから、もうちょいレベル上げしとくか?

「イーラとサーシャが死体の処理を終えたら、町に戻りながらこの森でもう少し魔物退治をしていくか。そういや、ヒトミはなんか新しいスキルとか手に入ったのか?」

「もちろん♪得たスキルの中で便利なのだと『影収納』だね♪影がある場合限定だけど、リキ様の『アイテムボックス』のようなスキルが使えるようになったよ♪あとはスキルじゃなくて加護だけど、念願の『物理無効』が手に入ったよ♪これで戦闘面でもリキ様の役に立てるね♪」

めちゃくちゃ上機嫌で話しながら、『影収納』を実演するように影から鉄片を取り出して、しまい直した。あれって壊れたモーニングスターの破片だと思うんだが、わざわざ拾ったんだな。

それにこのいい方だと他にもスキルとかを得ていそうだが、一気に聞いても覚えられないだろうから聞かないでおくか。

ヒトミがわざわざ選んで教えてきたってことは他はたいしたスキルじゃないかもだし。

まぁ、物理無効を手に入れてるだけで十分凄いからな。

「凄いな。これからもよろしくな。」

「はい♪」

満面の笑みのヒトミの返事を聞きながら、自分のジョブを確認してみると、剣士がカンストしてやがった。

剣なんて一切使ってないのに剣士レベルマックスとか意味わからんな。

まぁ魔法使いや魔術師がカンストしたときもほとんど魔法を使ってなかった気がするし、今さらか。

剣士はカンストしたのにスキルが増えてない気がするんだが、既に持ってるスキルだったのかね?それとも固有スキルを持ってないとか?

まぁスキルが増えないならべつに取り替えて問題ないから、戦士と取り替えておくか。

剣士がカンストするほどの経験値を得られたことに驚いたが、それだけの経験値を得ても格闘家のレベルが28にしかなっていないことにも驚いた。

上限があるジョブなのにかなり上がりづらいんだな。

試しにファーストジョブにしてみたが、さすがにまだ魔王の方が全体的にステータスが高いから、魔王をファーストジョブにしておく。まぁでも、物理系のステータスはもうちょいで格闘家が超えそうではあったから、物理戦闘タイプの俺にとってはけっこう当たりジョブかもな。

どうやら死体処理が終わったらしく、イーラが走って向かって来るのが見えた。

そこそこ離れた位置から走って向かってきているんだが、徐々に速くなっている。

イーラは人型で速度を出すのがあまり得意ではないイメージだったが、犬型や龍型のときの速度が異常なだけで十分速いと思うがな。

かなり近づいているのに減速しないことに嫌な予感しかないと思っていたら、あと少しというところで止まるどころか飛びついてきやがった。

これはけっこうやばいぞ。

避けようかと思ったら、両腕を拘束されているせいで、思うように動けないことに気づいた。

セリナとヒトミはそこまで強く握っているわけではないのかもしれないが、俺が避けると判断するのが遅れたせいで、この程度の拘束でも避けの選択肢が取れないみたいだ。

なら耐えるしかないかと足と腹に力を入れたところで、イーラの顔と俺の胸板が衝突した。

ぶつかる位置が予想と違ったから、咄嗟に胸に力を入れて耐えた。

普通に考えたらイーラの顔面が潰れるか、首の骨が折れる勢いだったはずなのに、何もなかったようにニコニコしてやがる。

そういや俺もあの威力を受け止めたわりにはそこまで痛くねぇなと思ったら、どうやらテンコが俺に精霊の力を使って身体強化をしてくれたみたいだ。

しかもイーラのタックルの衝撃が完全になくなったところで、身体強化の効果を解除したようだから、俺がテンコに1人の戦力として戦ってくれっていったのは俺が強化なしでも戦えるように訓練したいからだってことをちゃんと理解してるのかもな。

言葉はカタコトだが、もしかしたらけっこう頭がいいのか?

まぁどちらにせよ関係ないところで怪我せずにすんで助かった。

「いつまで絡みついてんだよ。死体処理も終わったから行くぞ。」

4人の拘束を解こうとしたところで、サーシャがアリアに何かを渡しているのが見えた。

あれはオーガキングのツノ?

もしかして討伐証明のためか?

まさかサーシャがそこまで考えが及ぶなんて意外だなと思いながら、全員の返事を聞き、町の方へと向かうことにした。

帰りも魔物狩りをするつもりだから、来た道とは少しズレた道なき道へと俺らは進んでいった。