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323話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

323話

ソフィアへの返答に困って先に部屋から出たのに、明かりを消したことで真っ暗となった階段や廊下をソフィアがまともに進めないからと、また俺が脇で抱えることとなった。

申し訳なさそうにしているソフィアにたいして文句をいうつもりはないが、なんだかな…。

けっきょくたいした問題もなく目的も達成して、あとは帰るだけだと少しだけ気が緩んだ状態で塔から続く廊下を進んでいたんだが、城のメイン部分に繋がる扉を開けたところで、セリナの空気が急に変わった。

そしてしばらく耳をピクピク動かしたあとに何もいわずに扉を閉めた。

「どうした?」

「入るときには気のせいかにゃって思ったんだけど、気づかれてるみたい。私たちを意識してる人たちが離れたところに数人いるっぽい。」

セリナにいわれて俺も気配察知の範囲を薄く広げてみようかと思ったが、普通の扉を隔てた先ですらわかりづらいのに、こんな分厚い扉の先なんてどうせ俺にはわからんだろうからやめた。

「敵意とは違うのか?」

「ん〜…けっこう離れたところにいるから絶対に違うといえるほどの確信はにゃいけど、敵意というより私たちを監視してる感じかにゃ?タイミングからして、1つ前の塔で会った魔族が監視をつけたのかもね。」

そういやなんの問題もなくはなかったな。

特に何も起きなかったから問題としてカウントしてなかったが、侵入してるときに人に会ってるんだから、もっと警戒するべきだったか。

「裏口から逃げるのは厳しそうか?」

「いや、むしろまるで誘われているかのように裏口に行くまでの経路には誰もいにゃいみたいだったよ。」

どうすっかな。

なりふり構わないなら1番近い城壁を壊して逃げるのが捕まらない確率が高いかもしれないが、レベル上げに向いてるとかいわれてるらしい町をこんなことで離れなければならなくなるのも馬鹿らしい。

だから今回は人も物も極力壊さずに済ませるべきだろう。

レガリアを眠らせて『超級魔法:扉』を使っちまうか?

だが、監視されてる中で急に俺らが消えたら、それはそれで犯人探しに力を入れられそうだな。逃走方法を確認するためにも。

それにこの国のやつらがケモーナの王女殺しのことを知ってたりしたら、俺らが怪しまれる可能性も高くなっちまうしな。ローウィンスには俺が移動系のスキルを使ってやったってバレてたっぽいから、他にも勘付いてるやつがいるかもしれねぇし。

だから今回はそれしか手がなくならない限りは『超級魔法:扉』を使うのはやめておくか。

そういや俺らはあの魔族に王の命令でって話をしてるし、とりあえずは極力戦闘せずに裏口から突破が無難だろ。

「誘われてるっていうなら普通なら逆を行くべきだが、基本は戦闘はなしで逃げに徹するつもりだから、正門か裏門しかないなら警戒されていても裏門を使うしかないだろ。やむを得ない場合はある程度は戦闘するしかないが、俺らだとバレないようにはしたいところだな。」

「にゃら、この扉を出たあとは喋らにゃい方がいいかも。何がヒントににゃっちゃうかわからにゃいからね。リキ様は有名だから、声だけで気づかれるかもしれにゃいし。」

「俺はそんな特徴的な声ではねぇと思うが、まぁ可能性がないとはいえねぇか。じゃあ、何かあれば念話を送るが、基本は逃げ一択だ。道は一応覚えているし、あとは俺が先導するからセリナは影に隠れておけ。イーラは急な攻撃を受けるかもしれないが、アリアとレガリアを頼むぞ。ヒトミも出来るだけ俺の変装を解かないように頼むな。ソフィアも気をつけろ。」

「はい。」

最後の声かけに全員が返事をした後、セリナが俺の影に入ってきた。

準備が整ったところで扉を開け、近場に人がいないことを確認しつつ城へと入った。

ここからは明るいから大丈夫だろうとソフィアを立たせ、小走りで裏口に向かった。

陣形はセリナが抜けただけで、前から俺、ソフィア、アリアとレガリアの順だ。

俺らを監視しているやつらが裏口までの道で邪魔する気がないのならと最短距離で向かっているが、実際に誰も邪魔をしてこない。それどころか、俺の薄く伸ばした気配察知範囲内には誰もいない。今まで見回りで廊下を歩いていた騎士すらも。

セリナが俺らを監視してるやつがいるっていっていたから、実際に監視はされているんだろう。だが、俺の察知範囲にいないってことはセリナ並みに察知能力に長けたやつに遠くから見張られているのか、もしくは部屋の中から透視スキルで見られているって感じか。

後者ならちょっと羨ましいスキルだな。

けっきょく誰にも会うことなく裏門から1番近い裏口の扉まで来たんだが、やっぱり罠だったっぽい。

いやまぁ、ここまで誰にも会わないどころか気配すらないのはどう考えても不自然だったもんな。このまま何もなく裏門から出られたら、それはそれでこの国のやつらが無能すぎだろ。

来るときには裏門の内側の警備は2人だけだったんだが、3人増えていやがる。しかもこっちを向いて警戒しているやつもいるし、待ち伏せされてんだろうな。

相手までは距離もあるし、接敵するまで少しの時間が取れるから、その間に魔法で眠らせるのが無難かもな。

「ソフィア、裏門のそばで待ち伏せされているが、関係なく走って突っ込む。門のところに着くまで少し時間があるだろうから、その間に魔法で相手を眠らせてくれ。全部で5人だ。相手が寝たかどうかを確認せずに突っ込むから、よろしくな。」

俺が念話で全員に送ると、頷きを返された。

俺も心の準備をし、いざ扉を開けて走り出そうと一歩踏み出したところで、視界の隅に人影が映った。

嫌な予感がして首だけを右に動かし確認すると、ナイフを持った黒ずくめのやつがいた。というか、そのナイフで俺の首をぶっ刺そうとしてやがる。こいつから見たら今の俺は鎧姿のはずなのに、迷わずナイフで俺の首を狙ってくるのか。

咄嗟に半歩下がりながら左手でナイフを受け流し、特に意識せずに右手で相手の脇腹を殴ろうとしたところで慌てて止めた。

腕の力だけのパンチだったからか、相手に当てずになんとか止められた。

今は俺らが侵入者だから極力何もせずに脱出したい。

騒ぎが大きくなればなるだけ犯人探しもしつこくなりそうだし。

俺が寸止めしてから一瞬の間をおいて、目の前の黒ずくめが体に力を入れたのが見えた。

この反応速度からして戦闘能力自体はたいしたやつではなさそうだし、さっきのタイミングで殴ってたら、殺しちまってた可能性があるな。危ない危ない。

握っていた右拳を開いて相手の脇腹に当て、力の限り斜め上に押し出した。

バランスを取るのが難しかったが、なんとか相手を放り投げることが出来たようだ。

いきなり空中に投げ出された相手は一瞬慌てた様子を見せたが、すぐに体を捻って着地の体勢を取ろうとし始めた。

今投げ飛ばしたやつは戦闘センスはイマイチでも速度はありそうだが、着地してからまた俺らに近づくより、ソフィアが魔法を使う方が早いだろう。

俺の気配察知で気付けなかった相手がいたことは予想外だったが、問題というほどでもなさそうだし、予定通りに裏門に向かって走った。

裏門の前には全身鎧姿のやつが2人と冒険者っぽい女が1人にそれを守る位置に立つヘルムなしの金属鎧を着て大盾を持った男が1人、あとは私服っぽい服装で余裕の表情を浮かべた男が1人いる。

私服男は一歩前へと出た。

まだ剣の間合いでも槍の間合いでもないと思うんだが、既にこの男の間合いなのか?

『エクスプローーーーージョンッ!!!』

男が魔法名を口にした瞬間、俺ら全員を巻き込むような爆発が起きた。

男は無駄に叫ぶように魔法名をいっていたから、魔法が発動する前に止まって身構えることは出来たおかげでそこまでのダメージを受けずに済んだんだが、魔法攻撃をするつもりだったのなら、さっき一歩前に出てきたのはなんだったんだ?一歩程度で届くかどうかが変わるわけでもねぇだろうし。

というか、ソフィアは無事か!?

俺は背中からかなり強めの衝撃があったから、ソフィアもモロに食らっているハズだ。

土埃のせいで目視はできないが、気配察知で感じる限りでは俺の真後ろで普通に立ってやがる。防御用の魔法陣も仕込んでたのか?

「「「オオォーーーーーー!!!」」」

ソフィアが無事だったみたいだし、また走り出そうかと思ったら、いきなり歓声が聞こえた。

声が聞こえてくる方向からして、城壁の上のやつらも見ていたらしいな。ただ、こっちは全員吹っ飛びすらしていないのだから、そんなに驚くほどの威力ではないと思うが。

「あれ?俺また何かやっちゃいました?」

歓声のせいで走り出すのに躊躇していたら、やけにアホっぽい声が聞こえてきた。

「こ…この威力は……。」

「もしかして加減しすぎちゃったかな?」

「「「加減してこの威力だと!?」」」

なんか盛り上がってんな。

まぁおかげで隙をつけそうだ。

砂埃が薄れてきたから再度走り出すことを手振りで伝えようかと後ろを振り向いたら、さっきの黒ずくめのやつがソフィアに接近してやがった。

こいつ、また気配がわからんかった。

咄嗟に一歩踏み出しながら手を伸ばしたら、なんとかナイフがソフィアに届く前に右手で握ることが出来た。

そのまま握り砕き、今度は脇腹を軽く殴った。

黒ずくめは脇腹を押さえながら殴られた勢いを流すように転がり、少し距離を取ってから立ち上がって警戒するような姿勢をとった。

というか、ソフィアはまだしもイーラを纏ったアリアが無反応なのはなんでだ?黒ずくめが見えてないのか?

「なに!?全員が身代わりの加護付きアクセサリーを持っていたというのか!?それは予想外だが、俺の力は魔法だけではない!顕現せよ!サラマンダーーーーーッ!!!」

「「「オオォーーーーーー!!!」」」

またなんか盛り上がってるんだが、なんなんだこいつらは。侵入してる側の俺が思うのもおかしな話だが、国の1番重要な建物に侵入されてんのに危機感がないのか?

呆れながらも黒ずくめから完全に目をそらすことのないようにチラッと声の主に目を向けた。

どうやら私服男が今度は何かを召喚したみたいだ。

火を纏ったトカゲ?サラマンダーとかいってたか?

「サラマンダー、火の大精霊。でも、凄くない。テンコ、凄い。」

なんか少し不機嫌そうなテンコの声が中から聞こえてきた。

同じ大精霊でも格の違いでもあるのかね?いや、まぁドラコはたしかに格が違ったとは思うが。いや、テンコも今まで見てきた大精霊とやらと比べたら十分規格外か。

「サラマンダー!ブレスであいつらを焼き尽くせ!!!」

この私服男は侵入者を捕まえて尋問するとかの発想はねぇのか?使ってる魔法からして完全に殺す気だろ。それなのに殺気はそこまで感じないのが不思議だが…俺らがゴブリン程度の雑魚にしか見えてないのか?

勢いよく近づいてくる炎をどう処理するかと考えながらも黒ずくめに意識を向けているんだが、こいつは炎が当たらない位置で俺らの隙を狙ってるっぽいな。

動きからして黒ずくめだけは他のやつらと違って戦闘慣れしてそうだ。雰囲気的にはデュセスに近いか?まぁデュセスの方が強いだろうけど。

さっきの『エクスプロージョン』とやらで無傷だったんだから、このまま受けてもいいかななんて思っていたら、急に強い風が吹いて炎がかき消えた。

「「「…………え?」」」

私服男も含めてギャラリーが呆気に取られている。

「いきなりあんな強い向かい風が吹くとはお前らも運がいいな。だが、次はない!サラマンダー!もう一度だ!!」

「テンコ、サラマンダーより、強い。サラマンダー、黙らせる。」

私服男がサラマンダーとやらに再度指示をするのと同じタイミングでテンコが自分の方が強いと主張してきた。

というか黙らせるって何をするのかと思ったら、サラマンダーは私服男に従わず、尻尾を丸めて俺らにケツを向けてきた。体に纏ってる炎も弱まってる?

サラマンダーの行動が気になるが、黒ずくめが反対側に回ろうとしているせいで、ヘルムの視野が狭いこともあって観察できない。

いや、ソフィアはなんで俺を不思議そうな目で見てやがる?さっき黒ずくめに殺されかけたんだから、もっと黒ずくめのやつに注意を向けろよ。まぁでも魔法の準備は終わったっぽいから良しとするか。

黒ずくめだけは気を抜かずに俺らの隙を伺ってるみたいだが、ソフィアの準備が終わったみたいだからここまでだな。

ソフィアが左手を上げて手のひらを広げたら、その手のひらから光が打ち上がり、城壁の高さに至ったところで弾けるように光の粉がかなりの広範囲に舞った。いや、舞うというより降るという方が正しいか?

「サラマンダー!?どうしたんだ!?早くそいつらをブレ…ス……で…。」

城壁を越える高さまで上がった光が粉状に広がったと思ったら、すぐに地面まで落ちてきた。そんで、その光に触れたやつらがバタバタと倒れていった。

俺もかるく見上げたことでヘルムの隙間から粉が目に触れた瞬間に急な眠気に襲われたが、一瞬耐えたらなんともなくなった。

というか、ソフィアの魔法は敵味方関係ないのか。いや、まぁ誰も味方は寝てないからいいんだけどさ。

ん?黒ずくめのやつも倒れてはいるんだが、右手で腰のポーチを探ってる?

こいつはソフィアの魔法になんとか耐えて、薬を探してるっぽいな。

まぁ、関係なく帰らせてもらうけど。

俺が顎で門の方を示してから走り出すとちゃんと全員がついてきたようだ。

しかもソフィアの魔法はよほど広範囲だったのか、裏門の外側のやつまで眠っていてくれたようですんなりと外に出ることが出来た。

黒ずくめから目を離せるようになったときにはサラマンダーがいなくなってたから、ちゃんと見れなかったな。形ある精霊はあんま見る機会がないから、本音をいえばちょっと見てみたかったが、まぁいいか。

裏門を抜けてからはそのまま裏道を通りながら王城から離れ、しばらくしたところで立ち止まってから、集中して気配察知の範囲を広げて誰もいないことを確認した。

セリナは自分で気配を探って平気と判断したのか、影からニュルッと出てきた。

「もう大丈夫そうだ。ソフィアは騎士たちを眠らせた魔法を解除していいぞ。」

「皮膚を代用したスクロールで使用した魔法はワタクシと繋がっているわけではありませんので、解除はできませんわ。ですが、そろそろ魔法の効力が切れるとは思いますので、ご心配せずとも平気かと思いますわ。」

「それならいい。イーラとヒトミももう変身を解いて平気だ。」

「「はい。」」

イーラが変身を解きつつ分身を回収した瞬間、解放されたレガリアがそのまま力が抜けたように尻餅をついた。

「今回はソフィアの番だってアリアがいうから譲っただけで、イーラの魔法だったら解除だって出来たんだからね!」

レガリアに近づこうとしたら、イーラがいきなりわけわかんねぇことをいって腕に抱きついてきた。

そういやイーラは魔法名すらいわずに魔法が使えるんだから、声でバレる可能性とか考慮する必要がないし、痛みを伴うソフィアに無理にやらせる必要はなかったんだな。

「…イーラ。」

「うぅ…。」

アリアが名前を呼んだだけで、イーラが言葉を詰まらせて俺の腕から離れて俯いた。

イーラもアリアのいうことは聞くんだな。

というか、今回はソフィアが久しぶりに同行したからとアリアが見せ場を用意したってことか?いや、魔法陣関係だけで十分に凄かったから、そこまで気を使わなくても良かったと思うんだが、それを今いう必要はねぇか。

「イーラが凄いのは知ってるから、そんな張り合う必要はねぇよ。それにイーラが我慢してくれたから、ソフィアが凄いのも見れて満足できたし。アリアも気を使ってくれてありがとな。ソフィアも見事な魔法だったぞ。」

「「「はい!」」」

「あたしだって痛いの我慢したのにな♪」

「ヒトミもありがとな。おかげで俺はたいした怪我もせずにすんだよ。」

『ハイヒール』

ちょっと拗ねた感じを出していたヒトミの頭に右手を置いて、念のため回復魔法をかけておいた。

たぶん魔法が直撃して俺が無傷だったのはヒトミのおかげだったんだろうしな。

「あぁ、セリナもあんがと。」

セリナも何かをいおうとしてきたから、軽く手を振って先に礼をいった。

そのせいで尖がらせてた口のままのセリナが目を見開くという面白い顔をした。

「私にだけにゃんか軽い!?」

「そんなことねぇよ。んで、レガリアは大丈夫か?さすがに丸一日水すら飲めなかったあとの移動は辛かったか?」

セリナを軽く宥めながらレガリアに声をかけたら、レガリアは俺と目を合わせながらパクパクと鯉のように口を動かした。

「もしかしてさっきの爆発が怖かったか?だとしたらすまなかったな。いきなりすぎて反応出来なかった。」

「……リキさんはなんなんですか?」

「なんなんだってどういう意味だ?」

「お父様からリキさんは二つ名を持つほど有名で強い冒険者だと伺いました。ですが、まさか勇者様の魔法を受けても傷一つ負わないほどだとは思いませんでした。いえ、リキさんだけならまだ納得できたかもしれません。ですが、お連れの方々まで無傷なこともおかしいですし、私が火傷一つ負っていないのも意味がわかりません。そもそも鎧に姿を変えたり分裂したりとわけがわからないのですが…。」

あぁ、たしかに普通に暮らしてたら魔族と関わることもないからわからねぇか。

というか、あいつらの誰か…いや、魔法攻撃してきたのはあの男だけだから、あれが勇者か。

アラフミナの勇者よりは強そうだったかもしれないが、あの程度で調子に乗ってるようじゃなんの期待もできねぇな。

「あの男の魔法で俺らが無傷だったのはあの男が弱かっただけだ。前に同じような魔法をくらったときは直撃してないのに吹っ飛ばされて死にかけたからな。それに二つ名を持っていれば強いっていうなら、アリアとイーラとセリナも持ってるぞ。あと、イーラとヒトミは魔族だから俺らに出来ないことも出来たりする。ちなみに既に見られたから隠さず教えてやったが、誰かに教えたりはすんなよ。もちろん親にもな。」

「テンコ、大精霊、強い。サラマンダー、弱い、一緒に思う、ダメ!」

「うぇ!?」

俺がレガリアに説明を終えたところで、いきなり俺の腹からテンコがニュルッと顔を出したせいで、レガリアがかなり驚いた顔をした。

「これはワタクシも自己紹介をすべきなのでしょうか?えっと、鳥人族のソフィアランカですわ。よろしくお願いいたします。」

「こちらこ…え?……うぇ!?」

「あっ…。」

テンコが自己紹介っぽいことをしたせいで、唯一名前が出なかったソフィアがあらたまって自己紹介をしながら『人族化』を解いた。

そのせいで慌てて答えようとしたレガリアがまた驚いて言葉に詰まったようだ。

まぁいきなり頭からデカい一本の羽が生えたり、ローブが膨らんで少し持ち上がった裾から羽がはみ出てきたら驚くわな。

ソフィアはソフィアで人族用の服を着た状態で『人族化』を解いたらどうなるかを考えていなかったようで、失敗したって顔をしてすぐにまた『人族化』を使ったようだ。

一度にいろいろ許容範囲を超えたっぽいレガリアがアワアワとしていたが、一度目を閉じて深呼吸をしたことで少し落ち着いたっぽい。

「イーラさんとヒトミさんは魔族なのですか?」

「そうだよ。」

「そうだけど、何かな♪」

「あ、いえ、何というわけではないのですが…。」

レガリアは自分から聞いておいて、なぜか萎縮してやがる。

「だからさっきこの町には身分証さえあれば魔族が入れるってハッキリといったんだよ。俺らが入れてるからな。あと、イーラもヒトミも俺の使い魔だから怖がる必要はねぇよ。そんなことよりさすがにもう帰るぞ。夜中でもお前ん家は門番とかいるよな?」

「あ、えっと…あの、も、門番はいます。」

話が進まなそうだから俺が口を挟んだら、レガリアはあたふたしながら俺の最後の質問にだけ答えた。

「なら今から帰っても問題ねぇだろうから、家まで送ってやるよ。」

「あ、え、…ありがとうございます。」

まだ混乱しながらも礼はちゃんと出来るやつらしく、座ったまま深く頭を下げてきた。

「というか立てるか?」

「……お恥ずかしながら、足に力が入りません…。」

「さすがに町中でイーラに変身させたくねぇから担ぐぞ。」

「え、あ、はい。うぇ!?」

レガリアが返事をした直後にレガリアの胴に腕を回して肩に担いだら変な声を出された。

レガリアのドレスのスカートが少し膨らんでるせいで前が見づらいが、このくらいなら許容範囲か。

レガリアのドレスはウエストの位置が高いうえにスカートが膨らんでるから脇には抱えづらそうだし、おんぶも無理だ。だからといって年の近いやつをお姫様抱っこして町を歩くのもなんか嫌だし、引きずって帰るのはさすがになしだろう。だから肩に担ぐしか選択肢がねぇんだよな。

まぁレガリアの家まではそこまで遠いわけでもないから、右側がレガリアのスカートで見えづらくなってても問題ないだろう。今はセリナも影から出ているしな。

レガリアの位置を微調整してから俺らはとりあえずレガリアの家へと向かった。