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345話

裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ】 — novelba.com · All chapters

345話

前にリスミナとデュセスと3人で冒険者ギルドの依頼を受けたときに来た山の麓に到着した。

前にここで薬草採取をしてるっぽいやつを見たから、ここでいいかなくらいの軽い感覚で来たんだが、かるく周りを見渡したところでさっそく観察眼に反応する草があった。

近づいてちゃんと確認してみるが、ただの草だな。まぁ観察眼に反応してるっぽいから何かしらの効果のある草ではあるんだろうし、とりあえず取っておくか。

「薬草っててきとうに引きちぎって大丈夫か?」

「……え?」

草を取ろうと手を伸ばしたところで薬草採取の正しい方法がわからないことに気づいたから、一応リスミナに確認したらなぜか驚かれた。

「俺は採取依頼とかやったことないから、よくわからなくてさ。たまにアリアがやってるのは見てたんだが、ちゃんと見てたわけじゃないから、出来れば教えてほしい。」

「え?あ、そっか、リキくんから誘ってくれたから知ってるものだと思って驚いちゃって……ごめんね。えっと、その場で使うつもりなら千切って問題ないんだけど、保存用だったり売るつもりなら薬草によって取り方が変わってくるんだよね。間違いないのは根ごと全部綺麗に取ることなんだけど、そうすると次に生えてこなくなっちゃう場合もあるし、生えるとしても根が残ってるときよりとても遅いから、なんでもかんでも根ごと取るのはオススメしないかな。」

いわれて気づいたが、俺から誘って俺がやり方を知らないとか意味不明だよな。だが、草ごとに取り方が違うとか覚えられる気がしねぇ。観察眼が反応したっぽいから薬草だろうと思ったけど、正直いって俺には雑草との区別がつかねぇし。

鑑定すればさすがに名前くらいはわかるが、取り方までは……いや、鑑定でよく見れば、この草のどの部分にどういった薬効成分がうんちゃらって書いてあるな。根っこまで成分があるみたいだし、引っこ抜けばいいのか?

まぁ一応リスミナに聞いておいた方がいいだろう。

「そういうものなのか。じゃあこれは?」

俺が鑑定で『レアナソウ』と名前が出てきた草を指差して確認すると、リスミナはその草を見て少し驚いた顔をしながら近づいて俺の横にしゃがみこみ、その草をよく確認してから顔を俺に向けた。

「やっぱりレアナソウみたいだから、根ごと綺麗に取るべきだね。これは調合するときに根も葉も茎も全部使うらしいから、葉や茎だけだと買い取ってもらえないかも。それにしてもいきなり珍しいレアナソウを見つけるなんて凄いね。」

「そうなのか?」

「レアナソウは根ごと採取するから、一度取っちゃうと同じ場所ではしばらく採取できなくなっちゃうせいもあるかもだけど、あまり出回ってないみたいだよ。といっても、少しだけ普通品質のポーションの質を上げる程度の効果だから、わざわざ採取依頼が出されるほどではないんだけどね。でも買取はいつでもしてもらえるよ。」

いろいろ詳しいんだな。

さすがソロでやってきただけある。ソロじゃ俺みたいに知識を人任せには出来ないからな。

「採取の見本を見せてもらってもいいか?」

「私も久しぶりだから、失敗したらごめんね。」

そういって、リスミナはアイテムボックスから手持ちサイズの小さなスコップを取り出して、レアナソウの周りの土にぶっ刺して掘り起こし、それをレアナソウを中心に少しずつ円を描くように繰り返した。

掘り起こし作業が一周終わった後は手で土を掘り分け、レアナソウが傾き始めたところで丁寧に根についた土ごと持ち上げた。

最後に根についた土をある程度落として終わりみたいだ。

面倒そうではあるが、そこまで難しそうではないな。

「こんな感じかな。」

久しぶりなのにスムーズに終えられたからか、リスミナが上機嫌な笑みを浮かべながらレアナソウを渡してきた。

「いや、それはリスミナが採取したんだからリスミナがもらってくれ。この後も新しい薬草を見つけるたびに見本を見せてもらいたいと思ってるから、見本として採取したものはリスミナがもらってくれないと頼みづらい。」

「う〜ん……まぁそういうことならお言葉に甘えようかな。レアナソウなら普通の値段で買い取ってもらえるだろうし。ありがとう。」

「代わりといってはなんだが、もしスコップを2つ持ってたら貸してくれないか?」

「リキくんらしいね。いいよ。はい、これ使って。」

「ありがとう。」

なぜか微笑みながら新しくアイテムボックスから取り出したスコップを貸してくれた。

手持ちサイズではあるが、リスミナのより一回り大きいスコップだ。サイズ違いで複数揃えてんのか?

「あそこにヨクアリクサがいっぱいあるみたいだから、そこで採取しながらリキくんの話を聞いてもいい?」

リスミナがどこを指差してるのかいまいちわからないんだがと思ったら、観察眼のおかげかなんとなくどれのことをいってるのかがわかった。

というか、話をするために来たんだったな。すっかり忘れてたわ。

気配察知で確認した感じ、声が届きそうな範囲に魔物以外はいないっぽいからちょうどいいな。

「そうだな。とりあえずあの草の採取方法を教えてもらっていい?」

「もちろん。」

2人でヨクアリクサとかいう草の群生地に近づき、1番手前のところで屈んだ。

「これはどこにでもある薬草だから根ごととっても問題ないけど、使うのは葉だけだから、この部分に傷がつかないようにこうやって千切れば大丈夫だよ。」

リスミナが見せてくれた見本通りに葉っぱを引っ張ったら、簡単に取れた。

「これなら俺でも普通に出来そうだ。ありがとう。」

「どういたしまして。それで、話って何かな?」

「そんなたいした話ではないんだが、リスミナがソロで冒険者をやっていくのは大変かと思ってさ。」

「たしかにちょっと大変ではあるかな。報酬を独り占めできるのはいいのかもしれないけど、代わりに1人だから危険が増すしね。…人に聞かれたら困る話で、私の冒険者としての話って……先着1名でパーティー募集してる知り合いがいるとか?」

リスミナが少しだけ期待するような目を向けてきた。

そんなにパーティーを組みたいのかね。

「残念ながら違う。ソロで冒険者をするなら知ってて損はないだろうスキルを教えておこうかと思っただけだ。まぁ既にリスミナが知ってる可能性もあるけどな。」

「そっか…。でも、役立つスキルを教えてもらえるのは純粋に嬉しいな。知らないとSPで取れるかすら確認できないからね。でも、いいの?スキルの情報ってモノによってはけっこうなお金になるって聞くよ?」

一瞬だけ悲しそうな顔をしたリスミナがすぐに笑顔に戻ったんだが、教えていいのかを少しだけ困ったような顔をして確認してきた。

リスミナはけっこう表情豊かだよな。

「情報を渋ったせいでリスミナに死なれる方が嫌だから、リスミナに無償で教えるのはいいんだが、リスミナは誰にもいわないように気をつけてほしい。」

「あ、ありがとう。も、もちろん誰にもいわないよ!」

なぜか少し照れたような顔になったリスミナが噛み噛みで答え、最後はなんか勢いで誤魔化したっぽいな。

リスミナの性格なら周りから心配されるのが初めてってことはないだろうに、最近ソロでいたせいで免疫なくなったのか?

まぁいいか。

「リスミナはSPって残ってるか?」

「アラフミナに来てからはほとんど使ってないから、30ちょっとくらいはあるけど、もしかして足りない?」

「いや、十分だ。ちなみにSPで取るスキルを選ぶときってどんな風に見えてる?」

俺がふと気になった質問をしたら、リスミナがよくわからないといった顔で首を傾げた。

やっぱりスキルとかは見てるわけじゃないのか?

「見えるってどういうこと?思い浮かべるだけで確認できると思うんだけど、もしかして…え?自分がSPで取れるスキルの一覧を目視出来るの!?知らなかった!凄い!」

今の俺の質問だけで、目視に切り替えることが出来たみたいだ。アリアたちも今は目視で確認できてるし、知っていれば誰でも出来るのかもな。

「その中にあるセカンドジョブとジョブ設定とジョブ取得ってやつを取っておくとかなり便利だぞ。」

「ジョブ設定はなんとなく意味がわかるけど、他の2つはどういう意味?もしかして好きなジョブを取得できるってこと?まぁ取ればわかるだろうし、まずは取ろ……え!?ジョブ設定ってジョブを変更できるってことだよね?これがあればわざわざ神殿に行く必要がないってこと?」

ただSPでスキルを取得するだけなのにリアクションに忙しそうだな。

「まぁジョブ設定についてはその通りだ。だから念のため人がいないところで話した方がいいと思ってな。」

「ジョブ設定のスキルのことが聞かれちゃ困ることだったの?たしかに凄い情報だとは思うけど、どちらかといえばSPで取れるスキル一覧を見れるって情報の方が価値があるんじゃないかな?ジョブ設定はなくても神殿に行けばいいだけだし。」

「スキルの価値についてはよくわからんけど、ジョブ設定のことを知ってるやつは神殿関係者に殺されるらしいから、俺がリスミナに教えているところを聞かれたらマズイと思ってな。」

「……………………え?」

ヨクアリクサを掴んだ状態で急に固まったように動かなくなったリスミナが、ゆっくりと顔だけ俺に向けて聞き返してきた。

「ジョブを設定できるのが神の奇跡でもなんでもないってことを知られるのが困るんだろ。まぁでも、ジョブ設定が神の奇跡なんかじゃないって知ってるのは神教のお偉いさんと王族や一部の貴族だけらしいから、他の冒険者とかに鑑定でスキルがバレても生まれつき持ってたっていっとけば神に選ばれた者みたいな感じで誤魔化せるだろ。」

「……念のため、鑑定対策をしてからスキルを取ることにするよ。」

あれだけリアクションが激しかったのにまだスキルを取ってなかったのか。取ったあとに確認してきたのかと思っていたが、違うらしい。

「まぁ無理に取る必要もないし、そのへんはリスミナの好きにしてくれ。一応使い方だけ説明しておくと、ジョブ取得は条件を満たしてるジョブを取得できるスキルで、ジョブ設定は取得済みのジョブと今設定しているジョブを変更出来るスキルだ。そんで、セカンドジョブは追加でもう1つジョブを設定出来るスキルなんだが、セカンドジョブに設定したジョブはそのジョブ固有のスキルが使えるようになるだけで、ステータスには全く影響しない。ただ、セカンドジョブに設定していてもレベルは上がるし、その分のSPもしっかり貯まるから、使わないと損だと思うぞ。」

「……。」

「ソロで冒険者をやるなら冒険者ジョブのアイテムボックスは必須だろうけど、冒険者は100レベルまでしかないから、今後のためにもリスミナにはこの3つのスキルは必要だろうと思ってさ。」

驚いたまま固まっていたリスミナが、一度深呼吸をしてから微笑んだ。

「ありがとう。貴重な情報を教えてくれたのも嬉しいし、私のためにとしてくれたことが本当に嬉しい。…ただ、このスキルを手に入れちゃったら、パーティーを組める可能性はほぼなくなっちゃうね……ハハッ。でも、パーティーを組めなくなるとわかっててもこの3つのスキルを取らないなんて選択は出来ないかな。」

リスミナは喜んではいるが、微妙に喜びきれていないような雰囲気があった。

「なんでだ?これだけ有用なスキルがあればパーティーを誘いやすいだろ?このことを誰にでも教えるってのは困るが、リスミナの判断でパーティーメンバーに教えるくらいならべつにかまわないぞ。そうすれば教えたあとは一連托生になるだろうから、永遠の固定パーティーになれるんじゃねぇか?」

「わかってて教えてくれたんだね。ただ、この情報はさすがにパーティー組んだばかりの相手には教えられないかな。だからといって秘密にしたままパーティーを組んでも、何かの拍子に知られてしまう可能性はあるし、回り回って神殿関係者の耳に入る危険性を考えたら、もともとこのスキルのことを知ってる人か本当に信用出来る人じゃないと怖くてパーティーは組めないかな…。」

よかれと思って教えたんだが、パーティーを組みたい派のリスミナには逆効果だったか。

「なんかごめん。」

「ううん。パーティーは組めなくなるけど、間違いなく強くはなれるから、リキくんが教えてくれたことには本当に感謝してるんだよ。だから謝らないで。」

微笑んでいるリスミナを見るに無理してる感じではないから、デメリットよりメリットの方が上回っているのは本当っぽいな。それならいいか。

「そうか。」

「そうだよ。ありがとう。」

「…まぁ話はそれだけだ。俺の用事は終わったけど、どうする?せっかくだからこのまましばらくは薬草採取していくか?」

「今帰っても夜ご飯には早いし、どうせならもう少し採取して、夕方にラフィリアに戻るくらいでいいんじゃないかな?でも冒険者ギルドで薬草を売ることを考えたら、混む前に行くためにそろそろ戻った方がいいかも。」

「薬草なら知り合いの薬屋で売れると思うから、混むことは考えなくて大丈夫だと思う。あそこで俺ら以外の客を見たことないし。」

たしか前にアリアがギルドより高く買ってもらってた気がするから、少なくともギルドと同じ値段で買ってはくれるだろう。

あいつは俺のことを嫌ってるかもだが、アリアとは仲がいいみたいだから、買取拒否はしない……よな?

「そんなツテまであるんだね。さすがだなぁ。じゃあせっかくだし、もう少し採取してから帰ろうか。薬屋で買取してくれるなら、それなりの収入になりそうだし。」

「ん?薬草を売るならギルドより薬屋の方がいいのか?」

「場合によるかな。採取依頼を受けられるなら普通の買取より報酬がいいからギルドの方がいいし、Fランクなら普通に換金してくれるから評価分を考えたらギルドで売る方がいいかな。でも、薬草採取は低ランク向けの依頼だから、ランクが上がれば上がるほど、ギルドでの薬草の買取価格を下げられちゃうんだよね。だからその場合は薬屋で売った方がいいんだけど、そもそも薬屋は知り合いでもない相手からは基本的に買い取ってくれないんだよね。もちろん珍しいものなら薬屋でも買い取ってもらえるし、ギルドでもランク関係なく普通に買い取ってくれるんだけど、普通の薬草類は低ランクの冒険者が採取する分がなくならないように調整してるんだと思う。たいした収入にならなければだいたいの冒険者は薬草類の採取をしようとはならないからね。」

ちょっとした疑問を聞いただけだったんだが、思いのほかしっかりとした答えが返ってきて驚いた。

リスミナは俺のことを凄いだのなんだのとちょいちょいいってくるが、こういう知識を持ってるリスミナの方が凄いと思うんだけどな。それともこれは冒険者の常識だったりするのか?

「参考になったよ。ありがとう。そしたら基本は薬屋で売っても問題ないか。リスミナがギルドに売りたいモノがあったら、それだけ薬屋では売らなきゃいいだけだしな。」

「そうだね。リキくんのツテに便乗させてもらおうかな。」

これで買取拒否とかされたら恥ずいな。だが、あいつならやりかねない気がする。

「ツテっていえるほどの関係ではないから、あんま期待はしないでくれよ。」

「…?わかった。売れなかったらギルドで売ればいいだけだから大丈夫だよ。」

ニコッと笑いかけてきたリスミナが一息つくように立ち上がってから背筋を伸ばし、何かを探すように周りを見回した。

「ここのヨクアリクサも取り終わったし、パッと見でわかるところには薬草はなさそうだから、ちょっと手分けして探そうか。群生地だったら呼んで一緒に採取して、ちょっとしかなかったら自分で採取して次を探すって感じでいいかな?もちろん採取方法がわからないのがあったらいつでも呼んでね。声の届く範囲で薬草を探すつもりだから。」

「了解。たぶん採取方法の確認ですぐに呼ぶことになる気がするけど、よろしく。」

「フフッ。リキくんに頼られるってなんか不思議な感じだな。遠慮しないでいつでも呼んでね。」

そういってリスミナが薬草を探すために歩き出したから、俺はリスミナとは違う方向へと薬草を探しに向かった。